【完結】鈴木さんに惚れました   作:あんころもっちもち

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18.夢見る子ども

妹が産まれて あっという間に3年経った。成長したアインは活発的でヤンチャな所もあるけれど、可愛くて心優しい女の子に成長していた。

まぁ、私がただの親バカならぬ姉バカな可能性は否定出来ない。

 

なにせ、村のみんなからは「ツアレは本当にアインの事が好きなんだね〜」ってしょっちゅう言われる。・・・妹の自慢話してばかりな私が悪いのかもしれないけれどさ。

 

前世含めると私の精神年齢は両親を余裕で上回るので、私の中で 妹のアインは”妹”というよりも”娘”のようなものだ。

ちなみに、両親ともに現在27歳。私はというと今は6歳だから 前世の年齢足して・・・って、やめやめ。これ以上オバサン臭くなったらどうするんだ!

只でさえ、お隣の悪ガキに「お前は俺のおかんかよ!」と、突っ込まれ 大人達からも「大人っぽいというか、ババアみたいなやつだな」と笑われたのだ。

せっかく可愛い女の子に転生したんだから、そんな可愛げが無い女は嫌だ。そう、前世で『幽霊』と呼ばれていた私は学習したのである。

 

 

アインといると、つい、”前世の私に娘がいたら”と想像してしまう。そこにはいつも、隣に鈴木さんがいた。

鈴木さんに対する未練や後悔も未だに消化しきれずにいるから当たり前だね。それに、やっぱり・・・まだ好きだもの。

 

わたしが死ななければ有り得たかもしれない未来。”もし・・・なれば”なんてバカらしいとは思うけれど、悲しきかな、考えずにはいられないのだ。

 

今世の家族や村の人達は、いい人ばかりだけど やっぱり隠し事をしている後ろめたさから 距離を感じるし、恋愛感情なんてもっての外だ。

 

 

今世は結婚出来ないかもなぁ・・・。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

妹が3歳になった頃。

 

その日、日が傾きはじめても なかなか家に帰ろうとしないアインに私は、ちょっとしたイタズラ心から「こわーいスライムに食べられちゃうよ」って言ったんだ。

アインが怖がって「早く家に帰る!」と言うのを期待していたのだけど・・・アインから予想外の返答が来た。

 

 

「スライム??そんなの、こわくないもん!」

 

「スライムでもね、こわーいモンスターもいるのよ。エルダー・ブラック・ウーズとかね!」

 

「えるだー?」

 

「古き漆黒の粘体っていってね、取り込まれると強力な酸でドロドロに溶かされちゃうの。こわーいスライムはアインみたいな無垢で可愛い子が好きなんだよ」

 

「きゃー!」

 

笑顔で笑うアインに私は呆気に取られてしまった。怖い話なのに、なんで喜ぶのさアインさんや。

 

 

この世界にエルダー・ブラック・ウーズがいるかなんて知らないけどね!

スライムはいるんだし、どこかに居るのかも?まぁ、普通に村娘として生活する分には会うことなんてないからいいよね。

 

「ツアレは物知りねぇ、誰から聞いたの?」

 

いつの間にか迎えに来てきたのか、私の後ろに立っていたお母さんに、今の話を聞かれていたらしい。

前世の記憶なんて言えないし。うーんと、首を横にしてから私は答えた。

 

「夢に出てきたの!」

 

「スライムが?」

 

「他にもいっぱいいたよ!ゾンビやスケルトン、吸血鬼でしょ。あとは、・・・オーバーロードとか」

 

「すごーい!」

 

「オーバーロードは初めて聞いたわ。どんなモンスターなのかしら?」

 

お母さんはニコニコしながら私に聞いてきた。たぶん、「想像力豊かな子だわぁ」なんて思ってるんだろう。

 

「スケルトンが魔法使えて強くなったやつ!」

 

「それって、エルダーリッチじゃなくて?」

 

「もっと強いのよ」

 

「へぇ、すごいのね」

 

「つよーい!おーばーろーど!!」

 

そうそう、鈴木さんは強いんだからね。何度も言うようだけど、この世界にオーバーロードがいるのかは知らぬ!

・・・が、私は6歳の夢見る子ども。どんな事を言っても「子どもの言うことだから」で終わるので、ノープロブレムなのだ。

 

「ほかにはー?」

 

「お母さんも聞きたいわ」

 

「うーんとね・・・」

 

 

あれから帰って、聞かれるがまま お父さんやお婆ちゃんにも話した。「そうか、ツアレはすごいな」なんて笑って聞いてくれたので 、調子に乗って『ユグドラシル』のこと以外の前世の世界について色々と話した。

 

もちろん、前世の記憶がある事は内緒のまま、夢で見た事にしている。変なやつだと 思われて嫌われたくはないからね!

 

 

 

それから毎日、私の家族 特に妹のアインは、私に”お話”を強請るのが日課になっていた。

 

「おねいちゃん!あのお話して〜」

 

「いいよ、なんの話にしようかなぁ」

 

「あのね、あいんずおーごうるの話」

 

「アインズ・ウール・ゴウンね」

 

「うん!」

 

「なら、今日は すっごく強いメイドのお話しようかな」

 

「メイドさん?」

 

「その名も、戦闘メイドプレアデス!っていうの、彼女たちはね」

 

「おお、今日はメイドか。お父さんも聞きたいな」

 

「はぁーい!じゃあ、はじめるね」

 

 

妹を除いた家族の中で、私は”お話を考えるのが上手な子”扱いになった。

妹は、夢の中の話と言ったにも関わらず、何故か本当のお話だと思っている節があるみたいだけど、成長すればいつか分かってくれるよね?

 

 

 

前世の記憶だということは出来ない。

でも、例え作り話だと思われていたとしても、こうして前世の私の大切は思い出話を聞いてもらえるだけで 何だかとても、私は嬉しかった。

 

 

 

 


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