趙公明がアンニュイな訳がない   作:シアス

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宝貝が欲しい!

結果的に修行は中止になった。

もちろん、俺の懇願が兄様に届いた訳ではない。

あれはロープで吊るされた空の旅をしばらく続けて、喋る余裕も無く限界が近づいているのに修行はいつになったら終わるのか余計な事を考えていたのが悪いのだろう。

術のかかりが悪くなったロープが切れたのだ。

あの千切れる音が、こんなにも絶望を感じさせるとは思いもしなかった。

耳に今でも、ブチッと鳴る音がこびりついている。

そして、俺はあわや大地まで真っ逆さまだったのだが、すぐさま兄様の宝貝である縛竜索によって絡め取られて引上げられたのだ。

フィッシュオンとかふざけた掛け声で。

この対応の手早さは絶対に落ちると確信していたと思う。

兄様にツッコミを入れる事や、無茶な修行に対する抗議も、限界を迎えて絶望を味わい、そして助かった安堵に浸りへたり込む俺には出来なかった。

 

「やはり、一回では無理だったかな?とりあえず、何か得るものは有ったかい?」

 

やっぱり無理だと思ってさせてやがった。

思考がまとまらないのと、以前の自分と比較する事もできないので、今の所何かを得られた実感はない。

でも必死さと限界を超えてでも頑張らないといけないって気持ちは得られた気がする。

まあ、賭かっているのは自分の命だし、今回は助かったけど次は助かるという保証はないのだから。

しかし、口では薄情で有っても助けてくれた事には感謝しよう。

まあ、元凶であるのから、感謝は相殺されるのだが。

むしろマイナスだ。

本人の気楽さや余裕は助けるつもりが有ったからだろうと思いたい。

 

「その様子だと、実感はなさそうだね。物語の主人公はピンチになると覚醒するって聞いたのだけど、この程度では無理だったか。次は、もっとハードにいこう」

 

ヤバい。このままだと、修行の無茶さ加減が際限無く上がってしまう。

とりあえず、嘘でもなんでも良いから覚醒アピールをせねば。

しかし、俺の体は疲労からか思うように動かず、声も出せない状態だった。

さっき、学んだ必死さと限界突破を思い出すんだ俺。

無理でした。

出来ない事は、やっぱりどう有っても出来ないのだ。

 

「ほんのジョークさ。そんな絶望そうな顔をしないでくれたまえ。それとも、なにかね君。僕がそんな男に見えるのかい?それともさっきの修行の事をあげつらうつもりかな?もし助かる事を知っていたら、あんなに必死に頑張ったかい?僕は正大の弱点は、すぐに諦めてしまう所だと思っている。それを自覚して貰う為に、少々荒療治になったのは認めなくもないが」

 

兄様より強くなった時は、覚えていろよと心に誓った。

しかしながら、ジョークなら良いのだが、ちゃんと言質を取らないとノリでやりかねないとは思ってたりもする。

重要な事なので、はっきりと声に出して問いかける。

 

「本当にジョークですか?」

「勿論さ。しかし、予想以上に疲弊しているようだね。これでは、目的地についても討伐は無理かな」

 

この疲れは、ちょっと休んだくらいでは取れない気がする。

それに、ここは空の上だ。

能力が落ちるって事は、回復力も落ちてる訳で時間をかけないと討伐する元気はないと思う。

 

「仕方ない。今回は休んで、僕の戦う様を見学すると良い」

 

そう言って良い所を見せられるのが嬉しいのか上機嫌だ。

そういえば、兄様が戦う姿を見るのは、最初に金蛟剪を使って以来見てない気がする。

あの宝貝は凄すぎて参考にならないと思うのだが、お手並み拝見といこうじゃないか。

 

討伐対象は複数いて、それを同時に相手取る事になったのだが兄様は金蛟剪を使わなかった。

しかしも相手を圧倒する戦いっぷりを披露したのである。

あの縛竜索と呼ばれる宝貝は、派手さこそ無いが良いものだ。

リーチが伸びるムチのような打撃から、レイピアのような鋭い突き、そして刃も無いのに斬撃を放てるという、近から中距離を完全にカバーしている。

多様性があると言われると便利なような気もするが、全ての性能を使いこなすには持ち主の技量を問われるであろう。

それを十全に使いこなす兄様の実力は、単純な破壊力のある金蛟剪に頼るだけの男ではなく、真に戦うすべを持つ戦士である事がうかがい知れる。

不覚だが、ちょっとだけ華麗だとも思ってしまった。

しかしながら、兄様ならもっと爆発したり、巨大ロボットだったりと派手な物を好みそうな気がするのは俺の偏見なのだろうか?

