パンチラ系妖怪美少女学園での度し難い日々   作:ホモォンクルス

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恋にも戦争にも取り決めが必要だ。しかし決して縛られることの無い唯一のもの――――――それは信仰である。

 選挙の結果は僕の圧勝だった。

 民衆に望まれる独裁者の誕生だ。

 そもそも独裁者を作り出すのは往々にして民主主義なのだ。

 カエサルもナポレオンもヒトラーもスターリンも全て王侯主義では無く民主主義から生み出された怪物だ。

 民衆の意思が選んだ代表という事実こそが、民衆に反対の意思を許さない。

 独裁者達は勝てば英雄として、負ければ悪の象徴として名が残るっているだけの話に過ぎない。

 

 

 僕は会長就任の演説として、選挙戦で語ったとおりであるとだけ延べ、詳しいことは新聞部(・・・)の記事に載せると告げた。

 手に入れた権力は行使して初めて生きるものだ。

 そして僕は、会長権限で全校生徒の前で副会長や書記を任命することにした。

 

 副会長は、青野月音。

 

「彼は未熟だ。故に僕に敗北した――――」

 

 対抗馬を副会長に指名しておきながら扱き下ろすような冒頭。

 しかしこれはあくまで掴みに過ぎない。

 

 

「――――しかし未熟というのは成長の可能性の証でもある。

だから僕がしっかり鍛えてやろう。

青野、君を一人前の男にしてやろう。

僕の下でしっかり学ぶが良い」

 

 何故か、青野に対する指名は女子生徒の謎の黄色い歓声で迎えられたが、好評そうなのは何よりだ。

 

 

 書記筆頭には小宮砕蔵を指名した。

 彼とは元々打ち合わせは出来ていたので、問題なく了承して貰った。

 彼はある意味、青野以上に重要な役割だ。

 彼は在校のはぐれ妖の次代のリーダー格だ。

 

 僕の望む秩序に真っ向から対立するであろう組織の頭だ。

 故に、取り込む。

 …これはそんなに短絡的な話では無い。

 先ずは、反秩序側のコメンテーターとしての役割。

 秩序に意見を差し出せない不良共の代表者。

 そして、はぐれ妖というのは、悪い言い方をすれば生まれ持っての落ちこぼれだ。

 純血種同士以外での婚姻の社会的デメリットを計算できない両親や、無理にでもその結婚を止めることをしなかった両一族の社会的地位が所謂名家でないことは想像に難くない。

 だからそういった家庭で生まれ育った子供というのは、学業や地位の重要さに対する理解が相対的に低い傾向がある。

 彼らは放っておけばドロップアウトしやすい人種だ。

 社会に背を向ける厚顔無恥さ。自分なりの価値観を優先させる我が儘さ。

 その熱の方向性を上手く制御できるのなら、彼らだってきっと成功できる。

 僕と小宮で成功させる。

 そういった狙いは既に小宮に語ってある。

 そして小宮はそれを受け入れた。

 だからこそ、表面上では僕の下に付くことを受け入れた。

 裏で僕のことを配下に愚痴っていたとしても、僕はそれを知らぬ存じぬでいよう。

 それが互いの為だ。

 

 

 さて、生徒会としての最初の活動は、夏休み後に控えた体育祭の実行委員の立ち上げと、委員長の任命などだ。

 尤もその前に、夏休みに向けた学生らしい節度を持つ事への注意勧告といった事も必要だ。

 夏休みを楽しめる者には足下をすくわれぬように、夏休みを楽しめぬ者には生徒会として何か出来ないかを模索する。

 無論、望まないイベントは自由時間を奪うだけの負担にしかならないから、やり過ぎるというのも良くないので塩梅は必要だ。

 

 …後は、夏休み前のテストで赤点を取らぬようにしっかりと生徒達に釘を刺すことだ。

 教師も忙しくて手が回らないようなら、教育予習(リハーサル)を見せて理事長に許可して貰い、僕たちが勉強会を行ってもいい。

 それこそ、小宮配下のドロップアウトコースな連中に限定してもいい。

 現在勉強に付いていけない者は、理解できない授業など面白くない。

 故に授業中に勉強以外のことにはしる傾向があるが、僕が同級生に付いていけるレベルまで引き上げてやり自信を付けてやれば、授業に復帰できるだろう。

 青野を推した理事長も、僕に敗北した事実こそが正解だったと理解するに違いない。

 そうなれば、大司教様(我々)の勝利だ。

 監督者として、小壺教師辺りが適当だろうね。

 不良相手には暴力教師ぐらいで丁度良い。

 

 自信をなくして脱落した者に自信を与えると言えば、最近の青野は赤夜(裏)に修行を付けて貰っているそうだ。

 …修行なのかデートなのかは傍目には良く解らないが、青野も赤夜(裏)も修行と言っている以上は修行なのだろう。

 とはいえ、被教育対象の青野のプライドは、そろそろ底値になる事だろう。

 このままでは修行に対する必要意識が消えるはずだ。……まあ、僕がどうこうする義務なんて何処にも無いが。

 

 

 

 色々と、夏休みの前にも行う事があるので、更にその為の予算申請と場所の確保を理事長に貰いに行くと、許可はあっさりと出た。

 フードで顔が隠れているにも関わらず、口元だけで妙にニヤニヤしているのは癪だったが。

 理事長の隣にいた燈条とは一切会話が無かったが、そもそも理事長と僕が話すところに燈条が入り込む余地も無いので、問題にする必要も無いのだろう。

 …少々気まずい空気が無かったかと言えば否定のしようも無いが。

 

