パンチラ系妖怪美少女学園での度し難い日々 作:ホモォンクルス
青野を気絶させた僕を監視している視線に気が付いた。
いや、この場全体を監視していたのだろう。
だとすれば、はぐれ妖達の動きを知った上での、活動成果を監視していたのか。
つまりは、はぐれ妖の小宮の上位者か。
変な気を起こされて、人質を取られても困る。ここで、青野達とは友好関係が無いことはアピールしておこう。
…というわけで赤夜を仙童の方へ向かって蹴り飛ばした。
序でに、僕を監視しているやつに向かって、額に穴が開いているものの辛うじて生きている小宮達に刃物で文字を刻んで魔力で監視者の方へ弾き飛ばした。
書いてある文字を見て憤慨する辺り、そんなに難しい敵でも無さそうだ。
書いた文字は繋げてみるとこうだ。
『有象無象の無価値な雑種ども、処分されたいなら明日の課業後に旧校舎で待つ。賢石翠』
僕個人としては、血統書があっても妖と言うだけで価値などないのだが、彼らは自分には無い血統へのコンプレックスがあるようだ。
そこを弄ってあげない考えは無い。
次の日、調べてみると青野と赤夜は朝から出席していないようだった。
まあ、あの怪我だから仕方ないだろう。
この陽海学園には経営者が同じ病院もあるということなので、そこにいるのだろう。
そこにも組織の手が潜んでいるのだろうが、アレだけやったんだから青野や赤夜には目は向かないだろう。
別に彼らを護ろうとかそう言う意図は無い。
彼らを標的にして分散されたら纏めて潰せない。面倒になるのが嫌なんだ。
課業が終わって、僕は今は使われていない旧校舎へと向かった。
色々噂は広まっているようで、みんな僕の方を見てヒソヒソと噂をしている。
旧校舎に入る前にも大勢のはぐれ妖が待ち構えていた。
きっと中にはもっといるのだろうし、罠だって仕掛けてあるはずだ。
…僕だってそうする。
事前に場所がわかっているなら、僕だって当然そうする。
一番近い位置にいるはぐれ妖に聞いてみる。
「ねえ、いつからやるんだい?」
「今からだよッ!!」
僕が聞いたはぐれ妖は人間に化けた姿から、醜い
そう、じゃあスタートだ。
旧校舎が突如爆発した。
中にいるはぐれ妖も、罠も全部これでおしまいだろう。
法儀礼済みの火薬による、神聖な大爆発だ。
事前に場所がわかっているなら罠の一つや二つ仕掛けるだろう。――僕だって当然そうする。
入り口にいたはぐれ妖達を、聖なる祈りが刻まれた筒と火薬とその筒に詰める弾を生成――、つまり原始的な銃で撃ち抜いていく。
弱いね。実に弱い。
その気持ちを、声や態度に存分に表す。
そうやって、怒らせることで、小者はますます小者らしく単純化してくれる。
「所詮お前達妖は、純血だろうが雑種だろうが同じだ。――同様に価値がない」
そう言いながら、無理矢理こじ開けた口に劇薬を突っ込んでは優雅に歩いて行く。
目指すは爆発した旧校舎でくたばっているであろう、小宮の上司だ。
ボロボロになった旧校舎。
そこには残念な事に、それなりには未だ辛うじてくたばっていないはぐれ妖達がいた。
「こんにちわ、雑種共。そしてさようなら」
取り敢えず近くにいたものを頭から地面に投げ飛ばしたり、関節を逆に折って崩れた頭を踏みつけたりしながら奥へと進んでいく。
こういったビビらせることで主従を結んでいる組織には、それより恐いものを見せてやるのが効果的だ。
後は勝手に崩壊してくれる……
「狼狽えるなッ 敵は一人だ。ビビってんじゃねーぞッ!!」
…訳でも無いか。どうやら彼が小宮達の親玉らしい。
「雑種の名前とか覚える気もないから、そこに跪け。
踏み潰して一瞬で気絶させてやるからさ」
わかりやすく挑発すると、妖の本性を剥き出しにしてくる辺り、精々中級管理職程度なのだろうが。
「未だ40はいるぞ。一人でこの数に、勝てると思ってるのかよ」
辛うじて動けるやつが校舎内に入ってきてそれで40人。
戦力としてみると実際には半分以下だろう。雑魚ほど数に拘るものだ。
それに、爆発した後だから、僕が仕掛けた罠が無いと考えている辺り、やはり中級管理職の中でも下の方なのだろう。
だが、余計な邪魔が入った。
「助けに来たわ。これで4対40ね」
「1人当たり10人倒せばいい計算です。全く、感謝しやがれです」
