☆モモンガ視点
NPC達に気持ちを伝えたら加藤さん似の美女に優しく抱きしめられた夢を見た。
あぁ、いい感触だったな
自身の手を動かせば、サラサラとした手触り。俺は布団の中に包まれているようだった。
昨日はいつの間にベッドへ入ったんだか・・・
それにしても、家のベッドは こんなにも気持ち良かったか?
布団からモゾモゾと這い出て、天井を見れば細かな装飾が施されており、知らない場所だった。
「ん?」
起き上がって部屋の中を見渡せば、ありえない、見覚えのある場所が広がっていた。
「ナザリックの・・・自室?」
ベッドから降りようとして そこで初めて自身の“白い手”が目に入った。
恐る恐る確認していけば、白骨化した身体に体内には赤い玉が埋め込まれており よく知ったキャラクターとはいえ 余りのリアルさに悪寒が走った。
「は、は・・・?」
何度確認してもそこにあるのは白い骨。感触からこれが己の身体だと認識し、恐怖で叫ばずにはいられなかった。
「ぎゃあああーー??!!!!!!」
突然の悲鳴に驚いたのか、部屋のドアを開けて 和装っぽいメイド服を着た少女が駆け込んできた。
「モモンガ様ぁ!?大丈夫ですかぁ?!」
駆け込んできたメイドの顔にはギチギチと激しく動く顔のパーツである“虫”達。あまりにも迫力のあるその姿に 俺は、勿論・・・大丈夫な訳がなかった。
「ぎぃゃあああ!!!!!!!」
「きゃぁーーーー!!!???」
オーバーロードの絶叫に思わずメイド、エントマも悲鳴をあげてしまい、衝撃の余り 顔のパーツが崩れて行き、その姿に更に俺が絶叫をあげてしまう。何も考えられなくなる程 混乱していた。
そこへ最初に駆け込んできたのは、お団子頭に眼鏡をかけたメイドだった。
「モモンガ様!!」
「あ、あ、」
「エントマ、しっかりしなさい!」
「す、すみません〜」
「モモンガ様、大変申し訳ございませんでした!!」
「あの、ユリだっけ?」
「はい、ユリ・アルファでございます。」
「あ、あ、あ、俺・・・死んでる??」
「え、え?生きておられますよ?もしや、どこか悪うございましたか??!!」
混乱しながらも心配そうにこちらを伺うユリの言葉に もう一度 身体を確認してみれば、変わらない骨の姿。手を動かし顔を触ってみてもツルッとした骨の感触。どう考えても白骨死体のそれだった。
「あぁああ?!!!ほね、骨っ!!死んでるんじゃないか!?」
「も、モモンガ様?大丈夫です。どうか落ち着いてくださいませ」
「落ち着いていられるかぁーーー!!!」
突然 白骨化した身体に恐怖でパニック状態になっていると、バタバタと駆け込んできた者達がいた。
「モモンガ様!大丈夫ですか!!」
長い黒髪を振り乱し入ってきたアルベドと緊張した面持ちのセバスだった。
「え、あ、アルベドとセバス??」
「はい、アルベドでございます。大丈夫でしょうか??」
「あ、あぁ、はい。え?」
「モモンガ様ぁ!」
バザッと抱きついてきた絶世の美女に思わずドキマギしてしまう心臓が激しく波打っているようにすら感じた。・・・いや、心臓ないけども。
「あ、アルベド??」
「モモンガ様!大丈夫、大丈夫でございます。このアルベドが、如何なる時もお側におります」
「あ、ありがとう」
「私、セバスチャンを含め、ナザリック地下大墳墓の者達全てがモモンガ様へ絶対の忠義を尽くしておりますゆえ、どうかご安心下さいませ モモンガ様。」
「・・・ありが、とう、セバス」
心の底から心配そうに、そして今にも泣き出しそうな表情の皆を見て、段々と気持ちが落ち着いてきた。
「・・・なにが起きているんだ?」
「ゴホン、モモンガ様、現在把握している事を全て説明させていただきます」
セバスの咳でパッと 俺から離れたアルベドは背筋を伸ばし、さっきまでとは切り替えたように話し出したのだった。
ーーーーーーーーーー
「ナザリックが・・・転移?」
「はい、その線が濃厚かと思われます」
アルベドの説明を聞きながら、俺は何度も叫びそうになるのを食いしばって耐えた。
まず、この状況からしておかしいのだ。
なぜ、NPC達が動いている?
もはや、生きているとしか思えない。極めつけはエントマだ、現実ではありえないリアル過ぎる虫の動きに表情。・・・あぁ、さっきは叫んでしまったな、女の子の顔を見て叫ぶとか失礼過ぎるだろ俺!後で謝りに行こう。
あとは、俺の今の姿。この姿は「モモンガ」そのものだ。
突然 自身の体が 白骨化していたから本当にビビった。これは慣れるまでかなりの時間がかかりそうだ。
「モモンガ様は、『ユグドラシル』が終わると仰られていました。何らかの力が働き、このナザリック地下大墳墓だけ こちらの世界に転移したのだと思われます。魔法やスキルの使用については 問題なく使用可能です。転移によるナザリック地下大墳墓の異常は見られませんでした。・・・転移の原因については、判明しておりません。申し訳ございません」
「あ、いや、大丈夫だよ。」
「では、ナザリック外部の様子について私から説明させていただきます」
アルベドに引き続き、セバスが説明しようと前に出て一礼をした。
ダメだ、いろんなことを考えてしまって 全く思考が動かない。
転移した?どこに??コレが現実だとして、俺は何で“モモンガ”になってるんだ?!何が何だか訳がわからない・・・
「ナザリックの外は草原が広がっており、確認できた生物もレベルが低く、脅威になりそうな者は発見出来ておりません。ここから1番近い村は人間種のモノです」
「人間種の村?」
「はい、レベルは10以下と低く 文化レベルもかなり低いようです」
「うーん」
10レベル以下の奴らが生きていけるような環境なのか?いや、誰かの保護下にあると考えるのが自然・・・?
とにかく情報が足りない。あぁ、考える時間が欲しい!!
「モモンガ様、村を監視させていたルプスレギナから入った報告によりますと、現在、その村が人間種の武装した集団に襲われているとの事です」
「・・・は?」
「目的は不明との事ですが、女子供まで皆殺しにしているようです」
“皆殺し”?女子供まで皆殺しだと?
俺は、加藤さんから貰った蜘蛛の指輪をぎゅっと握りしめた。
モモンガ様、いっぱいいっぱい過ぎて支配者ロールすら出来ない状態に・・・。