パンチラ系妖怪美少女学園での度し難い日々   作:ホモォンクルス

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さあ、愉しい愉しい魔女狩りのお時間です。お祈りしながら待ちましょう。

 絵に描いた少女の件で美術部員からしつこく質問された僕を助け出したのは、陽海学園専属運転手をやっている男だった。

 …つかみ所が無い辺り、強いのか弱いのかも解らないが、それこそが彼の恐ろしさであろう。

 場合によっては、最重要警戒特記対象者となるだろう。

 

 その彼に、『援軍』として依頼を受けた。

 正直に言って、援軍に僕という一人の生徒を使うことには疑問しかわかない。

 教師や、それこそ学園で権力を認められている公安が責任を負うべきだ。

 とはいえ、借りは返しておこう。

 よく解らない人物によくわからない借りを作るのは面倒な結果を生みかねない。

 

 故に、力を貸してやろう。

 これは等価交換の原則に過ぎない。

 決して僕の自発意志などでは無いのだ。

 

 僕は彼らを救うための情報を運転手から聞き出し、敵の情報も運転手から聞き出した。

 これも援軍としての協力の範疇だ。

 それにしてもこれだけの情報を持っている上に、僕が要求した資材も直ぐに用意できるとは、この運転手はただ者では無いな。

 司教様に報告しなくては。

 

 

 

 準備をしている内に、気が付けば夜になってしまった。

 能力で調合は一瞬にして完了するものの、その為の準備やその後にある仕上げには時間がかかる。

 しかし、それをしている間には時間が過ぎる野忘れてしまうのは、僕のよくない癖だ。

 つい没頭してしまう。

 こうしている間に、援軍を差し向ける先の青野達が敵を殺すか、殺されている可能性すらあった。

 …全く、後悔はしても反省は出来ないから悪癖というのだろう。

 

 目的の場所に向かうと、既に戦闘は始まっていた。

 青野達対魔女。

 赤夜は魔女に捕まっているが、それ以外のメンバーは人狼以外全て揃っている。

 一方敵の側には魔女と例の黒髪の少女もいる。

 恐らく黒髪の少女も魔女だろう。

 場合によっては殺さないといけない。いや、殺す。

 人間を滅ぼそうなどと考えるのだ。万死に値する。

 神に選ばれなかった魔女が、神に選ばれた人間を滅する?

 それにはどんな事情があれ許されることは無い。

 人間は神に選ばれて地上の覇者となったのだ。

 魔女如きに、力で覆されて良いはずが無い。

 故に結論は決まっている。

 

 

 ――――鏖殺(みなごろし)だ。

 

 

 まさか、向日葵畑全ての向日葵が擬態した植物の妖という可能性は想定しなかった。

 魔女の分際で大したことをするものだ。

 だから用意した。

 向日葵畑全てを対象に出来るだけの、栄養停止型成長促進剤。

 わかりやすく言えば除草剤の一種は既に準備できている。

 手足となる武器をもがれて、後悔の中滅びていけ。

 

 

 

 

 僕が到達したと同時に魔女の親玉が幻術をかけた。

 周囲には巨大な廃棄施設やゴミが広がっている。

 魔女は呪詛を乗せて言葉を紡ぐ。

 これが人間がこの向日葵の丘に作ろうとしているものだと。

 この様な人間の欲望のために、魔女達は住処を追われて数を減らしたのだと。

 それを聞いた唯一の人間である青野月音は頭を下げて魔女に謝罪をし出した。

 …愚かな、何の意味も無い。

 

 

「青野月音、魔女如きに頭を下げるな」

 

 隣に降り立った僕に彼は驚愕したようだが、頭を下げるのを止める様子は無い。

 …その優しさは悪には無意味だというのに。

 悪には裁き以外の手段しか必要無いのだから。

 

「青野、聞け。

結局の所人が生活していくためには何処かに廃棄施設が必要なのだ。

此処に作らなくても何処かに作る必要がある。それは、理解できるだろう。

人間が必要とするなら、それは必然するのだ」

 

 僕の一切の間違いの無い正論。

 それに対して反応したのは、敵である魔女だけだった。

 響いて欲しい相手(青野)には、理論的な言葉は理解できなかったようだ。

 ならば、感情的に攻めるとするか。

 

「神は人の上に君臨する。

しかし、妖や獣には神はいない。彼らは人間の糧になる以外に価値などないのだ。

青野も神は信じるだろう?

