【完結】鈴木さんに惚れました   作:あんころもっちもち

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31.お食事モモンガ様

☆モモンガ視点

 

ユリを村に置いて、セバスは王国戦士長と マジックキャスターの集団、法国の者達の元へと向かった。

 

一応雇われて、という形にしたらしい。これで この世界の金も手に入るし、“王国戦士長”という大きなコネも出来た。

何処かイキイキとしているセバスの姿を見て、たっちさんの作ったNPCだから面影があるのかな と、思ってしまう。

 

 

先程、アルベドからの連絡で 村を襲っていた兵士を尋問した結果、彼らは法国の者だと分かった。

つまり・・・、帝国の兵士に偽装して村を襲い、王国戦士長を誘き出して始末する作戦だったらしい。

 

呆れるのは、この作戦に仲間であるはずの王国貴族も一枚噛んでいるという事。王国戦士長が死んだら、王国は戦力を大幅に削られる事になるだろう。そうなれば、王国は帝国に吸収され貴族共の居場所も無くなるというのに・・・。

 

王国貴族は、バカなのか?

 

 

法国のマジックキャスター共は、セバスに任せる事にした。殺しても良し、生かしても良し。

王国戦士長と友好的に接すると決めた以上、生かしておいた所で ナザリックへ連れ帰ることは不可能だ。もしかしたら証拠として 死体も王国戦士長が連れていく可能性があるしな。

 

 

あちらは、セバスに任せるとして、今のところ 気になる情報は2つ。

 

一つ目は法国について。

詳しい情報は得られなかったものの、我々が一番警戒すべき国家だと思われた。人間以外の他種族に排他的かつ攻撃的だという時点で、もはやアウトだろう。ナザリックは異形種しかいないしな。

 

六大神と呼ばれる神を信仰しており、「神人」と呼ばれる強者がいるというのが気になる所だ。どれ程の脅威となりうるのか?六大神とは何なのか。

 

 

二つ目は、蜘蛛女について。

あらゆる組織に侵入し、情報を盗み出す女で王国の人間だという所まで掴めているそうだ。人間離れした身のこなしと、蜘蛛の糸を操る事から 法国はその女が異形種であり、危険だと判断したらしい。

王国戦士長を殺した後、次のターゲットが蜘蛛女だったとの事だった。

 

諜報に優れた者か・・・こちらも警戒するに越したことはないだろう。

 

 

 

《デミウルゴス、戦況はどうだ?》

 

《たった今、敵を殲滅した模様です。王国側は 負傷者がいるようですが、死亡した者はおりません。》

 

《そうか、セバスが付いているのだからまぁ、そうなるよな。デミウルゴス、頃合を見計らってナザリックへ帰還してくれ。俺も帰る》

 

《かしこまりました》

 

 

 

デミウルゴスとのメッセージを終え、小屋を出た。青々とした草木を目に焼き付けてから空を見上げる、薄らと赤みがかり出した美しい空に手を伸ばした。

 

「・・・綺麗、だな」

 

まるで、加藤さんと見に行った映画のワンシーンのようだ。あの映画では、引き裂かれた2人は、大自然の中で再開する。見た目が変わっても愛し合った2人にはお互いが分かったんだ。

 

 

このシーンで、加藤さんは感動して泣いたんだっけ

 

 

女性はケモ耳少女に、男性は金髪碧眼の王子様に転生していた。最後には2人は結婚してハッピーエンドだ。

 

俺は今の自身の姿を見て乾いた笑みがこぼれた。

 

 

「はは、こんな骸骨じゃカッコつかないな」

 

 

俺が連れて行くのは、輝かしい王城ではない。アンデッドや悪魔がひしめく、魔王城だ。

 

 

『『ユグドラシル』じゃ、なくても、ほ、他のゲーム 世界でも!!アインズ・ウール・ゴウンを作って、こ、今度こそ、世界征服しちゃい、ましょう!!ナザリックも、拠点NPC達も ふっ復活させて 悪のそ、組織 になっちゃいましょう!! 』

 

 

脳裏に蘇る加藤さんの姿に 思わず笑ってしまった。

 

そう・・・だった。加藤さん、悪の組織好きですもんね。世界征服ぐらいしちゃいますか。

そしたら、そこの王様になったら きっとまた貴女に会えますか?

 

 

「あはははっ、そうだな。もっと、堂々としなくちゃ。こんなアインズ・ウール・ゴウンは、らしくないからな」

 

 

ナザリックへ向かうゲートを出し、黒い渦の中へ足を入れた。

ユグドラシルでの楽しかった日々を思い出しながら、これから起きるであろう覇業に笑みが深まった。

 

ウルベルトさんは悔しがるだろうな。たっちさんは、怒るだろうか?いや、支配の仕方によるだろうな。他のみんなは案外、ノリノリで参加しそうだ。

 

 

アインズ・ウール・ゴウンの名を広めてやろう!!

天国に居るだろう加藤さんの耳にも届くぐらいに。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

ナザリックに着いた俺を待ち受けていたのは、豪華な食事の数々だった。初めて感じた その、強烈に美味しそうな香りに、お腹がギュルギュルと鳴った。

 

なった??

 

自身のお腹を見れば、そこにあるのは ワールドアイテムである赤い宝玉。

 

ワールドアイテムから音が・・・??

いや、いやいやいや。違うだろう

 

 

料理の前で立ち止まって、考え込んでいた俺に、アルベドが声をかけた。

 

「モモンガ様、起きられてから何も口にされていないでしょう?コック達が腕によりをかけて調理した品々ですわ。どうぞ、おかけ下さいませ」

 

「おぉ、そうだな。とにかく頂くとするか」

 

椅子に腰掛け、目の前の肉の塊をフォークに刺し 口に放り込んだ。

 

「んん?!!う、うまい!!?」

 

今までリアルで、食べてきた食事がもう食べられなくなる程に美味い!!信じられない程良質な食感と旨味。無意識に次から次へと料理に手を伸ばしてしまう。

 

もぐもぐと料理を半分程食べた所で、ハッと我に返った。周りを見渡せば、何故か感無量といった様子のコック数名と、微笑ましいものを見る様な視線を向けるアルベドがいた。

 

「モモンガ様、ソースがお口についておりますわ」

 

「す、すまない」

 

アルベドに自然な動作で口元を拭かれ、恥ずかしさの余り硬直してしまった。礼儀もへったくれもない食べ方をしていたのをガッツリ見られてしまった。

 

「そう急がずとも、まだお食事はございますわ。さぁ、どうぞ」

 

「う、うむ。ありが、とう」

 

恥ずかしくても、身体は正直なもので 料理に手が伸びてしまう。

 

口に入れようとしたところで、コーンのようなモノがポロッと落ちてしまった。

 

「あ、」

 

それは俺の“肋骨”の上に乗った。

 

ん?んん?!

 

俺、骸骨だよな。なんで食べられているんだ・・・?食べた物何処に行った?!

 

「あ、アルベド」

 

「はい、何でしょうか?」

 

「俺、アンデッドだよな」

 

「ええ。美しいオーバーロードでございますわ」

 

「お、おう。あのな、何で食事しているんだろうか?」

 

「え」

 

「え?」

 

 

俺は混乱したまま、ポカンとしているアルベドと、暫し見つめあったのだった。




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