【完結】鈴木さんに惚れました   作:あんころもっちもち

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36.ツアレニーニャ・ベイロン

☆モモンガ視点

 

 

「それは 本当か!!?」

 

 

冒険者モモンとしての活動を終え、宿屋からナザリックに帰還。最近の楽しみである夕食を食べていた所へ やって来たセバスが報告した内容に、思わず立ち上がってしまった。

 

ガシャンと食器が揺れ コップが倒れた。

片付けてくれたメイドを視界の片隅で捉えながらも、いつもなら出てくる感謝の言葉すら口に出来ないほど動揺していた。

 

一緒に食事をしていたデミウルゴスが、一息ついてから冷静に提案してきた。

 

 

「彼ら、特にニニャといいましたか。彼女は即刻 捕らえますか? アインズ・ウール・ゴウンについて 何処までの情報が漏れているのか確認しなければいけませんし、我等の手の内を知られているのは危険です」

 

確かにその通りだ。だが・・・

 

「セバスやプレアデスの情報を知るものはプレイヤーの中でも極わずかの筈だ。我がアインズ・ウール・ゴウンのギルドメンバーか、それに親しい者達」

 

「つまり、味方の可能性が高いということですか?」

 

 

セバスの問いに頷く事で返事をした。ギルドメンバーの誰かがこの世界に来ている??何度も考えていた、望んでいた、可能性。突然 現実味を帯びてきたそれに 嬉しくて 笑みが出てきてしまいそうにになるのを何とか押し込んだ。

 

それにしてもなんで、ナザリックの情報を漏らしたんだ?

まぁ、なんか伝説の存在みたいな扱いになっている辺り、悪い気はしないけど。ニニャって子は ウルベルトさんの大ファンらしいと聞いて デミウルゴスも満更じゃなさそうだ。

 

いや、とにかく この話を広めた人物を突き止めないとな。

 

 

「セバス、ナザリックの話を広めたのは誰か分かるか?」

 

「ニニャの姉、ツアレニーニャ・ベイロンだとの事です。幼い頃から非常に大人びた女性だった様で、頭も良く “誰も教えていないのに”計算が出来たそうです」

 

「姉、か」

 

「もしや、その方は 転生したのではないでしょうか?ユグドラシルの消滅という非常事態の中、我々がこの世界に転移して逃れたように。転生する事で生き延びた・・・ 」

 

 

デミウルゴスの考察にそれもそうかと納得した。俺達が転移してきた原因が分からないからこそ、転生という形でやって来てしまっていても 不思議はない気がしてくる。

 

どちらにしろ、その女性がアインズ・ウール・ゴウンにとって、身近なプレイヤーである可能性大だ。

敵対されることもないだろう。同じ境遇に落とされた者同士で助け合えるかもしれないし、何とかして接触したい。

 

 

「そのツアレニーニャは、何処にいる?」

 

「それが、行方不明だそうです。」

 

「行方不明だと?」

 

「はい。今から9年前に 貴族の妾として無理矢理連れていかれ、その後 何処かに売られた所までしか手掛かりが掴めず。ニニャと 幼馴染であるブレイン・アングラウスの2名が現在も探しているそうです。」

 

「9年前か、・・・時間が空いてしまっているな」

 

 

9年前ならユグドラシル自体はプレイ出来るが、セバス達どころか ナザリック地下大墳墓さえ無かったぞ?・・・いや いや、時間のズレが生じているのか。13英雄は200年前の人物らしいし、彼らが プレイヤーである線は濃厚になってきたな。

 

「当時のツアレニーニャは11歳で、戦闘能力も皆無だったそうです。」

 

「はぁ!?11歳!!?」

 

 

ニニャの年齢を聞いていなかったから、妾と聞いて勝手に18歳ぐらいかと思っていたが11歳って、ガチのロリコンじゃねぇか。しかも手を出してるあたり、悪質だ。「Yesロリータ、Noタッチ」と言っていたペロロンチーノさんが マトモに見えてくる。

 

 

「11歳で戦闘能力がなし。売られた先は不明ですか・・・。これはかなり不味いかも知れませんね」

 

 

デミウルゴスの発言に背筋が凍った。そうだ、この世界は 俺が生活していた“リアル”よりも過酷な世界だ。ツアレニーニャが死んでいる可能性もあるのか、クソッ。

 

 

「セバス、その冒険者達 特にニニャとブレインだったか。彼らに専属の護衛を付けろ。本人達にバレないようにな。彼らはツアレニーニャの親しい者達のようだ、出来るだけ仲良くしてやってくれ。」

 

「はっ」

 

「至急 ツアレニーニャの行方を探さねばな。はぁ、アルベドを解放するか」

 

「あの・・・アルベド様は?」

 

 

俺の言葉に反応したセバスが、ここに居ないアルベドに対して不思議そうにしながらも 質問してきた。どう伝えたものか・・・。正直に話をするしかないものの、こんな話をセバスにするのは 恥ずかし過ぎて 上手く言葉が出ない。

 

 

「あぁ、アルベドはな。その、余りにも積極的過ぎて 俺の理性がヤバかったというか、そのだな・・・」

 

「アルベドは おイタが過ぎましたので、モモンガ様直々にロープで縛り付けて 執務室に放置してあります・・・まぁ、彼女にとってはご褒美なのでしょうが 」

 

「え」

 

 

俺の話を上手く繋げてくれたデミウルゴスに感謝したのもつかの間、最後の発言に 思考が停止した。いくらアルベドでも流石に そんな残念な子じゃないと思うけど・・・たぶん。

 

 

「成程。では、アルベド様をコチラへお連れしてまいりましょうか?」

 

「あぁ、・・・頼む」

 

 

セバスは 納得したような面持ちで部屋を出ていった。

 

セバスにまで、残念な子認定されているのか、アルベドは・・・自業自得というかなんというか。

 

 


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