パンチラ系妖怪美少女学園での度し難い日々 作:ホモォンクルス
前回学園を賑わせた侵入者は、強盗団であった様だ。
判決は死刑ではなく、施設での厚生と言うことらしい。随分と甘いものだと思う。
新聞部には、選挙の為にもこの僕の活躍を宣伝して貰おうと思ったが、出来上がった新聞は、肩を貸すにも身長が合わない心愛を担いで出た写真が使われており、ロリコン疑惑が出そうだったので写真の差し替えを依頼したが、既に申請は下りた後だった。
ロリコン疑惑こそ出なかったが、暫く宮本にキツい視線を受ける様になった。
最早彼のロリコンは疑惑ではなく確定にしてよいと判断することにしよう。
赤夜には不必要なほどの感謝を受けたが、これはこれでよい。
赤夜が頭を下げる光景を見た下級生が多ければ、『僕>赤夜』という立場を理解することだろう。
仙童が赤夜を神輿にしたとしても、この事実は後に尾を引く。
…というか、最近になって、そもそも赤夜が会長に推薦されない可能性も出てきた。
こうなると、僕以外の候補者無くして当選と言うことになる。
それはそれで困る。
何故なら、選挙で選ばれたという事実が、学園の生徒が責任を持って選んだという投票者である生徒への枷になる。
枷になる故に、僕の命令に従う義務を負うわけだ。
しかし、選挙無しで当選した場合、自分達が投票したという意思の希薄さが、僕の立場の根拠を弱めることになる。
丁度良い対抗馬が螢糸辺りしか本格的にいない上に、その螢糸は会長に付く気が無いという。
それならそれでよいだろう。
そうなった場合には何も出来ませんという僕ではない。
選挙で勝ったという事実で権威を持つことが出来ないのであれば、他の所から権威を確保すれば良いだけだ。
それくらいのことはしっかりやってやろう。
卒業までにあと一年近くもあるのだから。
では、会長選挙のことは置いておき、部長としてのイベントをこなす必要がある。
即ち、新入部員の勧誘だ。
水泳部辺りは水着に身を包んだその肢体で誘惑して人数を稼ぐのだろう。
あの部は、一見清楚な女性が多いが、アレで河童以外肉食系*1だから後で後悔することになるだろう。
それと、精気を吸うにしても問題にならない程度の手柔らかさを持つ様に釘を刺しておこう。*2
ミイラ部は最早医療技術研究部と化して、将来医学の道を目指す者達が明確な意志でやってくるから勧誘が要らないのは羨ましい。*3
先日の騒動で、怪我人を手当した実績もある。
というか、されたのは僕だ。
既に傷口は塞いだというのに、お節介な連中だった。
新聞部はと言うと、露出の多いチアガールの格好で呼び込みをしていた。
他にも際どい格好で呼び込みしている部活もあるので、新聞部だけを責めるつもりは無い。
また、美術部の補佐に勧誘したが断った燈条瑠妃は、新聞部の顧問補佐になった様だ。
彼女がダントツでスカートの丈が危うい。
顧問補佐としての自覚がある様にはとても見えない。螢糸辺りに伝えておかねば。
…それにしても新聞部は女の色香で勧誘か。
数は稼げても、質は期待できそうにないな。
マンパワーが必要故に、人数合わせでも充分だと言うことなら言うことは特にないが。
我が美術部と科学部はと言うと、
美術部は作品で勝負する職人スタイルで行くつもりだ。
そう。これこそが、正統派部員勧誘。
素晴らしい。流石は我が部だ。
「部長、ちょっと良いですか」
「どうかしたか?」
部の後輩に話しかけられて内容を聞くと、どうやら彼女たちは積極的な呼び込みをしてみたいらしい。
…わざわざ部長である僕の許可を取りに来たことだし、それ自体を否定はしない旨を伝えると、彼女たちはいきなり制服を脱ぎだした。
まて、僕は男だと解っているのか?
