魔法使い二人と筋肉が行く!! 作:マユ太
三話から読み事をお勧めいたします。
バラバラになったバジリスクをアイテムボックスに収納した紅き翼は転移魔法を駆使しながらエ・ランテルの冒険者組合にたどり着き、オーガとギガントバジリスクの討伐部位を換金の担当に渡したのだが紅き翼は報酬を貰えないでいた。
「さて……紅き翼の皆さん、ギガントバジリスクの鱗と、この生首をどこで盗んできたんですか?」
いつも荒くれ者な冒険者達で騒がしい組合がギガントバジリスクの討伐部位や生首が換金所のテーブルに晒され沈黙が支配するなか、生首を見てもひるまない頭の寂しい豪胆な担当の声だけが響く。
どうやら、登録した当日にオーガのみならずギガントバジリスクを討伐した事で討伐部位を金で買ったと疑われているらしい。
「いやいやいや!!何度も説明したよね!?
俺達が討伐したんだよ!!」
「いいですか?仮に貴方達が相当な実力者だとしてもですよ?
たった半日で山脈周辺から帰ってこれるわけないでしょう!!」
「だから、転移魔法で帰って来たって言ってんだろこのハゲぇぇえええ!!」
ラカンとエヴァンジェリンにイライラが募る中、必死にナギが説明するが会話は平行線のまま。
あまりに頑固な換金担当の男についにナギがブチ切れた。
「ハゲ?今、ハゲっつたか?
冒険者クビにっすっぞ鳥頭ぁあああああ!!」
「やれるもんならやってみやがれ!!このパチンコ玉がぁあああ!!」
お互いが胸倉を掴み合い、取っ組み合いが始まろうとした瞬間。
「静まれぇええええええええ!!!」
「「!?」」
一人の老人の咆哮によって二人の取っ組み合いは、始まる事なかった。
老人は二階から一階へと飛び降りナギと換金担当の男を睨み付け一喝した。
そして、目の前に降り立った老人の容姿を見て、紅き翼は驚愕した
その老人は人間離れした頭部に長い髭と長い耳たぶを持った姿をしており、ゲームやアニメで例えるなら仙人や妖怪によく似た容姿をしていた。
「全く、さっきから何を騒いでおるか!!」
「く、組合長…実は……」
老人の登場にいち早く対応したのは換金担当の男。
彼はナギの行ったと思い込んでいる不正について説明した。
「ほう…ならば、その転移魔法とやらで移動させてもらえばよい。
ついでに、戦った時に使ったと言う魔法や技も目の前で見せてもらい、荒野で痕跡が一致すれば問題なかろう。
勿論、彼らの報告が本当であるならば……のう?」
「それはいい考えですな、組合長。
出来なかったら冒険者登録を抹消と言う事で…」
換金担当の男の説明を受けた組合長は、頭から否定するのではなく証拠を見せるようにナギ達に提案した。
だが、その目は嫌らしく『出来ないだろぅ?』と語っていた。
換金担当の男も、ナギ達の冒険者登録を抹消出来るチャンスだと思い、笑みを浮かべながら組合長の提案を支持した。
「……本当だったらどうするんだ?」
「ほ?」
「ん?」
妖怪組合長の登場で頭が冷えたナギは冷静に組合長に質問した。
彼の後ろに控えているエヴァンジェリンやラカンも口を出す事なく、自分たちのリーダーを見守っている。
「そうじゃのう……もし、本当だったらこっちもけじめを付けなければならないのう。
こやつのクビでどうかな?
証拠や確証もないのに不正と
「へ?」
妖怪組合長の提案にあっけを取られる換金担当の男。
まさか自分が責任を取らされるとは欠片も思っていなかったようだ。
「ちょ、ちょっと待ってください組合長!!
私はここの職員として十年以上も務めて来たベテランですよ!!」
「ベテランだろうが新入職員じゃろうが、換金担当が冒険者に信用されなくなったらダメじゃろうが。
当然、それなりの覚悟と自信があって彼等が不正したと騒いでいたのじゃろう?」
「だって、あり得ないでしょう!!ギガントバジリスクを48頭ですよ!?
しかも、彼らの話では自分たちの火力が有り過ぎてミスリルと同等の硬度を誇るギガントバジリスクを粉々にしたと言うのです!!
