趙公明がアンニュイな訳がない   作:シアス

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これで今夜から安眠出来る……訳がない

無事に隕石が迎撃された。

俺の心配は何だったのだろうか?

さてと、風呂入って寝るかな。

いや~、これで今夜から安眠できるぞ!

はい。解散。

 

待て。そんな訳あるか!

あまりの衝撃に思考がフリーズしてたけど、あんなヤバい兵器が四つも有るとかキケンが危ない。

あんな兵器を扱える者が地上に少なくとも四名いるとか、恐怖で眠れぬ夜の日々ががが。

隕石の脅威が去ったと言うのに、この地上からは脅威が減ってないってオカシイ!

兄様の金蛟剪は何度か見た事があるけど、レインボードラゴンの上が有ったのには驚愕した。

レインボードラゴンに関しても、今まで見てた感じだと環境に配慮して手加減してたのは分かっていたけど、あの威力は怖い。

特に、黄金の龍は、たぶんだけど本気で地上に撃てば地球が割れるんじゃないかな?

 

そして、次に放たれた雷だけど、下手したら兄様の金蛟剪を超える破壊力を有しているように見えた。

今回は、単発だったけど、まさか連射できるとか、その状態のまま持続できるとか、そんなふざけた使い方とか出来ないですよね?

誰か出来ないと言ってよ!

 

そして、締めに見た二つの闇は、よく分からなかったけど、ヤバい物だと思う。

数多のそこそこ巨大な破片を何の問題も無く、全て処理しているのを見てるだけでも、近づきたくないと思ったね。

一つは全てを吸い込む感じの闇で、もう一つは全てを呑み込む感じの闇だった。

あんなに有った破片はどこに行ったのでしょう?

考えると深淵に落ちそうな気がしたので、深く考えるのはやめておこう。

 

いや、考えるのを止めても、俺の眠れる日々は帰っては来ない。

ここはリスクマネジメントを講ずる為にも、考察する必要があるはず。

 

まずは、兄様からだ。

身内だし、きっと大丈夫だと思う。

さすがに、全力の兄様を止めるイベントとか発生する訳無いよね。

ウン。キット、ナイヨー。

シンパイナイサー。

 

よし、問題が一つ片付いた。

次に行こう。

さてと我らがトップの通天教主様はどうだろうか?

関係は良好ですし、兄様がコネを持っているので、完全なる味方です。

敵対勢力には容赦はないですけど、傘下に加わった者達に対して粛清を行ったとか聞いた事がないので、この方も問題ないでしょう。

うん。あの件はしっかりと忘れたので、通天教主様に関しては一番心配がない。

 

次は、崑崙のトップである元始天尊か。

うーん。とくに接点がないから何とも言えないね。

とりあえず、崑崙とは協力関係にあるし、関係もすこぶる良好だから問題は無いんじゃないかな?

何か問題が有ったとしても、通天教主様の管轄でしょうし、俺が心配するのもお門違いかと。

 

お、いよいよ最後か。

よくよく考えてみたら、三人は全然心配なかったね。

すぐ隣に爆弾が埋まっている事が分かって焦ったけど、そんなに心配する必要がなくてホッとしたよ。

しかし、四人目は誰だろう?

そういえば、崑崙の使者が太上老君を説得すると言っていたような?

そうだとしたら、三大仙人がそろい踏みだったのか。

豪華キャストなので、個人的にはその場所を見てみたかった。

 

さてと太上老君に関してなんだけど、元始天尊以上に接点がない。

何と言うか、どういう人物なのかも情報が皆無。

通天教主様達とひとくくりに三大仙人と呼ばれている事しか分からない。

そんな人物に対してリスクマネジメントなんて取りようがないし、俺が聞く範囲で世俗の関わる噂や何かを行っているとかの情報を聞いた事はないし、噂好きの張紹さんの話題に上がる事すら無かった。

それどころか、あれだけの力がありながら、何かの勢力を築いてる訳でもなく、何かを掲げている訳でもない。

だから、たぶんだけど限りなく関わり合いになる可能性が低そうなので心配はないと思う。

 

だけど、太上老君の話をどこかで聞いたような?

あれは、まだ俺が植物だった頃だったと思うんだけど。

えーと、確か物は大した事無かったけど、どこか危険な場所から兄様がお土産を持って来た事が有ったような?

