ここは金鰲島のとある一室。
今、この室内にいるのは、兄様と御姉様達と俺である。
すぐにでも攻略に向かって欲しそうな空気が流れていたが、俺の命がかかっている訳だし作戦タイムをお願いすると拍子抜けするほどアッサリと認められた。
通天教主様は仕事があると席をはずし、俺達は近くの応接室へと移動した訳だ。
しかし、たぶんここは趙公明の私室な気がする。
壁にかけられた装飾や、床に敷かれた絨毯、机や椅子が先ほどの通天教主様と謁見した場所に比べると豪華なのである。
さらに、隣に給湯室があり戸棚にティーポットやカップが並べられていて好きにお茶が淹れられるようになっているのだ。
トドメに部屋の隅に、天蓋付きのベットが見える。
ここは、兄様の仮眠室&休憩室で確定だね。
うん。さらに睡眠中・休憩中・外出してます・掃除しといてくださいと書かれた札も見つけた。
さてと、いつまでも現実逃避して居たいが、そういう訳にもいかないので兄様から情報を聞き出すとするかな。
少しでも有用な情報があれば良いのだけれども。
「まず、七怪って何ですか?」
「正大が前にいた場所には、複数の龍脈の穴が有ってね。それを巡って群雄割拠の戦国時代が有ったのさ。複数の勢力が淘汰されて、今残った七つの勢力が均衡を保っている。その総省を梅山の七怪と呼んでるんだ。確か、猿・ムカデ・蛇・豚・牛・犬・羊だったかな?」
あれ?ムカデ以外は趙公明のお土産にいた気がします。
そして、猿以外にも複数偵察に来てると思ったら、勢力争いをしてたのか。
「その七怪ってどれくらい強いか分かります?」
紅茶を飲みながら休憩モードに入ったお兄様が軽く答える。
「束でかかってきても、僕の敵じゃないね」
それは知ってます。
聞きたいのは、そういう事じゃなくて。
「私達でも余裕だと思いますわ」
それも知ってます。
御姉様達の存在を知ってから向こうは軽く偵察するだけで逃げて行ったし、完璧な人型になってからは偵察すらも来なくなったからね。
「いえ、兄様達を指標にされても判断がつかないですよ。金鰲ではどれくらいの強さになるのですか?」
「うーん。たぶん上位の仙人なら勝てるかもしれない。だけど、さすがに勢力が相手だからね。それ以外の者達だと単独では無理な気がするな。僕は」
ちょっと待って、それだとその試練って無理っぽくないですか?
あ、でも金鰲内でも上位の力を示せって試練だから内容としては問題ないのか。
問題があるとすれば、俺にその実力があるかどうかだな。
「えーと、俺にその試練が達成できると思いますか?」
「まあ、やってみないと分からないんじゃないかな?もし塵も残さず消滅しても魂魄だけは拾ってあげるから、安心して挑んできたまえ」
「え?もう負けフラグが立ってるんですか?そんな事を言われても安心できる人なんていないからね!って言うか、俺は来世も兄様のお世話になるのが確定している?」
「それは死んでからのお楽しみって事で」
「俺は楽しめないし、死んだら普通終わりだからね!」
ああ、この話題は不毛だ。
さっさと次に行こう。
「じゃあ、協力してください」
「それはできない。これは正大が立派な仙人になる為の試練なんだ。悲しいが僕達には見守る事しかできない。妹達も、そういう訳だから手出しは無用さ。彼が一人前の仙人になるには必要な事なんだ。ここは涙を呑んで見送って欲しい」
「お兄様。そうですわね。正大、立派になって帰ってくるのよ」
「ビーナス姉様、簡単に丸めこまれないでください。兄様本音は?」
「いや、実際に力を貸すのは不味いと思っている。正大の実力を示す必要があるのに、僕達が力を貸しては正大の実力が永遠に不審に思われる可能性があるからね。あとは、ほんの少しばかり獅子千尋をしてみたいって気持ちもある」
「前半は説得力が有ったのに、後半で台無しだよ!」
力は貸して貰えないみたいだ。
たぶん、ほんの少しと言ってるが、ほとんど獅子千尋がしたいだけなんですよね?
分かります。
この方面で説得は無理か。
あとは……。
「じゃあ、何か武器をください」
「ヒノキの棒で良いかい?」
「どっからどう見ても、すりこぎ棒ですよね。武器ですらないじゃないですか!」
「武器は慣れない人が使うと怪我の元なんだよ。ましてや宝貝は素人には扱えないし、発動するにはエネルギーが必要なんだ。下手したら発動もしないのに消耗するだけって事もありえるからね」
うーん。武器も無理か。
本当に役に立たないな。
いったい誰のせいで、こんな事になっていると言うのか。
もう、こんな試練はボイコットして地上で静かに暮らしてみる?
いや、たぶん無理だ。
この姿になってから、お腹もすくし眠気もある。
あれ程に望んだことなのに、いざ叶ってみると邪魔でしかない。
うん。一人で生活できる気がまったくしません。
それに、兄様のせいで無駄に恨みを買ってるので素性がばれると後ろ盾が無いって怖すぎる。
色々と詰んでるけど、試練を達成すれば金鰲島に居場所ができるし、後ろ盾にもなってくれるだろう。
これはもう全力で試練を突破するしか活路が無いね。
負けるな俺。
挫けるな俺。
希望を捨てるんじゃない俺。
最後にダメ押しで聞いてみるか。
「何か良い作戦とかは?」
「ここはシンプルに力対力の真っ向勝負だ。各勢力のボスをぶちのめせば、自然に従えられるんじゃないかな?」
「貴方に聞いた俺が馬鹿でした」
マジで役に立たない!
こいつら規格外過ぎて、参考になる・ならない以前の問題だよ。
もっとまともなヤツとかいないの?
うーん。これは賭けになるんだけど、他の人紹介して貰えないかな?
「えーと、金鰲にいる他の人と話してみたいんですけど、誰か良い人いません?」
「僕達に何か不満でも?」
「いえ、そういう訳じゃないんですが、なんと言うか」
「なに。ほんの冗談さ。そんなに焦らないでくれたまえ。今の時間なら談話室に彼がいるかもしれないな。今から地図を描くから、行ってみると良い」
「案内はしてくれないんですか?」
「友達が欲しいんだろ?僕が行くと皆して身構えてしまうからね。まったく偉い立場ってのも困りものだね。ああ、これで正大もボッチ卒業だね!」
何か酷く不名誉な勘違いをされているが、役立たずだと思ってるのがバレてないようで一安心だ。
あと、皆が身構えるのは、きっと貴方が面倒な事をしたのでしょう?
地雷臭がするのであえて触れませんが。
ここは地図は受け取って、大人しく移動するのが吉と見た。
どうか向かう先にいる人物がまともでありますように。
切に願います。
昨日は休みが無かったのです。
もう少し長く書きたかったけど、二つに分けます。