それを信用するのは頭のイカれた異常者か、金を握らされたかのどちらかでしょう!!?」
まさかの事態に必死に抗おうとする換金担当の男。
換金担当は責任が重い役職であるが故に給金は高い。
十年以上も務めて昨年、ようやくこの担当になった彼は必至だ。
「なら、良いではないか?
……グダグダ言ってねぇで腹ぁくくれや」
「ヒッ!?」
元ミスリル級冒険者である組合長のドスの効いた声に怯む換金担当の男。
そこにナギは割り込んだ。
「そのハゲのクビじゃあ、足りねぇよ。
疑われた慰謝料とアダマンタイトの称号をよこせや」
『はぁ!?』
「ふむ……あい、分かった。
もし、本当であったならば、お主をアダマンタイト冒険者にする事を組合長の名に賭けて約束しよう。
慰謝料は……銀貨32枚でどうかの?
勿論、お主らが不正しておった場合は逆に支払ってもらう事になるが、いいかのう?」
『正気か!?』
銀貨32枚は王国の価値では家族三人がつつましく3年は暮らせる大金だ。
とてもではないが慰謝料で払われる金額ではない。
しかも、事の成り行きを見守っていた冒険者たちは最強の冒険者の証であるアダマンタイトの称号を要求するナギや組合長の提示した金額だけではなく、アダマンタイトに昇格する事を認めるという発言に仰天しているたのだが……。
「俺達、ここに来たばかりなんだが……それってどれくらいの金銭価値があるんだ?」
『……』
事情を知る受付嬢以外のすべての人間がナギの言葉に沈黙した。
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組合長から懇切丁寧に硬貨の価値を教えてもらったナギ達は慰謝料の価格を承諾。
話がまとまり、野次馬が見守る中で検証部隊が編成された。
魔法の検証の為に派遣された魔術師組合の優秀な職員に組合長と換金担当の男。
さらには昨年ミスリル級冒険者になったベテラン冒険者であるプルトン・アインザックと紅き翼。
検証部隊が編成された所で一人の野次馬が声を上げた。
「おい!皆で賭けをしねぇか!?
俺は換金担当に銅貨10枚!!」
「いいねぇ!俺は銀貨1枚だ!!」
「おいおい、賭けにならねぇだろうが。
と、言いつつ、俺も換金担当に銅貨5枚な!」
男が始めた賭けの話に乗り出す冒険者達。
誰もが笑いながら遊び半分に換金担当の男に金を掛けていく中、一人の青年が声を上げた。
「紅き翼に、銀貨1枚!!」
誰もがふざけて換金担当の男に金を賭ける中、彼だけが紅き翼に賭けた。
「ガゼフ、正気かお前!!?
それって、お前の故郷への仕送りの半分じゃねぇか!?
後で後悔することになるぞ、今すぐ取り消すんだ!!」
「いいじゃねぇか、傭兵のお兄さん」
「そうそう、コイツは男を見せてるんだぜ?」
「その銀貨は俺達で分け合ってエールに変えてやるから安心しな」
事情をあまり知らないカモが来たと思った冒険者達は余計な事をこれ以上を言わないれ、カモが逃げないように傭兵の男の言葉を遮る。
「じゃあ、このテーブルにその銀貨を乗せな。
俺達も金を乗せるからよ。」
「分かった」
何処からかテーブルを借りて来た冒険者に促され、銀貨をテーブルの上に乗せるガゼフに盛り上がりを見せる外野。
誰もがガゼフが冒険者達に銀貨を奪われる姿を想像した。
ある者は憐れみを…ある者は呆れを…ある者は失笑を……。
様々な視線や表情がガゼフ青年に向けられる。
そんな時……。
「はっはっは!面白れぇ事してるじゃねぇか!!」
大声を出しながら編成隊から近付いてきた男が居た。
「じゃあ、もしも俺達が正しかったらお前らの出した
「お、おう」
当事者である冒険者チーム《紅き翼》のメンバーの一人、ジャック・ラカンだった。
筋肉と長身だけではない威圧感を感じ取った冒険者は腰を引かせながら返事をする。
「じゃあ…逃げんなよ?逃げたら……地の果てまで追いかけて、身ぐるみを剥いでやる」
「ヒィ!?」
ふざけた態度とは裏側に危険な何かを感じ取った冒険者は腰を抜かして、硬い道に尻もちを打つ。
冒険者のビビり様に満足したのか、ラカンはそのまま編成部隊へと戻った。
「俺…紅き翼に賭けるよ」
「私も……」
ラカンに何かを感じ取った数人の野次馬も参加。
