眠れない夜から、さらに一日過ぎました。
あれから、まだ誰も来ません。
そう。兄様も、まだ見ぬ御姉様も、復讐のお猿さん達はおろか、ある程度の知恵のある者や、果ては野生の獣も含めて誰も来ません。
平和だなー。
って、な訳あるかー!
絶対に嵐の前の静けさってヤツですよ。
フラグが立ちそうだったから、一日は我慢してたけどもう無理。
こんな生殺しみたいな放置プレイ耐えられません。
誰か来てー。
やっぱり誰も来ない。
フラグなんて無かったんだ。
一通り慌てて叫んだ後に現実逃避して落ち着こうとしたが、結局また叫んだ。
肉体的には疲れては無いけど、精神的に疲れてきたのか逆に落ち着いてきた。
ここは冷静に今の俺に何が出来るかを考えよう。
まずは、この危険地帯からの移動。
無理です。しっかり大地に根をはっている。
植物だし、仕方ないね。
いざという時に戦う。
また無理です。たぶん俺まだ妖精ですらなく、ただの大きいだけの花かも。
だって、自分の意思で何かを動かせる気が全然しないからね。
光に反応して光合成して、根が地から何かを吸い上げてる感じはあるけど、これは呼吸するみたいな反応な気がするし。
妖怪ライフどころか植物ライフです。
やっぱり騙された?
ふっ、これはもう諦めて不貞寝案件ですよ。
もうなるようになれの精神で果報は寝て待てだね。
はい。これまた無理です。全然眠れない。草木が眠ると言われる丑三つ時ですら眠れません。
植物のせいなのか、この花の特徴なのか意識が保たれたままです。
睡眠って動物の特権だったのね。
もし、次があるなら眠れる存在になりたい。
おっと、思考しかする事がないからと現実逃避してる場合じゃないな。
何かが近づいてくる気配を感じる。
とりあえず、お猿さんだとヤバいので黙って普通の植物のフリをせねば。
兄様かな?
まだ見ぬ御姉様かな?
お猿さん以外ならなんでも良いです。
えーと、一、二、三、四、五。
うん。五匹のお猿さんでした。
軽く言いましたが、黒々とした毛玉におおわれてゴリラってくらいの筋肉ダルマです。
どっからどう見ても化物ですね。ありがとうございました。
やっぱりフラグってあるのね。
しかし、不用意にこちらに近寄らず、茂みからこちらを伺ってるね。
やっぱり警戒してるのかな?
「隊長。やはり噂通り若の群れは全滅みたいですね」
「そのようだな。この荒れ果てた惨状を見るにとんでもない化物の可能性がある。ボスが情報を持ち帰ることを優先させる訳だ。無暗に突っ込めば若の二の舞もありうる」
あら?ボス猿の親父さんは意外と冷静で賢い?
「しかし誰もいませんね。この地の龍脈を狙った者なら、何者かが陣取っている可能性が高いので隠密で来ましたが、ここまで誰もいないとなると肩透かしですよ」
「ああ、敵の情報を知る為に来たのだが敵の狙いは龍脈でなく、ただの殺戮の可能性も出てきたな。この分だと敵の正体がつかめぬわ」
いえ、めちゃめちゃ、ここの龍脈狙いです。
そして正体は、おそらく植物系の妖怪で、宝貝とか言うとんでも兵器を持っている自称偉い仙人だよ。
「ひとまず、お前は先に帰って、この惨状をボスに伝えてこい。残りは、儂と一緒にあの不気味な花に危険が無いか調べた後に持ち帰るぞ。おそらく敵が残して行った物だろう。ボスに見せれば何か分かるかもしれん」
「あの花はうかつに近寄ったら食べられそうなくらい不気味で巨大ですからね。我々より背が高い花なんて初めて見ましたよ。では、私はお言葉に甘えて先に行かせてもらいます。御武運を」
「おいおい。嫌なことを言うでない。他の者達が怖気づいてしまうわ。しかし、この惨状をあの花が引き起こした可能性もある訳か。よしお前、あの花を引き抜いてこい」
「え~、俺っすか?」
犯人は俺じゃねーよ!
嫌、やめてー。
来ないで、引っこ抜かないで!
指名された猿が渋々こちらに向かって来る。
ヤバい。なんでも良いから助けて!
そんな俺の心の叫びに反応してか、地が割れ伸びてきた根が接近してきた猿を絡めとり地中に引きずり込んだ。
なんか疲れたけど助かった。
俺の眠っていた力が奇跡を呼んだのか?
まあ、本気で消耗したので、もう一回同じことしろって言われても無理な気がします。
連続で来られたら詰む!
「た、隊長。助けてください。まだ死にたくないっす」
「何?あの巨大な花を警戒させて下からだと?全員で向かわなくて助かったわ。貴様がもたらした情報無駄にはしない。仇は取ってやるから安心しろ」
「まだ死んでないっすよー。あ、でも息が苦しくなってきたかも」
地中から部下猿の悲痛な抗議が響くが、隊長はそれを無視して近くの木に駆け寄りそれを引き抜いた。
「近寄るのが危険なら遠距離からへし折るのみ。こいつを喰らえ!」
え?ちょっとタイム。
そんなのぶつけられたらマジで折れる。
総員退避って無理だ。
うん。一回落ち着こう。
そして話し合おう。
話せば分かるって、だからその投げようとしてる物を一旦おろそうか?
