「これより尋問を始める。貴様には魔女狩りの容疑がかかっている。指示した人物は誰だ。」
「し、知らない!俺はただ...!」
「そうか...。ならば貴様が活動するきっかけとなったものは?」
「そんなこと、どうだってい...ぐはっ!」
俺は奴の鳩尾に蹴りを入れる。
「おい、ザインベルグ少尉。無闇に危害を加えるな。」
「すみません、でも...ウチら、なめられてますよ完全に。ですから、そういう口をきけないようにしないと...そうでしょう?少佐。」
「ふむ、取り乱したな。では、質問だ。貴様らの組織の名は?」
「教えるか!」
俺は銃を抜くが少佐に止められる。
「よせ、まだ弱らせるのは良くない。何事も手順だ。」
耳元でそうささやかれると俺は銃を仕舞う。
その後、二時間弱の尋問を二名ずつに行なうが得られたものはなかった。
「ザインベルグ少尉、拷問は極力控えよ。いいか、ここはあくまで軍だ。泥沼の戦場でもあるまい。そして訓練生のこともある、地下とはいえ叫ばれれば訓練生も動揺する。わかったか?」
「はい...すみません。」
「ふっ、そうか。物わかりがよくて助かる、傭兵と聞いていたからどうかと思ったが。君はそうでもないな。」
「そうですか、ありがとうございます少佐。そうだ、少佐。この尋問に少佐は関わらないほうがよいかと。」
「何故だ?私の目があると何かあるというのか?」
「いえ、こういう汚れ仕事は私が行なうべきです。私は今まで地獄を見てきています。ですから、あなたの手は汚したくないんですよ。」
「なめるな、私とて戦士でありウィッチだ。戦場など...」
「なら、少佐は人を撃ったことがありますか?喉をナイフで裂いたことがありますか?」
「っ...。それは...。」
「ですから、少佐はその綺麗で優しい人でいてくださいな。」
「っ!貴様っ...こんな時間だからといって上官を口説くとは...たわけがっ...。」
そう言うと少佐は顔を赤くしつつ部屋へと戻った。ちっとばかり調子乗り過ぎましたかね。
夜だし部屋に戻ろうか、と思いつつ歩いているとあの銀髪の少女が見えた。確か、サーニャちゃんだっけか。
「よっす、ここで何してんのさ。」
「えっ!?そ、それは...。」
しばらくの沈黙が続く。
「あの...ね。今日の夜間哨戒はいいって言われて...。だから。」
「それでお暇になったと。」
サーニャは頷く。
「ちっとばかし、お兄さんとお話しないかい?」
またも頷く。
食堂に移動し、座らせると珈琲とミルクを入れる。
「あいよ、寒いだろ?」
「ありがとうございます...。」
ホットミルクを渡すと、サーニャはそれを冷ましながら飲む。見ていて微笑ましい。
そう思いながらコーヒーを飲んでいるとサーニャは俺を見ては目をそらしミルクを飲む。
「そういえばさ、サーニャちゃんって夜間哨戒してるっていうけど大丈夫なの?ほら、寒かったり、生活リズムだったり。」
「ううん...大変。でも、私がやらなきゃ...駄目、だから。」
こんな小さいのに...ここまで責任感があるのか。こんな小さいのに、こんな酷な仕事を任せてしまってるのか。なんだか、情けないよ。ほんとに。
「そっか、サーニャちゃんは偉いんだな。戦いって、怖いものなのにそこまで責任を持てるなんて、さ。」
「...?」
サーニャは首を傾げていた。
「ほら、ネウロイなんて訳のわからないものと戦ってるだろ?たとえウィッチでシールドがあるとしてもさ、怖いと思うよ。空から墜落すれば大怪我どころじゃないかもしれない。その間にネウロイに身を焼かれるかもしれない。それでも、君は戦うのかい?」
「決めたから...それに、私たちがやらなきゃ、皆守れないから。」
「そっか、ごめんね。なんだかバカな質問して。」
「ううん...それで、えーっと...。」
「ヨハン、俺の名前な。まぁ...呼びやすいように言ってくれて構わないよ。堅苦しいのは嫌いなのさ。」
「じゃあ...お兄さん...。」
「へ...?」
まさかその呼び方とは、参ったなぁ。
「っはは、ははははははっ!こりゃ一本とられた。いいよ、別に。もしかしてサーニャちゃんのお兄さんに似てたりとかしたの?」
「ううん...お兄様はいませんでした。一人っ子だから。」
「そっか、そんでサーニャちゃんのお母さんとお父さんはどんな人だったの?」
「凄く優しかった...。でも、避難したから会えないかも...。」
「そっか...、でも、生きてるだけ、いいや...生きているからこそまだ希望はあるよ。何年かかったとしても最後に会えればそれで勝ちじゃないか。」
