それから数日、作戦を練りつつ機会を伺っていたそんな時であった。
「何?聞こえないんだけど。」
「ご、ごめん...気づかずにぶつかっちゃって。」
「何?私を居ないもの扱い?そうだよね、アンタって少佐や他の上官から一目置かれてるからって私たちのこと眼中に無いんでしょ?」
「そ、そんなこと...。」
誰かが揉めている、俺は少し気になったのでその現場をちらっと見てみる。サーニャと他数人が揉めているみたいだ。
「そうよね、あんたには固有魔法もあってナイトウィッチだってこともあって私たちとは違うとでも思ってるんでしょ!」
「そ、そんなことないよ。」
「嘘つきなさいよ、そうやって私たち見下してるんでしょ?そのくせして...アンタの方が影薄いし声は小さいし。この幽霊!」
「ちょっと、あなた達やめなさいよ。少しぶつかったくらいでそこまで言う必要あるの?」
イリヤ曹長が止めにはいる、しかし肝心のサーニャは目に涙を浮かべそのまま走っていってしまう。
「おいおい、そこまで言う必要ある?というか半分以上君の妬み...違うかい?」
「そ、それがどうかしたのよ!まさかアンタ、自分のお気に入りを庇う気?」
「そうやって気に入るだかそうじゃないだかって...あのなぁ、あいつは別に気に入られたいがためにウィッチになった訳じゃないし、あいつは今でも一人で家族から離れて、家族がどこにいるかもわからないまま必死に戦ってるのさ、それに自分が貴重なナイトウィッチとしての能力を持っているからこそ責任を持っているし、それに夜中まで頑張ってるんだよ。普通なら朝起きて夜寝るだろ?でもあいつはその逆をしてるんだ、どれだけ辛いか想像したことあるか?」
「な、何よ...。」
「一つだけ言っておく。簡単に他人を傷つけるようなことを言うな、それもただの妬みとかでね。言葉っていうのは、誰かを救うこともあるし、その逆...つまり使い方を間違えれば誰かを傷つける。そしてその傷が一生そいつに残ることだってある訳さ。」
「...っ。」
そんな時、聞き慣れた声が聞こえる。
「ほら、あんたはあの子を追ってあげなさいな。今必要なのは助けてくれる王子様だろ?悔しいけどここはあんたが行ってあげなさいな。ここは私に任せな。」
「あいよ、借り作っちゃいましたね。シャフノフスキー大尉どの、んじゃ...行ってきます。」
俺は急いで後を追う、そして外を出ようとした時に師匠を見かける。
「師匠、銀髪の小さい女の子見なかったかい?」
「おや、まさかお前...あぁ、そうかそうか。ついにお前はそんないたいけな小さい子を...」
「あのなぁ、今は冗談言ってる場合じゃねぇの。」
「わかっているさ、あの子なら泣きながら私にぶつかり走っていった。けど時間たっているし少し遠いんじゃないか?お前のほうが足は断然速いとは思うが...。」
「わかった、ありがと師匠。」
「ちっと待て、ほらこいつ。」
「ん?無線?」
「ああ、何かわかったら知らせる。」
「あいよ。ありがとさん師匠。」
「ふんっ、馬鹿弟子の面倒も見れずして何が師匠だ。ほら、行ってこいロリコン。」
誤解されるようなこと言わないでくれよ、まったく。俺は外に出て探しにいく。外はやはり寒い、さすがオラーシャの気候といったところか。
何十分か経った頃だろうか、無線から声が聞こえる。
「聞こえるか?バカ弟子。」
「あいよ、なんかわかりました?」
「少し待ってろ。ほら、出番だぞアナスタシア中尉。」
「ん...。了解。聞こえる?ザイベンルグ少尉...。」
「あぁ、少佐の部下の。んで、何ですか?」
「あの子はおそらく近くの町行きの輸送トラックに乗り込んでる...。」