あ、思い出した。

確か、兄様が太上老君の池で、魚を釣り上げたと言って……うん。この事は忘れよう。

俺は悪くない。

 

とりあえず、確執が有りそうな太上老君が、あの雷使いではない事を切に願う。

あの火力は洒落にならないからね。

でも冷静に考えてみよう。

あれからかなり時間が経ってるに文句や苦情や報復が無い事から、たぶん太上老君にとっては大した事では無かった可能性もあるし、兄様が犯人だと分からないまま事件が迷宮入りした可能性も十分にあり得る。

うん。これなら、もしかしたら心配ないかもしれない。

 

この考察で、俺の安眠が少しばかり帰って来た気がする。

まあ、次は、あのふざけた宝貝対策を考えたい。

俺の素晴らしい頭脳は、もう四つも思い付いたぞ。

 

まずは最初に敵対しない。

根本的な解決にはならないが、今の俺ではどう有っても相対した時点で悲惨な未来しか見えない。

とりあえず、まだ誰とも敵対してないので、現状維持が一番の対策と言える。

 

二つめは、あの攻撃に耐えらえるタフネスを身に付けるか、もしくは防御用か相殺できる宝貝や術の開発。

修行しただけで、あの攻撃に耐えられるようになれる気がしないし、あんな攻撃を防げたり相殺できる物を作れる気がしない。

これは現実的では無いけれど、やらないよりはマシと思われる。

 

三つめは、殺られる前に殺れ。

まさに暗殺。

ははは。返り討ちにあう未来しか見えません。

そして、下手したら世界全てを敵に回す可能性があるので、この案は却下されました。

 

そして、最後だけど、逃げる隠れる遠ざかるかな。

とりあえず、逃走や隠れる技能を上げておこう。

あとは、色々な環境でも生活できるようになる宝貝の開発や、隠れ家の建設も視野に入れておこう。

まあ、地球割りをされた時は、諦める方向で。

さすがに宇宙空間で生活できる気はしないから。

 

一応、これからの方針は決まった。

そして、一通り悩んで冷静になった俺は、ある名案が浮かんだ。

よくよく思い出してみれば、通天教主様と兄様は完全な味方な訳で、そんなヤバい宝貝や危険物は今回のように丸投げすれば良くない?

勿論、修行して自分で対処できるに超した事はないけれど、そんなに焦る状況でも無いはず。

まだまだ、モラトリアムは有るのだから、頑張るのは来年からにしよう、そうしよう。

もう今年は、お腹いっぱいでやる気が出ません。

さてと、疲れてるし、もう休むかな?

 

あ、一応、通天教主様や兄様の御機嫌取りをしておく必要はあるよね。

この積み重ねが、きっと俺を救うはず。

そう決めると、呆けている他のメンツを覚醒させる為に柏手(かしわで)を打つ。

 

「みんな聞いて欲しい。通天教主様や兄様が見事に隕石を迎撃した。だから感謝や祝う気持ちを伝える為に、宴を開きたいのだがどうだろうか?幸い、この場にいる仙人は金鰲島に残されたメンツでは上位陣なので、準備や手配を行っても問題無いはず」

 

少しばかり時が経ち、俺が言いたい事が伝わると賛同の声が聞こえた。

 

「そうですね。我々が手配しないと、他の者達ではどうしょうもないでしょう」

「ああ、あれでけの事をしたのだ。何もしない方が問題かもしれない」

 

とりあえず、みんなが協力的で良かった。

うん。ここは言い出しっぺが具体的な指示を出しておこう。

 

「まず姚斌さんは、歓迎や祝いの横断幕作成を。張紹は、会場の手配を。金光さんは、協力してくれる人員を集めた後に、張紹と合流して宴会の場を整えてください」

 

俺の指示に、三人が頷くと、それぞれの準備に向かった。

 

「「私は料理が得意だが」」

 

白礼が出来る事を自己アピールした。

あまり仲良くない相手なので、自分から申し出てくれて助かる。

 

「では、調理場に向かってください。俺は、食料庫の使用許可を出して、材料を運ぶ手はずを進めるので」

 

そう告げると、お互いに目的の場所に歩き出す。

 

少しして、食料庫が見えてくるが、いつもは閉じられているその扉が開いており、何人もの仙道達が食材を運んでいた。

この世の終わりだから最後の晩餐的な?

勝手に持ち出し?

金鰲島治安悪すぎ。

 

でも、傍からみたら、泥棒してるような後ろめたい空気や、強盗などの剣呑殺伐な気配を感じないし、俺を見ても慌てる様子もないので、運んでいる道士に訪ねてみた。

 

「えーと、これって許可は下りてるのかな?」

「はい。雲霄様からの指示です。ちゃんと通天教主様からの許可証も有りました」

「それなら良いのだが、とりあえず、どれだけ運ぶか聞いているか?俺も運ぶのを手伝おう」

「ありがとうございます。雲霄様から、全部。限界いっぱいと伺ってます」

「ぜ、全部?分かった」

「はい。場所は、調理場となります。では、自分はこれで」

 

これは嫌な予感がする。

ちょっと姉様に確認を急いだ方が良い気がしてきた。

俺は、持てる分だけ持って調理場に急いだ。

 