 僕が主催する学生間の定期勉強会も無事承認が下りた。

 教師の株を奪わない程度に、しっかりやっていこう程度の自負はあった。

 当初は、参加しておかないといけないのか? と自身の主体性の無い生徒が多かった印象を受けた。

 悪い言い方をすれば、ここで真面目アピールをした方が良いのかなと考えていた学生達だ。

 逆に、体裁を気にしない当初の目的層は参加者はまさかの一人だけだった。

 寧ろ生徒会側として、最初の一人として足を運んだ小宮がレアケースなのかも知れない。

 だとしても、手を抜くつもりは無い。

 ドロップアウト組に合わせた教育資料を小宮に渡して、良かったら周りにも見せてくれとだけ伝えた。

 

 部長としての仕事も多くある。

 夏休みに向けた合宿の準備や、夏休みの明けた後の実験器具や材料の購入予約などだ。

 今年の美術部の合宿は、理事長の強い要望で人間界の海に決まった。

 …何かしらを僕にさせようという意図をガッツリと感じるが、それならそうしてやるだけのことだ。

 起こりうる状況をパターン化したシミュレートをしておいて、対応すれば良いだけだ。

 造作も無い。

 

 

 第二回目の勉強会は、内申にも関係ない事が伝わったのか、参加者は減ってしまった。

 しかし、小宮のグループの女子生徒が参加するようになった。

 …代わりに小宮は参加していなかったが。

 最初は少々角がある生徒だったが、本人のプライドを傷つけない程度に、わかる部分にまでハードルを落として少しずつ基礎を固めさせていくことにした。

 終わる頃には、少しばかりの信用を得た――――様な気もする。

 

 

 夏休み前最後となる第三回目の勉強会。

 小宮グループからまた何人か来るようになった。

 以前来ていた黒髪の女子生徒も来ていたが、やはり小宮は来ていなかった…。

 …と思ったが、途中からやってきた。

 授業と違い開始時間も終了時間も無いので問題は無い。

 

 他の生徒に教えながら、黒髪の女子生徒に以前教えた部分を復習させると、理解できていたように思える。

 とはいえ、薄ぼんやりとした感じではあったので、少しずつ基礎を固めることとしよう。

 数式の究極とは基礎だ。

 複雑多岐にわたる難解な計算式も、極論すればただの基礎の集合式に過ぎない。

 あらゆる基礎をマスターして、それをつなぎ合わせる機転が利くのならば、数学者としての必要充分を満たす。

 

 

 つまり、基礎を固めれば応用式を学ぶ他の生徒にも追いつくことは不可能では無いという事だ。

 それを女子生徒に自信を付けさせる意味もあったが、僕自身本気でそう思っているのでそれを伝えると、

 

「ふ~ん。瑠妃さんを弄んでおいて良い身分だね生徒会長」

 

「しかも、また黒髪か」

 

 黒乃と白雪が何か言い出した。

 何故そこで燈条の名前が出るのかはわからない。

 それに、自分達から進んで青野に何股もかけさせている君たち青野ハーレムメンバーが言っても説得力皆無なんだけれど。

 

 そう思って無視していたら、件の女子生徒*1が、

 

「結局あなた達は何が言いたいの!?」

 

 立ち上がって二人を一喝した。

 まさか、彼女に庇われるとは思ってもいなかった。

 大声を出した彼女に周囲が注目しているが、流石に小宮のグループだけあって肝が据わっている。

 小揺るぎもしない。

 

「私も薬丸先輩*2のように看護師になろうと思ったけど、姉さんみたいに頭良くないから勉強に付いていけなかった。

そんな私に勉強を教えてくれるさと…会長の何が悪いのか馬鹿な私にわかる言葉でハッキリ言いなさいよ」

 

 

 …うん、これ以上やると亀裂が生まれるだろう。

 それは良くない。

 

 

「僕を庇ってくれたのは嬉しい。

しかし、相手も誤解していただけかも知れない。

君の正義感が発露したように、何かしらの誤解から彼女たちの正義感が発露した可能性もある。

僕と燈条…教師の間には何も無いんだ。

何も、無かったんだ」

 

 僕に肩に手を置かれて、ビクッとして此方を振り向いた女子生徒は、僕の顔を見て少しだけ悲しそうな顔をした。

 その理由まではわからない。

 わからないが、それを問うのは無粋だと言うことはわかる。

 

「……悪かったわ」

「…すまない」

 

 黒白コンビも頭を下げたところで、僕はこの話を強引に打ち切った。

 

 

 後日、例の女学生は美術部に入部してきた。

 理由まではわからない。

 

「私、負けませんから」

 

 部長として彼女に付き添って共に理事長と燈条の元へ提出した時の、彼女の入部の決意表明も、全く理解できないものだった。

 全く、妖というのは気性が激しく、心を抑えられない者が多すぎる。

 己の心を隠しきる自信の無いものが、妖怪の姿を隠し通して人間界に出るなどとは夢のまた夢だ。

 同じく知性と理性の信奉者である魔女の燈条も何か言ってやれ、…いや、面倒なことになるから喋るな。

 そう、思っていたのだが――――。

 

 

「私も、負けませんから」

 

 何か良く解らない戦いを始めたようだ。

 理事長の方に視線を逸らせば、この男もニタニタしていた。

 …何のつもりかはわからないが無性に腹が立つ。

 全く、これだから妖という生き物は実に度し難い。

*1
オリジナルキャラ 原作には未登場のアニメ版のみ登場した鬼山とん子という、巫山戯た名前のくせに黒髪サラッサラの美少女の妹という設定

*2
原作に登場した半グレ組織の一員の薬丸麻子 田舎くさそうな表情も悪女の顔も出来る一粒で二度美味しい美女

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