【完結】鈴木さんに惚れました   作:あんころもっちもち
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ころころ視点変更してゴメンナサイ
書きたいシーンをって思うと、どうしても・・・ね。



38.高鳴る心

 

☆ニニャ(アイン)視点

 

 

バレアレ薬品店へ到着した僕達を待ち受けていたのは、狂気じみた女だった。

 

ンフィーレア君に「君を攫いに来た」と堂々と宣言した女の目は、力を持った者のソレだった。こちらを見下し まるで玩具で遊ぶかのような残忍で楽しそうに歪んでいる。・・・貴族共と同じ狂気じみた笑顔に、怒りと恐怖で 思わず 手に持ったスタッフに力が篭った。

 

 

ンフィーレア君を守ろうと 僕らが前に出た時には、ブレインは女に飛び掛っていた。

 

ブレインの振り下ろした剣と、それを受け止めた女の短剣が重なり、嫌な音をたてている。

 

 

「へぇー、なかなかやるじゃん」

 

「チッ おい!お前らはガキを連れて外に出ろ。コイツは俺の獲物だ」

 

 

ブレインが僕達へ声を上げた。この女はそんなにも強いって事なのか?ペテルも危機感を感じたようで声を張り上げた。

 

「ブレインさん!」

 

「お前らがいると邪魔なんだよ!さっさと行け!!」

 

「ブレイン?ブレイン・アングラウスじゃん!あは、ラッキー!!カジッちゃん 私、コイツとヤってるから、後よろしく〜」

 

 

楽しそうに笑う女の言葉に、嫌な汗が流れた。その時、後から聞こえた音に すぐさま身構えると、僕らが入ってきたドアから青白い顔をした不気味な男が入ってきた。

 

 

「はぁ。貴様という奴は、ンフィーレアを捕獲するのが目的だというのに」

 

 

威圧されるような不気味な雰囲気に呑まれそうになる心を叱咤しつつ、何とか心を奮い立せようとしたものの、ルクルットの発言に、心臓が鷲掴みにされ 恐怖で震えそうになった。

 

「クソッ、ニニャ 俺達で奴の隙を作る。その間にンフィーレア君を連れて逃げろ」

 

「で、でも!」

 

 

ペテルもダインもルクルットの意見に賛同するようにアイコンタクトを取ってくる。ここでみんなを見捨てたら、僕はッ

 

 

「ンフィーレア以外は要らないのでな、《アシッド・ジャベリン/酸の投げ槍》」

 

「ーッ! 《シールド・ウォール/盾壁》」

 

 

女からカジッちゃんと呼ばれた男からの突然の攻撃に何とか防御したものの、反応が遅れ、盾となってくれたダインの酸を浴びた腕の鎧が溶けて 肉が溶ける嫌な匂いがした。呻きながらよろめくダインに駆け寄り、急いで《ミドル・キュアウーンズ/中傷治癒》をかけた。

 

その間に、ルクルットとペテルが男へ向かって攻撃を仕掛けに行った。同時に踏み出された攻撃は見事なコンビネーションだったが・・・男がニヤリと笑った。

 

 

「鬱陶しい。《アンデッド・フレイム/死者の炎》」

 

 

あれは、生命を奪う死の黒炎が全身を包む 防御魔法!?

 

 

「ペテル、ルクルット!!逃げて!!」

 

 

声を張り上げたが既に遅く、黒炎が周囲に巻き起こった。2人を巻き込もうとしたその瞬間ーー2人が“何か”に弾き飛ばされた。

 

「ぐっ」

 

「な、なんだ」

 

突然現れた2人を弾き飛ばした者は、黒炎を前にして僕達を守るように身構えていた。そこに立っていたのは異形・・・複数ある腕と、どこか“虫”を思わせる顔立ちに、思わず息を飲み込んでしまう。

 

ペテルが突然の事に、悲鳴のような声を上げた。

 

「モンスター!!??」

 

「味方だ」

 

静かに低く答えた 彼は、目にも捉えきれない速さで黒炎を消した。驚愕した様子の男が 不利を悟ったのか、青白い顔色を更に悪くさせながら怒鳴った。

 

 

「糞がッ クレマンティーヌ!!撤退する!ンフィーレアを捕獲しろ」

 

「ええ〜これからなのにぃ」

 

「早くしろッ!」

 

「ちぇっ」

 

 

ブレインと激しい打ち合いをしていた女が 舌打ち混じりにブレインを蹴り飛ばし、壁際にいたンフィーレア君目掛けて突撃して来た。1番近かった僕が、ンフィーレア君を守ろうと前に出たものの、魔法詠唱する時間なんてなくて、スタッフで防御するのが精一杯だった。

ニヤリと笑った女から振り下ろされる短剣が迫ってきたその時ーー

 

 

「させるかぁ!!!」

 

 

怒鳴り声共に ブレインの投げた剣が女目掛けて飛んでいき、女が舌打ちをしながら弾き返した。

 

尚も僕に攻撃を仕掛けようとした女が ピタリと止まった。女の正面から見ていた筈の僕ですら “女の背後に立っていた異形”の彼に気が付いたのは女と同じタイミングだった。

 

「チッ、」

 

女は武器を下げ、急加速をすると 僕の脇を通り抜けてンフィーレア君を抱き上げ、ドア前にいた男の隣まで移動していた。ンフィーレア君は気を失っているようで 微動だにしない。