顔で判断するな、僕は男だ。
汝姦淫するなかれ、色欲に惑うことなかれ。
…。
………。
何だ、下に着ていたのか。
「部長もしかして、期待…してました?」
そんなわけがないだろう。
全く、僕をなんだと思っている。
光が透けないタイプのレオタードを着た彼女たちは、自分達の白いレオタードをキャンバスにしていた。
各々が描いた絵を自らが纏うその姿は、一種のボディーアートとも言えなくは無い。
相手も身体ではなく、描かれた絵を見ていると答えられる逃げ道まで用意してある。
…意外と着痩せしていた身体は、少々キャンバスにしては立体的すぎるが、敢えて何も言うまいと判断する。
前の部長の妹である後輩がニヤニヤしているのだから、きっとそれを言ったら良くない結果がある事は計算しなくてもわかる。
割とギリギリの勧誘方法なので、後で螢糸に話を通すために公安委員会へと足を運ぶことにする。
勿論、僕の趣味では一切無いという大前提と共にだ。
一方、科学部の方は…。
「部長、偶然ですが惚れ薬が出来ました。デモンストレーションに使って良いですか」
「却下」
「部長、これ多分恐らく幼児化薬*4なのかも知れないんですけど、部の成果として…」
「解毒剤は?」
「無いです」
「却下」
「部長、この眼鏡を見てください。眼鏡を通してみると、衣服が全部透けて見えるんです。
しかも、視野が大きく広く見えて、ブルーライトもカット。しかもまちがって上から座って壊れないメイドインジャパン素材」
「却下」
科学というよりは、最早魔女の秘薬の領分に足を突っ込んだものをいつの間にか開発した優秀な部員達。
だが、優秀ではあるが、倫理観が少々足りない連中である様だ。
「一応火気申請や飲食の申請は取ってきたので、花火でも、炎色反応でも出来る。
ところで僕も案を考えてきた。少し聞いて欲しい」
不満そうな部員達から目を逸らし、僕が用意した案を披露する。
キナ油の入ったノンアルコールカクテル*5を、ブラックライトで光らせて配る。
以前、化学調味料バーもやったので、接客には少しくらい慣れただろうという見込みと、こういうイベントでもなければ女子生徒と話すのが苦手という部員に、接客というお題目を与えてやるという心意気だ。
しっかりとシャワーで身体を、特に髪を清潔にしてスーツで包んでやれば、ある程度は様になる筈だろう。
…そして、部費も稼ぐことが出来る。科学部は金食い虫で、予算が足りないのが基本なのだ。
無論、勧誘が目的なので、新入生には少しだけ安くしようとは思うが。
結局、美術部は作品展示会とボディースーツペイント展示。
公安には、レオタードキャンバスは割とギリギリだと言われたが、無事通った。
科学部は、ライトカクテルバー(ノンアルコール)となった。
スーツを着たり、拘束の範囲内で眉毛を細くして髪を染めさせたりした部員は、冷やかされたりもしたがどことなく楽しそうだと言えた。
両部とも、部の紹介は常に全員で行うのではなく、半数は自由行動。半数は勧誘として時間を分けることにした。
それによって僕は今、各部活を回り歩いているわけだ。
宮本が部長をしている空手部は、瓦割りの要領で墓石を何枚割れるかとかやっていた。*6
一回千円で、成功すれば賞金があるのだという。
難しいことでもない。
僕は、水分を強力に吸着して化合する液剤と、高濃度の玉水と呼ばれる酸性の劇薬を、墓石を十一枚並べさせた上からガッツリと振りかけた。
暫く待った後、手の周りを薄く妖力でコーティングして、殴り抜けた。
…元から殆どボロボロになっていた墓石*7は、当然の様に割れた。
「これで賞金は貰って良いか?」
「良いわけ無いでしょっ!!」
受付にそう言われてしまっては仕方ない…と諦めたくはないが、墓石割りを科学と拳の融合成果だと思ったのは僕だけだった様で、他の見学者もアレは無しだと言う様な顔をしていた。
こうなっては、最早何も言えない。
大人しく、次の部活へと回るとしよう。
裁縫部のブースを見た時には、良く解らないコスプレ*8をさせられた。
…コスプレというか、完全に女装だった。
未来の会長になんてことをさせるつもりだ。全く…度し難い奴らだ。
モアイ研究会や式神研究同好会はメンバーが少なかったが、内容は濃くて面白かった。
誰も残らなくなる程に争い奪う程の力の歴史*9や、相似する例えによって疑似生命を世界に容認させる技術。*10
少数精鋭の活動は十分に時間を使うに足るものだった。
そう、色香ではなくこういう正統派こそ、部活動紹介のあるべき姿なのだと思う。
吹奏楽部はラッパの音で新入生を操り入部させようとしていたので釘を刺しておいた。*11
声楽部は打って変わって真っ当にコンサートをしていた。
今の部長は人魚なのに水泳部に入らなかったことで色々あったと聞いているが、是非頑張ってほしいものだ。*12
野生動物調理部は実際に生き物を捕獲して血抜きや燻製などを展示するというので見に行くことにした。
場所は外にある森の方だったので、行ってみると丁度料理が出来上がったところだったので分けて貰えた。
手がナイフの様に鋭く変化した生徒が、狂気染みた目で肉を切り刻んでいた。
肉を火で炙りながら、高速で切り刻んでは歌いながらドネルケバブを豪快勝つ丁寧に盛り付けていく。
時折無駄なフェイントを入れて、客を苛つかせながらも楽しませる。
部長である彼はどう見ても日本人ではないし、日本語の歌でもないし、しかも異教徒みたいだが、敢えてここでは目を瞑ろう。
どうせこの学園全てが罪深い妖の園なのだから。
…ケバブは旨かったし、ねっとりとしたデザートのアイスは完璧だった。
腹を満たして帰ろうとしていると、何やら闘争が始まっていた。
空手部でもあまり熱心でない連中と……、幼女?
