あの怒り具合だと、すぐにでも追いかけてくると思ったのだが、そんな気配もなくコインロッカーの前に無事に到着。
しかし、いつまでもノンビリとしていられないので、兄様の宝貝を急いで回収しなければ。
今回は、属性的にも相性が悪いし兄様も、何やらピンチみたいですし、緊急事態なのでウッカリ宝貝を使ってしまう事は不可抗力なのですよ。
前々から使ってみたかったから、丁度良いとか全然思ってませんから。
いえ、ほんの少しだけ、本当に少しだけど、楽しみにしてる自分がいますとも。
ほら、強力な兵器を使って無双するとか憧れたりとかしません?
まあ、そんな事はその辺に置くとしてコインロッカーを開きたいんだけど、鍵が無いんだ。
もう一回言うと、鍵が無いんだ。
重要な事だから繰り返したけど、鍵は兄様が持ってるんだ。
試しに、壊せないか殴ってみたけど痛かったし無理だった。
目の前にお宝があるのに手に入らないって状況って、今日はそんなのばかりだよ。
さっきも御馳走があるのに食べられなくてお預け状態だったし、苦労して狩りに出かけたら成果ゼロだし、災難にも程がるよ。
まあ、料理に関しては、俺の分は兄様にタッパーに詰めて貰ったから、後で食べられるけど……まって、そのタッパー兄様ごと燃えてるよね?
白礼だったかな?
マジで許さん。
このまま宝貝は諦めて逃げようかと思ったけど、ここは意地でも一矢報いる事にした。
俺が持っている最後の呪符をここで使う。
確実に使えるアイテムだから、もしもの為に温存しておきたかったけど、これは使うしかないね。
俺は、恐らく鍵が掛かっている部分に呪符を貼り付けた。
破壊の範囲は最小に威力は高めで、いや最大にしようか。
中途半端に中身を気遣って使った呪符を無駄にするとか泣けてきますし、もし中身が逝っちゃっても「おのれ白礼め。なんて仕打ちを!」って言って誤魔化そう。
よし、そう考えると全力で最大威力にプッシュだ。
失敗した時のことは、失敗してから考えれば良いのだから。
そう決心すると早くも、札が破壊音を立てて弾けた。
範囲を小さくしていただけに、上手く鍵部分だけが破壊できたみたいで一安心。
いつもなら楽観的に決行したら失敗率が高く、今回も破壊できないか中身諸共のどちらかだと思ってけど成功して本当に良かった。
特に後者だった場合、冷静に考えてみたらシャレにならなかったよね。
まあ、成功したからなにも問題ないはず。
ではでは、宝貝とご対面。
俺は、扉を開くと同時に炎に包まれた。
ちくしょう。
うかつだった。
変な模様は相変わらず俺をロックオンしていたけど、まさかコインロッカーの扉を開いただけでカウントが貯まるとは思わなかった。
コインロッカーは、あくまでも武装解除が目的だと思っていたけど、もしかして一部屋で一つカウントが貯まる仕組みがあるのかもしれない。
しかし、兄様からバリアの術を習っていて良かった。
これが無ければ大ダメージでしたよ。
でも、これ長く持ちそうに無い。
カウント一でこの火力だと、カウント六だとさすがの兄様もバリア張るのに集中する為に身動きできないよね。
やはり、この状況を打破する為には、宝貝に頼るしかないか。
この火力でも二つの宝貝は無事だったので、俺は金蛟剪を手に取った。
うん。失敗でした。
力が抜ける。
バリアが解けて、本格的に炎に包まれた俺は悶え転がった。
それでも、模様は俺を追いかけて執拗に焼きを入れてくる。
金蛟剪を手放した事で、少し力が戻った俺は再度バリアを張り直して、なんとか持ち直した。
なぜ縛竜索の方にしなかったのかと凄く後悔するが、転がった為にその縛竜索から遠ざかってしまい手が届かない距離に。
あれ?これもしかして詰んだ?