そして、たどり着いた調理場は戦場だった。

忙しく料理をするビーナス姉様とクイーン姉様。

鎖に縛られて、他の妖怪に抑えられているマドンナ姉様。

一歩バランスが崩れれば大惨事になりかねない世界がそこに有った。

そして、立ち入る隙がなく所在なさげにしている白礼。

俺は、それを無視して、ビーナス姉様が一息付くタイミングを見て話しかけた。

 

「ビーナス姉様。忙しい所すみません。この事は許可を取ってあるのは本当ですか?」

「あら正大。本当ですわ。お兄様が、あらかじめ許可を取ってらしたのよ。食料庫をからにするぐらい思いっきり豪華な御馳走を準備するように言われてますの。これが許可証ですわ」

 

俺は、許可証を受け取り軽く目を通す。

それはまさしく、通天教主様の押印がされた正規の物だった。

でも、書かれている文を見て少し心配になる。

 

【食料庫の使用を許可する。ただし限度を考えるように】

 

などと書かれている。

だが、兄様や姉様の指示は限度を考えていないような気がする?

 

「あの限度を考えるようにと書かれてるのですが?」

「大丈夫ですわ。限界を超えないようにするので問題なくってよ。ぴったりと作り切ってみせますわ」

「いや、たぶん通天教主様が伝えたいのは、そんな事じゃなくて」

「ああ、そういえば正大。会場の準備は、もう済んでおりまして?お兄様は、正大なら勝手に準備するはずだから問題ない。してなくても、後でやるように伝えて欲しいと言われてますの」

「ああ、はい。とりあえず、他の方に準備するようにお願いしてます」

「それは、結構。あら、そういえば、お兄様から手紙を預かってましたわ」

 

そう言って手紙を渡された。

 

【親愛なる弟。趙正大へ。キミがこの手紙を読んでいる頃には、隕石の迎撃が成功していようが、失敗していようが、食料庫は空になっているであろう。この未曾有の食糧難から金鰲島を救う男はキミだと、僕は思う。さあっ!頑張って食料を調達して来てくれ!未来の僕らは、お腹をすかせて待っている……はず。麗しの兄。趙公明より】

 

ああ!やっぱり、問題を丸投げして来た!

丸投げは良くないと思います。

そう考えると、ブーメランが俺に刺さるが問題無い。

自分は良くても、相手にされると困るのが世の常だから。

食料の調達は面倒な仕事だよ。

まずは、探す事からだし、目的の食料が戦闘力を持っている事がほとんどだし、最後に大量にあると運搬が死ねる。

これを単独でしろってのは、ちょっと無茶が過ぎると思います。

そう、頭を抱えていると、二枚目の手紙が有る事に気がつく。

 

【許可証。これより、趙正大を隊長に、小規模な食料の調達隊の編成を許可する。各員、暇が有る者は協力するように】

 

通天教主様から許可証が入っていた。

兄様。さっきは文句を言ってすみません。

微妙に弟思いの兄で、微妙に助かりました。

それと通天教主様、許可ありがとうございます!

 

だけど、冷静に考えると兄様の無茶振りが原因だからプラマイゼロだよね?

むしろマイナス?

でも、兄様との関係は良好で居たいので、これは必要経費?

俺は苦悶の表情を浮かべた。

 

「「趙正大。食料の調達なら手伝おう」」

「何故そのことを?」

「普通にしゃべっていた」

「それも、かなり大きな声で」

 

うわ。心の声がダダ漏れだった?

俺、何て言ってたか凄く気になる。

とりあえず、深く考えるのは止めておこう。

 

ここは仕事に専念するんだ。

決して現実逃避じゃないから。

そう、手間を減らすには迷っている暇はない。

即決即断即採用。

 

「ああ、お願いしたい。あと、何人か狩りが得意そうな者に声をかけてみて欲しい。俺は運搬が得意な者を探してくるから」

 

白礼は返事をして、狩りのメンバー集めに向かった。

しかし、アイツなんで急に協力的に?

その思惑がつかめない。

 

結局、何を企んでいるのか分からない白礼と数日食料調達を共にする事になり、俺は無駄に不安と警戒心が煽られて、けっきょく眠れぬ日々送った。

 




【どうでも良いかもしれない趙正大との現在の関係】

NEW!!

白礼:軟化。金蛟剪の威力にビビり間接的にも趙公明と対立するのは不味いと思い始める。それが、後の名場面「金蛟剪なき今のアナタ達に何が出来る?」に繋がる。

秦完:通天教主>趙公明>趙正大に変更される(長年の使命が無くなった事により自我が発達。性格は、制作者に似たのか長い物には巻かれろ・多数派なら安心。現在は昼は日光、夜は月光を浴びているだけの置物で居たいと思っている)
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