魔法使い二人と筋肉が行く!!   作:マユ太

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プロローグ

2138年

 

 

この物語の主人公である青年。

高橋(たかはし)(ナギ)は自身が開発に(たずさ)わった作品のサービス終了日に向け、仕事の休憩時間と私的な時間を利用しては自身のキャラクターの魔改造に励んでいた。

 

「先輩。自分のキャラクターとNPCをかなりチートに魔改造しているみたいですけど……。

これって、先輩の願望ですか?名前も同じだし。

後、設定もかなり細かい」

 

「いや、このキャラクター達には元ネタがあってな。

俺の爺さんが若いころに愛読していた漫画のキャラクターだよ。

でも、自己投影や自身に対するこう有りたい。

なれたら面白いな、と言う願望がないと言ったら嘘になるな。

NPCもこんな彼女や男友達が欲しいと思った事もある」

 

「へぇ~。

あ、金髪巨乳美女が好みだったんすね……。

俺も大好物です」

 

「お、分かるか?

しかも、デレの多いツンデレだ」

 

「おお、先輩の願望が駄々洩れっすね。

俺、先輩のそんな所、嫌いじゃないっす。

でも、この筋肉ムキムキの男は無理っす」

 

後輩とバカな会話を繰り広げながら彼はVRMMORPG「ユグドラシル」のサービス終了日に向け、趣味の赴くままにキャラクターを改造する。

もちろん、ゲーム会社の人間がチートなキャラクターを使ってゲームのバランスを崩す行為は違反行為である。

しかし、業界内ではゲームのサービス終了日に遊んでくれているユーザーに迷惑を掛けない、目立たないのであれば『ゲーム最終日を快適に過ごしてもらう為のバグ探し』と言う、名目の元。

自身が制作に関わったゲームで遊ぶ事はよくある事だ。

 

それに、ネットゲームのサービス終了の原因はユーザー達の激減で、チートでバグなキャラクターの一体や二体が暴れた所で誰も気にしない、気づかないのが現実だ。

 

会社に入社して初めて自分達で作ったゲームの現在の状況に寂しさを覚えながら、仕事の休憩時間や自分の時間を削って彼は今日も自分のキャラクターを改造する。

 

VRMMORPG「ユグドラシル」での最後で最高の思い出を作る為に。

そして、運命の日がやって来る。

 

 

 

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

 

「ユグドラシル」最後のこの日、凪は自分が育てた後輩たちの優しさと努力のおかげで、会社での仕事を全て終わらせた。

そして今、サービス終了間近のゲームの点検という名目で最後の思い出作りをしている真っ最中である。

 

 

……………。

 

 

「アースガルズか……。

懐かしいなぁ」

 

ゲーム内に存在する九つの大陸が存在し、ここはその内の一つである広大な草原と森が主な地形のマップ《アースガルズ》。

そこに魔法使いの姿をした赤毛でイケメンなアバターが従者であるNPCを連れて、過去に思いを()せていた。

 

サービス開始を始め、人気絶頂期には沢山のアバターがこの平原を駆け回って居た。

しかし、現在は赤毛のアバターと金髪爆乳美女と筋肉ムキムキのNPCの三人とオークやゴブリンと言ったモンスター達のみ。

 

「よし、マップには俺以外は誰も居ないし……さっそく魔法を撃って見るか」

 

赤毛のアバターが魔法の範囲を指定しコマンドを入力。

すると、天空から雷鳴が迸って、大地に降り注ぐ事によって瞬く間に地上のモンスター達を薙ぎ払う。

 

放たれたのは《千の雷》。

ナギがアバターの元になったキャラクターが得意とする大魔法である。

その威力はすさまじく、フィールドの大地を一瞬にして抉った。

 

「おおう、まさにチート……エフェクトもカッコよかったし、我ながら良い仕事をした。

MPも全然減ってないし、MP自動回復とMP使用三分の一化も正常だ」

 

この大魔法は相当なMPを食う超位魔法に相当する火力を持ち、MPの使用量もそれに伴い膨大だ。

しかし、ナギのパソコンにインストールされたGMが持つ特殊なツールを使う事で、希少なスキルを張り付け、大魔法なのに第三位階程度の魔力消費で扱う事が出来る。

しかも、HPおよびMP量の自動回復速度も最大にされているので瞬時に最大回復するという無敵ぶり。

 

まさに、中学二年生が想像する『僕の考えた最強の魔法使い』であった。

 

 

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23:55

 

九つの大陸マップを巡り、入社したての時代を思い出しながらゲームを楽しんだナギ。

リアルの彼は目じりに涙を溜めながらサービス終了の時を待った。

 

「十二年か……あっという間だったな」

 

自分が制作携わったゲームの初めてのサービス終了。

彼には自身の身内の葬式のような印象を思わせた。

 

時代の流れ……新しいゲームが出来ればこうなるのは当然の結果だ。

これからも自身が制作に携わったゲームは、時代の流れに置いて行かれて消え去っていくだろう。

だが、自分は決して忘れないと目の前の光景を目に焼き付けながら、ナギはユグドラシル最後の時を迎えた。

 

00:00

 

迎えた……

 

 

「ん?…寒ッ!!?」

 

 

はずだった。

 

 

フライの魔法で空からNPC達と共にユグドラシルを眺めていた。

しかし、彼が空から見ていたユグドラシルの光景は切り替わり、下にあるのは平原と大きな街。

しかも、辺りは暗く肌寒い(・・・)

 

「あれ?…なんで?」

 

仮想現実の世界で寒さを感じ、現実(リアル)で自分の体に何かあったと思い至ったナギはコマンド表示を行うもコマンドは一切表示される事はなかった。

 

「おいおい、サービス終了の日にまさかの事故!?

GMの担当者はなにやってんだ!?」

 

寒さを忘れてGMの担当者にイラつき、空の上で怒鳴り散らすナギ。

思い出のゲームの最後にケチを付けられた彼の怒りはすさまじい。

だが、ここで彼の怒りを吹き飛ばす異常事態が発生する。

 

「落ち着け、バカ野郎」

 

「あだッ!」

 

ナギの後ろに居たNPCがナギの頭頂部に拳骨を振り下ろしたのだ。

頭頂部を両手で抑えたナギは勢いよく拳を振り下ろしたNPCを見る為に振り返る。

 

「お前は俺達『紅き翼』のリーダーだろ?

この状況に動じるのは分からなくもないが、少しは落ち着けや」

 

「まったくだ。

筋肉ダルマもたまにはいい事を言う」

 

振り返るとそこには動かいないはずの表情を動かし、ナギを安心させるように不敵に笑うNPC達が居た。

 

「エヴァンジェリン……ラカン…?」

 

「ん?どうした?そんな狐につままれたような表情をして……」

 

「やべ、もしかして強く殴り過ぎたか?」

 

唖然とするナギに語り掛ける、ボンテージにマントを羽織った金髪美女と紅いバンダナに赤いジャケット、黒いジーンズの筋肉隆々の男。

この二人はナギの元ネタとなる原作コミックに登場するキャラクター達を元に制作した最強ランクの魔法使いと戦士。

その二人がまるで人間の様に表情を変え、語り掛けてくる。

 

これは夢か幻か。

 

凪はこの日、最強無敵の魔法使いナギ・スプリングフィールドになった。

 

 

 

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