いつだろうか、生まれ故郷のオストマルクがネウロイに蹂躙されて。いつだっただろうか、家族が目の前で焼かれたあの日は。そして、俺は何のために生きているのだろうか。そう考えながらまた俺は星空を見ていた、こんな綺麗な世界なのにどうして大切なものが奪われ、悲しみ、嘆き、そんなことが起こるのだろう。
そんなことを、愛銃であるリボルバーをかざしながら考える。そんな時であった、空に一点の光が見えた。
この時間で、そしてあの光は...そうか、ナイトウィッチか。ナイトウィッチとは、索敵能力に長けた固有魔法を所持するウィッチが夜間の偵察などの任務につくことが多いウィッチのことである。
まだ幼い、育ち盛りで遊び盛りの少女がこんな大変なことをしなければいけない、残酷な世界だ。
「あーあ、どうしてこうなっちまったかねぇ...。」
俺はそう溜息混じりに呟くと今回の任務について考える。さかのぼる事2週間前のこと。国連上層部からの依頼だ。
「ヨハン・W・ザインベルグ特別少尉、今回ここに呼んだのは他でもない。最近発生している魔女狩り未遂事件を知っているな?」
「ええ、ウィッチを狙った殺害未遂事件ですよね?対処は軍で行なってはいるものの、彼らの犯行動機、活動場所、活動源が明らかになっていないと。」
「そうだ、そこで君にはオラーシャに向かってもらい彼らの素性を暴いてもらいたい。できるならば壊滅もな...。」
「わかりました、でも...報酬は忘れないでくださいよ?私はあくまで...『傭兵』なのですから。」
「わかっておる、ではオラーシャに向けての準備をこちらでしておく。それまでに準備をしておくことだ。」
「了解。」
ま、上層部さんも焦りをみせてるみたいだし、報酬もまあまあ弾むようだし引き受けたけど...。何で焦ってるんだっけか、確か501部隊だかの設立を控えてるんだっけか?
そんなこんなでオラーシャに今居る訳だ。そろそろ基地につくみたいだし入ったらすぐ寝室で寝たいものさ。
「おい、降りろ。着いたぞ?」
「あいよ。」
そう言って荷台から降りるとそこはウィッチ達が配属されている基地であった。
確かここの基地はウィッチの訓練も兼ねた基地だったか。俺は上官に挨拶を行い、自室で寝ることにした。
主な任務は二つ、ウィッチの護衛と魔女狩り集団の殲滅。まためんどうな依頼なことだ。そう思いながら俺は瞳を閉じた。
後日、早朝のことである。まだ日が昇っていない暗い寒空のままである時である。俺はいつもの習慣として行なう銃の整備、射撃訓練を行なおうと基地の射撃訓練場へと向かおうとした時であった。ストライカーを格納する倉庫、つまり格納庫を通ろうとした時。一人の少女が床に倒れていた。
どうしたものかと思いつつ、その少女に駆け寄るとその少女の幼さに俺は驚愕した。
まだ小等部程の少女であろうか、とても小さく、か弱く、そして何より儚いそんなオーラを纏った少女である。髪は白銀で、その美しさに吸い込まれそうな、そんな儚く美しい感じである。
こんな所で寝たら死ぬぞ、なんてどこかの小説やら何やらであるまいと思いながら俺はその少女を起こすのもあれだろうと背負う。だが、ここでひとつ問題があった、この少女の名前も知らないし、部屋がどこであるかも知らない。仕方がない、少し起こしてみるか。肩を揺らし、声を掛ける。
「おーい、こんな所で寝たら風邪引くぞー...つってもウィッチだからそうでもないか。でも寒いからちゃんと温かい布団で寝なさいな。」
「ん...お...さん。」
おっさん...?夢の中とはいえ酷いな。僕はまだこれでも19だっての。
「おとう...さま...。」
そうか、この子にも...家族がいたんだよな。温かい暮らしがあったんだよな...。
そう思いつつも何度も起こそうと試みる。すると、うっすらであるが目を開けた。
「おーい、こんなとこで寝てたら...。」
「っ!」
少女は突然目を見開き、俺を突き飛ばし、物陰に隠れた。こりゃ完全に敵って思われてる感じかね。
「待った、ストップストップ。俺は敵でもなんでもないからちっとだけ話でもしようよ。」
「...?」
手を上に上げて敵意無しの態度をとる。
適当に座れるところに彼女を座らせて、隣に座る。
「えーっと、どこから話したほうがいいかな...そうだ、俺はヨハン・ヴォルフガング・ザインベルグ。階級は特別少尉で出身はオストマルク...だけど、一応リベリオンとオラーシャのハーフだからよろしく。」
「アレクサンドラ・ウラジミーロヴナ・リトヴャク。オラーシャ出身...よろしく...。」
「ああ、よろしく。んで...何て呼べばいい?」
「サーニャ...皆そう呼んでる。」
「了解、じゃ...サーニャちゃんはどうしてさっき倒れてたんだい?」
「眠いから...。」
「いや、それはわかったけど...こんな所で寝るなんて。」
「夜間哨戒...だから...。」
今にも寝そうになっている。仕方無いか。
「ほら、こんなとこで寝たら風邪引くから部屋で寝なさいな。部屋どこだい?」
部屋を教えられ、そこまでおぶって運ぶ。
「はい、着いたよ。ベッドたどり着くまでに倒れんなよ?」
「...うん...。」
小さな声で、そして小さく頷き部屋に入る。安心するもそれはつかの間、床に倒れる音がして開けてみればもう寝てる。溜息をつきながらベッドに運び掛け布団を掛け、「おやすみ。」とあいさつすると俺は部屋を後にした。