大組織の偉い人に合うのって緊張するよね。趙公明?はっ、あれは自称だろ。
薄暗い通路もしくは洞窟を俺達は進んでいる。
そう目的地は、この金鰲島のトップである通天教主様がいる部屋だ。
空に浮かんでいる巨大な島を見た時はテンション上がったが、今は一歩踏みしめる度に胃痛が襲ってくる。
あれ?なんか半妖態になってから、植物の時よりも不都合を感じるのは気のせいだろうか?
胃とは別に頭も痛いし、目眩も動悸も息切れもする。
あれ?本気で植物のまま御姉様達にお世話して貰っていた頃の方が幸せだったんじゃないかと思えてきた。
これも気のせいなのだろうか?
「さあ、この部屋で通天教主様がお待ちだ。くれぐれも失礼の無いようにね」
おっと、せっかく現実逃避していたのに引き戻されてしまった。
しかし失礼とかお前に言われたくないと視線を送ったが、余裕のある微笑みを返される。
「その様子だと大丈夫なようだね。では行こうか」
兄様がその重厚感のある扉を軽々と開き、挨拶を言いながらひざまずく。
「通天教主様。趙公明とその他大勢。ただいま参りました」
ちゃんと上司には礼を尽くす事ができるのだなと、少し意外に思いながら俺も続いてひざまずいた。
しかし、自分の妹と弟にたいして、その他大勢って別の言い方は無かったのかと抗議したい。
「趙公明よ。御苦労で有った。皆の者面をあげよ」
その言葉に視線を上げて通天教主を見るが、立派な髭と長く尖った襟に視線が行ってしまった。
髭は普通に立派だなと思っただけなのだが、襟長すぎだしそれが凄く立っているのが気になった俺は悪くないと思う。
服装やマントの雰囲気から、ちょっと吸血鬼っぽいと思ったのも仕方ないって事にして欲しい。
そして、こんな事を考えているのが相手にバレたらと思うと、また胃がキュッと締め付けられるように痛くなってきた。
そんな俺を通天教主様が見たかと思うと、次に御姉様達に視線を移してこう言った。
「趙公明よ。増えたのは弟だと聞いていたのだが妹も増えたのか?」
「いえ、増えたのは弟だけです」
それを聞いて、また御姉様達に視線を向けると首を少しかしげた。
「では後ろの女性達は何者だ?」
「妹達ですが?」
「やっぱり増えているではないか」
「いえ、増えたのは弟だけです。さあ、カワイイ妹弟達。通天教主様にご挨拶を」
え?この流れでこっちにパスしてくるの、でも初対面の挨拶は大事なので頑張らねば。
「はじめまして。通天教主様。自分は趙公明の弟趙正大と申します」
「私はビーナスですわ。通天教主様ごきげんよう」
「私はクイーンよ。通天教主様ごきげんよう」
「そしてこの娘はマドンナですわ。口数の少ない娘で申し訳ありません」
その自己紹介の後、通天教主様は考え込むと、また言った。
「趙公明よ。やっぱり増えているではないか」
「いえ、増えたのは弟だけです。僕の妹達である雲霄三姉妹をお忘れですか?確か、面識が有ったと記憶しておりますが」
「あの雲霄三姉妹?」
「はい。このたび人化を完成させて、妖ゲツから妖怪へと格が上がりました。これから立派な仙女になるのが楽しみなカワイイ妹達です」
「そ、そうか。少し見た目が変わっていたので勘違いをしていたようだ。雲霄三姉妹よ。これからも励むがよい」
兄様は御姉様達の見た目が変わっても、まったく態度に変化がないし、妖怪になって最初に合った時も疑いはしなかった。
そもそも、見てすぐに妹達だと分かっていたようだ。
この点に関しては、本当に紳士だと思うし感心もする。
そして、あの変わりようを少し見た目が変わったとだけ言ってすり抜けるとは、さすが組織のトップなだけはある。
しかし、あの変わりようは誰だってそう思うし、俺だってそう思うので仕方ないし、責めてはいけないと思う。
「では、改めて本題に移ろう。そなたが趙正大だな。我は通天教主である」
「はい。自分が趙正大です。通天教主様以後お見知りおきを」
うん。気まずい空気になったら話題を変えるのが一番だよね。
さすが分かってらっしゃる。
でも、面と向かって話合うとなるとやっぱり緊張してきた。
金鰲島トップに相応しい威厳とも威圧とも感じられるオーラが伝わってくる。
まあ、威圧感に関しては、龍脈の不正利用による後ろめたさからなのだが。
「そう固くならなくてもよい。今回の件に関して、おぬしは趙公明の被害者だと我は思っておる」
あれ?これって兄様が咎めらたから、実験結果として俺を売ったパターンでしょうか?
御姉様達との扱いの差に遺憾の意を表明したいです。
弟と妹でこんなにも差があるなんて。
「しかし、龍脈を不正使用したからには、何も成果が無かったでは、他の者達も納得はしないだろう。おぬしには済まないと思うが、実力を示す為にここは一つ試練を受けては貰えぬか?」
「かしこまりました」
さすがに、お咎めなしにはならないよね。
でも、これって兄様には何の被害も無いよね?
マジ許せん!だけど、宝貝が怖いので直接抗議はしません。
しかし、試練ってなんだろう?
実力を示すって言うけど、体力測定的なものだと助かります。
むしろ、その程度で有ってください!
神に祈りながら、試練の発表を緊張した表情で待つ俺。
一秒がとても長く感じる。
「今回の試練は、おぬしが使っていた龍脈の近くを縄張りとする七怪を金鰲の傘下に加えることだ。もしくは最低でも全員を撃破せよ。このような武勇伝があれば、他の者達もうかつに文句は言えぬだろう」
え?仙人界で修行する前にバトルパートですか?普通逆じゃありません?それに難易度高くありません?
七怪って言うぐらいだから七人いるんですよね?
それを傘下もしくは撃破とか、やっと動けるようになった俺としては無理なような気がするんですが。
あまりの試練の内容に俺がフリーズしていると、通天教主様が補足説明をしてくれた。
「ほら、なんと言うか、趙公明は色々とやっているから、それを快く思ってない連中が多いのだ。しかし、趙公明自身も妹である雲霄三姉妹も規格外の力を持っており、うかつに手が出せぬ。そこに、実力不明もしくは実力不足な弟が出てきたらどうなるだろうか?」
理解しました。
『このままだと、おまえ金鰲島でいじめられるから、先輩達に舐められない為にちょっくら武勇伝を作ってきてくれない?』って事ですね。
うん。ちょっとお遣いに行ってきてーのノリで言われても困ります。
なんかヤンキーの入団試験を受けている気分なのですが。
嫌に実力主義な所とか、武勇伝を評価する辺りが、まんまヤンキーな気がしてならないのですが。
あれー。おかしいな。
俺が思っていた妖怪ライフは、朝は寝床・夜は適度に運動会で、楽しい楽しいと歌って病気も悩みも無い生活だったんだけどなー。
でも、現実は、すぐにでも他の妖怪の所にカチコミに行かされる空気なのですが?
兄様助けてーと視線を送ると、彼は親指を立てて言った。
「正大。大丈夫さ。もし失敗しても、また
うん。まずは玉砕覚悟で貴様に特攻するか真剣に検討してしまったね。