ダンジョンに物語を求めるのは間違っているだろうか 作:老練なるローレン
とても短いですが楽しんで頂けたら幸いです。
小説書くの難しいです。
「よし」
窓をから見える景色はまだ暗く霧がかっている。僕は旅支度を全て終えると改めて室内を見回す。
物心つく前に両親を亡くした僕はおじいちゃんと、それから元冒険者に育てられた。
おじいちゃんはもう亡くなってしまったけれどよく英雄譚を聞かせてもらった。それに何度も怒られてたけど、女の子の話も。
元冒険者だったあの人には稽古をつけてもらった。物静で厳しい人だったけど、もし僕に本当のお父さんがいたらこんな感じなのかなと思っていた。
「行ってきます」
僕は次々と浮かんでくる思い出を振り払うように小さな声でそう言って外へ出た。
まだ薄暗く肌寒いが霧は大分収まっている。あの人が起きる前に出発しよう。
「…行くのか?」
「ッ!?」
びっくりして振り返ると予想外の人物が立っていた。
極東の民族衣装に近いらしい赤い服をまとい、薄暗い中でもサングラスをした男だ。ただ立っているだけで周りを圧倒するような雰囲気をまとっている。
「その…ごめんなさい」
「…」
思わず謝ってしまった。オラリオに行くことを秘密にしていたのもそうだが、何よりその目的が女の子と出会ってハーレムを作ることだなんて知られたら、間違いなく怒られる。
怒鳴られるとかじゃなくて静かに淡々と怒られるから余計に怖い。
「えっと…行ってきます」
とりあえず挨拶をしてそのまま流れで出発しようとする。
でも、
僕はあの人に背を向け、そのまま一歩も前に進むことができなくなった。
まずここからオラリオまで一人でたどり着くことができるのか、出来たとしてもこんな弱い僕が本当に冒険者になれるのか。
オラリオに行こうと決めてから散々自問自答してきた不安がまた再燃していく。
このまま村に留まってもいいんじゃないか?そんな思いが沸き上がり、たった一歩が踏み出せない。
後ろから足音が近づいてくる。
未だ前に進めずにいる臆病な僕にあの人はどう思ったのだろう。
僕のすぐ後ろで足音は止まった。
「不安、だろうな。それとも不満か?」
胸を貫かれた気分だった。
今まで側には誰かいてくれた。おじいちゃんが亡くなってからもこの人がいてくれた。僕が一人だけで何かすることはなかった。そのつけが回ってきたのだろう。
これからは何が起こっても誰も僕を守ってくれない。それがたまらなく恐ろしい。
そしてそれ以上になんで止めてくれないのかと。
オラリオに行くことを秘密にしていたのは、きっと止められると思ったからだ。止められたら僕はきっとそれに甘えてしまう。
本当は行きたかったけど心配かけたくないから、そんな言い訳をする。
止めてくれるのを、待っている。
臆病で自分勝手な不満を抱えている自分が情けない。
体に自然と力が入って、震えしまう。
あの人の手が背中に添えられる。
「…それでいい」
そのたった一言で
僕の怯えは吹き飛んだ。
まるで諭すようなその一言にはきっと色んな意味が込められていたのだろう。
今までの稽古で教わってきたこととか、冒険者の心構えとか、或いはまったく逆の、立ち竦むほど怖いならずっと村にいればいいとか。
とにかくたくさん。
今まで強張っていた僕の体から力が抜けていく。
そしてもう一度全身に力を込める。
今度は自分の意志で。
もう大丈夫だ、僕は一人でも歩いていける。
そう示すように。
「…そうか」
それを察したのかあの人はポツリと呟くと僕の背中から手を離した。
「覚悟を決めろ」
「…他の誰でもない」
「これは、お前の物語だ」
これが僕の物語の第一歩なんだろう。
「はい!」
本の英雄達のようになれるかわからない。
「行ってきます!アーロンさん!」
不安もまだまだたくさんある。
「…ふっ」
笑われても仕方ない。出発する直前で迷ったのだ。
これからどんな物語が始まるのかさっぱりわからない。
でもきっと僕はその結末を後悔しない。
そう思った。
だけどやっぱり恥ずかしくて、僕は逃げるように走りだした。
読んで頂きありがとうございました。
アーロンの名前を出すまでがやたらくどかった気がします。最初は勘違いものにしようと思ったけど、書くのとキャラ的にも難し過ぎたのでやめました。アーロンに似てる誰かと考えて下さい。
返信はあまりできないかも知れませんが、面白い作品とそうでない作品の文章の差?があまりよくわからないので、なにかアドバイス頂けると嬉しいです。勿論感想もありがたいです。
アーロンの小説はやりませんかね?