【完結】鈴木さんに惚れました   作:あんころもっちもち
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16.そして世界が終わる

☆鈴木悟視点

 

加藤さんがいない。

 

あの日から 何処にいても彼女の姿を探してしまう。

職場でも、『ユグドラシル』でも、彼女がいるんじゃないかと似てるものを目に入れてハッと顔を上げては、見間違いだと肩を落とす。

 

『ユグドラシル』が終わってしまう、アインズ・ウール・ゴウンが消えてしまう事への悲しさ、虚しさを加藤さんが埋めてくれた。

 

加藤さんとなら、全てが終わってしまった この先も楽しみにできた。

 

加藤さんとなら、俺は・・・おれは、

 

 

 

 

 

 

 

今日は『ユグドラシル』最終日だ。

 

二週間ほど前に ギルドメンバーへ呼びかけていたこともあり、ほんの数人ではあったが 言葉を交わすことが出来た。あんなに待ち望んだ再会も どこか遠いところで見ているような感覚だった。

 

俺がこんな調子だったからだろうか?

 

 

「モモンガさん、大丈夫ですか?」

 

今日会った全てのギルドメンバー・・・社畜で俺より過酷な環境にいるはずのヘロヘロさんにまで、酷く心配されてしまった。

 

笑って誤魔化してみたものの・・・結局、上手く誤魔化せてなかったのだろう。

明日、朝が早いと言っていたヘロヘロさんが、心配して残ってくれようとしていたが 大丈夫だと押し切って帰した。

 

 

 

一際、存在感のある杖スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンが目に入った。

 

『へぇ〜 さすがギルド武器、す、凄そう、ですね!いつか 見てみたい、です』

 

これ以上何も失いたくないと思ったからだろうか・・・。

意味などないのに、俺は ギルドの心臓といえるスタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを掴み取った。

 

 

 

頭を過ぎるのは、加藤さんとの思い出ばかりだ。

 

 

『せ、戦闘メイドですか!つ、強い女の子 カッコいい、ですね!』

 

・・・加藤さんは強い女性キャラの話が好きだったな。

ズラッとならぶ戦闘メイド、プレアデスと執事セバス・チャンが整然と佇んでいた。

 

セバスを見た時に・・・泣き出しそうな顔で俺の手を握りしめていた たっちさんの顔がチラついた。

 

『モモンガさん。さゆりを殺した犯人は必ず捕まえます!!奴を刑務所へぶち込んだら連絡します。だから、だから、必ず待っていて下さい!』

 

 

 

 

 

「・・・付き従え」

 

決められた指示通りに付いてくる NPCを連れて、足はフラフラと それでも 確実に 玉座の間へと向かっていた。

 

 

 

玉座の傍らには、美しい女性が佇んでいた。

黒髪に金の瞳、腰から生えた黒い翼。階層守護者統括アルベド。

 

あぁ、やっぱり似ている。

 

初めて『ユグドラシル』であった時、アバター越しにでも、加藤さんが緊張してるのが分かったっけ。

 

『そ、そうです!よろしく、お願い、します』

 

 

目を閉じれば今でも鮮明に思い出せる 彼女の声。彼女の姿。彼女の・・・

俺は付き従っていたNPCを待機させてから、玉座に腰掛けて深くため息を付いた。

 

 

『ぎゃ、ギャップ萌え、ですか!すごく、すごく!理解、出来ます!!』

 

確かアルベドの設定は・・・と、思い出した所で俺は、込み上げてくる不快感を隠しきれなかった。

 

「タブラさん、・・・もういいですよね」

 

俺はスタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを使い、アルベドの設定を消そうと 手を動かした。

アルベドが、あの日の加藤さんに見えて、あの最後の一文が許せなくなったのだ。

 

 

 

『えへへ、れ、レベル、上がりました!』

 

『異業種、の為の”悪”の、ギルド!カッコいいです、よね』

 

『・・・す、鈴木さん!ご ご飯一緒に、どう、ですか?』

 

『ほ、他のゲーム 世界でも!!アインズ・ウール・ゴウンを作って、こ、今度こそ、世界征服しちゃい、ましょう!!ナザリックも、拠点NPC達も ふっ復活させて 悪のそ、組織 になっちゃいましょう!!』

 

 

 

 

あ、

 

 

アルベドを見ながらぼーっとしていた為、気が付けば ぎっしり書かれていた設定が半分以上、消えてしまっていた。

 

 

「あ、あぁああああ!!!!?、あぁ〜、何やってんだ俺」

 

 

 

中途半端な文章をなんとか修正したものの・・・・・・アルベドの設定をしっかり覚えているわけではない。

 

これ以上の復元は無理だった。

 

 

 

「あ”ーークソ!!、はぁ・・・タブラさん、本当にごめんなさい」

 

 

ため息を吐きながら項垂れた。

最近は、まともに食事も喉を通らず、眠れなかったせいだろうか?頭がボーッとする。だからってアルベドの設定を消していい理由にはならないんだけどな、あぁ、本当にごめんなさい、タブラさん。

 

ふと、加藤さんから貰った黒い蜘蛛の指輪が白い骨の指に付けられているのに視界に入った。

付けていると何だか・・・彼女がそばにいるような気がして、外せなかったのだ。この指輪も、『ユグドラシル』が終われば消えてしまうのに、自身の情けなさに呆れる。

 

 

 

 

『ユグドラシル』を終わらせる時間が迫ってくるのが見えた。

 

 

【23:58:09】

 

終わる、終わってしまう・・・

 

ギルドメンバーと過ごしたアインズ・ウール・ゴウンも

 

俺の青春を過ごした 『ユグドラシル』も

 

加藤さんとの思い出も・・・

 

 

【23:59:00】

 

 

涙が頬をつたったのが分かった。・・・泣いているのか、俺は

 

 

【23:59:15】

 

 

あぁ、そうか、俺は加藤さんの事が、こんなにも

 

 

「・・・好きなのか」

 

 

言葉にしてしまえば、もう感情を留めることは出来なかった。

 

「好き、だったんだ」

 

溢れだす涙に反するように、ふつふつと 煮え滾るような怒りが込み上げてくる。

 

 

「な、んで、死んでしまったんだ・・・なんで、なんで!俺から奪うんだ!!!仲間もギルドも・・・愛した人でさえ!!」

 

 

耐えきれず、ドンッと腕を振り下ろした。生身の腕がじんじんと鈍い痛みを伝えてくるが、そんな事どうでもよかった。

 

家族も仲間も思い出も・・・愛した女性も 居なくなった。

ここには誰もいない、もう、俺は一人だ

 

 

「俺を 置いて行かないで、くれ・・・・・・うあああ、ぁぁあ!!!!」

 

 

 

【00:00:00】

 

 

 

激しく泣き崩れるモモンガに、NPC達は目を奪われていた。

誰もが 激しく動揺し、涙し、動けずにいた。

 

 

 

 

だからだろうか、モモンガの指にはめられた指輪。

その黒い蜘蛛の背中に乗ったダイヤが妖しく光ったのに、誰も気が付くことはなかった。

 

 

 

 

 




【血塗られた蜘蛛王の嘆き】
『その蜘蛛は愛する人を決して逃しはしない。即死耐性35%アップ。全ての無効化スキルを無効。』

第1章【惹かれ合う二人】完!


次回から転移後の第2章へ入ります





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