【完結】鈴木さんに惚れました   作:あんころもっちもち
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11.理想の場所

☆ブルー・プラネット視点

 

その話を聞いたのは偶然だった。

辺境の荒れた大地から 実家に帰ってきたのがつい先日。その帰宅途中で若い男二人の話し声が耳に入った。

 

「今月末で『ユグドラシル』が終わっちまうらしいぜ」

 

「うわぁマジか。まぁ長いことやってたからなぁ・・・」

 

 

『ユグドラシル』か・・・

俺が引退してから、アインズ・ウール・ゴウンはどうなったのだろうか。

辺境の土地へ行く事が決まってから、ログインする事が出来なくなるので、あの時、俺は引退を決意したのだ。

 

正直、丁度いい機会だと思った。

前からログインする回数が減っていたし、俺の理想は、もう完成していたので、『ユグドラシル』を満足してしまっていたのだ。

 

だが、その『ユグドラシル』も終わりを迎える。俺の仲間達と作り上げたあの景色も二度と見ることは出来なくなるのだ・・・

 

 

そう思ったら、居ても立ってもいられなくなった。

もう一度、もう一度だけ その目に焼き付けておきたい。

 

長いアップロードを経て、俺は、数年ぶりに『ユグドラシル』の世界に飛び込んだ。

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

ナザリック地下大墳墓、第6階層。

久しぶりに訪れたそこには、素晴らしい自然が広がっていた。青々とした木々、透き通るような空。一際目立つ巨大樹が目に入って、あんなのもあったなと笑がこぼれた。

 

・・・こんな自然をリアルで味わいたかったな

 

荒廃していく世界で、かつての様な自然を復活させる事は、もはや絶望的だ。

 

このドルイドの力がリアルに持ち込めたら、あっという間に自然を復活させられるのに。

そうだな、このナザリック地下大墳墓をリアルに持っていけたら・・・

 

そこまで考えて バカらしくなった。

 

この場所は、ただのゲームのデータに過ぎないのだ。

ありえない、ありえないのだし、よく考えてみればここは 悪名高きあのアインズ・ウール・ゴウンだ。

人間種を蹂躙し、悪の支配者になろうとするかもな。あ、そうしたら、モモンガさんが魔王になるのか?

 

穏やかな声で笑うモモンガさんを思い出して、あの人ほど”魔王”が似合わない人もいないと苦笑いした。

 

 

「ブルー・プラネットさん じゃないですか!?」

 

ぼーっとしていたせいで、ギルドメンバーがログインした事に気が付かなかった。

声の主・・・モモンガさんは小走りにコチラへ近寄ってきた。

 

「お久しぶりですね!」

 

「お久しぶり、モモンガさん。『ユグドラシル』がサービス終了すると聞きいて 、引退した身でありながら最後に戻ってきちゃったよ」

 

「いえ、いえ!会えて嬉しいです!!もう実家に帰られたのですか??」

 

「一時帰宅だけどね、また明後日には転勤さ」

 

「そう、なんですね」

 

「あぁ、でも もう無くなっているかもしれないと思っていたから・・・こうやってもう一度この景色を見れて本当に良かった」

 

「かなり気合い入れて作ってましたもんね」

 

「ハハッそうだな・・・俺の理想だった」

 

 

静かな沈黙が流れた。もう消えてしまうんだと思うと心苦しい。

 

 

「そういえば、他のギルメンは誰が残ってるんだ?」

 

「あ、いえ もう・・・・・・」

 

言葉に詰まったモモンガさんに、目を見開いた。まさか、まさかモモンガさん1人だけなのか・・・?

 

「あー僕も最近、仲良くなった方とパーティー組んで遊んでいるので」

 

場の空気を気にしてなのか、モモンガさんは声のトーンを上げて 楽しそうに話した。

俺はその気遣いに感謝しつつ、便乗しようと思い、つい

 

「へぇ〜!彼女でも出来たのか」

 

と、聞いてしまった。

 

 

「へ?か、加藤さんとはそんな関係じゃないですよ!!?」

 

 

あれ?相手は女の人なのか。

・・・というか、この反応は

 

 

「じゃあ、どんな関係なんだ?」

 

「会社の同僚です。僕が『ユグドラシル』の話をしたら、興味があったのか彼女も始めて・・・せっかくなので、一緒にパーティー組んでレベ上げとか手伝ってるだけですよ」

 

モモンガさんの話を聞いてから『ユグドラシル』を始めたとか”脈アリ”じゃないのか?

そうじゃなきゃ、全盛期を過ぎた『ユグドラシル』を始めようとか思わないと思うんだが。

 

「ふーん」

 

「ちょ、ホントですからね!?」

 

「それで、加藤さん?には ちゃんとナザリック地下大墳墓を、この第6階層を紹介してあげたのか?」

 

「え?」

 

「いや、こんなに頑張った場所なんだ。もうすぐ終わってしまうのだし、モモンガさんの彼女さんに自慢して欲しくてな」

 

「か、か、彼女とかじゃないですって!!」

 

モモンガさんの反応が面白くで、柄にもなく、からかいすぎてしまったようだ。モモンガさんが、かなり動揺してしまっている。

 

「そ、それに人間種ですし・・・僕一人の判断で、ここに入れるのもどうかなと迷ってまして。レベル100になったら招待するとか言って先延ばしにしちゃってるんですけど」

 

「そんなの気にしなくていいのに。なんならアインズ・ウール・ゴウンに入れてあげたらどうだ?『ユグドラシル』の最後にその加藤さんにとっても、いい思い出になるだろう」

 

「いや、そういう訳には・・・」

 

「まあ、決めるのはモモンガさんだ。だけどな、モジモジしている内に 他の誰かに取られちゃうかもしれないぞ?」

 

「いや、そんな関係じゃないんですって!」

 

「ハハッ、すまんすまん」

 

 

あのモモンガさんにも春がきたのか〜。

 

最後にこうやってギルドメンバーと話せて本当に楽しかった。

”加藤さん”が居なかったら、ここでモモンガさんと話してても申し訳なさで居たたまれなくて こんなふうに話せなかっただろう。

 

 

見たことない彼女に感謝しつつ、俺は『ユグドラシル』に、アインズ・ウール・ゴウンに・・・そして、俺の理想郷に 別れを告げた。




※<自然をこよなく愛する、ごつい男らしい>という情報から私なりに読み取ったブルー・プラネットさんでお送りしました。





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