☆アルベド視点
今日は珍しく、至高の41人の懐かしい気配が現れたり消えたりしていたが、今はお1人しか感じられない。
恐ろしく静かな玉座の間。そこへ向かってくる愛しいお方の気配を感じ、歓喜で全身が震えた。
あぁ、モモンガ様がいらっしゃるわ!!
栄光なる至高の41人の中の1人。私達を見捨てなかった慈悲深くお優しいお方。その愛おしいその姿を一刻でも早く捉えたい欲求に駆られる。
久方ぶりに開かれた重厚感のある玉座の間の扉。その先にいたのは、モモンガ様と 付き従うセバスチャンとプレアデスの面々。
・・・その、モモンガ様の漂わせる異様な雰囲気に一瞬呑まれそうになった。
まるで魂が抜けてしまったかのように覇気がなく、失意に落ちたご様子に、何があったのかと戸惑いながらも モモンガ様をその様な状態にした者を 何者であろうと殺してやろうと 怒りがこみ上げた。
モモンガ様は、フラフラとした足取りで玉座へ腰掛けると、私を愛おしそうに見て下さった・・・いえ、違うわ。
私に“誰か”を重ねて見ているようだった。
その“誰か”に猛烈な嫉妬が込み上げてくるが、その感情も次の瞬間には、綺麗に消え失せてしまっていた。
モモンガ様が消してしまわれたのだ。私のタブラ様が そうあれ と与えて下さったモノを。突然の事で戸惑い、急に嘘のように消え失せた感情に焦った。
私は、至高の41人を愛し崇拝していたが、それと同時に そんな私達を捨てた至高のお方々を激しく憎んでいた。
残って下さったモモンガ様だけに全てを捧げていこうとすら思っていたのだ。
そんな、激しく煮え滾るようなこの感情が全て消えてしまった。
「好きなのか」
私のそんな戸惑いも、モモンガ様の口から漏れたその言葉に 全ての思考が吹っ飛び、心臓を鷲掴みにされた。
「好き、だったんだ」
私達に向けてではない、誰に告げるでもないその悲しげな告白に、胸が深く締め付けられる。
「な、んで、死んでしまったんだ・・・なんで、なんで!俺から奪うんだ!!!仲間もギルドも・・・愛した人でさえ!!」
・・・し、死んだ、死んだ??
「俺を 置いて行かないで、くれ・・・・・・うあああ、ぁぁあ!!!!」
激しく吐き出されたモモンガ様の叫びにその場にいる全員が硬直し、動揺した。
私は 敬愛するモモンガ様が苦しみ嘆いているのだと 遅ばせながら理解し、己の不甲斐なさに涙で視界が歪んだ。
泣かないで下さい、私が ずっとお側にいますから
心では思うのに身体が付いてこず、言葉として出す事もままならない。上手く状況が飲み込めず 心臓が早鐘を打ち、喉は乾き、嫌な汗が流れる。
私は突然の出来事の連続に対応出来ず 動けずにいた。
最初に動いたのは 意外にもプレアデスの1人、ルプスレギナだった。
「死んだってどういうことっすか・・・」
本人の意志とは関係なく、思わず零れたであろう その言葉にモモンガ様は ハッとお顔を上げた。
「しゃ、しゃべった?」
「あ、え、はい」
しどろもどろになりながらも 答えるルプスレギナに苛立ち 私は思わず睨みつけてしまった。
「は?あ、あれ?コンソールが開かない・・・GMコールも、は?ど、どうなってるんだ?!」
「モモンガ様?」
「え?あ、アルベドなのか??」
「はい、ナザリック地下大墳墓 階層守護者アルベドでございます」
「え、動いてる?・・・・・・あぁ、そういうことか」
モモンガ様は慌てていたご様子から一変、玉座に腰を下ろし、深いため息をされました。
「モモンガ様?」
「は、はは。こんなモノまで見えてしまうなんて、末期かもしれないな」
「も、モモンガ様??どうなさいましたか?」
モモンガ様の赤く揺らめく眼差しが、ゆっくりと伏せられていく。そして、ルプスレギナへと向き直るとゆっくりと語って下さった。
「ルプスレギナ、死んだのは俺を救ってくれた人だった。悲しんでばかりいた俺を加藤さんは助けてくれた・・・。だが、彼女は死んでしまった。本当ならお前達にも会わせるつもりだったんだけどな・・・間に合わなかった。」
私は理解してしまった、せざるをえなかった。モモンガ様は“カトウサン”という女性を心から愛しているのだと。
「ごめんな・・・『ユグドラシル』も終わり ここも消える。アインズ・ウール・ゴウンもナザリック地下大墳墓で存在していたお前達も消えてしまうっ・・・全部、消えてしまうんだ。ごめんな、本当にごめん」
声を震わせながら懺悔するように謝り続けるモモンガ様を誰が攻められようか。ナザリック地下大墳墓が、自分が、消えてしまう・・・そんな事よりもモモンガ様が苦しむ姿を見ている事の方が辛くて。