そう、幼女達が暴れていた。
幼女に蹂躙される空手部員共。
そして何より、幼女達は新聞部員に似ていた。
というか、何らかの自己で幼児化した新聞部員達だった。
赤夜萌香、黒乃胡夢、白雪みぞれ、仙童紫、燈条瑠妃、後は唯一幼女化していない、未だ部員ではないはずの朱染心愛がいた。
様子を聞いてやってきたらしい空手部部長の宮本灰次が、精神、肉体共に不甲斐ない部員共にケジメ付けていると、朱染心愛が勝手に宮本をラスボス扱いし始めた。
確かに空手部の主将故にラスボスではあるだろうが、間違いなくこの騒ぎを望んではいなかったのは間違いない。
宮本灰次はその様な男ではない。
……だが、今まさに幼女連合に襲いかかられそうになって喜んで鼻の下を伸ばしている男の顔を見ているとフォローする気も失せる。
とはいえ、ここで幕を引くべきだろう。
幼女達と宮本の間に割って入ることにしよう。
「これ以上は無益だ。止めるべきだろう」
幼女達は止まった。
彼女たちが怒りのぶつけ先を無くして少し残念そうな顔をするのは見逃そう。
だが、幼女の怒りのぶつけ先である事を失って残念そうな顔をしている宮本は、後でロリコン厚生プログラムだ。
「朱染心愛くん。このメンバーでは肉体的には君が一番年上なのだろうと言うことで代表として聞こう。何があった」
僕の問いかけに、朱染は説明を始めた。
最初に僕も挑戦した墓石割りの参加を断られたので、仙童の開発した『すくすくドロップ』*13という魔法アイテムで成長した姿で墓石割りに参加して成功。
その際に部員として勧誘されたが断ったために逆恨みされた。
それを赤夜達が助けに来たのだという。
赤夜達が幼い姿になっているのは、すくすくドロップの反作用で成長後の姿になった後、12分13秒経過後、今度は逆にしばらくの間幼くなってしまっているのだという。
何で赤夜達がすくすくドロップを食べたのかはどうでも良いし、面倒そうなことになっていそうだ。*14
科学部には余計なアイテムを開発させなくて本当に良かったと思う。
必要な部分の事情は理解した。
「宮本空手部長。申し開きはあるかな」
「無い。部長として全ての責任はオレにある」
そう、コイツはこういう奴だった。
いっそのこと無理矢理幼女連合に暴力を振るわせて解決させておいた方が、有耶無耶に終わらせられただろう。*15
「そうか、ならいい。
新聞部、空手部長もこう言っているので、正式に今年起こった学生間の事案第一号として正式に空手部への処分を審議に掛ける」
宮本の表情は動かない。
寧ろ、宮本にのされた部員達が慌てた顔をしているのが腹立たしい。
一体誰のせいで宮本がこうなったと思っているのか理解していない様だ。
申し訳なさそうな顔をしている新聞部の方も見当違いだ。
だが、被害者である以上、見当違いな罪悪感を持っていることは寧ろ美徳に映る程度だろう。
「赤夜萌香、解決方法がある。
お前達の誰かが生徒会長に立候補するがいい。
僕が生徒会長になれば正当な処分を下すだろう。
正しき輝きは過ちを許容しない。
眩しすぎる光から闇を守りたければ、お前達が対立候補として僕を下して見せればいいさ」
それだけを一方的に告げて、帰ることにした。
対立候補が出来た以上、挨拶回りをする手間が必要になる。
この選挙の結果がどうであれ、一年間は空手部は新聞部に頭が上がらなくなるだろう。
朱染は恐らく姉のいる新聞部に入る。
そうなると、新聞部にいる朱染に先に手を出した空手部が、新聞部の赤夜に庇われるという結果が残る。
唯一の失策はこれにより、新聞部と空手部からの票が期待できないことだが、それ以外の票をかき集めれば良い。
実に簡単なことだ。
僕は世界中の人々の心を染め上げた宗教に育てられて今まで生きてきた。
扇動も先導もお手の物だ。
寧ろ僕は、選挙戦によって対立候補という共通の敵に勝利したという陶酔を、支持者達に与えることが出来る事を喜んでいるほどだ。
「私達、絶対に負けませんから」
だと言うのに、その僕に対して赤夜は宣戦布告をしてきた。
本当に愚かだ。事象の把握も戦力格差も出来ていないらしい。
僕は振り向くことなく手を振って、「精々頑張るが言いさ」とだけ告げた。
ここまで予想通りだと、一周回って笑いが出てくるじゃないか。ああ、背中を向けていて良かった。
まさか予想通りに、自分を傷つけた者を庇うとは人間の物真似が上手くなったものだ。
…全く、妖という存在は実に度し難い。