かりそめの命、臥した棺にて   作:木島後輩

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恋人、霹靂の宿り処にて

「続きまして天気予報です、午前中は晴れ間が続きますが昼過ぎからは一転して雷雨になりそうです、洗濯物はお早めにお取り込みください」

 

政治経済不倫不祥事、朝っぱらからよくもまぁこんなに話題を拾うものだ。

今どきニュースを放映しているテレビ局も国営放送くらいなので、ネタには困らないのだろうが。

クッションに寝転がってニュースの終わりを見届けた私は、時計を確認した。

 

「そろそろ出ないと……」

 

先程着替えて白いタートルネックの縦セーターと、七分丈のデニムパンツ姿になっている私は、クローゼットから紺青のトッパーコートを取り出して身につける、これで寒さも幾分マシだろう。

 

 

「ナシー、準備出来た?」

 

ナシに貸している一室のドアを叩く。

この部屋はもともと物置だったところを、わざわざベッドまで新調してナシの部屋にしたものだ。

 

「ちょっと待ってねー」

 

ナシがドア越しに返事をした。

仕方ないので、ナシを待つ間私は玄関にある姿見で身だしなみを確認した。

 

「……また染めなきゃな」

 

そこで自分の頭頂の生え際がほんの少し白くなっているのに気がついた、記憶がある限りではずっと生えてくる髪は真っ白で、機会がある度染めている。

最近髪型もいじっていない、ツヴァイに長いと言われながらも伸ばしっぱなしになっている髪はもう肩をゆうに超してしまっていた。

 

「おまたせ……決まってるねぇ! アインス!」

 

ナシが準備を終えてひょこりと部屋から顔を出して言った。

いつもはもっとラフな恰好なのだが、今日はなんだかこういう気分だった。

 

「ナシも似合ってるよ」

 

ナシは白いショートパンツに黒タイツ、カーキのアウターパーカーという格好だ、白銀の長髪が映える。

……この際全て自分の服であることは忘れることにする。

私は姿見の傍らにかけられているカバンの中から艶消しの黒いハンドバッグを選び取ると、コーヒーブラウンのレースアップシューズを履いて、ドアノブを握った。

 

 

時刻は12時30分を回った、地下鉄から地上に出ると、冷たくも清々しい昼間の空気が胸を満たす。

彼方にティオレの行政の中枢、【塔】が天高く屹立しているのが見えた。

さらにその向こう側に黒い雷雲を見つけ、傘を忘れてしまったことに気がついた、ニュースは聞いていたのに失念していた。

携帯端末を取り出し、天気情報を確認する。

14時から雨が降るらしい、先に傘は買っておいた方が良さそうだ。

 

「あれ、ナシ?」

 

地下鉄ではぐれたのか、ナシの姿が見当たらない。

あたりを見回しても閉店した店にでかでかとテナント募集の広告が貼ってあるのと、ひび割れたアスファルト道路以外に何も無い、人気のない通りには車も走っていない。

 

必死に記憶を探る、改札をくぐる所までは一緒にいた記憶があるので、とりあえず地下鉄への階段を降りていく、国営鉄道イクルサド駅構内の壁には地域の店の宣伝映像が流れ、床には埋め込み式のライトが輝いていた。

 

イクルサドはティオレの中で最も栄えた沿岸地域だったが、海洋汚染で魚が取れなくなってからは一気に衰退の一途を辿っている。

今ではティオレの中で最も治安も悪い地域とされ、この駅ももっぱら電車の乗り換えをする中継駅としてしか使われない。

少しでも客寄せを図るため構内もリニューアルしたと聞く。

しかし小綺麗な構内と、閉店した駅弁屋や土産屋のぴしゃりと閉められたシャッターとがあわさって、かえってえもいえぬ悲壮感が漂っている。

 

キョロキョロしながら構内を歩いていると、壁際に座り込む目つきの悪い4人の少年少女を見つけた。

他に人はいないので、仕方なく話しかけるため近づいてみる。

少年少女は煙草をふかしながらよそ者である私を睨むと、わざとらしく私の方に煙を吐いてみせた。

 

「ねぇ君たち、長い銀髪の女性を見なかった?」

 

「知んねぇよ、クソアマ」

 

再びたばこの煙を吐きながら少年の1人が食い気味に言った。

正直必要以上に彼らに構う必要も時間もない、知らないなら用済みだ。

 

