【完結】鈴木さんに惚れました   作:あんころもっちもち

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初投稿です!
※リアルでの生活はオリジナル要素多め


第1章《惹かれ合う二人》
01.意外な素顔


今日も一日が始まった。

 

「お、おはようございます」

 

「おはようございます」

 

私は 挨拶をして、彼の左側のデスクに腰掛けた。優しく笑いかけながら返事をしてくれた彼の声を聞いただけで、私の心臓がドクンと跳ねたのを感じる。

カッコイイなぁ

 

『鈴木 悟』さん。

優しそうな顔立ちに、スラッとした体型、ぴょんぴょんと はねた寝癖が可愛らしい 私より3つ年下の男の子だ。

 

立派な成人男性に男の子だなんて、失礼だろうが 口に出さなきゃ問題ないでしょ。

 

このブラックな会社に務めてる社員なだけあって、顔色悪いけど・・・

あーでも、それは鈴木さんだけじゃないね。私を含め、ここの社員の殆どか顔色悪い。

 

だけど、鈴木さんは、最近は本当に元気がない・・・気がする。いや、タダの挨拶をするだけの職場の人間に何がわかるんだって話だけどさ。

 

でも、好きな人の事はつい目で追っちゃうんだから、仕方ないじゃないか。

 

 

彼の容姿は、悪くいえば、ひ弱そうな決してモテるタイプではない。

 

今の時代、女性から支持を集める男性といえば、ズバリ!「守れる力のある人」だ。

権力でも金でも 男らしさという面でも、世知辛いこの世界で生き抜くためには強い男性が求められる。

 

私だって、そりゃ ・・・守ってくれるなら守って欲しいよ?

 

《俺に付いてこい、お前を守ってやる》

 

って、鈴木さんに言われたい。

キャーーー 妄想したら顔がっ、顔が、熱くなってきた。

 

ガタンッ

 

「いっ、」

 

痛っい!?

 

赤くなった顔を両手で覆おうとしたら、右肘がデスクに思いっきりぶつかった。

ジーンってする、地味に痛い・・・

 

 

「加藤さん、大丈夫ですか??」

 

 

右側を見れば、鈴木さんが心配そうにコチラを見てくる。

見られてるよ!?くっそ、くっそ恥ずかしいー!!

 

「だ、大丈夫ですので ・・・すみません」

 

「顔も赤いようですし、体調大丈夫ですか?・・・無理しないでくださいね」

 

「は、はい」

 

緊張して小声になってしまう自分が恨ましい。いつもは挨拶しか出来ない鈴木さんとお喋り出来てるのに、シッカリしろよ!?

 

 

「加藤ちゃん〜、風邪か??」

 

 

後ろから声をかけられ、身体が 緊張でビクンとした。

振り向けば、私の後ろで ニヤッと気味悪い笑みを浮かべた部長が立っている。

 

「い、いえ 風邪じゃないので・・・」

 

「そうか〜? どっちにしろ今は忙しいからさ 休ませてあげられないんだけどさ。辛くなったら何時でも俺の部屋に来ていいからねぇ」

 

忙しいのは「今」だけじゃないだろ!

ってか、お前の部屋なんか絶対に行くもんか!!

 

「・・・は、い」

 

俯いてやり過ごそうとすれば、私の肩をスルスルと撫でて部長は、立ち去った。

 

キッ持ち悪!!!

 

怒りで身体がふるふると震えてくる。

 

 

アイツはこの会社でも有名なセクハラジジイだ。難アリの私にですら この変態臭いボディタッチだ。

これが可愛い女の子になるともう悲惨。目を付けては、触る触る。あわよくば食べてしまおうとするらしい。

 

へ・ん・た・い!!!バーカ!ハゲ!くそやろお!!

