趙公明がアンニュイな訳がない   作:シアス

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原作開始1950年前ぐらい 仙人界での生活が始まる
仙人界’は’平和だ


あれから人型になるまで、けっこうな月日が流れた。

なぜなら、龍脈から定期的にエネルギーが吸える場所ではなく、金鰲島の日当たりの良い場所に鉢植えに入れられたまま置かれていたからである。

まあ、そのまま放置されていれば心が折れていたであろうが、御姉様達は毎日水やりに来てくれていたし、張紹さんもたまに訪問してくれている。

それと、怖いもの見たさなのか、たまに他の妖怪達も訪れる時も有った。

後で聞いた話なのだが、妖怪を食べる植物がいるとかで度胸試しに使われていたみたいだ。

通りで、おびえているように見えた訳だ。

気のせいで有って欲しかった。

 

他に人型になるのが遅れた理由としては、例のお土産が減った事も原因かもしれない。

たぶん効果が有った事に驚きである。

ちなみに、減った理由だが俺の育成を秘密裏に行っていたせいで、滞っていた業務や後片付けに時間を取られているらしいけど、何をやっているのかは教えてくれなかった。

でも、狩りに行かない理由の本音はダダ漏れで、どうやら後で修行の一環に使うのにその前に無くなったら困るからだそうだ。

まったくもって嫌な予感がするし、個人的には無くなっても全然問題は無いのだけれども。

 

まあ、なんだかんだで植物の間は、とても平和に過ごせた。

この平和がいつまでも続けば良いのにと願っていたけど現実は残酷。

人型になった途端に修行と称して、兄様にあっちこっちに連れて行かれたのである。

海だったり、山だったり、空だったりと、ただの旅行ならどれほど良かった事か。

耐久実験とか、環境によっての能力変化とか口では簡単に言えるが過酷だった。

耐久実験は人化が解けないギリギリを知る為に凄いダメージを何回も受けて神を呪ったし、環境テストに関しては空と海は上手くエネルギーが吸えないみたいで強力な術は使えなくなるし能力も下がるみたいだ。

それ以外の場所では、大規模な術は使えたが龍脈のようなエネルギーがある場所なら良いのだが、そうでないのなら土地が痩せる気がするし、ちょっと枯れかけてる気もして焦った。

あれ?俺って凄く扱いに困る存在じゃない?

もしかしなくても、適応している環境以外ではお荷物だったり?

そんな俺を慰めるかのように、兄様は修行の方向性は決まったから安心するようにと。

あなたは神か、いや、さっきまでの実験を思い出すと気のせいだった。

 

そして兄様は仕事や準備に時間がかかるらしい。

その間は、金鰲島内で自由時間になった。

とりあえず、今までの過酷な日々を癒す為に休憩したい所だが、張紹さんと約束もあるし前々から準備して貰っていた酒で飲み会を開く事にした。

まずは、いつなら空いているか聞きに行くと今夜大丈夫だそうだ。

とりあえず、忘れてしまわない内に指定された場所で準備でもするかな。

 

夜になり、張紹さんが来て言った。

 

「同僚を連れてきた。これから長い付き合いになるだろうから、親睦を深めると良い」

 

紹介されたのは、姚斌(ようひん)さんと金光(きんこう)さんで、基礎部門と宝貝部門を担当する金鰲島でも上位陣である方々だ。

姚斌さんは、顔に陰陽の仮面を付けており、服装は黒子ともお坊さんとも取れる黒い服を着ている。

ちょっと階級にうるさい感じがしてプライドが高そうだと思ったが、話してみると兄様と比べて常識人だと感じられ安心できた。

時間があるのなら、今度基礎部門で俺と同期になるであろう新人達に指導を行うそうなので参加するようにススメられた。

兄様は特別な事をしたがるので一般的な事を知っておくのも悪くないだろうと。

それと、苦労するだろうけど強く生きろよと励まされた。

 

次に、金光さんだが、張紹さんが言っていたように美人さんだった。

しかし、顔と手以外は透明で下半身は完全に見えない。

だからこそ、ひらひらとはためく衣服の中を思わず覗きたくなったのは仕方ないと思う。

そして、彼女からは修行が落ちついたら宝貝部門まで来るように言われた。

やはり、宝貝を作るのは時間がかかるので、ある程度修行が完了するまでは、修行に専念した方が良いとのことだ。

あとは、死ぬ気で頑張らないと生きられないぞと励まされた。

 

この二人を紹介してくれた張紹さんには感謝である。

だから、たぶん問題ないだろうけど、人化してから兄様とどんな事をしていたのかを酒の肴にねだられたので話してしまった。

まあ、これがどんな結果になろうとも、今が盛り上がるなら、どうでも良いかと思ってしまうほど酔っていたのだろう。

結果、四人でかなりの量の酒を消費したのだが、この中で二日酔いに苦しんだのは俺だけだった。

これが仙人としての格の違いなのかと見せつけられた気がする。

そして、人型の俺って状態異常に弱くないですか?