「そっか、ありがと」

 

礼の言葉は無視された、同じ国の中でもここまで治安が違うのかと改めて驚かされる。

 

治安が悪い……ナシの容姿は彼女の中でも数少ない神らしい部分でもあるので、もしかして変な人に攫われたりしていないだろうか。

ナシが攫われたとなればその責任は私にある、与えられる懲罰は確実に死刑に値するものだろう────いつか重大なミスを犯した女性が四肢を切り落とされ紛争地域の慰みものにさせられたと聞いたことがある────せめて素直に殺してくれ……

 

思考がどんどん悪い方向に傾いてきて、気がつくと私は放棄された地下鉄の地下商店街に入っていた。

ここはリニューアルの範囲外だったようで、一本道の通路の床はセメント打ちっぱなしでヒビとシミが目立つ。

両脇に所せましと並んだ商店の殆どはシャッターが閉まり、シャッターが閉まっていないところも見るからに営業していない。

もともと道を照らしていたであろう蛍光灯の八割はもうその光を失い、辛うじて点灯しているものも紫色に点滅している、陽の光が入らない地下とあってほぼ道は真っ暗だった

 

「……ん?」

 

私はそのうちに1つだけ、光が灯っている店を見つけた。

こんなところに客は来るのだろうか、なんの店なのか柄にもなく好奇心が湧いてくる。

少し早足になって店の前に歩み寄って見るに、看板らしきものは見当たらず、道に面した年季の入った木枠の戸に汚れた窓ガラスがはめられていた。

汚れで中の様子は伺えないが、中からは暖かい光が漏れている。

緑青が浮く取っ手を引いて、私は店の中に入った。

カビとホコリ臭い湿った空気、並び立つ背が高い棚に古びた青いプラケースが雑多に並べられていた。

 

「これは……」

 

私は一番手前にあったプラケースの中身を覗いた、ごちゃごちゃとした配線が絡み合っている、ジャンクの電子部品のようだ。

小さな黒い円筒状のものがその中に点在していた、つまみ上げてそれがなんなのかたっぷり5秒ほど考えて、レーザーエイミングデバイスであると気がついた。

 

隣のプラケースを見てみると、25cm四方のプラケースに縦にぎっしりオープンタイプのマイクロダットサイトのパッケージが詰められている。

値札を見て私は驚愕した、最新機種に関わらず定価の半分ほどの価格だ、訳あり品なのだろうか。

 

「おやおや、2人もお客が来たのは何年ぶりかな」

 

棚に挟まれた通路の先に、皺が目立つスーツを着た老人が立っていた。

見た目は70歳台くらいだろうか、長寿化に伴い若返り整形なんてものも出てきたので見た目はあまりアテにはならないのだが。

 

「ようこそネンス銃火器店にいらっしゃいました、本日はどういったものをお探しで?」

 

「ネンス銃火器……?」

 

ネンス銃火器と言えば現在の銃器メーカー最大手、ネンスファイアーアームズの開業当初の名前だ。

 

「……お名前お聞きして宜しいですか?」

 

「アルナオ・ネンスと申します、お見知りおきを」

 

「もしかして創業者の……」

 

「いかにも、私が1代目です」

 

どうりで最新機種の値段が安いわけだ、私は1人で納得した。

ネンスファイアーアームズの創業は確か74年前になるが、ネンス銃火器から遡るとゆうに1000年を超える。

数々の名銃を生み出し、戦争に大きく影響した創業者アルナオ・ネンス、末期ガンで死期を察した彼はアンドロイド施術に成功し生き永らえていると聞いていたが、こんな所にいたとは。

 

「お会いできて光栄です、ネンスさん」

 

「かしこまらなくて結構、カスタムパーツや銃本体、なんでも揃っていますよ」

とても品ぞろえが気になるが、時計によればあと10分で受け取りの時間だ。

後ろ髪を引かれる思いで後の来店を約束する。

 

「ありがとうございます、今すぐ店中回りたいのはやまやまなんですが……」

 

「いつでもお待ちしておりますよ、そうでした、銀髪のお連れ様が奥でお待ちです」

 

人差し指で招かれるままに棚の合間を縫って進む。

視界の隅にチラチラと映る魅惑的な品物の数々に心を乱されつつ、店のカウンターの横にある防音ドアを開けた。

 

