すまないが、また閑話なんだ。
でも、次の閑話のタイミングだと時間的に話の距離が遠いし、テンポを考えると今が良いと判断しました。
あと、注意ですが、この話に出てくる趙公明のネームは、あくまでもネーム段階であり掲載されていた内容と異なる部分があります。
あの素晴らしい作品に、このようなツッコミを入れると不快になる方がいるかもしれないので、先に謝罪しておきます。
すみません。
side通天教主
いつも明るい雰囲気を振り撒き悩みとは無縁と思える趙公明が、何故か落ち込んでいた。
いったいどうした事かと聞いてみると、ため息交じりに答える。
「今回、通天教主様は出番と見せ場が有って良いですね」
いったい何の事を言っているのだ?
言葉の意図を掴めず首を傾げていると趙公明は言葉を続けた。
「ああ、申し訳ない。このアンニュイな気分は出番の無かった者にしか分からないのです」
本当に何を言っているのだ?
たまに意味の分からない事を言うのだが、今回も話に脈絡が無い。
そうした、我の心情を察したのか、趙公明はヤレヤレとジェスチャーをして、今回の会議で話合うのに必要な報告書や提案書やカリキュラムの原案に嘆願書など色々な書類を山のように提出してきた。
いつもよりも、かなり量が多いのは嫌がらせかもしれない。
趙公明からの書類によく有る事なのだが、自身の趣味に合わせたのや、とんでも無い計画だったりと却下案件が多発する。
その為、次に出される修正案が、まともに見えてしまうのが不思議だ。
また、意見を求めると初回は、たいてい問題発言をして参考にでき無かったりする。
それを却下すると、だいたいまともな事を言い出すので、できるなら最初からそうして貰いたい。
そんな事を考えても、この書類の山が減る訳でも会議が早く終わる訳でも無いので、手早く目を通していく。
しかし、やはり却下案件が有った。
以前から、熱心に提出している金鰲島に新たに建設する施設の提案書である。
今は、それに割くリソースが無く、保留案件だと言っておるのに。
美術館や博物館は分かるので、余裕が出てくるまで保留で良いだろう。
しかし、劇場とカラオケ施設は必要を感じないので、今回も却下を言い渡す。
毎回、まともそうな施設にまぎれて提出されるので、これだけしつこいとウッカリと許可してしまいそうで困る。
次に目を通したのが、仙道の育成カリキュラムなのだが、ボイストレーニングやダンスにミュージカルに果ては舞台装置の習熟や照明などの裏方など、劇場を建てたらそのまま劇団員にするのかと思える内容となっていた。
表現力や協力性を育むのに良い部分も有りそうで全否定はできないが、仙人としての道を極める為の時間がまったく無いのは不味いと思う。
そして、ページをめくると却下された時の代替案なのか、体力測定のような事を行い個別に特技特徴に合わせてカリキュラムを組んだり、さらに本人が望むなら苦手を克服できるようにするなど、カリキュラムを組む前段階の事が書いて有った。
そうそう、こういった事を書いて欲しいのに、最初のカリキュラムに関して全否定はできないが、必要なかったのではと思ってしまう。
とりあえず、小さく「面倒だから、却下希望」と書かれているのは見なかったことにする。
そういった感じに書類を片していくと、最重要案件と書かれた封筒が出てきた。
こういった物は、重要でもなんでもなく趙公明の私事の可能性が高い。
それでも無視する訳にはいかず、封筒を開けると複数枚の原稿と「感想お願いします」と書かれた紙が出てきた。
一枚目は概要が書かれており、ハートフルサッカーのスポーツ物で、ワールドカップ日本代表を夢見る高校生のライバルあふれる波乱万丈青春活劇らしい。
その次は、まだネームの段階だが、漫画が執筆されていた。
無視すると、後々面倒な事になりそうなので、手早く読んで感想を言うとするか。
まず初めに言いたいのだが、主人公の設定盛り過ぎじゃないか?
フランス貴族の末裔で、生粋の江戸っ子らしい。
そして、文脈から察するに幼少期から高校に行くまでは、北海道在住のようだ。
次に、ライバル達だが、剣道にボクシングに不良のバトンミントン集団にプロボーラーなどなど、サッカー関係のライバルがまったく出てこない。
むしろ主人公はサッカーよりも他のスポーツの方が才能有りそうな気配がひしひしと感じられる。
後は、最初の目標が目指せ甲子園となっているが、せめて国立競技場にするべきではないか?
確かに、クイズ甲子園やまんが甲子園とかみたいに、全国大会みたいな物かと伝わりやすいが、実際に甲子園球場でサッカーしたりしないよね?
