金鰲島から旅立って、もう九日目。
目的地まで徒歩で向かっているのだけど、いつも兄様の気球で一っ飛びで行けたから遠征を甘く見ていた。
あの気球便利過ぎだし、移動速度速過ぎない?
普通こんなに移動に時間がかかるなら、崑崙からの連絡が遅れたのは仕方ない事かも。
そんな考察をしながら、俺は貰ったコンパスの指す方向に真っすぐ進んでいる。
この先に目的地があるのだけど、コンパスのナビは川が有ろうが森が有ろうが山が有ろうが谷が有ろうが、真っすぐ進むように指示を出す。
ちょっとこれは過酷な旅じゃないでしょうか?
そしてさらに途中で空気読めない妖怪とか獣とかが襲ってくるから余計に時間がかかった。
今回は同時に攻略する予定なので、明日までには目的地に着かないといけない。
あれ?もしかして、このまま行くと俺が最後?
遅刻したら何か問題が発生するのだろうか?
まあ、ちょっとくらいは大丈夫だよね?
そう思いながら夜空を見上げると、月とは別に大きな星が見える。
あれが落ちてくると思うと、身震いせずにはいられない。
遅刻ダメ絶対。
俺は眠るのを諦めて、コンパスの指し示す場所に向かう歩を速めた。
十日目の朝に、俺は目的地の近くまで着けたようだ。
さっきからコンパスの針がクルクルと回っている。
一瞬壊れたのかと思ったのだけど、たぶんゴールに違いない。
何故なら、不可思議な光景が目に入ったからだ。
崑崙の前情報によると、防衛機能は何者かが近づくと石の雨が降り注ぐ操作系だと聞いていた。
だけど俺に見えるのは、草も木も土も色々な物が石化している光景だ。
そして、なんか人型の石像が見えるのだけど、アレが崑崙から保護を頼まれた仙道なのかな?
正直な感想、手遅れな気がする。
そんな悠長に考え事をしている俺に光線が向かってきた。
俺は、とっさに金光さんから教えて貰った術で光線の軌道を逸らす。
すると、その光線を浴びた樹木が石化を始めたのだ。
危ない、この術を習得していなければ即死だった。
そして、光線が飛んで来た先に視線を向けると、半球状の皿みたいな物を三つの石碑が支えるストーンヘンジのような物体が有る。
そして、その物体は俺に向かって、再び光線を放ったのだった。
しかし、先ほどの不意打ちなら当たったかもしれないが、今回は来ると分かっていたので術で簡単に逸らす。
それでも、俺に向かって執拗に光線を放つが、俺に当たる事はない。
もしかして、今回のミッションは楽勝?
たぶん、アレを無力化して術の制御を止めれば良いんだよね?
ついでにアレを持って帰れば、通天教主様の指示も完遂して、俺の評価もうなぎ登り?
ふふふ、まったく笑いが止まらない。
そんな余裕をこいていると、謎の物体が浮かび上がる。
そして、勢い良く三つの石碑で地面を砕き、そして出来上がった巨大な岩を空に舞い上げた。
そんな巨大な岩が空に昇ったのなら、何が起きるか答えは明白だ。
俺は、急いで飛びのくと、さっきまで自分がいた場所に巨大な岩が落ちてきた。
その衝撃は、ちょっとした脅威です。
そんな俺の内心を知ってか知らずか、謎の物体は地面を砕き次々と岩を空に打ち上げる。
え?ちょっと勘弁して欲しい。
前情報だと、石の雨でしたよね?
これは控えめに言っても岩の雨ですよ?
俺は、文句を言いながら岩に潰されないように回避に専念した。
しかし、このまま行けば岩に囲まれて圧死するのは目に見えている。
ここで受け身に回るのはまずいと思った俺は、兄様から借りた縛竜索を構えて、降り注ぐ岩を打ち据えた。
すると縛竜索の方が威力が上だったのだろう、簡単に岩を砕く。
まったくもって、借りてて良かった縛竜索。
だが、俺は前情報をすっかりと失念していた。
砕かれた破片は、操作されているかのように俺に向かって鋭く降り注ぎダメージを与えたる。
痛い痛い。
でも、突破できないほどのダメージじゃない。
俺は、降り続ける巨大な岩を縛竜索で破壊し続けた。
そして、降り注ぐ破片を無視して突き進み、ついには謎の物体に肉薄できる距離まで近づく。
謎の物体は、俺がここまで接近できると思っていなかったのか、戸惑い動きが止まる。
そのチャンスを逃すはずもなく、俺は縛竜索を振るう。
その攻撃は見事に当たり、その衝撃で謎の物体は倒れ伏した。
「作戦は中止だ。◇☆■◯△」
何故か俺の口から、謎の言葉が出てきた。
え?何を言ってるの俺?
