ARMORED CORE〜In the blank〜   作:シリアル

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第三話:ANTAC 四節

「……蹴った!?」

 

  窓の外の機体がとった予想外の行動に、僕は思わずそう声を上げる。

 

  まるで銅鑼(どら)を打ったかのような鈍い音とともに、巨人の「蹴り」をもろに受けた円形のターゲットは、その形状を大きく歪めてコンテナの上から転げ落ちた。

 

「たまげたな、こりゃ……」

 

  さぞ驚いた様子で、アーロンが小さく漏らす。きっと今の僕も、側から見れば彼と同じような表情をしていることだろう。

  ……なにしろ、いくら人の形状を模しているとはいえ、兵器が肉弾戦を行うなど前代未聞だからだ。

 

 

  その理由としてまず一つ、「実用性の無さ」が挙げられる。

 

  兵器が人間と同じ形状をとる利点は主に、武装が固定された通常の兵器とは違って様々な武装の運用が可能なところにある。多種多様な射撃武器が搭載出来るというだけでなく、特にACに関して言えば、近接攻撃用のブレード或いは––––実用に堪え得るような代物ではないが––––パイルバンカーが存在するというのに、わざわざ本体で直に格闘戦を挑む利点などどこにもなかった。

 

  それに、何より。「蹴り」の衝撃に、脚部の装甲が耐えられるとは思えない。先程のダミーターゲットのような脆い対象であれば大丈夫だろうが、自身と同等かそれ以上の耐久力を持つ対象へと蹴りをくらわせた場合、それを受けた相手はもちろん自らも無事で済むはずがないのだ。

 

 

  そのような要因から、これまで人型兵器に「蹴り」のアクションが導入されることはなかった訳だ。……しかし何故、あの機体にはその動作が取り入れられているのだろうか。

  どうも解せない。機体そのものの正体に関しては、ある程度見当はついているのだが……。

 

 

  それまで空中をふわふわと漂っていた黒い人型は、まるで頭上に繋がっていた糸が切れたかのように再びコンテナの上へと着地する。

 

 

「アンタック」

 

  バートランドがおもむろに口を開くと、その場の多くが視線を彼の方へと移す。

 

「兼ねてよりGA社が開発を進めていた第五世代型ハイエンド・ノーマルを基に、十二企業が共同で完成させた新型AC。従来から格段に堅牢となった装甲、大型ブースターの搭載による機動性の向上、そしてプライマル・アーマーの突破を可能とする高威力の武装……。設計の根本こそノーマルにあるが、こうまで原型からかけ離れてくると、区別のために新たな名前が必要となった」

 

 

  「プライマル・アーマーの突破」。彼のその言葉で、僕の内にあった疑念は確信へと変わった。

 

 

「Anti-NextType・Armored Core(対ネクストタイプ・アーマード・コア)、略してANTAC。我々は、『彼ら』のことをそう呼んでいる」

 

 

  そこまで聞いてようやく「あれ」の正体を悟ったのか、周囲にどよめきが起こる。

 

「『対ネクスト』ってことは、つまり」

 

  含みをもたせた口調で、アーロンが僕に尋ねる。

 

「……ああ、恐らくは」

 

  明言こそされていないものの、「あれ」が持つ役割は、もはや誰の目にも明らかであった。

 

 

「さて、遅れてになったが、今回の依頼内容を説明する。どうやら、この中の何人かは既に察しがついているようだが……」

 

 

  ––––対ネクスト戦闘に特化したノーマル機と、一堂に会した百戦錬磨のレイヴンたち。

 

  これらの要素から考えられる依頼内容は、ただ一つしかない。

 

 

「……諸君らにはANTACと共に、『首輪付き』の討伐をお願いしたい」

 

 

 

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