 

「どうだい?この僕の華麗な戦いっぷりは?」

「その縛竜索ください」

「パルドゥン。それは出来ない。僕としてもこの宝貝は気に入っているのだよ。しかし、ぶしつけだね。術を使えば、正大も似た事ができるんじゃないかい?」

「術は、下準備も必要だし、消耗も激しいのですよ。兄様は金蛟剪持ってるんだし、それ要らないじゃないですか。ください」

「まあ、この宝貝は上げられないけど、それを含めて正大が宝貝を持つのはまだ早いと思うんだ」

「何故ですか?」

「まあ、これは僕の見立てなのだけど、宝貝はそれぞれ必要としているエネルギーが異なると思っている」

 

そこから兄様の講義が始まった。

例えば、ある宝貝を使うのにエネルギーAが必要だとして、その宝貝の使い手は発動する為にエネルギーAが必要なので使い続けるとエネルギーAが安定して作れるようになる。

だがその影響か、他のエネルギーを作るのが苦手になり、別の宝貝を使おうとしても発動にエネルギーBを必要とする為、エネルギーAでは威力が落ちる・消耗が激しい・もしくは発動すらしない現象が発生する。

それにエネルギーが固定されてしまうと、長年修行して覚えた術ならともかく、新たな術を覚える事が限りなく出来なくなる可能性があるそうだ。

それに覚えている術でも、しっかり習熟訓練を続けないと使えなくなる可能性もあるらしい。

なので、自分に合った宝貝選びをしないと、後々後悔するのは自分だと諭された。

一度選ぶと、その宝貝を強化するか同系統の宝貝を扱うか、自身のエネルギーに合わせて自作するか、もしくは威力や性能を抑えた低燃費な宝貝にするの事になり、他の宝貝に乗り換えるのは並大抵の努力では難しくなるそうだ。

しかしながら、天才とはいるもので複数の宝貝を扱える存在もいるらしい。

そういった者は、複数のエネルギーを使い分けられる技巧派か、エネルギーの種類とか関係なく大量のエネルギーを保有している強者などが良い例だと。

中には、一時的に自分の体を組み替えて発生させるエネルギーを変える者も存在するかもしれないとも。

なので、今は自身の成長に専念したり術を覚えられるのならそれを頑張った方が大変だが、能力に幅が出るかもと推測していた。

もしかしたらだが術の修行に励んだ者は技巧派になりやすい傾向にあり、2~3種類は使い分けられる可能性が少なからずあるかもと。

でも、宝貝があれば手っ取り早く奇跡の力が扱えるので、一概にどちらが良いかは分からないそうだ。

 

うん。どちらが良いか分からないのは同意だね。

だって術とか、苦労の割に性能がゴミなもの多いから。

張紹さんには悪いけど、本当に廃れる未来しか見えないよ。

しかし、改めて言われると悩むね。

色々と出来るようになるか、手っ取り早く力を得るか。

まあ、今は早急に力が必要な状況でもないので、非常に残念だが宝貝は保留にしよう。

もっと素敵な宝貝に出会った時に使えませんじゃあ悲し過ぎるからね。

 

まあ、縛竜索をあげたくないが為のでっち上げの可能性もなくもないと怪しんではいるが、一応納得できる内容だったので、これ以上宝貝を要求する事もなく大人しく金鰲島に帰ることにした。

 

そして、今回の目的は、俺の諦め癖を自覚させる事だったのか、しばらくは金鰲島で同期と基礎を学ぶ事になった。

でも、基礎を終えたら兄様の事だから本気で覚醒の連続を狙った修行を組んでいる可能性もあるだけに身震いを抑えられない。

 

そんな日々を過ごすと、ある日姉様達が上機嫌でやってきた。

どうやら、長年開発していた宝貝が完成したらしい。

名前はビーナス愛の泉のあふるる壺と言う、強力な吸引力のあるポンプである。

これで水汲みや水やりが楽になると言うビーナス姉様の言葉にマジでお世話になりましたと頭を下げたくなる。

というかそんな宝貝を開発させてしまうくらい苦労かけていたのかと、若干の心苦しさを感じた。

でも、その宝貝は性能がおかしい。

吸い込めるものは、風だろうが炎だろうが雷だろうがビームだろうが何でも吸い込めて、しかも、その吸い込んだ状態のまま放出できると言う強力な兵器である。

 

なにそれ、俺も宝貝が欲しい。

我慢を決めたのに、そんな物を見せつけないで欲しいと、姉様の宝貝を褒めながら心から思った。

 




土日とも休みが無かったので遅れました。
そして月曜日も休みじゃない。

しかしながら、アニメは総集編というか楊戩編というか、楊戩が主役だよね。
そう思った。

あとは、新連載忘れてて買い逃す所だったヤングジャンプの封神演義読みました。
この二次に反映するかは難しい所です。
アフターまで書くならワンダースワンに有った黄天祥が主役だったゲームもあるので悩み所ですね(そこまで書けるか疑問だけど)
しかも、肝心のワンダースワンが壊れているし細かい部分を全然覚えていないという。
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