趙公明がアンニュイな訳がない   作:シアス

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もっと光を

時は、二千XXX年。

世界は(じょか)の炎に包まれた。

これにより人類が築き上げた文明は抵抗すら許されず崩壊する。

炎が消えた後に残されたのは、荒れた大地と干上がった海。

空は、舞い上がった埃や水蒸気により厚い雲に覆われ、世はまさに暗黒の時代。

これで長きに渡る人類の歴史は終わりを迎えたのだろうか?

いや、人は死に絶える事はなく新たな時代を築き生き残ろうと足掻き続けていた。

 

そして、ここは暗黒の時代でも眩しい光が灯る場所。

文明の残滓がわずかに見える人類最後の楽園。

楽園?

そう、一部の力有る者達には楽園だが、その他大勢の弱者には苦痛が伴う生きているだけの場所。

ある者は、素手で荒地を耕し。

ある者は、重い石を運び。

ある者は、謎の歯車を回して発電をする。

まさに奴隷のように重労働を課せられ続けた。

 

そんな中、今日もある建物から野太い怒声と、革製の何かが地面を叩く炸裂音が響く。

 

「社長は、暗いのがお嫌いだ。さあ、今日も心を込めて作るのだ!」

 

あきらかに強面で筋肉質の巨体が鞭を地面に叩きつけて、その威圧感で作業を促す。

逆らえば、どのような目に合うか明白なだけに、俺は黙々と作業を続けた。

そして、就活(強制徴用)の時に肉体労働が嫌だったから、電球が作れると言った自分を呪う。

あ、やっぱ肉体労働の方が大変そうだから、マシな方かも?

そして、工場長は、今日も同じ事を繰り返し言っている。

たまに社長が来て幽霊みたいな声で、『暗い。暗い。もっと光を』って呟かれるよりは活が入る分だけマシだけど、なんかこうもっとバリエーションが欲しいと言うか。

そう、できたら美人さんにお願いしたい所だけど、返事の代わりに罵声と鞭が来そうなので止めておきます。

そんなこんなで現実逃避をしながら作業を続けている俺を絶望させる情報が入ってきた。

 

「朗報だ。契約を増やせば電球が沸いて出てくると思っている上層役員の糞野郎どもが、大口の契約受注を増やしやがった。ノルマがさらに追加されたぞ。ワシの帰りがまた遅くなる。さあ、めげずに心を込めて作るのだ!」

 

上層役員の糞野郎どもやめてー。

現場は、監視役の工場長と俺の二人だけなのですよ。

工場長は戦力外なので、実質一人だけで電球作ってるんだ。

追加の人員マジでお願いします。

そんなこんなで、頭を悩まされていると目眩と頭痛が襲ってきて、俺は地べたに倒れこむ。

 

 

「正大。おい。正大。しっかりしろ」

 

誰かの呼びかけにより、目が覚める。

頭がはっきりとしないが、先ほどの記憶を思い出し小声で呟く。

 

「そうだ。ノルマが追加されたんだった。頑張らないと」

「おい。正大よ。本当にしっかりしろ、ノルマはそれが終われば最後のはずだぞ?」

 

その声に視線を向けると、居たのは工場長ではなく張紹さんだった。

あれ?さっきのは何だったんだ?

 

「いきなりダウンしたので驚いたぞ。やはり、見栄をはったのか制作時間を少なく申請したのは失敗だったと思うのだが?」

 

さっきのは夢か?

それとも俺の記憶か?

しかし、俺はもっと平和な時代を生きていた気がするのだが、さっきの夢で見た場面以外の記憶も次から次へと溢れてくる事から、俺の記憶だと実感がわいてきた。

とりあえず、前の俺の記憶がデスマーチによって蘇ったって事で良いのかな?

しかし、前の俺はなんて職場に就職してたのだ。

まさに、無休・無給・無救の三Kな職場だったぞ。

でも、過去の事はまあ良い。

それよりも電球だ。

宝貝よりも簡単に作れて、しかも明るい。

良い情報が手に入ったものだと、さっそく作り方を思い出そうと頭をひねる。

うん。電球の作り方、まったく出てきません。

出てくるのは、過去のトラウマばかり。

知ってたけど、前の俺の情報まったく役に立たねえ!

