───────もう、ころさないで
何かを思い出しそうだ、もう少し、もう少し……
───────おねがい……わたしはどうなってもいいから……
あぁ、これは、あの時の記憶。
───────無限に続く、苦しみの記憶。
あの日はいつもより早く大学に着いたのだった。
友達と話して、笑って、それから
それから……?
彼らの手により凌辱の限りが尽くされる、無目的の拷問と嬌声、彼らの叫び、暗い部屋の中に閉じ込められ、正気を保っていた私は延々とそれを見せられ続けた私が壊れるまで、そう言われた部屋に集められた友人達に彼らはこう言ったのだ“こいつが壊れるまで1人ずつ殺す”と
1人は、死ぬまで陵辱された。
1人は、執拗に顔を殴られた。
1人は、死んでも胸部を撃たれ続けた。
1人は、一日中腹を殴られ殺された。
1人は、指を噛み切らされた。
1人は、顔を灰皿代わりに使われた。
1人は、手足の指を全て折られた。
1人は、自らの手で目をくり抜かされた。
殺された、私のせいで、殺された。
しかしそれでも私は壊れなかった。
当然彼等は、目の前の私に、壊れたように言い続けた。
早く壊れろ、はやくこわれろ、ハヤク、ハヤク、ハヤクハヤクハヤクハヤクハヤクハヤクハヤクコワレロコワレロコワレロコワレロコワレロコワレロコワレロコワレロレロレロレロレロ
───────私の前に彼らの亡骸は積まれた。
ずっと、その死体の山に、昼も夜も朝も夕も、ずっと謝り続けた。
謝罪と呪詛が渦巻いていた部屋もいつしか、体温を残すのは私だけになった。
しかし、死で贖おうと全てを諦めた時、私には救いが与えられてしまった。
結果、私は生き残った、無数の犠牲の上で、のうのうと。
夢の中でなおも彼等は私を罵り続け、いつしか彼らは私に壊れろなどと、生ぬるいことは言わなくなった。
───────死ね、その命で詫びろ
彼等は私の足を、太腿を、腹を、肩を、腕を、首を、髪を掴み、自分たちの死体の山の頂点に積み上げようとした。
彼らの努力の甲斐あって、私は壊れることが出来た、なのに。
「壊れなきゃ……壊れなきゃ……」
直ってしまった、これでは彼らに許されない。
許しは乞うても無駄、謝罪も無意味、彼らはそんなことを求めてはいない。
「壊れなきゃ……こわれなきゃ……コわれナきゃ……コワレナキャ……」
手首を切るための“フォールディングナイフ”が無い、壁に頭を打ち付けた。
そう、私は彼らに許されたいのだ、そして───────
自由になりたい
目を開く、とっぷりと闇に閉ざされたティオレの夜景は、星空のようだ。
エレベーターの硝子の向こうで何かが砕けた。
尾を引き、夜景を丸く写している。
雨が降っていた、無数の氷柱から滴るように、冷たく。
───────遺書を投げ捨てたことを、後悔している。
生まれたことを、私が私であることを、後悔している。
でも、どうでもいい。
ただ、いつも通り暮らせれば、それでいい。
帰ろう、家に。