魔法使い二人と筋肉が行く!!   作:マユ太

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3話

エ・ランテルより北にあるギガントバジリスクの数が最も多いとされるアザルシ山脈付近に広がっている荒野に向かう紅き翼。

彼等は現在、街の周辺で討伐対象であるオーガと対峙していた……。

 

「グルル……」

 

「オーガ……ねぇ。

確かに醜悪な外見だが、強さはまるで感じねぇな」

 

「だな、動きも鈍く弱そうだ。

見ろ、いっちょ前に威嚇をしているぞ」

 

「………」

 

こん棒を持ち唸り声を上げながら威嚇してくるオーガに対し、ラカンとエヴァンジェリンは呆れた表情でそれぞれの評価を口にする。

そして、元一般人の人間に過ぎないナギも、驚くべきことに彼らと同評価なのだ。

平和な環境で育った自分がゲームではない現実で人間を食べると言う醜悪な怪物と出会う。

もし、彼がナギではなく凪であったのなら震えあがっていただろう。

しかし、今のナギは大柄な筋肉ダルマであるラカンを超える巨体を持つ、オーガが見た目よりも非常に弱く感じた。

 

もしかして、自分はナギの経験値…もしくは設定による影響をうけているのだろうか?

ナギが心について不安を感じていると、グシャァ!と果物を潰したような音が周辺に響いた。

無視できない音に思考の海から浮上したナギは目の前の光景に唖然とした。

 

「やっぱ、見立て通りだな。ワンパンで終了したぞ」

 

「おい、もうちょっと綺麗に殺せなかったのか?

見ろ、討伐部位である耳が脳漿(のうしょう)と血液の海に沈んでいるぞ。

貴様が責任をもって回収しろよ」

 

「へいへい、分かったよ。

にしてもクリスタルは出てこねぇんだな……。

なんか不思議な感じだぜ」

 

何と、ラカンの構えもへったくれもないテキトーに振られた拳がオーガの顔面に突き刺さり、そのままオーガの頭部を粉砕したのだ。

頭部を粉砕されたオーガは血液を傷口から噴き出し、そのままゆっくりとした動作で地面に崩れ落ち、大地はオーガの血液が染みわたる。

素人が見たら卒倒する光景だった。

 

こうして、紅き翼の初めての戦闘はラカンのワンパンで終了した。

汚れた耳はラカンによって回収され、ナギのアイテムボックスに収納された《無限の水差し(ピッチャー・オブ・エンドレス・ウォーター)》。

リアルを今の技術で許される限り再現するように制作したユグドラシルには疲労・空腹・喉の渇きがあり、それを癒す為の魔法のアイテムの一つだが、今回はオーガの耳を洗浄する為に使われた。

 

ガラスと思われる透き通った素材で出来たピッチャーから出てくる水によって洗浄されたオーガの耳はナギのアイテムボックスに仕舞われた事でナギ達の受けた依頼は達成された。

後は討伐部位を冒険者組合に提出する事で報酬が貰えるだろう。

 

「じゃあ、さっそくギガントバジリスクが発生しやすいナントカって言う山脈周辺にある荒野に行こうじゃねぇか!

っと、いうわけで頼むぜ、お二人さん」

 

「はぁ…分かった」

 

オーガに対する自信が下した評価と、ラカンのワンパンの衝撃で幾分か不安が解消されたナギはアイテムボックスから一枚のカードを取り出した。

 

来れ(アデアット)

 

取り出されたカードはナギの唱えた言葉に反応し、一瞬だけ光り輝き、ナギの手から消失する。

そして、カードと入れ替わるようにナギの周囲に浮遊するカメラの付いた拳大ほどの大きさ持つゴーレムとナギの目の前にそれぞれのカメラが映す映像とマップの様な画面が召喚された。

これは、凪が『ネギま!』を意識して制作したレジェンドでもワールドアイテムでもない特殊な魔法アイテム。

アーティファクトである。

 

仕様もゲームのままの様でゴーレムを移動させたいエリアにマップ画面をタップすると一瞬でゴーレム達は掻き消え、映っていた映像も目の前の森林近くの光景ではなく荒野の者へと切り替わった。

どうやら、ゴーレム達は転移の魔法によってナギがタップした場所まで転移したようだ。

 

「本当に何もいないな……」

 

「受付嬢の話だとギガントバジリスクの繁殖期らしいからな……。

荒野に住んでいる動物や弱いモンスターは森に避難するのが通例らしい。

そのせいでギガントバジリスク達は餌を求めて人間の生活圏まで我が物顔で進行してくるわけだ」

 

「まあ、そのおかげで私たちは周りを気にする事なく攻撃が出来るがな」

 

ゴーレムを操作しながら広範囲で受付嬢から話と同じ特徴を持つモンスターを探すナギとその後ろから画面を眺めるラカンとエヴァンジェリン。

しばらくゴーレムを移動させている大きな岩を彷彿とさせる巨大な爬虫類モンスターが移動している姿を発見した。

 

全身を緑色の鱗が覆い、王冠に似たトサに丸太を連想させる八本の足。

受付嬢の話だと鱗はミスリルに匹敵する硬さを誇り、体内に流れる血液は即死級の猛毒。

そして、ギガントバジリスクの名を最も有名にしているのが《!石化《せきか》の視線》。

その瞳に見つめられた者は対策がなければ即座に肉体を石に変えられてしまう。

そして、この力の最も恐ろしい部分は距離で減退する事がなく、地平線の果てに居ようと関係なく発動するらしい。

 

