会議室は異様な静けさに包まれていた。
そして、使者は頭を下げ続けている。
星が落ちてくるから協力して欲しいと言われても困るし、他の面々はどんな事態なのかイマイチピンと来ていないようだ。
そんな静寂を破る声がした。
「使者殿。顔を上げるが良い。方針は決まっている。今回は緊急事態ゆえに我の独断で決めさせてもらった。元始には承諾したと伝えてくれ」
その言葉に使者は顔を上げる。
その表情は、どこか安堵しているようだ。
「ありがとうございます。では、お願いしたい事を詳しく説明させて頂きます」
「それには及ばない。先ほど読んだ元始からの手紙に詳しく書かれていたし、その時にはもう協力する事は決めていた。ここから先は我が説明しよう」
使者は、せっかく徹夜でプレゼンの準備したのに『おたくの社長から来たメールで、すでに話が通ってるからOKだよ』と言われ、あの努力と準備は何だったのかとむなしさを感じている社員みたいな顔をしていた。
「一応は、使者殿に仕事はさせてくれと書かれていたので、これで問題もないだろう」
いや、通天教主様そんな余計な情報を言って死体蹴りをしないでください。
ほら、使者が俺って本当に必要なのか存在意義に疑問を抱いだいて目が死んだ魚のようになっている。
俺なら、仕事が上手く行ったし、負担も減ってラッキーと思うけど使者は真面目系なのかもしれない。
「これから我々がどのように動くのか会議を行う。使者殿は、この会議で得た情報を元始に伝えて欲しい。協力はするが、おそらく連携は無理であろうから、しっかりと聞いて欲しい」
使者の目に光が戻ってきた。
そんなに仕事が欲しいものなのかね?
俺には、ちょっと理解出来ないかも。
「まずは、この件に関して崑崙に協力するのは決定である」
まあ、通天教主様がお決めになられた事なら反対する者はいないだろう。
この場にいる者達から反対の意思を感じられないので、協力に異議を申し立てる者もおらず静かな肯定が会議室を包む。
「次に現在、どのような状況なのかイマイチ把握できておらぬ者もいるので簡潔に説明しよう。星が降ると巨大な宝貝合金で頭をカチ割られるのと同じくらいのダメージがある」
それスケールが下がっているけど、控えめに言って死んでしまいます。
しかし、身近な例えが出て理解できたのか焦りと恐怖で会議室が騒然とし始める。
「静まるように。話を続ける。元始の手紙によると、一年ほど前に趣味の天文をしていたら、偶然怪しい動きをする星が現れたそうだ。そして、それと同時期にこの大陸の複数か所から巨大な術が行使されている反応が出ていたらしい。それは、我々も把握していたが反応があるが無害だった為に放置および優先順位の低い案件となっていた」
一年前って言うと、兄様が七夕を始めた頃ですよね。
たぶん関係ない。
きっと関係ない。
「元始も下手に手出しして問題が発生しても対応できないし、どのような術なのかも分からない事から静観を決めていたようだ。それでも、星が怪しい動きを見せているし大きくなっているので凶事ではないかと警戒を続けていたそうなのだが、二カ月前くらいにその星が我々の住む場所に向かっている事が千里眼をたまたま使って気付いたらしい」
けっこう前に気付いたんだね。
恐らく、その術の反応がある場所が怪しいと分かっているのなら、崑崙単独で解決できそうな気もするのだけれども。
「なので、とりあえず、術の反応が有る場所を調査した結果。五つの発動点を結ぶと
かなり慎重だね。
味方の犠牲が出るのをためらったのかな?
そして、せっぱ詰まったから金鰲に協力を要請したって事か。
今更協力を要請されても困ってしまうよ。
まったく仙人界の双璧を自負するのなら、もっと頑張って欲しいものだ。
兄様が原因かもしれない事から、目をそらしつつそう思った。
「しかし、一カ月前に、同様な術の反応が新たに発生し、星の進行速度が上昇したらしい。もはや、猶予は少ないと見た元始が、金鰲島に使者を派遣し、自らは太上老君に協力を請いに向かったそうだ」
一カ月前?
偶然って怖いね。
俺は、何も知らないし関係ないし悪くない。
嫌な汗をかきながら、横目で兄様の様子を見ると涼しい笑みを浮かべていた。
むしろ、これからの展開にワクワクしているようにも見える。
その余裕を少しで良いから分けて欲しいです。
「まあ、太上老君の協力を簡単に得られぬだろうが、それは元始に任せるとしよう。そして、我々に頼まれたのは先に発動した術の破壊及び無効化だそうだ。詳しい場所は調査済だったようで手紙に記されていた。後に発動された術に関しては崑崙が攻略に向かうそうだ」
なるほど、お願いするのだから、ある程度調査済の場所を頼んで来たのか。
まあ、それなら一応こちらに配慮をしたって事になるのかな?
「そして、これより術の発動点に向かう者を発表する」
あ、考え事をしてて重要な事を聞き逃したら困る所だった。
「金鰲島でも実力の有る、張紹、姚斌、金光、白礼そして趙正大にそれぞれ術の発動点に向かって貰う」
え?張紹さん達なら話は分かるけど、俺まで単独ですか?
ここで異議を唱えるのは空気読めてない人になります?
それよりも、俺よりも明らかに強い兄様は?
そんな俺の疑問に答えたのか通天教主様の言葉が続く。
「万が一、あれが落ちてきた場合。我と趙公明が元始と協力して破壊する。残った者達は、結界の強化や生存率を上げる宝貝の開発に勤しむように。以上だ」
星を破壊するだなんてカッコイイ。
これなら、俺がサボっても問題ないよね?
え?ダメだって?
リスクを考えると、ああ大見得を切ってるけど、巨大な星って破壊できるものなの?
それよりも、星を呼び寄せている術を破壊した方が、リスクは少ないと思うべきじゃないかな?
まあ、破壊した場合に不足な事態が起こるかもしれないから最大戦力の通天教主様と兄様を温存するのは、良い選択なのかも。
でも、俺よりも強いやつなんていくらでも居るような。
そう、例えば姉様達とか。
いや、冷静に考えると巨大な乗り物とか準備しないと姉様達は遠征には向かない気がしてきた。
どちらかと言えば、防衛や迎撃が得意な気がする。
決して、マドンナ姉様がネックになってるとか思ってませんから。
その事だけは間違えないように。
あとは、他の仙道だけど……あれ?
下手したら俺より弱い?
そんな彼らに、攻略を任せて俺はぐっすりと眠れるのだろうか、いや眠れる訳がない。
仕方ない。
気が進まないが、未曾有の危機を乗り越える為に頑張ってみますか。
そんな決意をするも、現実逃避をする材料を探す為に回りを見ている俺がいる。
そして、なんとなく視線を向けた先で、通天教主様が使者にけっこう厚めの手紙を渡している。
たぶん、元始天尊様が通天教主様に書いた手紙レベルに、今回の会議について詳しく書いてそうな雰囲気の有る手紙だ。
そして、使者もそう思ったのか目が死んでいた。
使者さんガンバ。
俺も頑張るから。
うん。きっといつか活躍できる日や出番があるだろうから。
たぶん(無責任)