 

張紹さんとの約束の酒盛りも無事に終えて、俺はしばらく本当にくつろいでいた。

御姉様達とアフタヌーンティーを楽しんだり、金鰲島で支給される謎肉の味を吟味したり、惰眠を貪ったりと、植物の時にはできなかった事を楽しんだ。

そんな日々の終わりはすぐに訪れた。

 

「やあ、正大。つかの間の休息は楽しめたかい?じゃあ、そろそろ行こうじゃないか」

 

嫌な予感しかしないので、行きたくないです。

断固拒否の姿勢を取らざるおえない。

 

「まったく仕方ないね。雲霄頼むよ。君も正大に立派な仙人になって欲しいだろう?」

「いやですわお兄様。私の名前はビーナス。でも、私も正大には立派な仙人になって欲しいので協力いたしますわ」

 

最初の言葉に希望を持った俺だが、次に続いた言葉に絶望した。

御姉様達から攻められると俺は、少し弱い気がする。

色々と困惑している俺をよそに、ビーナス姉様は俵でも担ぐかのように俺を軽々と持ち上げて運んだ。

やめろーはなせーと心で訴えかけるが、下手をしたらこの筋肉質な腕でへし折られる可能性もあるので、大人しく俺は運ばれた。

到着したのは、兄様の気球乗り場である。

 

「何をするか分からないと、正大も不安だろうから、今回はちゃんと説明することにしよう」

「いえ、できれば毎回ちゃんと説明して貰えると助かります」

「まあ、聞きたまえ。これから通天教主様が元始天尊くんから頼まれた討伐に行くのだけど、それを正大にやって貰いたい。勿論、この僕が同行して監督するから前みたいなギリギリな心配はしなくても良いはずだ。やっぱり修行といったら実戦に勝るものはないからね」

 

これは、思っていたよりも安全そうな気がする。

前々から、ダダ漏れだった事なので、この事は覚悟してたし、無理そうな相手は兄様が引き受けるって事なら安心だよね。

でも、さっきから俺にロープをくくりつけているのは、何故ですか?

 

「ああ、これかい?目的地に向かいながら、正大には瞑想と術を苦手なフィールドである空中で行ってもらおうと思ってね。これなら、限られたエネルギーで頑張れるようになるし、瞑想で自身を高めて苦手も克服できる気がするんだ」

 

え?何?もしかして、俺空中で吊るされるの?

しかも、この強度の弱そうなロープが命綱?

それに、気がするだけで確証は無いんですよね?

ちょっと待って話し合おう。

内心で混乱する俺をよそに、気球は浮かび上がり足が地から離れた。

 

「ああ、目的地まではゆっくりと行くから存分に修行に励むと良い」

「ちょっと待って。本気で待って。このロープがミチミチと危険な音を立ててるんだけど」

「それは勿論、ギリギリの強度のものを選んだから当然さ。さあ頑張って術で強化するんだ。じゃないと本当にちぎれてしまうよ?」

「いやいや、術で強化するのは良いけど、どれくらいやるのか先の見えない持久走なのが凄く辛いんですけど、落ちたらどうする!」

「どうする事もできないね。そうなったら悲しい事になるのだけど、僕は正大の事を信じているよ」

「兄様がやってる事だから止められるでしょう!それと、こういう信用ならいらないから。これなら信用ない方がいいから」

「はは。喋ってないで、瞑想を始めてくれないかい?微量かもしれないし、苦手なエネルギーかもしれないけど、少しでも多くのエネルギーを取りこめるようにするか、自身からエネルギーを作り出す努力した方が、僕は合理的だと思うね」

「何事にも段階があるから。この修行は、習得できなければ死ねってレベルの意思を感じるよ。ほらこんな事しなくても、安全にお願いしますよ」

「安全にって言われても出来ないヤツには出来ないんだよ。だったら死ぬ気で一回やらせた方が成功する確率が高そうだろ?」

 

説得は無理だと悟った俺は、全力で瞑想しつつ、ロープを強化しながら、長時間術を使う為のエネルギー配分を調整する事にした。

自分を支えるくらいのギリギリの強化にしておかないと、すぐに力尽きてしまう。

そうなると考えた後に、視線を下に向けると後悔してしまった。

 

「やっぱり、マジで中止お願いします」

「騒ぐ元気があるなら、まだまだ大丈夫さ」

 

俺は懇願を続けたが、兄様には暖簾に腕押しだった。

 

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