そんな事が少し頭によぎったが、バリアで耐えるしかないと気合を入れ直す。
これは、俺とこの炎の持久戦になると、そう思っていたら突然炎が消えた。
勿論困惑する俺だが、そんな余裕はすぐになくなった。
天井が崩れて、そのガレキが圧倒的な質量でもって押しつぶそうと迫ってるからだ。
おのれ白礼め。
いくら俺に怒ってるからって、自分の住処であるこの建物ごと俺を潰そうとするのはどうかと思います。
side???
一方その頃。
白礼は、領域の一部を破壊された事により激高していた。
「「許さんぞ。すぐに追いかけて燃やし尽くしてくれる」」
しかし、趙正大を追いかけようとしたが動きが止まってしまう。
「待ちたまえ」
急に声をかけられたからだ。
自慢の炎は、相変わらずの火力を放っており、これに包まれているなら無事で済むはずが無い。
しかし、ある事に思い当たる。
対象が消滅したのなら、この炎は収まってもおかしくないはず。
なのに、炎はその力を変える事なく燃え続けている。
つまり、趙公明はまだ生きているのだ。
「この僕を放って、どこに行くつもりだい?」
今度は、はっきりと炎の中から声が聞こえた。
噂に名高い趙公明なら術から逃れてこの部屋に潜んでいる可能性も思い浮かべたが、とんだ杞憂である。
彼は確かに生きているかもしれないが、今はカウント六の歴代から見ても最大火力に捕らわれて身動きが出来ていないと再確認できたからだ。
「「どこへ行くもなにも、あの無礼者を燃やしに行くだけですよ。生きているのには驚きましたが、さすがにこの火力では身動きも取れない様子。ならばアナタの相手は後でゆっくりとさせて貰いますよ」」
領域によって生み出される炎の威力に絶対の自信があり、その言葉には余裕が感じられた。
しかし、彼らは噂でしか知らない趙公明を見くびり過ぎていたかもしれない。
「さっき正大が領域を爆破しただろう?その影響も有って術の精度が甘くなっているよ。これなら、あと少しエネルギーが落ちれば破ることなど容易い」
「「何を言い出すかと思えば、私達の自慢の術を破るだと?それに、地脈を用いているのだ簡単にエネルギーが落ちる訳がない」」
「地脈のエネルギーと言えど無限ではないよ。この火力を出すのにどれだけエネルギーを使っているのかな?このまま耐えていても破れそうだが、もし別の場所でこの術が発動したらどうかな?」
「「ありえない。ヤツは、こちらの術にかからないように警戒もしていたし、あの火力を見てわざわざ術にかかる愚か者はいないだろう。早急にヤツを始末したら次はアナタの番です。そこで指をくわえて待っているがいい」」
「正大は絶対に何かやらかしてくれる事を僕は信じているよ」
「「戯言を……」」
その言葉を発するかしないかの内に、別の場所で術が発動された。
白礼は自身の領域である為に、その事を察知したのだ。
そして、術を破るなどありえないと目の前の炎に注視した。
しかし、目の前の炎は変わる事なく燃え続け白礼の心に安堵の思いが満ちる。
「「やはり、ただの戯言。強がりでしたか」」
その言葉を待っていたかのように、炎がひときわ大きく揺らいでガラスが割れるように散っていく。
「ほらね。正大なら、必ず何かやらかすって言っただろう」
その言い方は自慢げだが、内容的には趙正大は抗議しても良い案件である。
敗訴は確実だが。
「「しかし、先ほどのアナタの弟を見るに、アナタも植物系のはず。頼りの武装や宝貝もここまで来た事を見るに置いてきたのでしょう?ならば炎系である私達に何が出来る?」」
そんな白礼の強がりを趙公明は鼻で笑う。
「舐めないでもらいたい。この僕が炎系の相手と戦った事がないとでも?そうだ。君達の術には、なかなか驚かされたからね。少しばかり本気を見せてあげよう」
そう言った趙公明の背後から、太い根のような枝のような物が出てきてうごめき出した。
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