「不本意だが…」
青野の周りにいる黒乃、仙童、白雪か。
…此処にこいつらがいるということは、青野達は無防備か。
「お前達と仲良くする気はない。大好きな青野の所に帰れ」
「命令するなです」
仙童、お前はもう少し聡明だと思っていたががっかりだ。
ここで、僕の側への参戦を表明すれば、治療中の青野達も狙われる。
敵はそういう奴らなのだというのに。
「そうよ、大人しくありがとうって言えば良いの」
黒乃がそういった策謀に向かないのは解っていた。
「ひとつ貸しだ」
白雪も全然理解していないようだ。…全く度し難い。
「お前達、こっちに来い」
仕方ない。こいつら以外の証人の口を全て封じるか。
近寄ってきた青野ハーレムの構成員3名と僕の周囲に魔力を流すと、円が発生した。
この円は、あくまで起動キーだ。
この旧校舎に、爆発の後に浮き出るように仕掛けた無色透明の溶剤で作った結界がある。
その結界の効果は単純だ。
内側の円と外側の円の間のドーナツ状の部分に作用する。
式の中身は『邪悪、滅ぶべし』
とどのつまり妖であるだけで弱体化していく。元気な妖なら身体が重たく感じる程度だが、弱り傷ついた妖なら滅ぶ。
爆弾はその為の下準備に過ぎない。
存在そのものが浄化されて無へと近づいていくはぐれ妖の悲鳴を聞くのは心地良い。
「一言言えば許してあげるよ。降参しますもう二度と悪いことはせず真面目に生きていきます。
少し長いけど、君たちの頭で覚えきれただろうか? 覚えられなければそのまま死ぬといい」
「鬼畜」
「鬼ですぅ」
「悪魔」
三人娘が何か言っているが、無視する。
僕は鬼でも吸血鬼でも屍鬼でもない。人造人間だ。
結局ははぐれ妖全員が気絶したところで、結界を解除した。そうしなければ僕たちが出られないというのもある。
「君たちは早く青野の所に急げ」
少しだけ真面目な顔でそう告げると、そこで漸く仙童は理解したようで残りの二人を連れて去って行った。
此処に残されたのは僕と気絶したはぐれ妖。
それと、全てが終わった後に来いと呼び付けた連中。
「九曜、螢糸、待たせたか?」
「呼び付けておいてよく言う」
螢糸は一言も発しないし、九曜は常に睨んでいる。
友好的な感じは一切無い。だが、別にそれで良い。利害関係は友好関係より遙かに強固だ。
互いに利益がある内であればという限定が付く分強力な関係だ。
「君たちは管理を外れて今まで勝手にやってきた不良共を収容し、教育して支配下における――」
「――そしてお前は散らかしたゴミ掃除を押し付けられるという訳か」
人聞きが悪い。
折角、はぐれ妖組織の最上位クラスと、九曜の本職が同じ場所にあると解らないフリをしてあげているというのに。
ああ、解らないフリをしているから、向こうも恩を感じようが無いのか。それは失敬だった。
「これにて、公安の支配の外で諸手を振って暴れるものはいなくなったわけだから喜べば良いのに真面目だね」
そういう所は本当に好ましいとさえ思う。
妖でさえ無ければ、彼とは親友になれたかも知れない。
「我らにとって、一番野放しにしたくない者がそれを言うか」
…僕はこの学園全体で見れば間違いなく秩序は護っている側だ。
旧校舎の爆破解体であれ、担任を通じての理事長の許可を取得した上でのことだ。
「僕は正義の名の下に悪を罰しただけだ」
「
睨んでくるなよ。僕どころかタマネギにさえ勝てない狐妖怪のくせに。
「だからその正義で散らかっているはぐれ妖を収監してあげてくれ。
更なる上位者の任務失敗への制裁から保護してあげれば――尻尾を振ってくれるだろう」
僕はそう言ってその場を去ることにした。
本当は言葉の最後に、油揚げを貰った狐のようにと付け加えたかったが、流石にそこまではしない。
此処で無意味に怒らせる必要は無い。
怒らせた方が良い敵は怒らせるが、仮初めとは言え味方に付いた者を怒らせる趣味は無いのだ。
…気に入った男なだけに、戯れにからかいたくなる部分は無いとは言えないが。
それにしても、愛を真似る妖が出たと思えば、今度は妖の分際で、この僕に正義を語る者が居るとは。
闇の生き物の分際で、ピンポイントで僕を懐柔するつもりなのだろうか?
…全く、これだから妖という存在は度し難い。