そこから1年少しが経ち、気がつけば俺はスオムスの基地にいた。これは一年前の話だ。
「ザインベルグ少尉、私とともにスオムスにこい。」
「やっぱり少佐って僕のこと。」
「ぶっ殺すぞたわけ、貴様には軍に入ってもらおうと思ってな。」
「いいんですか?僕みたいなどこの馬の骨ともわからん奴が。」
「私のお墨付きだ、悪い条件だとは思えないが?」
「ま、生きていけるならいいんですがね。」
「なら、契約成立だ。正式に君は少尉...いいや、撤退戦での戦績を評価され中尉に昇格だ。生身でネウロイとやり合うバカはお前くらいだからな。」
「そいつはどうも、ありがたく頂戴しておきます。」
そんなことがあり、少佐と共にスオムスの基地へと配属された。
「ここがスオムスの基地か、余裕ないとは聞いてたけどそんなふうには見えませんね。」
「私はここのお偉いさんと話をしてくる。それじゃあな、馬鹿な真似はするなよ?」
「はいはい、僕は子どもじゃありませんよ?ったく...。」
少佐はお偉いさんと話をしてくるそうだ、さてと俺はどうしようかね。
そんなとき、近くで話し声が聞こえる。
「大丈夫大丈夫、このくらい余裕だって!」
「危ないぞー、ニパー。お前の不幸っぷりなら間違いなく。」
「ほら、とれた!このくらい私にだってできるんだよイッル!って...うわぁぁぁ!?」
危ない、俺は走って落下地点であろう所まで走り込む。そして間一髪少女を受け止める。
「わっ!?ありがとうございます。」
「いや、お礼はいいよ。でも、危ないことはするもんじゃないぞ?」
「た、たまたま足が滑っただけで...。」
「お前たまたまってそれいつもだろ...。」
「ち、違うもんイッル!それはイッルが見てるときだけたまたまそうなだけで...。」
「はぁ...?つーかお前見ない顔だな?新入りか?」
「ああ、すまないね。自己紹介がおくれた、オラーシャ方面から配属されたヨハン・W・ザインベルグ中尉だ。」
「ちゅ...中尉さん!?ほら、イッル!」
「そんなすごい奴がどうして...。」
「じょ、上官だよ!?」
「まあまあ、堅苦しいのは嫌いだから普通にしていいよ。そういう身分でもなんでもないしね僕は。」
そんなこんなでここの軍に所属している少女と話をする。落下したのはニッカ・E・カタヤイネン軍曹。そしてその友達はエイラ・I・ユーティライネン准尉。どちらもウィッチだ。
「貴様ら、ここにいたのか。」
聞き覚えのある声がして振り向くとそこには
「ラ、ライカ中佐!」
「どうしたんだそんな驚いて。」
「い、いや...なんでも。」
「それで、中佐がどうしてここに?」
「ああ、実はというとな私とリフナスカヤの奴で引退後にここで教官をする予定でな。それで戻って来たという訳だ。」
「そうですか、でも心強いです。」
「ふっ、だが甘くはないから覚悟しろ?」
「うぇぇ...大変そうだなー...」
「まさか少佐と中佐が教官とはねぇ、運がいいのか悪いのか。」
「でも、凄いよねー。そんな人達が教官としていてくれるなんて。」
「あーあ...訓練がめんどくなったらやだなぁ。」
「もうイッルったらそんなこと言うなよー。」
「仲良いんだな、君たち。」
「まあねー、でもイッルったらひどいんだよ?いつも悪戯ばっかして。」
「はぁ?だってニパの驚く表情面白いからやめられないんだよ。悪いか?」
「悪いもなにも...人の反応で遊ぶなよー。」
微笑ましいな、まったく。そんな時だ。
「休憩中で申し訳ありません、中尉。ストライカーユニットの回収の手伝いお願いできますか?」
「あいよ、すまないね嬢ちゃんたち。お兄さん少し仕事してくるわ。」
「おう、頑張れよー。」
「頑張ってくださいね、中尉。」
そんなことでストライカーユニットの回収を行い、それと武器も回収した。スオムスでは物資がギリギリの中戦ってるとのことだ。オラーシャよりも大変みたいだな、ここは。
基地に帰ると寒さのせいかくしゃみが出る。
「おうよ、お疲れさん新入り。」
声がする方を見上げるとそこにはグラスをもった女性がいた。