「なんでわかるんだ?もしかして透視か何かです...?」
「たわけ、アナスタシア中尉の固有魔法は聴力強化。つまり私があの子につけておいた発信器の特殊な音波を感知しているんだ。」
へぇ、流石師匠。抜かりがない。
「そんで、その都市の方向ってわかります?」
「基地から南東...。だけど少し遠いかも...、っ!?」
「どうした、アナスタシア中尉!」
「トラックが数台の車に囲まれて...まさかあれは!」
「どうした!」
何か嫌な予感がする。胸騒ぎがする...頼む、何も起こらないでくれ。
だがそんな期待は裏切られるなんてこの時の俺は知る由も無かった。
「待ちなさい!そこの者!」
「へっ、動くんじゃねえ!こいつがどうなってもいいのか?えぇ?」
「っ!この下衆...。」
「おいおいこの嬢ちゃんオラーシャ軍か?ならウィッチか...へへっ。」
「やめっ...やめてください。」
「魔女のくせに指図する気か?えぇ?」
「やめなさい...、人質なら私が代わりになります。」
無線から聞こえるそんな会話。そんな時に師匠がアナスタシアとの無線とは別に俺に言う。
「いいか、よく聞け。今からあの子を助けると同時に奴らを根絶やしにする。基地に戻って私の車に乗り込め。いいな?」
「わーったよ...畜生。」
俺は走って基地に戻る。幸いそこまで離れていないのですぐに戻ることはできたがその間。
「あんな無線持ってんだろ?ならそれを外せ。」
「っ!」
「ちっ...ならこれでも喰らいやがれ!」
「なんの真似...っ!?」
そして基地につくと師匠が乗るよう催促した。
「速かったな、馬鹿弟子。」
「今はそんな気分じゃない、全部説明しろ。」
「ふんっ、らしくなってきたじゃないか。いいだろう、全力で飛ばすが舌を噛み切るなよ?」
「あんたこそ、会話中に噛むなよ?」
「たわけ、私を誰だと思ってる。」
「人類最強の敵にまわせば最期のやべぇ野郎だよ。」
「ふんっ、冗談はさておきだ。中尉が無線を落とさなかったのは幸運だ。それであちらから無線で行き先を行ってもらえれば私とお前で突入する。」
「んで、まずどうするのさ。」
「変装して奴らのアジトに入る。そして救出後に呼んだ護衛に引き渡し私達で奴らを皆殺しだ。」
「へぇ、そんで?」
「私は一度潜入したことがあるが、あそこはクソだな。悪趣味にも程がある、あんな場所いくくらいならお前と夜を過ごした方が遥かにマシだ。」
「なら、今夜どうです?」
「いいな、ただし貴様を縛り上げ痛めつけることしか私はせんぞ?」
「SMなんて俺の趣味じゃない。勘弁してくれ。」
そこで無線が入る。
「すみません、大佐。」
「大佐はいい、それでどうした中尉。」
「閃光手榴弾にやられた後、私は魔法力が一時的に使用できなくなりました。一体これは...。」
「...そうか、奴らの車の音から方向を指示してくれ。」
「魔法力が使用できない...一体どういうことだ?」
「さあな、だがあやつらの怪しい魔術だろうな。魔女を嫌う者が魔術に頼るなど、矛盾にも程がある。」
「大佐、大佐の車から西へ10kmおそらく例の場所でしょう。」
「ふんっ...なら飛ばすぞ。今なら間に合う。ショートカットで突っ込む。」
「なっ...あんた正気か?」
「たわけ、私にできないことか。」
こうして師匠の無茶な運転で気分を悪くしながらも例のアジト付近までついた。
「ここからはこのローブで素顔を隠し、教典を持ち、合い言葉を問われたらこう答えろ『魔女を滅するは平和への道しるべなり』と。」
「あいよ、了解。」
話を聞きながら装備を整える。銃弾の装填よし、マガジンも十分に用意よし、コンバットナイフも予備までよし。さてと、行きますか。