趙公明がアンニュイな訳がない   作:シアス

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真の七怪があらわれた

吹き飛ばされながら思った。

人ってこんなに飛べるものなのかと。

そんな感じで現実逃避をしていると、地面と熱いキスをすることになった。

 

受け身は取れずダメージは甚大だし、大規模な力の行使で疲労感もハンパない。

いたいいたい!

もう帰る!

こんな面倒事は、お開きにしよう。

はい。解散!

 

そもそも、何で痛い思いをしてまで、こんな面倒な事しないといけないの?

どこで選択肢を間違えた?

やっぱり趙公明の提案に乗ったのがまずかったよね。

見るからにヤバい感じがしてたのに、目先にぶら下げられた餌に飛びつくのは問題だったと今更ながらに思う。

俺ってかなり短慮だね。

この失敗を踏まえて、次からはそんな餌に釣られクマー。

 

俺は、とっさに体をよじり、コロコロと転がって移動する。

すると頭が有った場所の地面が砕かれた。

コイツ、俺の頭を踏み抜くつもりだったな。

 

「おいおい。もう少し現実逃避させてくれよ。とても疲れてるし、体中痛いんだ」

「現実逃避している間に、あの世に送ってやろうって言う、俺の優しさは伝わらないかね?」

「そんな優しさは伝わらないし、どの道死んだら伝わらないだろ!どうせなら、俺が手をくだすまでもないとか言って帰ってくれた方が優しかったよ」

 

俺は、起き上がり袁洪と呼ばれた白猿を睨みつけた。

 

「そんなに睨んでも結果は変わらないぜ。お前を見逃しても力をつけてリベンジしに来るであろうことは目に見えているからな。俺達よりも、あの化物どもの方が怖いんだろう?ここにいるのも、あの化物どもの差し金だろ?あの化物どもと同時に相手にするには面倒な術を持ってるようだから、ここで消えてもらう方が後々楽になるってものよ」

 

よく喋る猿だ。

俺から地の利を奪ったからか、先ほど臆病なくらい慎重に不意打ちを仕掛けてきた癖に、ずいぶんと余裕がある。

俺の事を舐めてるのか?

それとも、何か隠し玉でもあるのか?

 

どちらにしてもムカつく。

あんなに優しい御姉様達に化物とか言いやがって。

悔しいけど、言い返せない。

 

いや、違う。待て。そうじゃない。

許せないな。

お前も化物じゃないか。

あれ?これも何か違う気がするが、まあいい。

 

「お前の言いたい事はよく分かったよ。さっきまでは、どう逃げようか考えていたが、気が変わった。お前をぶちのめす」

 

やっぱり俺って短慮だったよ。

目の前の白猿に向かって、攻撃を仕掛ける。

 

「くっ、どこにまだそんな底力が?」

 

白猿は、とっさに防御したようだったが、ダメージが入ったのか苦悶の顔をうかべた。

そして、距離を取ろうとした所を、間合いを詰めて追撃する。

しかし、相手はある程度読めていたのか紙一重で交わし反撃してきた。

俺は、そのダメージに思わず少し動きを止めるが、相手が攻撃で硬直している間にお返しを叩きこむ。

どうやらスペックは俺の方が上だったようだ。

 

その後、互角の攻防を繰り返すが、冷静になった俺は思う。

勝てる気がしねー。

 

いや、負ける気もしなんだけど、決め手に欠けると言うか、倒しきれる気がしない。

相手も、同様に感じたのか、お互いに攻撃の手がゆるみ距離を取り始める。

 

「ここまで、やっても助けに来ないって事は、化物どもはしばらく来ないと思って良さそうだな」

 

白猿が勝ち誇ったように言った。

 

「御姉様達が来ない事に何の関係がある?」

「いや、大有りだ。俺達は、この後化物と戦うことを想定していたのだが、今は目下お前を排除すれば、しばらくは時間があるって事だ」

「何が言いたい?」

「七怪が協力していたとしたらどうだ?お前たち、そろそろ出てこい」

 

その声に呼応するかのように、六つの人影が現れた。

そう人型なのだ。

ムカデ・蛇・豚・牛・犬・羊の特徴を持った人型の妖怪だ。

 

俺は、大きければ強いと思っていたが、この白猿と戦って分かった。

この白猿は、先ほどの巨大な猿よりも強い。

そして、おそらくこの白猿と同格な奴らが、あと六体も控えていたとか、ちょっとチュートリアル的な初ミッションなのに難易度おかしくないですか?