一体で町を滅ぼしたという記録がある、最強の魔獣の恐ろしい風貌。

画面に映るギガントバジリスクの映像を見つめるラカンとエヴァンジェリン達の反応は……。

 

「うーん、大したことねーな。

さっきのオーガと大差ねぇだろ」

 

「ただの大きな蜥蜴だな……どうするナギ。

一応視線に映らない上空から攻撃を仕掛けてみるか?」

 

特に警戒した様子も見せる事なく、ただの大きな蜥蜴と切って捨てられた。

もし、この世界に存在するアダマンタイト級冒険者がこの場に居たら『ふざけるな!!』と怒鳴られて居ただろう。

ナギも凪のままであったなら『こんな怪物と戦うなんてありえない!!』と二人に向かって叫んでいたはずだ。

しかし、今の彼は自身が創り上げた最強無敵の魔法使い。

オーガに感じた同じ感想をギガントバジリスクに感じた事でようやくナギは悟った。

 

(俺の体は見た目だけではなく…完全にナギになってしまったんだな)

 

そして、同時に吹っ切れた。

もはや自分は見た目も人間もやめて、現実としてこの世界で立っている。

会社・後輩・家族・友人に後ろ髪を引かれるものは沢山あるが戻る術は未だになく、目の前には幼いころから自分が夢見た光景がある。

未知なる敵に、頼りになる仲間達。

彼は故郷を思いながら、この夢のような世界で生きる覚悟を決めた。

 

「よし!じゃあ正面から行くか、景気よく一発ぶちかまそうぜ!!

去れ(アベアット)》!!」

 

「お、ようやく吹っ切れたか?」

 

「フン、ようやくいつものお前らしくなったな。

では行こうか……《異界門(ゲート)》」

 

ゲームをプレイしていた時のようなナギの姿を見て笑顔になるラカンとエヴァンジェリン。

ナギが出していたゴーレムを消失させ、一枚のカードに戻した所でエヴァンジェリンの魔法が発動する。

三人はエヴァンジェリンの発動させたユグドラシルにおける最上位の転移魔法によって荒野へと移動し、ギガントバジリスクの前に躍り出た。

 

「グォオ?」

 

「おっほ、やっぱりこの程度の魔眼は無効かされるみたいだな。

じゃあ、ナギ。

一発かましてくれや」

 

「そうだな…。

まかせたぞ、リーダー。」

 

「おう!」

 

突然現れた、三人に一瞬戸惑いを見せるギガントバジリスクに躊躇する事なく右腕を掲げる取ナギ。

掲げられた手の指先に魔力の奔流が集中する。

ナギが異世界で初めてコマンドなしで執行される魔法。

彼にはナギに覚えさせた魔法が取るように全て解った。

 

「グォオオオ!!」

 

「《雷の斧》!!」

 

振り下ろされたナギの指先から斧の刃に似た巨大な雷がギガントバジリスクの正面に放たれる。

上段から放たれた雷の刃はギガントバジリスクの体を真っ二つに切り裂き、地面を割った。

そして、左右均等に割られたギガントバジリスクは傷口から焼け焦げたような匂いを辺りに放ちながら右半身と左半身はゆっくりと左右に倒れた。

ほんのわずかに懸念していた血液に関してだが、倒れた半身断面は焼け焦げており、猛毒の血液が噴出される事はなかった。

あっけなく終わったと思うギガントバジリスクの戦闘。

 

だが……。

 

「さて、景気よく一匹倒した事だし……。

こいつ等には魔法の実験体になってもらおう」

 

「そうだな。向こうもやる気満々のようだし、俺様も運動するかな」

 

「ククク、こいつ等の生首を持って帰れば、受付の女も相当驚くだろうな」

 

ナギ・ラカン・エヴァンジェリンを囲うようにして現れた新手のギガントバジリスク達の登場によって彼らの戦いは終わらない。

どうやら、餌を求めてさまよっていたギガントバジリスクが地面を割った魔法による破砕音を聞いて集まったようだ。

ナギ達は楽しそうな笑みを浮かべてこちらに向かって飛び掛かる姿勢をみせるギガントバジリスクに先手を叩き込んだ。

 

「《雷の暴風》!!」

 

「《ラカン適当パンチ》!!」

 

「《闇の吹雪》!!」

 

もはや、最初の一頭以外は討伐部位はいらないと言わんばかりに放たれる極太の一撃。

 

片や拳と共に突き出された雷と暴風の嵐でギガントバジリスク数体を地面を切削機のように抉りながら紙屑の様に吹き飛ばし、体をバラバラに砕く。

 

片や、上空から地上に居る複数のギガントバジリスクを拳圧によって圧殺。

地面には拳のクレーターが出来上がった。

 

片や、雷の暴風と同系統である吹雪と闇の一撃を放つ。

愛してやまない男の一撃と似た技を放ちたいと魔法をチョイスした理由は可愛らしいがその一撃は数多のギガントバジリスクを他の仲間に負けず劣らずの威力で屠った。

 

ギガントバジリスクが最も凶暴となる繁殖期で数多のギガントバジリスクを地形を変える程の力で討伐した紅き翼。

 

こうして、この世界の歴史に名を刻む彼等の伝説の一ページ目が刻まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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