その言葉を謎の物体が聞いたのだろうか、辺りに展開されていた術が解けていくのが分かる。
よく分からないが、これで遠征は完了したのだろう。
あれ?俺、コイツの事知ってる気がする?
確か、
そうなると……前の俺がこの術の開発に携わっていた可能性が。
いやいや、今の俺は知らない。
まったく無関係です。
この事は、墓まで持っていくべきだね。
そんなこんなで事実を否定していると、倒れていた秦完が起き上がった。
今のコイツからは、戦う意思を感じられない。
とりあえず、通天教主様から可能なら何か持って帰れと言われていたので、勧誘してみますか。
うん。色々と語りかけたけど、全部無反応です。
試しに、崑崙の仙道を治せるか聞いてみたら、戻してくれたから敵対はしてないと思いたい。
まあ、金鰲島に来るか聞いてみたら、うなずいたように見えたので連れて帰る事にしました。
拒否されても、縛竜索でグルグル巻きにして引きずって帰る予定だったので、自発的についてくるならラッキーと思っておこう。
その後、崑崙の仙道が無事に目覚めたので、この場所の攻略は完了したと伝える。
その仙道は、攻略と救助に対して感謝の言葉を述べ崑崙には自力で帰れると言うので、俺は金鰲島にそのまま帰ることにした。
保護を頼まれてたから、連れて帰るか崑崙に送るか迷っていた俺としては、どちらも面倒だったのでラッキーだ。
ちなみに、余談だが、お腹がすいてるだろうと、保存の効く謎の干し肉をすすめたら、崑崙は食事に制限があるらしく断られた。
食事に制限があるだなんて、崑崙じゃなくて金鰲島で良かったと心から思う。
代わりにドライフルーツをあげたら喜んで食べていた。
こんなに歓喜するなんて崑崙の食事情は、きっと泣ける現状なのだろうと失礼な事を思ったのは内緒だ。
そんなこんなで、十日後に無事に秦完と金鰲島に帰ってくる事ができた。
ちなみに、張紹さん達は、もう帰ってきていて、会議室にいるらしい。
おっと、俺が最後か。
急いで会議室に向かうが、秦完の事をどう説明しようか?
まあ、なるようになるだろうと思い会議室に入る。
皆無事に帰って来たようだ。
ボロボロな格好なのは俺だけだったので泣ける。
全員揃ったのを通天教主様が確認すると、話を始めた。
「始めに術の解除はご苦労。崑崙も無事に攻略を済ませ、この大陸に有った巨大な術は解除された」
兄様は、誰か失敗しないか期待してたけど、そんな事はなくて本当に良かった。
「しかし、依然として巨大な星はこちらに向かっている。恐らくは術を解除するのが遅くこの地に星が落ちて来るのは避けられないだろう」
通りで、帰ってくるまでに星が大きくなってる気がした訳だよ!
気のせいで有って欲しいと思っていた俺の願いは容易く砕かれた。
これは、兄様マジで頼みますよ?
フリじゃないですからね。
【どうでも良いかもしれない趙正大との現在の関係】
秦完:……(開発者の一人だと認識している)
【捏造の補足】
今回の術は、秦完一番機から十番機までが、術の発動・制御と防衛を担って、十一番機が月に取りついて月を地上に落とす術でした。
具体的には、一番機から十番機が、十一番機を呼び寄せ、それにくっついてる星も引き寄せる術になっています。
しかし、誰かのウッカリミスで、十一番機の軌道が逸れて月に取りつくことなく宇宙へと旅立ち、その時代の人々は呆けてるうちに滅んでしまい、術が発動される事もなく終わってしまいました。
しかし、長い年月が過ぎた時に、誰かが術の起動スイッチを入れた為に、飛び立っていた十一番機が帰ってくる途中で巨大な星を拾ってきた為に今回の事件が発生しましたのです。
そして、一番機だけ妖怪化しているという設定。
【後書き】
たぶん、あとで時間があれば書き直すかもしれない。