ならば、魔女の言葉に耳を貸すな。神の声のみを聞くが良い。

安心しろ青野。悪い魔女は僕が火あぶりにしてあげる」

 

 そうやって、なるべく優しく微笑む。

 イメージは昼に黒髪の少女が小さな魔女に向けた笑みだ。

 僕であれば、この様に言われれば直ぐに靡く。

 というか、最初からこれぐらいの真実は理解している。

 

 …青野には響かなかったようだ。

 日本人には無神論者が多いと聞いていたが、そのせいだろう。

 いずれ時間をかけて、神の素晴らしさを説いてやろう。

 

 

 それに、成果は零では無かった。

 青野に罪悪感を植え付けようとしていた魔女が、完全に僕個人に敵意を向けた。

 此方の人数が多いときには、相手の注意を一部に引きつけるのは有効。

 

 それを示すように、赤夜の拘束と、彼女への警戒が下がっているのは見えた。

 それを小声で青野に告げる。

 

「選べ、青野。

わかり合う可能性を握るか、惚れた女を救うかを。

赤夜を助けるなら今だ」

 

 そう言って、僕は魔女に注意を完全に固定するために、実際に魔女裁判に使われた(・・・・・・・・・・・・)拷問器具*1を武器として展開して、向けた。

 

「この槍は、魔女という情報を否定して、中にある力を結合崩壊させるものだ。

内部の力は崩壊の結果、持ち主の肉体をも巻き込んで消え去る。

――もしかしたら、お前の親戚の血も吸ったのかも知れないな」

 

 最初から感情的な敵だとは理解していた。そういった敵はいい的になる。

 感情的故に、行動は単純なものに固定される。

 

「今だ、青野ッ!!」

 

 僕が告げたタイミングで、青野は動いた。

 結局の所、知らぬ魔女の過去や苦悩よりも、見知った女が大事なのだ。

 この女が妖で無ければ祝福してやりたいとさえ思うが、残念なことにお相手の赤夜は吸血鬼(バンパイア)だ。

 祝福の花の代わりに十段重ねの儀礼済み聖水でもかけてやりたい。

 

 

 まあ、今からかけるのも似たようなものか。

 ――――――植物の妖にとっては。

 

 

「青野、良い陽動だ。

闇の生き物よ、汝神の声を聞け」

 

 僕に注意を引きつけて、青野が赤夜を救う…此処までが注意の引きつけだ。

 ずっと前から上空に用意した薬剤のシャボン玉が割れて、飛沫が飛び散る。

 シャボン玉の数は数億を超える。

 そしてその薬剤は勿論、法儀礼済みの除草剤だ。

 

 魔女にも、吸血鬼にも殺すまではいかないであろう。

 だが、植物の低級妖怪程度には、これで充分だ。

 

「「「「「「ギェェェェェェ」」」」」」

 

 ははは、化け物どもが苦痛の声を上げている。最高だ。気分が良い。

 神の裁きが雨となって闇を祓う。最高に美しい。

 この光景を記憶野に焼き付けて、後で絵にしなければ。

 タイトルは――『恵みの雨』だ。

 

 

 さあ、どうする。

 配下は全滅したぞ?

 魔女、何が出来る。

 後、何が残されている?

 残されたお前達に何が出来る?

 神はお前達に死以外の救いを与えない。

 さあ、さあ、どうする――――

 

 

 聖なる槍を構え、ゆっくりと近づく僕に魔女は怯えている。

 魔女狩りの時に使われた正装がそんなにも恐ろしいだろうか?

 聖なる言葉で魔女の存在そのものを否定する言葉を衣服にしたこの姿が、そんなにも恐ろしいだろうか?

 

 

「やめてっ!! もうお館様は戦えない。

降参です。だから、もう止めて…」

 

 黒髪の少女は、手を広げ、親玉である魔女の前に立ってそう言うが、これも仕事である。

 必要で無くても、貫く魔女が二人になるだけだ。

 とはいえ、魔女裁判にかけるよりは慈悲深い結末だ。

 

「残念だ。君が人間であれば良かったと思う。

でも、殺害対象が殺害対象を庇ったところで、僕の殺意は揺らがないよ」

 

 また一歩距離を詰める。

 その度に魔女達の怯えが深くなる。

 そうだ、その顔だ。その恐怖だ。

 敬虔なる人間達は、妖にその恐怖を与えられてきた。

 だから今、神罰の代行者たる僕が、彼らに畏れを教える。

 

 

 

「先輩、もう止めてください」

 

 とはいえ、更にその前に青野が出てくると前提は変わる。

 彼は恐らく護るべき人間だからだ。

 全く、敵を庇うために背を向けるなんて愚かだな。

 後ろの魔女が何かしても解らないだろう?

 だからそれを考えなくて良いように、殺してから安堵すれば良いのに。

 

 

 ここが潮時か。

 僕の仕事はあくまで青野の『援軍』。

 決着が付いて、青野自身が戦いを止めるならそれに従おう。

 そうで無ければ僕の神の僕としての責務になってしまう。

 

 それはそれで最大限優先される事項だが、仕事として終わらせないと、借りを返したことにならない(・・・・・・・・・・・・・)

 これで、良いんだろう運転手。

 借りは利子をつけて返したぞ。

 

 

 ふふ、全く。

 …妖を人間が庇うなど、神の教えを今だ知らない人間というのも随分度し難いものだ。

*1
魔女裁判は極めて不確かな証拠で行われた。拷問に耐えれば魔女。耐えられなければそのまま死ぬという死刑しかない二択さえあったという。

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