扉の奥には、小規模ながらしっかり整備されているシューティングレンジが広がっていた。

硝煙の香りが鼻腔を満たす、ネンス氏は揺れる銀髪を見つけると、声をかけた。

 

「お嬢さん、仰られていたお連れ様がいらっしゃいましたよ」

 

声に反応してナシがこちらに振り向く、酒に酔ったように頬が赤くなっている。

少し下に目線を落とすと、片手には見覚えのないポリマーフレームオートが握られていた。

 

「あっ、やっぱり来たんだ!」

 

「勝手にうろつかないでよ……心配したんだよ?」

 

ナシの安否即ち自分の命も、と心の中で付け足しながら言った。

ナシは縮こまりながら謝罪する。

 

「ごめんなさい」

 

居候して迷子になって謝罪して、自分の中での神というものに対するイメージがどんどん変わっていく……

 

「あと10分で行かなきゃ……行こう、ナシ」

 

「試射した銃はそこに置いておいてください、お急ぎの様子ですので私が片付けておきましょう」

 

「本当にありがとうございます、それではまた」

 

ナシの手を引いて、小走りに店を出る。

暗い地下道を記憶を頼りに進む、ナシの手は冷たかった。

先程少年少女と出会ったところまで戻ってきて、ようやく明るくなる、既に少年少女は消えていた。

階段を上り始めた時、ナシが小さな声で呟くのが聞こえた。

 

「……手、あったかいね」

 

「ナシの手はやけに冷たいね、ドライでももっとあったかいよ」

 

そういえば最近ドライと会っていない、というか1週間に1度は押しかけてくるのでそろそろ来てもおかしくない頃か。

 

階段を上りきり、陽の下に出た。

数人歩行者がいる以外特に変化がない寂れた町を急ぎ足で進む。

潰れた商店が少なくなっていき、新築されたであろう建物が多くなってくるが、依然活気はない。

 

交差点を左に曲がって道路を渡り、周辺より一際古いビルの前に着いた。

しかし海浜地帯にも関わらず窓に汚れはないし、正面玄関の両隣に置かれた観葉植物も真冬にも関わらず青々としており、しっかり手入れされているように見える。

 

「着いた……なんとか間に合いそう」

 

携帯端末で時刻を確認しながらタイル張りのエントランスを進む、静かに自動ドアが開いた。

エントランスホールには外観の古さとは裏腹にシミひとつない赤い絨毯が敷かれ、凝った内装がしつらえられていた。

ここが大手銃火器メーカーであるとは一見して分からないだろう。

 

カウンターに受付嬢がいるのが見えた、長い茶髪をハーフアップで束ね、薄く化粧をした見た目からはキャリアウーマン然とした印象を受ける。

こちらと目が合うと受付嬢は軽く座礼した。

 

「ようこそネンスファイアーアームズへ、受け取りのお客様でしょうか?」

 

「はい、半年前に特殊依頼したものです」

 

受付嬢が少し驚いた顔を浮かべる、特殊依頼はなかなかお目にかからないのだろう。

しかし驚いた顔を浮かべたのも一瞬で、すぐに規定された対応に切り替える。

 

「御手数ですが、依頼書を御提示の上、網膜認証または指紋認証ののち認証番号の入力をお願い致します」

 

ハンドバックから依頼書を取り出し、受付嬢に手渡すとカウンターに設置されている指紋認証機に親指を押し当てる。

グリーンの表示が出て、暗証番号の入力画面になる。

12桁に及ぶ番号を入力し終えると、認証が完了した。

 

「ありがとうございますアインス様、依頼書はお返しします、担当ガンスミスは2階B室です」

 

「こちらこそ、ありがとうございました」

 

依頼書を受け取る、その際受付嬢の指に少し触れてしまった。

一瞬の接触であったが、それでもたしかに彼女の指は冷たかった。

少し暑く感じるほどに暖房は効いてるのだが、冷え性なのだろうか。

2階に行くため昇降パネルに向かいながらナシが聞いてきた。

 

「さっきの人、アインスの名前を知ったけど大丈夫なの?」

 

「ここはPSEFとも関係が深いからしっかり口止めされてるし、作戦で使用するものの依頼だからコードネームじゃないと依頼できないの、彼女に知られるのは仕方ないよ」

 