微妙に色々と知ってるけど、肝心の作り方や概要は、まったく覚えてない。

今回の電球に関しては、トラウマのせいで意図的に封印されてる気がしないでもないけど、封印するなら電球の知識よりもトラウマの方だろうが!

危うく叫びそうな俺を気遣って張紹さんが声をかけてくる。

 

「まあ、明日の期限には間に合ったのだ。今日はもう休むべきだな。部屋まで帰れそうか?」

「ん?ああ、大丈夫ですよ。色々とありがとうございます」

「何。構わんさ。恐らく通天教主様が私に手伝うように言ったのは、次の準備を整えるだめだろうからな」

「え?何か意図が有ったんですか?」

「まあ、どうなるかは分からんが、明日に色々と決まるはずだ。ノルマも無事に達成できたのだ、そう悪い事でもなかろう」

「そうですね。これで今日は、久しぶりにぐっすりできそうですよ」

「気絶するほど頑張ったのだ。よく休むのだぞ?」

「分かってますよ。そちらの方こそ、お疲れ様です。良い眠りを」

 

そう言って、張紹さんと別れて部屋へと戻った。

少しばかり気になる事も有ったが、俺は疲れていたのかすぐに眠りに落ちた。

勿論、記憶の整理と言う過去の悪夢にうなされたのは言うまでもない。

そして、俺はタダ働きにならない職場環境を作る事を決心した。

具体的に何から手を出すかは、後でゆっくりと考えよう。

 

気がつくと朝だった。

スッキリとした目覚めとは言い難いが、たっぷりと睡眠が取れたのでそこそこ調子の良い俺は、ノルマから解放された為か軽い足取りで会議室へと向かった。

そして、今着いたのか扉の前に居た兄様に声をかける。

 

「兄様。おはようございます」

「ああ、正大か。おはよう。無事にノルマは達成できたんだって?」

「ええ、なんとか昨日終える事ができました。張紹さんの手伝いのおかげですね。見栄で少ない時間を言った事を後悔しましたよ」

「はは。それは災難だったね。とりあえず、完成品が十もあれば、次はそうそう急ぐこともないと思うよ。今回は、金鰲島の発展の為に早く研究を進めたいから、通天教主様も少し性急になり過ぎてた部分もあるからね」

「そうだと良いのですが」

「まあ、立ち話もなんだから、先に中で待っていようじゃないか」

 

そう言って、俺達は会議室の中に入って、他の者達が来るのを待った。

談笑していたせいか、少し待っただけで、次々と部屋に人が訪れる。

張紹さん、姚斌さん、金光さん、白礼、そして何人かの顔なじみの無い仙人達。

最後に通天教主様が来た所で、皆立ち上がり頭を下げる。

通天教主様は、議長席と言うか専用の場所に座ると声を出した。

 

「皆の者。楽にするが良い」

 

その言葉に合わせて皆頭を上げる。

 

「では、始めるとするか。今回は、人事および部門の統廃合の発表を行う」

 

統廃合と言う言葉に若干嫌な予感がしたが、今は何も言う時ではない。

 

「まずは、そこの趙正大が、ある宝貝を完成させて、それの量産も無事に達成した。その功績をもって仙人と認める事にしよう。これからも自身の鍛錬と金鰲島の発展に励むように」

 

通天教主様が軽く拍手をすると、皆祝うかのように拍手を続けた。

なんだか、やっと一人前になれたようで少し嬉しい。

 

「次の話に移ろう、今回の会議で成果が芳しくない術部門を廃止する事が決まった」

 

とても寝耳に水な発表だ。

これは、一波乱ありそうで、頭を抱えたくなった。

 




外伝もそろそろ終わりですね。
まさか、レインボードラゴンのさらに上があるとは思ってもみませんでした。
あれを一匹に纏めたらどれほどの威力があるのか興味あります。
個人的には、とても満足な演出でした。
あとは、雷震子ドンマイと言っておきましょう。
次回の最終回楽しみです。
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