「でも、忘れてるかも...。私のことを、忘れてるかもしれない。」
「あのさ、なんで僕が何年かかってもいいかなんて言えるかわかるかい?」
「...。」
「君の両親はとても優しい人間なんだよね?でも、なんで優しくできるかわかるかい?それはね、君のことがとてもとても大切で大好きだからなんだ。そうでなければ優しくなんてできるものか。ましてや、自分たちの唯一の子どもなんだ。そりゃあ、大切に決まってるじゃないか。」
「そう、だよね。私もお母様とお父様のこと大好き。」
「だから、生きていれば希望はあるんだ。逆に、死んでしまったら...もう、会えないんだ。笑えないんだ、一緒に何気ない日常を送ることもできないんだ。」
俺は俯きながらそう言う、凄く難しいことを話しているかもしれない。この子に厳しい現実を突きつけているのはわかっている。でも、でも...後悔だけはしてほしくないから。
そんな時、サーニャが手を握ってくる。
「ごめんなさい...辛いこと、言わせてしまって。」
「なんだい?君が謝る必要は無いよ。僕の両親もね、とても優しかった。すごく平和で、いつまでも続くと思ってたんだあの生活が。ネウロイがくるまではね...。」
「...。」
「ネウロイは僕の故郷を、町を、家を、家族を、全てを焼いていった。僕は唯一生き残ってね、仕事なんて無かった。だから窃盗もしたし、賞金稼ぎもしたし、傭兵にもなった。銃を握ったんだ。人を撃ったさ、手はとっくに汚れているさ。だから、君は僕のような人間になってはいけない、銃だったり兵器だったりを握るような手じゃないんだ君の手は。」
「...お兄さん、優しいよ?」
「それは、君が優しいからさ。だからこそ、優しくできる。それだけさ。」
お互いに飲み物を飲み終わると、それを片付けて部屋に戻る。
「なんだか悪いね、眠いだろ?もう。」
「もう慣れちゃったから...でも、嬉しかった。」
「え?」
「だって...私だけ夜間哨戒だから、だから...誰とも仲良くできなくて。」
「そっか、わかった。これから何か相談があったら一人で抱え込まずにお兄さんに頼りなさい。」
「うん...。おやすみ。」
「あいよ、良い夢見なよ?おやすみ。」
俺はそう言うと自分の部屋に戻ろうとした、すると。
「こんな時間に小さい子と何してたんですか?ザインベルグ少尉。」
「いやはや、見られたからにはお口封じって展開にしなきゃ駄目ですか?アウゲーニャ・シャフノフスキー大尉。」
「まったく、そんな冗談言ってないでちょっと付き合いなさい?」
「はい?」
「あんな小さい子とは話をして、私とは駄目なんですか?」
「わかりましたよ、でも眠いんで手短におねがいしますよ。」
そう言うと連れられて格納庫で適当に座る。
「さっきの話、聞いてました。」
「あらま、盗み聞きなんて趣味悪いぞ〜?大尉。」
「もう、そうじゃないです!でも、あの子が人に心を少しでも開いてくれてよかったなって。」
「そうなのかい?大尉はあの子に目をかけてたんだな。」
「そりゃ...まあ...。私も夜間哨戒しますから。あの子以外だと私しかいないんです。」
「そうなのかい?大尉の固有魔法だかはなんかあるんですかい?」
「もう!さっきから...私はこれでも上官ですよ!言葉遣いは少し気をつけてください!まあ、別にいいですけど。」
「失礼しました。それで、固有魔法はあるのですか?」
「ああぁぁぁ、もう!なんか調子狂うから戻していいわよ!」
「はいはい、そんな怒ると老けるよ〜?大尉。」
すると、大尉の蹴りが弁慶の泣き所という扶桑でも恐れられる部位に直撃する。
「ってぇ...!アドバイスしたんですけど...!」
「貴方!女性にそんなこと言っちゃ駄目です。もう...私の固有魔法は熱源感知、いわゆる熱源を感知したり、あとは目視によって熱源が視認できるっていうもので...。ですからネウロイもそれで視認できるんです。」
「凄い固有魔法ですね、でも...そんな美脚は人を蹴る為に使わず歩く為に使ってください。」
「誰のせいだと思ってるんですか!ほめても無駄ですよ?」
「そりゃあ悪ぅございましたと。」
「あとね、あの子のこと。面倒みてあげてもらっていいかしら?」
「ま、出来る限りはする所存ですとも。」
「じゃ、おやすみ。良い夢を。」
「へいよ、あんま夜更かしすんなよ〜?お肌に悪いから。」
「はいはい、忠告どうも。おやすみなさい。」