俺の叫びを無視して、隊長が木を振りかぶろうとした、まさにその時。
「ちょっとお待ちなさって」
凛とした声が静止を呼び掛ける。
その声の力強さからか、隊長の動きが止まる。
この介入者が何者かを判断する為か、それとも介入者の姿に戸惑ったのかは俺には判断できなかった。
「
髪型は、前髪のサイドをお嬢様ドリルしに、後ろは腰まで届く美しい長髪が風になびく。
容姿は、まさに清楚でありその整った顔立ちが見る者を魅了する。
なおスタイルは慎ましい。
「私は次女
髪型は、大きなリボンで束ねたポニーテール。
身長が先ほど雲霄と名乗る女性の腰ぐらいまでしかなく、愛らしい笑顔はまさに美少女。
「そしてこの娘が三女
無表情の三女に代わり、雲霄と名乗る女性が名前を紹介する。
髪型は、前髪を切りそろえ後ろは肩まで届くミディアムで、その終わりの両側に軽くパーマを当てたのかウェイブがかかっている。
しかし、特筆すべき所は、雲霄をはるかに上回る身長とダイナマイトなボディにあると言える。
「三人揃ってセクシータレント集団・雲霄三姉妹!」
服装は花や植物の蔦を使い、知識の中にあるアルラウネやドリアードを想像させるその半妖態の容姿で植物系だと分かる。
おそらく、趙公明の妹達。俺の御姉様達。
うん。正直、趙公明の話に乗って騙されたとか千年植物とか無いわーって思ってたけど、御姉様達は期待以上の美人だった。
思わずヨッシャー!と叫んだ俺は悪くない。
残された猿達もその色香に戸惑っているのか、呆けているので同類であると判断する。
「さあ、仙人界のプリンセス雲霄三姉妹がお相手よ」
それぞれが、それぞれのセクシーポーズを披露すれば、隊長を除く二人が頭に血が上り過ぎたのかダウンする。
「あら?セクシーポーズだけでダメージを?」
「私たちって罪な女よねぇ」
しかし、なんとか正気を保った隊長が問いかける。
「貴様達が、若の群れを壊滅においやったのか?」
「私達は、先ほどここに着いたばかりですわ。そんな事身に覚えがありません」
「なら我々が戦う理由はあるまい。儂らは、ここにいた若の群れを壊滅させた存在を調べにきただけなのだからね」
「理由ならありますわ。アナタは、そこにいる私達の新しい弟に危害を加えようとしていではありませんか」
隊長は、やはりこいつが犯人かといった視線で俺を睨んだ。
だから、犯人は俺じゃない。俺は無罪だ。冤罪だ。
「大人しく帰りなさい。私たちは心優しき乙女!そうすれば許してさしあげてもよろしくてよ」
「ふっ、儂も舐められたものだな。この惨状を引き起こした化物ならいざ知らず貴様らには儂のちか」
「雲霄ビーム!」
隊長の頬を熱線がかすり、その背後が爆散した。
そこには大きなクレーターが出来上がり、今の熱線が直撃していたらどうなっていたかを物語っている。
雲霄御姉様こわい。
「らを……引き上げさせて頂きますです」
隊長もその威力に驚異を感じたのか、大人しく帰るむねを伝え倒れている同胞を抱え逃げ出した。
うん。賢明だと思う。
「たいちょー、おいてかないでー」
あ、足元から声が聞こえる。
これどうやって解放しようか悩んでいると雲霄御姉様が地面に拳をめり込ませ、埋まっていた猿を引き上げた。
うん。雲霄御姉様こわい。
「さあ、あなたもお帰り」
優しく声をかけたのだが、状況が状況なので、猿はヒェーと声を上げながら逃げ出した。
うん。気持ちは分かる。
でも、これにこりたらボス猿の親父に、ここは危険だから来ないように伝えて欲しい。
主に俺の安全の為に。
「さてと、正大。助けるのが遅くなってゴメンなさいね。お兄様が少しばかりピンチになるまで様子を見るようにとおっしゃっていたの。そうすれば、生存本能だとかで動けるようになるだろうって」
タイミングよく助けが来たと思ったらそういう訳ですか。
趙公明の野郎覚えてろよ。
だが、その思惑通り少し体の動かし方が分かった気がする。
だけど、これはちょっと消耗が激しいような?
おそらく龍脈で貯めた力を使って動かしているのかもしれない。
消耗した分を地面から吸い上げているのが分かる。
あれ?もしかして、消耗したら妖怪になるのが遅れる?
これはピンチの時以外は使えないな。
しかし、御姉様助かりました。
ありがとうございます。
「あら?お兄様には、おしゃべりで愉快な方だと聞いていたのですが、とても静かな方ですわね。もしかして照れてますの?」
あれ?伝わってない?
そういえば、あの夜の来訪者の時も、さっきの猿達も俺の呼びかけを無視していると思っていたのだけど、もしかして聞こえてない?
そして俺の声は御姉様達にも聞こえていない?
それが事実であるかのように、御姉様達に何度呼びかけても反応が返ってくる事はなかった。
おそらく人型になれるまで、この美しい御姉様達とコミュニケーションを取ることが出来ないと悟った俺は、静かに絶望したのだった。
【独断と偏見と思い込みによるテキトーな紹介コーナー】
・雲霄三姉妹とは
金鰲島が誇るセクシータレント集団である。
趙公明の妹達であり、美人三姉妹だと有名。
その上、規格外の強さを誇り、伊達で趙公明の妹を名乗っていないのは明白である。
この二次では、理不尽な世の中を過ごすオリ主の心の支えとなっている。
読みは、長女がウンショウ。
次女が、ケイショウ。
三女が、ヘキショウ。