ナシは納得したふうに数回頷くと、興味津々と言った様子でエントランスホールを体をくるくる回しながら見回した。

無駄な動きが多いなぁと思いつつ、昇降パネルに乗る。

円形の強化ガラスの底板から突き出た操作パネルにシンプルに表示された階数表示の2階を押すと、静かに底板が上昇し始めた。

 

「うはっ、すごーい!」

 

ナシが子供のように無邪気な喜びの声を上げる。

あながち神なんて子供みたいなもんなのかなぁなどとしみじみ思ったが、自分も自分で胸の内では新しいおもちゃを貰う子供のような、大きな期待を膨らませていた。

 

 

2階につくと、正面にB室があった。

弾みそうになる足取りを必死に堪えたが、早足になるのは抑えられない。

 

「おっとぉ? アインスちゃんは新しいおもちゃがたのしみでしかたないみたいだねぇ?」

 

ナシがニヤニヤしながら私に話しかけてくる、恥ずかしさに頬が紅潮しているのが分かる。

 

「赤くなっちゃってぇ、たのしみなものはたのしみって言った方がいいよ?」

 

神ともなれば人の心の内などお見通しなのだろうか、私は蚊が泣くような小声で言った。

 

「…………たのしみ」

 

「ほら、もっと大きな声で!」

 

「たのしみ! これでいい!?」

 

「よく言えました!」

 

わしゃわしゃと頭を撫でられる、つい大きな声を出してしまった恥ずかしさと相まってさらに顔が赤くなった。

いたずらっぽく笑うナシの横っ腹を指でつつく、柔らかい感触が人差し指に伝わる。

 

そうこうしているうちにB室についた、ノックしてドアを開くと、小部屋は中央にデスク、奥にもうひとつドアが見える以外には特に何も無いシンプルな構造だった。

一人の男がジュラルミンケースを片手に私たちを出迎えた。

薄く白い髭の浮いた黒人の男、ネンスファイアーアームズ社長のソルナオは濃緑色の瞳をこちらに向け、エナジードリンク片手に話しかけてきた。

 

「こんちはアインス……そちらの女性は?」

 

「あぁ、気にしなくていいよ」

 

「あまり詮索はしないでおこう、お待ちかねのカスタムガンだ……座ってくれ」

 

席を促される、素早く席がふたつしかないことに気がついたソルナオは、自分の椅子をナシに回すと、奥のドアに消えた。

すぐに折りたたみのパイプチェアを持ってくると再び手で着席を促す。

ナシが会釈してパイプチェアにちょこんと座る、私もハンドバックを膝の上に乗せながら座った。

 

ソルナオはそっとジュラルミンケースをデスクに置いて2つのロックを外すと、じゃらじゃらじゃらじゃら……と言いながらケースをゆっくり開いた。

開かれたケースの中に見えたのは赤いベルベット生地、その真ん中に鎮座した“それ”に、私は一目で魅せられた。

 

その全く光らない、なりふり構わない獰猛さを醸す艶消しの黒いスライドとフレームは、一種の色気すら感じる優美な曲線を描き、ムラなく鮮やかな濃紺にブルーイングされた操作系パーツの美しさも最早芸術品だと言っても過言ではない。

 

「構えてみてくれ、感動するぞ」

 

手が入っていないところが見当たらないほど弄り倒された、自分のための銃、その事実が底なしの所有欲を刺激し、自然に手が伸びた。

 

ひんやりとした冷たさと、精巧なもの特有の、独特の重量感がずしりと伝わる。

しかし重すぎず、軽すぎず、手に取った時にも重さが偏らないバランスのとれた重量だ。

フロントストラップとメインスプリングハウジングには鱗状のステッピングが施され、特徴的な波打ったような形状のグリップパネルと相まってグリッピングは非常に良好だった。

 

「M2872、オーダーの通り言わずと知れた名銃をベースにカスタムした」

 

【M2872A1】は180年以上に及んでなお信仰とも言うべき不動の人気を誇る名銃だ。

もともとは数多くある神の遺体からもたらされた情報のひとつで、H.Pがこの銃の設計を解禁した時の名称である1911とも呼ばれる。

解禁された設計の特殊商用使用許可を買い取ってこの銃を発売したのが、ネンス銃火器だった。

莫大な資産を手にしたネンス銃火器はそこから世界最大手の銃火器メーカーとなったという。

 

「オーダーの通り、スライドは左利き用だからエジェクションポートは左面だ、右面にエングレーブも入れておいた」

 