 

 

心の中で罵倒を浴びせつつ、私は仕事に戻った。せっかくの鈴木さんとの幸せタイムが終わってしまった。

次に話せるのは 仕事終わりの「お疲れさま」までお預けだ。

 

もう、ちゃっちゃと仕事終わらせよ。

 

私は意識を仕事モードに切り替えて黙々と作業を始めた。

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

「お疲れさまです、お先に失礼しますね」

 

「お、お疲れさまです」

 

結局、昼過ぎにセクハラ部長が 更なる仕事を押し付けてきたせいで まだ仕事が終わらぬ。 うえぇ

 

いつもは私より遅く帰る、鈴木さんが先に終わってしまったようだ。

あぁ、癒しの声だなぁ。ふふふっ

 

やる気充電できた、残りの仕事も一気にやるぞ〜!

 

 

「まだ終わりませんか?」

 

「ははぇ?」

 

え?話し掛けてくるとは思ってなかったので変な声が出た。

 

「この、ファイルで・・・」

 

「あぁ、コレですね さっさと終わらせちゃいましょうか」

 

そう言って鈴木さんは自分の席に座り直し、私の仕事に手をつけ始めた。私は 突然の事で戸惑いながらも、なんとか声を出した。

 

「あ、の、大丈夫ですから、その・・・」

 

「いえ、あー、あの、朝 申し訳無いことしたので」

 

「え?」

 

朝?なんかあったっけ??

 

「僕が風邪か?なんて聞いたせいで、部長に・・・」

 

「ぁ、あの気にしないで、ください。すす鈴木さんのせいじゃ ないです!から」

 

えーー!!あれを気にしてくれてたのか?!鈴木さん何一つ悪くないでしょ、悪いのはあのハゲ部長だから!?

 

「ハゲ部長・・・?」

 

「あ、え、声に」

 

「出てましたね」

 

あぁああーーー!!

終わった、終わった、オワタ!!

私の恋 オワタ!

 

タダでさえ滑舌悪くてキョドりまくりの気持ち悪さ満点女なのに、中身がこんな残念仕様だってバレた!!!

 

 

「アハハ、加藤さんでも そう思うんですね」

 

「あ、」

 

「すみません、いつも加藤さんは 大人しくしてるので 部長の事を怖がっているのかと思ってて・・・他の女性達は、部長のセクハラに対して反論したりするのにそれもしないから、怖くて震えてるのかと」

 

どちらかと言えば、怒りで震えてたんだけどね!

 

「・・・すみません、笑っちゃって不謹慎でしたね。」

 

しゅんと落ち込む鈴木さんに思わず、声が出た。

 

「いえ、す、鈴木さんの 笑ってるところ見れてラッキーでした」

 

「え」

 

「あ、」

 

何言ってるんだ、私はーーーー?!

 

「あの、そ、の、最近は、元気なさそう、だったので、」

 

「あ、あぁ、そうですね・・・」

 

地雷踏んだ〜!?

鈴木さんがファイルを手に取ったまま固まってしまった。

 

そうだよね、

 

元気ない=嫌な事があった

 

んだもんね?!普通に考えれば分かるでしょうに、私のアホんたれ!!

 

 

「す、すみ、ません!!!」

 

「あ、いえ、いえ、そんな大した事ではないんですよ。一緒に遊んでた仲間と中々 会えなくて寂しい・・・というか」

 

「あ、遊んでた・・・?」

 

「『ユグドラシル』って知りませんか?VRMMORPGの」

 

聞いたことがあるかも?

一時期スゴく流行ったんだっけ。

 

私はこのキョドり癖があるから、誰かと一緒にゲームをやるのが苦手で 手を出さなかったんだけど。

 

「む むかしに、流行りました、よね?」

 

「あのゲームにハマってましてね、そこで一緒にプレイしていた なか、あー友達は ゲームにINしなくなってしまって。」

 

「そう、なんですね」

 

「すみません、変な話をちゃいましたね。・・・残りの仕事、ささっと終わらせちゃいましょう」

 

「は、はい!」

 

 

鈴木さんのおかげでものの30分で残りの仕事も片付いて帰ることが出来た。

 

でも、あの時の・・・

鈴木さんの悲しそうな顔が 脳裏にこびり付いて離れそうになかった。


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