趙公明がアンニュイな訳がない   作:シアス

27 / 37
俺がトドメを刺したと思いたくない

突然の術部門の廃止に、会議室の空気が騒然となる。

このタイミングで、この発表って、もしかして俺が術部門にトドメを刺しちゃった感じですか?

いや、そんな事は無いはず。

これは、きっと偶然だし、張紹さん達は前から危機感を持ってたみたいだから、その廃止がたまたま今日になっただけだな、きっと、たぶん。

うん。俺は悪くないと思いたい。

 

「静まるように。術部門も色々と頑張っていたようだが、趙正大が作った宝貝により、我が金鰲島は術の開発・教育に割いていたリソースを宝貝開発に振り分ける事を決定した」

 

あ、これは俺がトドメを刺した事が確定しました。

後で張紹さんには謝っておこう。

まあ、でも、ここ百年での成果が俺一人だったなら仕方ないよね?

少しでも罪悪感を軽くする為に他にも言い訳を探す事にしよう。

 

「しかし、今回作られた無属性の宝貝が術の触媒を開発する過程で作られた事を踏まえて、無属性の宝貝の研究・開発および我々が新たに作り上げた宝貝がどうしてこのような効果を得たのかの調査などを重点におく第二宝貝部門を設立する」

 

おお?

新たな部門立ち上げですか?

 

「その部門を張紹に任せようと思う。やってくれるな?」

「拝命いたします」

 

ふう。順当に張紹さんに決まって良かった。

これで俺の名前とか出てきたら気まずいって所の話じゃないからね。

あとは、俺の罪悪感がかなり減ったのは嬉しいポイントです。

いやー、まさに万事塞翁が馬ですな。

 

「それと、術部門は廃止されたが、そこで研究された物を埋もれさせるのは惜しい。そこで、趙公明よ。以前から要請が有った図書館に代わり図書室の建設を許可する。くれぐれも自身の描いた漫画で埋め尽くす事はないように」

「心得ました。埋め尽くすことは諦めましょう」

「うむ」

 

兄様ならあり得るだけに通天教主様は、さっそく釘を刺してきましたよ。

でも、あの言い方だと埋め尽くさなければ良いと思ってそうな気もしないでもない。

まあ、憶測だけで物を言うのはトラブルの元なので黙っていよう。

 

「これで、術を習得したい者が自習できる環境は充分だと思うが、肝心の術の習得に関する書物がない。張紹には悪いが、新たな部門の初仕事は術に関する書を編纂する作業をして貰う」

「了解しました」

「そうだ。うちの正大の宝貝作りに協力して大変だったと思うから、その編纂は正大にも協力させよう」

「そうだな。趙正大よ。張紹に協力して書の編纂を行うように」

「了解しました」

 

まあ、あの大変な作業を協力して貰ったから手伝うのはやぶさかではない。

それに今回は期限も無いから、そこまでデスマーチしなくて済みそうで良かった。

 

「任せたぞ。あとは金鰲島の仙道から可能な限り術に関する聞き取りも行って貰おう」

「それなら、実際に習得可能な物があるなら習得して貰って、その成功の経験談を記した物があれば後輩達の役に立ちそうじゃないかな?図書も増えて本棚の見栄えも良くなりそうだし」

「そうだな。他にも、書に編纂して欲しい物が出来たら追って連絡する」

 

待って。

デスマーチでは無いけど、想像したら恐ろしい仕事量なのですが?

もっと増援をお願いします。

そう思って回りの仙人に視線を送ると、目を逸らされた。

そして、張紹さんと目が合うと、その表情は諦めろと訴えてる。

 

「今回はここまでだ。では、解散」

 

通天教主様のその言葉に、他の仙人達は次々と会議室を後にして行った。

まあ、その中に親しい仙人は居なかったので協力を頼めるかは疑問だったが、少し薄情じゃないかね?

 

「張紹よ。新たな部門の長に就任おめでとう。術部門が廃止なのは悲しいが、これも時代の流れか」

「ありがとう。今までが暇だった分頑張ることにしよう。むしろ忙しくて感傷に浸る暇もないのは良さそうだ」

「そうか。お互いに頑張ろうじゃないか」

 

姚斌さんが、そう労うと次に金光さんが祝辞を述べた。

 

「私からもおめでとうと言っておこう。正直に言うと宝貝部門は手が足りてなかったので、作業を分担する部門が出来た事を喜んでいる。これからは、共に宝貝技術発展に力を尽くしていこうじゃないか」

「ありがとう。そちら側が大変だったのは知っている。過労気味じゃないかと心配していたのだが、これで少しは負担が減らせそうだな」

 

そんな感じで旧知の仲で歓談している。

俺は良い友情だと思いながら、自身の友達の数を指折り数えてみて、その少なさに絶望した。

これからは、もう少しだけコミュを広げる努力をせねばと心に誓った。

決して、これから待ち受けている仕事から現実逃避する為ではないと言っておこう。

 

「そうだ。正大。これを渡しておこう」

 

現実逃避をしようとしている俺に兄様は、複数枚の紙を渡してきた。

 

「僕が考えた術の習得方法を記しておいたよ。本当は仙人になる前に試そうと思っていたのだけど、今回の件が有るおかげでお蔵入りしなくて済みそうだ」

 

仙人になれば兄様からの修行は卒業して、自主的に出来ると思っていたのに、この紙に書いてある分は続くと思うと憂鬱になった。

ぱっと見た感じ危険な目に合うことによって新たな力に目覚める系が多いのは気のせいだと思いたい。

 

「僕もいくつか試してみたのだけど、この程度じゃあ危機を感じなくてね。正大ならいくつか習得できると信じているよ」

 

え?兄様は、これくらい余裕なんですか?

そして、信じるとか言ってますけど、言葉の裏を取るとギリギリ命が危ないって受け取れるのですが?

とりあえず、この紙に書いて有る事は後回しにすると決める。

この紙を見た後だから出て来る不安なのだけど、これから他の仙道から聞き取る多数の習得方法が、あまり危険ではありませんようにと心から願った。

 




【趙正大が作った宝貝に関して伝わってるか微妙だから補足】
・作って欲しかった物
術が使いやすくなる気がする持ってるだけで効果がある魔法使いの杖みたいな補助具。

・完成した物
使う、もしくは持ってるだけで術が自動で発動する。
そして仙人が直接使わなくても動力炉のエネルギーで効果が発動する。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。