私は不敬を承知でモモンガ様を包み込むように抱き着いた。
「あ、アルベド?」
「モモンガ様、このような不敬をお許しください。・・・我らはこの世界の危機も知らず、モモンガ様をお助けするどころか 足を引っ張る 愚かで無力な存在でした。このような許されない失態を犯した私ですが、どうか どうか、挽回の機会をお与え下さいませんか?必ずや モモンガ様をお守り致します」
己の命に、いや、ナザリックに住まう全ての者達の命に替えてでも、守らなければ・・・!万が一にもこの御方を失う訳には行かないのだ。モモンガ様を抱きしめる腕に思わず力が入ってしまう。
モモンガ様のスキル《ネガティブ・タッチ/負の接触》によってチリチリと皮膚が痛むが、思いの外 心地よく感じ、緩みそうになる表情を無理やり引き締めた。
「・・・もう少しだけ、このままでいてくれるか」
「はい、喜んで」
私は歓喜で身が震えた。この腕の中にモモンガ様がいらっしゃるのだ、興奮のあまり腰から生えた漆黒の翼がバサバサと動いてしまう。
もう死んでしまった愛しい人を忘れられない主人を慰める部下。
部下は主人を慕っているが故に、死しても尚、主人を苦しめる恋敵の事を呪わずには居られなかった。しかし、お側にいるのは私。主人の部下であるこの私なのだ。部下は主人のお心を頂戴すべく様々なアプローチを仕掛けるが、全てが失敗に終わる。更に追い打ちをかけるように、死んだ筈の恋敵が現れて・・・そうね、そう。
しかし、恋敵は愚かにも別の男を作っていたのよ。そこで失望した主人を部下が慰めて、そのまま・・・
くぅーーー!!!!!絶望の先の幸せ!なんて堪らないのかしら!!あぁ、最ッッ高のシチュエーションだわ!!!!
「アルベド様、モモンガ様のご様子が・・・」
セバスの言葉で急に現実に戻された。コホンと一つ咳払いをしてから静かに腕の中におられるモモンガ様へと視線を向け、アンデッドではありえない不自然さに首を傾げた。
「モモンガ様?・・・まさか、眠っていらっしゃるの??」
モモンガ「夢か、幻覚か?あぁ、いい匂いだなぁ・・・なんだか眠たくなってきた・・・zzz」
今作アルベドの設定
※オーバーロード大百科を参考に抜粋しました。
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彼女はナザリック地下大墳墓守護者統括という最高位たる地位につく悪魔であり、艶やかで長い漆黒の髪と黄金の瞳を持つ傾国の美女である。
己の地位に誇りをもっているために、侵入者に対しては自信と威厳によって、はるかな上位者として対峙する。
例え、どれほど賢く勇敢な敵で、強者と認めていようと決して同格としては相手にしない。
それだけの地位を与えられているということを知っているためだ。
彼女の持つ能力も守護者統括の地位に相応しいだけのものであり、智謀、戦闘能力において格段に優れている。
ただしながら、各方面に置いていては若干他の存在に劣る点もないわけではない。
例えばデミウルゴスの智謀やシャルティアの戦闘能力などであるが、ナザリック内の管理、ひいては内政に関しては誰にも負けたりはしない。
その他、女性的な作業―特に主婦業一般に関しても優れた能力を持つ。
暇なときは編み物や掃除など、女性的な作業に従事している姿が時折見受けられる。
そのためなのかは不明であるが、綺麗好きであり、適当な片づけ方を見ていると綺麗に片したいという欲望に駆られるようだ。
特に本棚の並びに関しては一家言あるらしい。
しかしながら、他人は他人と見做している部分もあるので他者に掃除を強制することは滅多にない。
とはいっても、自分のコレクショングッズなどはため込む癖もあり、そういった場合はかなり乱雑な整頓となっている。
そのために本当に綺麗好きなのかは疑問の余地がある。
恐らくはそういう演技―女性として完璧に思われるような―をしているのではないだろうか?
確証はないし、怖くて聞くこともできないが。
何時も優しげな微笑みを絶やさず、穏やかな話し方の淑女然とした彼女は天使や女神と言っても信じそうな者は非常に多い。
実際、そういった雰囲気や容姿を持つのだから、勘違いしても可笑しくはないだろう。
実際、そ“の姿も彼女の一面であり 間違ってはいない。”
以下 モモンガによって消去されている
ちなみに、本来はこれの倍以上の量がありました。
“”内はモモンガが何とか修正した部分
もし、アルベドが 設定魔である創造主、タブラの性格を引き継いだら、こうなるのかな・・・??