あ、聞いてみたら、その予定らしい。
とりあえず、今の状態だと整合性を取る為にスポーツのジャンルをサッカーからバトル有りのキックベースボールにして、青春スポ魂からシュールギャグへと転向する事を進めたのだが、趙公明は良い顔をしなかった。
その方が、色々なスポーツの仲間を取り入れて何が有ってもギャグで済ませられるのだが、趙公明的にハートフルサッカーは譲れないらしい。
「この良さが分からないなんて実にアンニュイだ。時代が僕に追いついてないと見える」
結果さらにテンションが下がり会議は、いつもより終わる時間が遅れた。
この事にしばらく罪悪感が残ったのだが、次に趙公明に合った時は良い事が有ったのか、いつものテンションに戻っていたので安心した。
次は、もっと褒める方向で感想を言おうと少し反省したのは言うまでもない。
またある日。
崑崙山の元始と話し合う為に、老師の住処で会合を開いた。
供に趙公明を連れて来たが、崑崙と問題を起こさないように釘を刺しておこう。
話し合うのは、暗黙の了解についてだが、こちらに有利な状態だったからか、元始から色々とお願いをされた。
崑崙は、うちの金鰲島に比べて戒律の内容が厳しく、おそらく人間達を妖怪や強い獣から守れないのを心苦しく思っていたのだろう。
特にうちの方針的には問題なかったので引き受ける事にした。
また、我は金鰲島から長く離れられない立場にいるゆえ、趙公明に飛び回って貰う事になる。
この面倒な頼みを嫌な顔をせずに引き受けてくれるのだから、頭を下げてまで我の片腕に引き入れたのは正解だったと思う。
さて、一通り会談を終えて、元始とオフレコで話す為に、お互いに供の者達を下がらせる。
色々と、歓談や情報交換をしていると、元始が神妙な顔で訊ねてきた。
「ところで通天よ。仙人界を開こうと思った時の事を覚えておるか?」
いきなり、そんな昔の事を聞かれても答えに困ってしまう。
思い出そうとしても、記憶に霞がかかったようなおぼろげな曖昧な事しか出てこない。
「すまない。だいぶ昔のことだから、上手く思い出せぬ」
「そうか。やはりそうか」
元始は、何かを確信したのか、納得したのか頷き続ける。
その後、考え事をしているのか上の空になったので、今回の会談はお開きになった。
そういえば、趙公明にも似たような質問をされた気がする。
仙人界を作って我に何のメリットが有るのかと。
よくよく考えてみるとメリットは無かった。
次に、なぜ仙人界を作ったのかと。
これは先ほどの元始にも答えたが、よく覚えていないだ。
その答えに趙公明も納得したように頷いていたのが印象に残っている。
あとは、イレギュラーを一か所にや、まとめて潰すのが楽そうや、きっと華やかな戦争になると物騒な事を呟いていたが、いつも通りの突飛な発言なので聞こえなかった事にしたのはしっかりと覚えている。
帰りに趙公明と合流して、問題は起こさなかったかと訊ねると肯定の返事が聞こえた。
その答えに安心したのだが、布でくるまれた大きな物が少し気になる。
こちらも元始とのプライベートな会話を探られるのは困るので、聞いてみたいが止めておいた。
趙公明の気球に釣り具が積んであったのを見るに、おそらく大物を釣ったのだろう。
別に、取り上げたりはしないから、その成果を自慢げに見せてくれても良いんじゃないかと少し思った。
そして、しばらくして、また報告書などの書類に目を通す日々を過ごしていると、元始に頼まれた事は進展しているが、エネルギー確保の為に以前から指令を出していた龍脈の確保が遅れている事に気づいた。
あの趙公明なら、もう一つや二つは確保していると思ったのだが、何も進展していないようだ。
しかし、その確保の為に人員を使っているようでもある。
これは、何かをこっそりと行っているな?
ろくでも無い事なら止めねばならん。
一応、言えば素直に聞くやつだから、呼び出して訊ねてみるか。
もしかすると意外と手こずっている可能性もあるが、むしろ趙公明の手に余る存在がいるのなら、そちらの方が面倒で厄介であろう。
そうで無い事を願うばかりだが、その場合は早めに対策を練らねばならんな。
少し頭痛がする。
気付かなければ良かったと。
アニメ十四話を見て、さらにコミックスを読み返して気付いたのですが、通天教主の口調が一部元始天尊になっていたのを過去に遡って修正。
あと一人称が確認できなかったので、元始天尊と差別化をはかる為に、「わし」から「我」に変更しました。
二話目の後書きに金蛟剪の形状を追加。
三話目の後書きに、雲霄三姉妹について軽く記載。
四話目の後書きに、金鰲島について軽く記載。
五話目の後書きに、雲霄三姉妹について軽く記載。
しかし、いきなりお気に入りが増えたので、アニメ十四話が神ったのかと思ったけど、そんな事は無かった。