【完結】鈴木さんに惚れました   作:あんころもっちもち
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03.幽霊

☆鈴木悟 視点

 

 

「おはようございます」

 

「お、おはようございます」

 

 

今日もこの挨拶から仕事が始まる。

 

この会社で務めだして、もう7年目に差し掛かる。

加藤さんと隣の席に移動になってからは 2年がたった。

 

彼女は、仕事を進めるスピードがとにかく速い。そういう意味では仕事が出来る女性だと思う。

だけど、その反面、新しい事を覚えるのが遅い。

だから結果的に、「単純で誰でも出来るけど、誰もやりたがらない仕事」をやらされている。所謂、雑用係だ。

 

仕事の出来る女性は煙たがれることが多い。学歴のない人間は特に。

だけど、彼女の場合は 皆に重宝されている。雑用係で、自尊心の傷付けられない便利な子扱いなんだろうけど・・・。

 

あと、彼女は、人と話すのが苦手らしい。

挨拶をする時ですら、緊張するのか挙動不審になっている様な気がする。左頬にある傷を気にしてか、長い黒髪で顔の半分を隠しているので あだ名は『幽霊』。

 

もし、加藤さんに白いワンピースを着せて 顔を青白くさせ、ガリガリしたら、まさしくあの定番の『幽霊』の姿だとは思う。

 

 

加藤さんは猫背だけど、意外と胸が大きいらしい・・・と、トイレに行った時に他の社員が話していたのを聞いたことがある。

 

ホントかどうかは知らない。

 

そんな、マジマジと女性の胸なんか見えないから!!

ペロロンチーノさんだったら 気にせず確認出来るのかなぁ〜、あの人はそういった度胸はありそうだし。

 

「はぁ」

 

 

かつての仲間を思い出して、思わずため息をついてしまった。『ユグドラシル』のサービス終了が告知されてから気持ちが沈んだままだ。

 

段々とプレイヤーの数が減少しているのは知っていた。それでも、考えないようにしていたんだ。・・・終わりが来る日のことを

 

毎日ログインしては ギルドの運営費を稼ぐ日々。

さぞかし滑稽だろう。馬鹿なヤツだと笑う自分もいる。でも、捨てられなかった。あの場所は俺の・・・

 

 

「もう終わったのかぁ流石、加藤ちゃんだねぇ〜」

 

「い、いえ」

 

「なら、コレもお願いしてもいいかなぁ?」

 

「ぁあ、いつ、まで、でしょ、うか?」

 

「んー明後日まででいいよ。ヨロシクね」

 

「は、い」

 

 

隣をみれば部長が加藤さんに仕事を押し付けているところだった。

部長はいつも去り際に、加藤さんの身体を触っていく。

頭や肩、腰周りまで。男の自分から見ても気持ち悪い触り方だ。

 

でも、俺には何もしてあげられない・・・。

 

 

 

 

先日の事を思い出す、

仕事終わりに加藤さんと話した時のこと。

元気がないと言われて、つい、ユグドラシルの事を話してしまった。大の大人が「仲間が来なくて寂しい」なんて恥ずかしい。

 

口に出した時はしまったと思ったけれど、加藤さんは 馬鹿にする訳でもなく、ただ 悲しそうにしていた。

誰にも打ち明けるつもりのなかったこの感情を、真剣に受け止めてもらえただけで、なんだか少しだけ楽になった・・・気がした。

 

 

 

 

 

〜♪

 

お昼の時間を知らせるチャイムがなった

 

 

椅子の上でぐぐぐーっと伸びをして、足元に置いてあったカバンから昼ごはんを取り出した。エネルギーを補充する事に要点を置いた味気ないご飯。

 

 

「ぁ、あの」

 

隣からか細い声が聞こえて、そちらを向けば 顔を俯かせた加藤さんが、コチラを見ていた。

 

 

「どうかしましたか??」

 

「あの、その、わ、わたし」

 

 

いつも以上に挙動不審になりながら一生懸命に話しかけてくる彼女の様子が 子どもが勇気を振り絞って話しているように見えて失礼ながらも微笑ましく感じた。

 

 

「ゆ『ユグドラシル』を、はじめたん、です、けど」

 

「え?」

 

『ユグドラシル』を?

 

「その、「ルシファー」のクエスト、で、つまづいて、しまって」

 

「ルシファー」って、かなり序盤に出てくる人間種しか入れない街のキャラクターの事だろうか?

たしかアレは・・・

 

「単独だとダメなんですよね。パーティーを組んででしか入れない、何ていうダンジョンだったっけな・・・」

 

「ゆ、雪のはい」

 

「あぁ、雪の廃鉱山!」

 

懐かしいなぁ〜初心者用のダンジョンだったから お世話になったのはかなり昔の事だったしなぁ

 

「そ、の雪の廃鉱山にある 雪草を、15ほん、取らないと、行け、なくて」

 

「なら、一緒に行きましょうか??」

 

 

ポロリと口から出た言葉だった。

 

アインズ・ウール・ゴウンの仲間たちと同じような・・・とはいかないけど。リアルでの知り合いである彼女とゲームを楽しめたら、終わりを迎えるだけだった『ユグドラシル』にも新しい楽しみを見い出せる気がしたんだ。

 

「い!良いの、ですか?」

 

期待に満ちた目でコチラを見てくる彼女に、もちろんですよ。と返事をしたら、彼女は本当に嬉しそうに笑った。

 

「うふふふ」

 

 

俺は彼女の初めて見せたその表情に、一瞬、心を奪われた。

 

 

ーーー幽霊も笑うと普通に可愛いんだな

 




ちらほらと現れる捏造ポイント







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