【完結】鈴木さんに惚れました   作:あんころもっちもち
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12.リアルでのデート?

「え?いい、んですか?」

 

その日、職場の女性社員から手渡されたのは2枚のチケット。それは、今週末に上映される映画のチケットだった。

そもそも、映画館で映画を見るのは富裕層の娯楽として有名だ。なんてったって、チケットはとても高価なのだ。私なんか1回も行ったことがない。

 

そんな物を貰ってしまって良いのだろうか・・・?

 

「彼氏と行くつもりだったんだけど、ちょっと行けなくなっちゃってぇ」

 

困ったように首を傾げる彼女は、女の私から見ても可愛いなと思っちゃうほど魅力的だった。

・・・これ、私がやったら鈴木さんに可愛いって思ってもらえるかな?

と、考えシミュレーションしてみた結果、自身の気持ち悪さに身悶えした。ムリムリムリ、絶対ムリだ。

 

「この日は、社内のメンテナンスがあるから、みんな休みのはずだし。鈴木さん誘って、行ってきたらどうですかぁ〜?」

 

「うぇ?!」

 

「アハハ、何その反応ぉ〜!加藤さん、まじウケる」

 

いや、いやいや、ウケないからね!

なんでそこで鈴木さんが出てくるのさ?!すっごいビックリして変な声が出ちゃったじゃん。

 

「加藤さんと鈴木さんって、付き合ってるんでしょ〜?」

 

「ち、ちがいますよ?!」

 

 

あぁああ!!!!

 

あのウワサ消えてなかったよ!?むしろ悪化してる!!!

 

「え〜??あ、そういうことかぁ!加藤さんも真面目ですねぇ」

 

「あ、あの・・・?」

 

「はい〜大丈夫ですよぉ!分かりましたから」

 

え、だ、大丈夫かな?なんか勘違いしてる気がするんだけど・・・

 

「彼氏が落ち着いたら、映画見に行こうかなって思ってるから、感想教えてねぇ」

 

「あ、彼氏さん、何かあったん、ですか?」

 

「それがね〜強盗が入っちゃって!」

 

「え!?」

 

「彼は外出中だったから、無事だけどぉ。かなり、荒らされちゃったんだって〜」

 

「あ、それは、怖いですね」

 

「ホントだよねぇ!犯人捕まってないらしいしぃ」

 

強盗・・・と聞いて、死んだ両親の事を思い出した。鉢合わせていたらと思うとゾッとしてしまう。

 

「お互い気おつけましょ〜乙女の一人暮らしは危険ですからぁ」

 

「そ、そうですね」

 

本当に怖い身近な話なのに・・・

この時私は、映画のチケットを握りしめながら、「もういい歳の大人だけど、乙女で良いのだろうか?」なんてどうでもいい事を考えていたのだった。

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

映画のチケットを貰ってから二日過ぎた。鈴木さんには、何度も何度も誘おうとしたけれど 上手く言葉が出なかった。

 

自分のヘタレ具合が本当に情けない・・・

 

早く言わなきゃ・・・と思うものの、「もう予定が入ってるんじゃないか」「さすがに男女二人で映画なんて嫌がるんじゃないか」と、まぁ考え込んでしまって 勇気が出なかった。

 

チケットを閉まっているデスクの引き出しを何度も触っては、ため息をこぼしていた。

 

「加藤さん?体調が悪いんですか?」

 

「え、」

 

ふと、隣を見れば 心配そうに鈴木さんがこちらを伺っていた。ちょっとだけ距離が縮まって、思わずドキリとしてしまう。

 

「いや、最近 ボーッとしてたり・・・ほら、今も顔が赤いですし。無理は禁物ですよ」

 

「あ、いえ、違う、んです!元気、いっぱいです、から」

 

「そうですか?悩み事なら聞きますよ。・・・あー、僕で良ければですけど」

 

 

これはチャンスなんじゃないのか??上手く映画の事を話してしまえば・・・!

 

 

「あ、えっと・・・あの、コ、コレをもらったんです」

 

 

ぜんっぜん、言葉が出てこなーーい!!

 

それでも何とか伝えようと引き出しから、2枚ある映画のチケットを取り出して鈴木さんに手渡した。

 

 

「ん?映画・・・ですか??」

 

「行けなく、なってしまったから・・・その、感想を教えて、欲しいって、頼まれて」

 

「へぇ。あ、これ・・・確か、死に別れたカップルが、別の世界で生まれ変わって結ばれる話でしたっけ?」

 

「あ、知ってるの、ですか?」

 

「ちょっとCMが目に入っただけなので、少しだけですよ。”別の世界”というのが自然豊かな世界で、その再現度が素晴らしいとかなんとか・・・」

 

「興味、あ、あります、か?」

 

「まぁ、映画館で見るのは格別らしいですからね。『ユグドラシル』のようなVRMMOとは比べ物にならないって聞いたことありますし・・・」

 

「い、い、い、いきましゅか!!」

 

「え」

 

あぁああああああーー!!

死ねる!今なら恥ずかしさだけで死ねるぅ!!

 

「えっと、・・・行ってもいいんですか?」

 

「は、はい!」

 

「なら、一緒に行きましょう」

 

「は、い!」

 

 

込み上げてくる恥ずかしさに、涙目になりながらも、俯いてやり過ごした。

噛んでるの分かっててスルーしてくれる鈴木さんやっぱりカッコいい!

 

 

「なら、待ち合わせに必要ですし、連絡先を教えて貰ってもいいですか?」

 

「あ、は、はい!」

 

 

私は、緊張で震える手を必死に押し殺しながら、メモ帳に携帯の電話番号を書き込んで手渡した。

 

 

「映画、楽しみですね」

 

「そ!そう、ですね!」

 

 

柔らかく笑う鈴木さんの笑顔が眩しかった。

結局、その日は一日中 私の胸の鼓動は高まりっぱなしで いつも以上に挙動不審になりながらも 何とか1日を終えたのだった。




女性社員
「あれで、付き合ってないとかウソでしょ!社内恋愛は、よく思わない人もいるっていうし〜。内緒にしてるのかなぁ?」








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