「お前もこっちにこい、少し話でもしようじゃないか。」
「は、はぁ...。」
俺はその女性の傍までいくと
「おう、隣座れ。遠慮するな。」
隣に座って改めて見る、背が高く、それでいて美しいくらいの銀色の紙、それでいて長い脚と肉付きのいい太もも。少しばかりだがドキッとした。
「あんた、ニパを助けたんだって?」
「ニパ...?ああ、カタヤイネン曹長のことか?」
「おう、そのニパだ。ありがとな、あんたいい人だな。」
「いえ、そんないい人じゃありませんよ僕って。んで、君名前は?」
「おう、私はアウロラ・E・ユーティライネン。階級は中尉だ。その、ニパの友達のイッル...まあ、私の妹のこともよろしくな。だけどその2人に何かしたらそりゃ...わかってるよな?」
あの、その笑顔からドス黒いオーラ出てるんですが。
「何言ってんすか、まったく...そんなドス黒いオーラ出されてやる奴いるならそうとうな命知らずですよ。」
「ま、そうだな。んで、あんたの名前は?」
「そうだったな、俺はヨハン・W・ザインベルグ。オラーシャ陸軍所属で階級は中尉。あんたと同じさ。」
「へぇ、なぁ...あんた年齢は?」
「えっと...20だけど?」
「へぇ、私よりも年上か。驚いたな。」
「僕そんなに子どもに見えます?」
「いいや、でも...何て言うだろうな。純粋なもんだからもう少し若いかなってな。」
「で、そんなアウロラさんの年齢は?」
「ほぉう、乙女に年齢を聞くとは...度胸があるな。ま、いいや...今日から私のことはお姉さんって呼べ、いいな?」
「ってことは俺よりとしう...」
「おっと、それ以上言おうものならお前のケツをスコップで掘抜いてやるからな?」
「生憎そういう趣味は持ってないんで、勘弁してくれると嬉しいんですがね。姐さん。」
「かぁ...可愛げねえな。ま、いいや。またなんかあったらよろしく頼むわ、同じ階級なんだしさ。」
「おうよ、任せなさいな。」
「じゃ、私と一杯やっとくか。」
「へ?」
その後、部屋に連れてかれて一杯だからまあいいかと思った俺の考えが甘かったなんてこの時の俺は思いもしなかった。
「そんでさぁ...まったくどいつもこいつも度胸のない男ばっかりで...。」
「は、はぁ...。」
「お前はどう思うんだ?」
「え...?まあ、そうだね。最初に言っておきながらやっぱり違うっていうのは筋が全く通ってないかと。」
「だよなぁ?いいねぇお前やっぱり私が見込んだだけはあるな。どうだ?私があがり迎えたら私と一緒に...。」
「いやぁ...俺みたいなのじゃ不釣り合いかと...。」
「そんなことはない!大丈夫だ、私に任せろ。何とかなるさ!はっはっは!」
やべぇ...この人飲み過ぎだろ。しかも俺が咳き込むくらいの濃度の酒を...勘弁してくれ。しかも酒臭い!
「さてと、愚痴を聞いてくれたお礼だ。私の可愛い可愛い妹イッルの話をしよう。これはあまり人に聞かせないレアな話だ、運がいいなお前は。」
「は、はぁ...では是非。」
それからというもの何時間も自分の妹を延々と繰り広げる、どれだけ話題尽きないんだこの人は。
そして気づけば俺はがっちりと抱きつかれ、そして布団に持ってかれた。勘弁してくれ、そして助けてくれ。酒臭くて気が滅入る、なのにどうしてだろうか、この妙な色気。畜生、色仕掛けか。師匠が昔に言っていたハニートラップにだけは気をつけろという言葉が脳裏に浮かぶ。脱出するぞ。
俺はまず、その絡められた腕をどけようとする。しかし、とてつもない力でどけることができない。なんだこのひと強すぎませんかねぇ?
次に俺は隙間を少し作ってから抜けようという作戦に出る、姐さんの脚に腕が当たる、姐さんのズボンのサラサラした感触が妙に胸を高鳴らせる。駄目だ、変なことを考えるな。こんなとこ見つかれば始末書どころか銃殺刑一直線コースだ。そう思って脱出を謀るも今度は脚でがっつりと抱きしめられる。終わった、俺の脱出劇は失敗に終わったのである。
とまあ、そんなこんながありまして一年と半分程が過ぎた訳である。