スライド右面だけに力強く彫られた植物モチーフの彫刻[エングレーブ]をそっと撫ぜた。

実戦においてエングレーブは全く無用の長物だが、愛着が湧くからと少々値は張ったものの依頼に追加したのだ。

スライドの右面だけというのは、一応の遠慮の気持ちだった。

 

「サムセイフティはアンビ、グリップセイフティはビーバーテイルにした、ステッピングは苦労したが、特注の木製グリップも付けてやったからまず滑らないだろう」

 

頷きながら何度か握りなおす、食いつくようで全く滑る気配はない。

 

「……マグウェルもオーダー通り?」

 

「あぁ、トリガープルも少し軽くなってるし、ハンマーもスケルトンタイプ、さながら競技用(レースガン)だな」

 

念を入れてチャンバーに弾が入っていないことを確認すると、ハンマーを起こした、シアがかかる心地よい音が響く。

ステンレス製と思しきトリガーを引いてみると、たしかに通常よりトリガープルは軽い、競技用としては少し重めの2kg程だろうか。

しっかりとシアが切れハンマーが落ちる、澄んだ金属音が小さく鳴った。

 

「気に入ってもらえたようだな?」

 

「墓まで持っていきたいくらい」

 

率直な感想にソルナオは笑うと、続けた。

 

「そう簡単にお得意様に死なれちゃこまるな、他にもカスタム盛りだくさんのイカした一挺だが……試射してみるか?」

 

頷くと、ソルナオは私たちを奥の扉へと案内した。

扉の先は試射場になっており、簡易的な的が5m間隔で設置されていた。

 

「シングルカラム、フォーティーファイブだ、ほれ」

 

イヤーマフとマガジンを手渡される、マグウェルのおかげで吸い込まれるようにマガジンが収まる。

ニヤニヤが止まらない、スライドを引くと、オーダー通りならステンレス製の黒染めバレルと、金色の45口径弾が覗いた。

スライドから手を離すと、チャキーンと、閉鎖音が響いた。

ホワイトの入った3ドット式のサイトを覗き、立て続けに5回引き金を引くと、きっかり5回衝突音が鳴った。

マガジンキャッチを押してマガジンを抜き取ると、スライドを引きチャンバーに入っていた弾を弾き出した。

拍手しながらソルナオは、私にクリアファイルを見せた。

 

「これがカスタム内容書、それと領収書だ」

 

それと……と呟きながら青いパッケージの弾薬箱を私に差し出す。

 

「新開発のEMP弾だ、最近旧式アンドロイドの兵器利用が進んで通常弾じゃ対処しきれないって軍がいうんで作ったんだが、分けてやるよ」

 

弾は作戦の前に支給されるので、おそらく物置で埃をかぶることになるだろうが、ありがたく頂戴することにした。

 

「ありがとう」

 

受け取ると、パッケージには『冷たいアンドロイドに熱い弾丸を!!』という煽り文句と24発入りの表示があった。

法執行機関のみとも書かれているので市販品ではないものの、これはアンドロイド側から怒られても仕方がないだろう。

 

「おおっと、誤解するなよ? オレは野蛮なアンドロイド差別者じゃないぞ、ここでもアンドロイドはたくさん働いてるしな」

 

先程地下で見つけた、アンドロイドの1代目が経営している店の事を話そうかと迷ったが、ソルナオが小部屋に戻ってしまったので話す機会を逃してしまった。

 

ソルナオがクリアファイルをジュラルミンケースに入れた、私も銃とマガジンをベルベット地に収めると、ケースを閉めた。

 

「もうすぐ雷雨らしいから早く帰ることだ、できたてほやほやの彼氏も濡らしたくないだろ?」

 

ソルナオのジョークに笑っていると、ナシが脇腹をつついてきた。

ナシを見ると、やや立腹した面持ちでお腹をさすっている、そうか、外食すると言いながら昼食をすっかり忘れていた。

 

「あっ、そういえば昼ごはん食べてなかった」

 

「ならセントラル駅にある店なら全部当たりだ、雨でも大丈夫だしな」

 

「じゃあ帰りはセントラルに行ってタクシーかな……ありがと、ソルナオ」

 

「メンテナンスがいる時はまた来いよ、じゃあな」

 

EMP弾をハンドバックに収めて、ジュラルミンケースを持つと、私はネンスファイアーアームズをあとにした。

 




イッテQ見てたら遅刻しかけましたおはようございます
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