できればお遣いミッションを繰り返して、装備と技を貰って、安全に成長していけるタイプの方が好みでした。

そんな俺の心境を無視して、七怪はストーリーを進める。

 

「ここまでやったんだ。俺は休ませてもらう。とりあえず、今の所脅威はコイツだけだ。さっさと片付けて親父達を救出に行こうぜ」

「袁洪よ。ずいぶんと手古摺ったようだな」

「言ってくれるぜ。そいつ一人に部下達は全滅。オマケにそいつ自体も能力が高いみたいだ。控えめに言って十分に化物だぜ」

「それもそうだな。油断せずに行かせてもらう」

 

あ、白猿の余裕は、これだったのね。

まだ仲間が控えているとか、残機が無い俺と違って余裕あるわけですね。

しかも、御姉様達が居るか居ないか判断する為に慎重に時間を使って判断してる辺り賢い。

部下達が、一網打尽にされたから、再び同じことをされないように警戒もされていた訳か。

俺の完敗だ。

今日の所は、見逃してやる。

お前たち運が良かったな。

さて、帰るとしますか。

 

「おい。どこに行くつもりだ?」

「ですよね?」

 

一斉に三人くらいが飛びかかってきた。

一人の攻撃は、なんとか防げたが、残り二人の攻撃は防げずにダメージが入る。

袋叩きだ。

 

なんとか、強引に突破したが控えていた三人によって、再び袋叩きにあう。

 

あ、これ以上ダメージが入るとヤバい。

変化が解けそう。

今植物になったら、身動きが取れないから完璧に詰む。

 

そうこう考えている内に、良い一撃を貰い俺の変化が解けてしまった。

 

「な、なんだコイツは?」

「貴様は、あの化物花だったのか?」

「デカい。デカ過ぎる。前よりデカくなってるんじゃないか?もう、親父達よりも巨大だ」

 

七怪達が何か言っているが、今はどうでもいい。

俺の生存本能は、必死に回復しようと地面からエネルギーを吸い上げる。

兄様に破裂するかもしれないと言われて、積極的に吸った事は無かったが、そんな事を言っている暇はない。

俺が本気で吸い上げている影響か、地は渇きひび割れて、周囲の植物達は枯れ始めた。

 

「コイツ、そのままにしていたら危険だ」

「ああ、所詮は植物だ。さっさとへし折ってやる」

「みんな、ここは最後のひと踏ん張りだ。一斉にかかるぞ」

 

そう言って七怪は、同時に最大威力の攻撃を放った。

 

今や巨大な樹木のような花が、轟音をたてて大きく揺れる。

しかし、倒れたのは七怪の方で有った。

 

それぞれに苦悶の顔を浮かべる七怪を見下ろしながら思った。

そんな大きな声で攻撃するって言ってるのに防御しない訳ないだろう?

 

大量に吸い上げたエネルギーで術を使い、体を硬質化させていた。

あまりにも硬い為、それぞれの攻撃が自身に跳ね返り七怪にダメージを与えのだ。

しかし、それだけで安心できなかったので、枝や根や蔦を伸ばし七怪を絡め取る。

あまりにも異様な光景に、七怪は叫びを上げたが、それでも不気味な植物達の手が緩まる事は無かった。

 

これで、俺は辛くも七怪を掌握する事に成功したのである。

 

話は、これで終われば良かったのだが、ダメージを負い過ぎた俺はエネルギーを吸い上げるのを辞めず、環境破壊を繰り返した。

それは、辺り一帯砂漠になるまで続き、その地に有った龍脈をも破壊してしまったのは言うまでもない。

 

そして俺は、七怪を攻略する際に、辺り一面を砂漠にし龍脈を破壊した結果、金鰲島の先輩達からヤバいヤツだと思われる事になった。

当初の武勇伝を作っていじめを回避っていう目標は達成されたが、この扱いはある意味いじめではないだろうか?

 

趙公明と同類扱いとか解せぬ。

 




【独断と偏見と思い込みによるテキトーな紹介コーナー】

・七怪とは

原作では、おそらく妲己の配下の妖怪。
七怪全ては、登場しないが白猿の精・袁洪、長蛇の精・常昊、大豚の精・朱子真、羊の精・楊顕の四名は出番がある。
とくに袁洪、常昊、朱子真は、終盤に妲己が主催する大宝貝大会の七人の精鋭に選ばれ、その大会のトリとオチを飾る大妖怪なのだ!
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