なんやかんやで二日目の朝、射撃訓練場にて銃の早撃ちを行なう。
正確かつ迅速に銃を抜き、照準を合わせ、引き金を引く。人は皆、この動作を見た瞬間に人間業では無いと言うが、俺にはそうは思えない。ただ争いの種を取り除く、その作業は迅速かつ正確でなければいけないと考えるからしていることである。
一通り行なった後にメンテナンスを行い、戻ろうとした時であった。
「あの人、凄くない!?」
「凄い!あんな速くてそれに正確にバンバン撃っちゃうんだもん!」
「でも、あの人ウィッチじゃないよね?」
「そうそう、俺はウィッチじゃない。なんせ男だし...。」
「もしかして貴方が先日配属された特別少尉さんですか!?」
「ま、そんなとこかな。あんたら全員訓練生?」
「そうです!」
「んじゃ、まあ...頑張りなさいな。戦う目的ってのは忘れんなよ?それ忘れたらもう武器をとる資格なんざ無くなる。武器ってのは簡単に人、いや...人だけじゃない、生き物を殺しちまうんだ。そして、それらをあんたらみたいな遊び盛りかつ育ち盛りの女の子が持つべきもんじゃねえのさ、そんな物騒な代物。平和な世の中なら、どんだけよかったものかな。」
そう言うと、銃をホルスターに仕舞い訓練場を後にする。
訓練生達は全員首を傾げていた、ま...まだわかんないか、この意味が。
朝食を摂ろうにも、訓練生達が必死に俺の近くをキープしようもんだから安心というか心が安らがない。流石に俺も苦笑いしつつその場にはいるが...。どうしたもんかね。
そんな時、上官さんが訓練生を叱りその場は静まったが俺も何故か起こられた。
「どうしてあなたもあなたで注意しないんですか?ザインベルグ特別少尉。」
「いや〜なんていうんですか?子どもは無邪気ってのが一番なもんですよ。うん。」
「とぼけないでください!全く...少しの気のゆるみが思わぬ事故に繋がりかねないんですよ。」
「まあ、そうですよ...。すみませんでした、シャスノフスキー大尉。」
「わかればいいんですよ...?でも、また何かあったら言ってください?あなたも隊の家族同然なのですから。」
「なんだかすみませんね、はは...。」
怖そうなお姉さんだけれど美人で思いやりがあるんだな。大尉ってことはけっこうなお偉いさんなのか。
俺は上官さんの命令で飯を食べた後に、付近の都市の警備にあたっていた。こういった所に潜伏している可能性があるらしいんだと。
「よう、あんたが昨日来たっていう。」
「そ、ヨハン・ザインベルグ特別少尉。」
「少尉...!?すみません、慣れ慣れしくしてしまって。」
「いいのいいの、ただの傭兵風情なんだし。一つの軍の忠実なアンタの方がよっぽど偉いさ。こういう時くらいは緩く行きましょうや。」
「わかった、感謝するよ。」
「なに、堅苦しいのが嫌いなだけさ。んで、あんた名前は?」
「俺か?俺はアンドレイ・アサンコフ曹長だ。」
「わーった、アンドレイ。あんた魔女狩りの噂知ってるか?」
「ああ、聞いたことあるよ。オラーシャを中心に各地で活動してるっていう。嫌なもんだな、オラーシャは迷信深いからこういうのすぐ根付いちまう。」
「全く、大変だねぇ。それで警備の強化をしてると。」
「そういうこった、そろそろ着くぞ。」
「あいよ。」
俺とアンドレイは車を降りると、街の警備を始める。
「アンドレイさん、今日もお疲れさまだねぇ。」
「いえいえ、市民の安全が第一ですから。」
「アンドレイおにーさん!こんにちは!」
「やあ、こんにちは!」
へぇ...市民にも信頼されてるんだな。
昼間のオラーシャの都市を見回りし、困っている人を助けたりなんだかんだしたり、都市の人の意見を聞いたり。そんなこんなで夕方になろうとしていた。
「アンドレイ、少し耳をかしてくれ。」
「何だ?」
「声が大きい、一つばかり疑問なんだけどさ。」
「何さ。」
「今から言う事を聞いても、決して振り向くな。今、後ろから何者かが尾行してきている。少し小走りしてこの通路を曲がったらそこで待ち伏せる。いいな?」
「わかった?でも手荒な真似だけはするなよ?」
「あいよ、任せな。」
そう言って俺達は歩くペースを上げて通路を曲がる、路地裏だ。そして待ち伏せる。足音が大きくなり、速度も上がっている。そろそろか...。
黒いマントを纏った何者かが曲がり角に現れた瞬間、銃を抜きこめかみに突きつける。
「ハァイ!おたく、一体何者だい?あやしすぎないかい?さっきから俺達を付け回してるみたいだけど...。」
「っ!死ねぇい!」
奴はナイフを抜き、俺に向かって刺そうとする。
「危ない!ヨハンッ!」
「ったく...怖い怖い。」
俺は爪先に力を入れて後ろにさがる、それと同時にナイフを持つ相手の手を撃ち抜き、確保する。
「アンドレイ、基地に連絡。頼めるかい?」
「わかった。」
そうして基地に連絡を行い、連行することになった訳だが。
「ふふ....ふはははははは...!」
男は突然笑い出し、何かのスイッチを取り出す。
「っ!?まずい...!アンドレイ、逃げろ!そいつから逃げろ!」
俺は銃を取り出し、腕に照準を合わせるが間に合わず起爆装置を押した。アンドレイは捕らえた男の間近にいたため避難が間に合わなかった。
「嘘だろ...おい...。嘘だろ、さっきまで一緒だったじゃんよ...さっきまで、笑ってたじゃんよ...。お前はこんなところで死んで良いはずないだろ!市民に愛されてんだろ?だったら、だったらこんな所で死ぬなよおおおおおぉぉぉっ!」