レートは換金担当の男が7紅き翼が3となった。
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「何をやっているんだ貴様は?」
「いやぁ…つい」
編成隊に片手で後頭部を掻きながら戻って来たラカンを、呆れた顔で出迎えたエヴァンジェリン。
しかし、彼女はそれ以上の事をラカンに文句を言う事なく出発の時を待った。
彼女も自分たちを嘘つき扱いする弱者の言葉にイラついており、ラカンの気持ちを理解できたからだ。
「さて、検証方法に必要なマジックアイテムの準備も出来た。
さっそく、例の転移魔法とやらを見せて貰おうかの」
組合長の野次馬が息をのんで紅き翼の一挙一動を見守る中、エヴァンジェリンが片手を前に出した
「《
魔法名と共にエヴァンジェリンの前に現れた闇の渦。
転移魔法が発動したのだ。
闇の穴とも見える闇の渦にざわめく野次馬達。
組合長達は一瞬目を見開き、前に一歩出る。
「……では、行くとしようかの」
「ん?俺達の誰かと一緒じゃなくていいのか?」
「フォフォフォ。何、ワシもまだまだ現役じゃ。
それなりの目は持っているつもりじゃよ」
そう言って気負う事なくナギの提案を断り、ひょいっと躊躇することなくゲートに入る組合長。
こうして、組合長に続く形でゲートへと入っていく編成隊。
彼等がゲートの先で見たのは激しい戦闘の後が伺える見果てぬ荒野だった。
「ほう……これは幻術かな?
カミット君」
「いえ、幻術の類ではないようです」
幻術破りのマジックアイテムを使用して辺りを調査する魔術組合の職員。
これにより距離の問題は解決した。
「そ、そんな……!!もう一回調べてくれ!!これは幻術なんだろ!?」
自分の考えが間違っていたと、判定された換金担当の男は必死だった。
しかし……。
「いえ、このマジックアイテムは評価の高い代物です。
冒険者組合の職員ならよく理解しているでしょう?」
「た、頼む!もう一回、しっかり調べてくれ!!」
男の懇願に根負けしたカミットは男の要望通り、もう一度だけマジックアイテムを使用した。
「やはり反応はありませんね」
「ば、バカな……」
反応を見せないマジックアイテムに絶望する男。
彼の悪夢は終わらない。
「じゃあ、紅き翼の皆さん。
ここで使った魔法と技を使用してみてください。」
「おう!じゃあ、まずは俺様からだな」
カミットの要望に軽い調子で答えたラカンは上空へと飛んだ。
「ほう、フライの魔法ですか……。
彼は見た目からして、戦士職専門の冒険者だと思ったのですが……」
「速度も大したものじゃ。
第3位階の使い手で戦士とは……」
「オリハルコン級……いや、まさか本当にアダマンタイト?」
上空へと飛んだラカンへの評価を口にするカミットと組合長にアインザック。
しかし、その評価はエヴァンジェリンの一言で覆る。
「アホか貴様ら、あれはただ跳躍しただけだぞ」
「「「「は?」」」」
彼女の一言に呆ける紅き翼以外の4名。
彼女の言葉を測りかねていると、上空で構えを取ったラカンによってさらなる混乱へと彼等は叩き落される。
「《ラカン適当パンチ》!」
無駄に決め顔をとって、放たれた右ストレート。
その一撃はドン!という音と共に地面に拳のクレーターを作り上げた。
『ハァァアアアア!?』
4人は顎が外れんばかりの咆哮を上げ、地面に着地したラカンを目をこれでもかと見開いてみていた。
それを見たエヴァンジェリンはニヤリと笑い前に出る
「では、次は私だな」
「ちょ、ちょっとまってくれんか!?
色々と衝撃的過ぎるんじゃが……」
「検証をしたいと言ったのは貴様らの方だろう?
そら、《闇の吹雪》!!」
正面に向けた右の手の平から放たれる闇の吹雪。
大地がプリンの様に抉られる様を見ながら組合長達の常識が音を立てて崩れ去り、彼等の顎は外れた。
「さて、顎を直したら次は俺の番だな?」
正直、いろいろとお腹いっぱいであった組合長達はそれから顎を二度も外しながら、検証を続けた。
心に多大なる負荷を与えられた彼等だが、見事に検証をやり遂げ、真っ白に燃え尽きた元換金担当の男とエ・ランテルに帰還した。
検証結果は…言うまでもないだろう。