 

 

「な、!?」

 

 

僕は女のあまりにも早い動きに、全く反応出来なかった。呆然とする僕らを尻目に女はヒラヒラと手を振った。

 

 

「ばいばーい、今度会った時に殺り合おうねぇ。ブレインと・・・そこのバケモノも」

 

「《インヴィジビリティ/透明化》」

 

 

女の言葉に被せるように男が魔法を詠唱し、姿が掻き消えた。

ペテルの悔しそうな声が響いた。

 

「ンフィーレア君が!!あぁクソ」

 

それぞれが 体制を立て直し お互いを見合ったのも束の間、未だにそこにいる異形を警戒するように距離を取った。

駆け寄ってきたブレインが僕をダインの方へ退かし、警戒するように声を上げたが、異形の彼は淡々として答えた。

 

 

「お前、何なんだ?」

 

「ここで待て」

 

「は?」

 

 

言われた意味が分からず、戸惑っていると、時間を置かずに 戦闘によりボロボロになったドアが、ギギギと音を立てながら開き、新たな来訪者を知らせた。

 

漆黒のフルプレートに身を包んだ男と、妖しげな仮面を付けた銀髪の少女が 入ってきた。

 

 

「問題は?」

 

「ンフィーレアを連れ逃げられました。追尾はしております」

 

 

漆黒の鎧の男に対して、異形の彼は まるで上位者を敬うように跪き 返答した。

若干、取り乱したようなルクルットが 漆黒の鎧の男に 武器を突きつけた。

 

 

「な、なんなんだよ お前」

 

「何なんだとはな?ん〜お前らは我らについて随分と詳しいようだが」

 

 

呑気な様子で話す鎧の男に 呆気にとられながらも、訳がわからず 首を傾げた。

誰も心当たりがないと 確認すると、ブレインが警戒するように口を開いた。

 

 

「アンタみたいな奴と知り合いなら忘れそうに無いと思うが?・・・何者なんだ」

 

 

鎧の男が意味深に左手をあげた瞬間、漆黒の鎧は消え 豪華な黒いローブを身に纏った厳つい顔つきの骸骨が現れた。

隣に控えていた少女は仮面を外し、深紅の瞳をした美しい顔を顕にさせた。

 

 

「ギルド、アインズ・ウール・ゴウン。その支配者であるモモンガだ」

 

 

ずっしりと重みのあるその声に、恐怖に混じって心が浮き立つのを感じた。皆も同じ事を考えたらしく、呆然と立ち尽くしていた、ペテルとルクルットの声が聞こえた。

 

 

「・・・マジ、かよ」

 

「こんな事が・・・」

 

 

声すら出ない様子のダインを含む 皆が動けない中で、状況を飲み込めたらしいブレインが 剣を突き付けた。

 

 

「異形種のみで構成される“悪のギルド”の親玉が何の用だ。敵か?味方か?」

 

「無礼者、至高の御方に武器を向けるなど 愚かにも程があるでありんすえ」

 

「シャルティア、そう言うな。我らを恐れるなというのは酷だろう」

 

 

シャルティアって言った 疑惑が確かな確信に変わっていく・・・

 

僕は“憧れた世界の一部”を目の前に堪える事が出来なかった。

 

 

「きゅ吸血鬼のシャルティア・ブラッドフォールン?あの、創造主が理想を詰め込みすぎて、性癖がかなりヤバい事になってしまっているっていう可憐で美しい吸血鬼姫?」

 

「人間風情が、私を呼び捨てにするなと言いたい所ではありんすが、今回だけは許してあげる。次からは様をつけなんしね」

 

「は、はい!!!・・・あ、あの モモンガ・・・様はオーバーロードの?」

 

「あ、あぁ」

 

 

ああ!やっぱり、やっぱり実在したんだ!!僕の名前の由来だって、幼い頃から聴かされて 憧れ続けたあのギルドが!!

 

 

「ああー!!!ホンモノ本物だ!!強くて 優しくてカッコイイアンデッドだって お姉ちゃん言ってたんだ!ーん"んん」

 

 

歓喜に全身が震えて、思わず あのアンデッド、モモンガ様に詰め寄ろうとした所で、後から強い力で口を抑えられ 引き戻された。この大きな手はダインだ。

 

 

「も、申し訳ない。ニニャはアインズ・ウール・ゴウンの大ファンで、決して悪気があった訳ではないのである故に・・・」

 

「良い、気にするな。端的にいえば、我々はお前達の味方だ。」

 

「・・・味方?」

 

 

ペテルが訝しげに聞き返した所で、店舗側の出入口から、眼鏡をかけた女性と ポニーテールの女性が入ってきた。眼鏡をかけた女性が口を開いた。

 

 

「モモンガ様、リィジー・バレアレという老婆が 入ってこようとしたので 捕らえましたが いかがなさいますか?」

 

「リィジー?」

 

「この店の店主で、ンフィーレアの祖母だそうです」

 

「あぁ、成程、まぁ良い。連れてこい。」

 

「はっ」

 

 

一礼をして出て行く彼女達を見送ってから、モモンガ様が 口を開いた。

 

 

「はぁ、とにかくだ。まずはンフィーレアの救出といこうか」

 

 

急な事に付いて行けていない頭とは裏腹に、心はバクバクと高鳴り続けていた。

 








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