【完結】鈴木さんに惚れました   作:あんころもっちもち

2 / 50
02.『ユグドラシル』

すっかり暗くなった道を、とぼとぼと歩いて自宅へと向かった。

頭の中をグルグルと鈴木さんの言葉が 流れては消えていく。

 

「友達がINしなくなってしまって・・・」

 

ゲーム仲間というやつなのだろうか・・・。一緒にプレイ出来なくなれば寂しいのも当たり前だろうに、だから元気なかったんだね。

 

自宅の玄関のドアに手をかけてふと、思い付いた。

 

ゲーム仲間・・・それって、私でも良いのかな?

 

INしなくなったって事は、一緒にプレイする人は居なくなったのか、少なくなったということだと思う。

それならさ、私が「遊んで〜」って行っても 歓迎してくれるんじゃないかな??

 

 

そしたら、すっ鈴木さんと一緒にゲームで、デートなんて事も・・・!!?

 

 

思い立ったら、即行動に移していた。

着替えもせず、急いでパソコンを起動させ『ユグドラシル』を探した。ゲームの世界観やら説明をバーーっと読み進めていく。

 

ん??

 

※『ユグドラシル』は、2月28日をもちましてサービス終了させて頂きます。

 

 

は?もう終わっちゃうの??

これは、あと、約3ヶ月しか時間が残されてないってこと?

 

そこで手が止まってしまった。

 

せっかくのチャンスだったのになぁ。

まぁ、よくよく考えてみれば、どうやって「一緒に遊んで」なんて言えばいいの?!

今日、初めて挨拶以外の会話をした仲なのに、そんな図々しい事言えない。言えない。

考えたら恥ずかしさのあまり、顔が熱くなってきた。

 

「いえないよね〜」

 

私の恋愛はいつもそうだった。

大して可愛くない顔立ちで、更に小さい頃に火傷してしまった為左頬には決して小さくはない傷跡が残ってる。

どちらかと言えばポチャっとした身体。上手く喋れなくて、自信がなくてウジウジしてたら いつの間にか丸く曲がっていってしまった背中。

 

ブスでどうしようもない私にも優しくしてくれる人は一定数いる。それも、下心抜きにして 心からの善意で接してくれる人。

私は昔からこのタイプに弱かった、優しくされると癒されていつの間にか好きになる。

それで、何も行動出来ないまま、失恋してることが多い。

 

鈴木さんも私に優しかった。

いつも笑って挨拶をしてくれるし、何より、私の事を「気持ち悪いオバケ」といった同僚から守ってくれたことが1回だけあった。

「そんな言い方ないんじゃないですか?」って、、それだけだった、それだけでどれだけ心が救われたか。

 

いつの間にか、鈴木さんを目で追うようになっていた。

気が付けば、恋に落ちていた。

 

「はぁ〜」

 

なんとなく、コレで終わりにはしたくなくて 『ユグドラシル』をダウンロードする事にした。

 

パソコンから離れて、服を着替える。

もう少しだけ、鈴木さんに近づきたかった。

 

彼の好きな世界を私も体感してみたかった。

鈴木さんに言うかどうかは別にして・・・ちょっとプレイして見ようかな? かなり自由度の高いゲームだと言うことは、さっき調べた時に分かった。自分のキャラクターデザインも細かい所までいじる事が出来るようだし、『理想の自分』でも作成してみようかな。

 

 

美人で、顔にキズもない綺麗な女性。

身体もせっかくだから、理想の・・・男の人ってナイスバディな女の人が好きなんだよね、それじゃ、鈴木さんも・・・??

 

いやいやいやいや、分かんないよ、聞いたことないし!

ってか、鈴木さんがナイスバディな女の子好きだったら私なんかOUTだからね!?

あぁ、自分で考えてて悲しくなってきた。

 

うー確か、人間以外の種族も選べるんだよね。なら、いっその事 実はスゴい化け物だけど美人な感じにしちゃう??

 

ダウンロードに時間もかかることだし、明日、仕事から帰ってきたらキャラ作成しちゃおう!

 

 

思えば、ゲームするのなんて久しぶりだ。

 

 

「うふふふっ」

 

 

鈴木さんに近づけると思ったらちょっとだけ嬉しくなって、傍目から見たら、もの凄く気持ち悪いだろう笑顔を浮かべたまま、私は眠りに落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




※『ユグドラシル』終了日は分からなかったので、捏造ですよ!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。