【完結】鈴木さんに惚れました   作:あんころもっちもち
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48.蜘蛛の祝福

パンドラズ・アクターに連れてこられた王都は、私の記憶の中の王都とは一変していた。王都周辺は逃げ出す者がいないようナザリックの配下で固められており、誰も脱出出来ない。空には巨大なモニターが浮かんでいて、すれ違う人々は皆、空を見上げ モニターを見ているようだった。

 

そこでは地面に座らされた人間達が 怒鳴り声をあげており、玉座の上で立ち尽くす者達が冷めた目で見下していた。・・・その中央には鈴木さんがいた。まるで本物の“死の支配者”、魔王のようになってしまっている彼からは冷たい雰囲気が漂っていた。

 

私の周囲にいた人たちからは、恐怖、戸惑い、八本指や貴族に対する怒り、・・・そして、意外にも アインズ・ウール・ゴウンに対する期待の声で溢れていた。

 

「どうなっちゃうの?」

 

「あんな恐ろしい奴らなんて信じられる訳がないだろう?!」

 

「クソ貴族共め」

 

「悪いヤツをやっつけちゃえー!!」

 

人類の敵であるはずの“異形種”にそれだけ期待する程、国民の疲労は限界だったんだ。

 

 

《これ以上、失望させてくれるな。貴族共、お前らの答えはそれで終わりか?》

 

 

いつもとは違う、初めて聞いた鈴木さんの低く恐ろしい声にハッと顔を上げてモニターを確認すると、レエブン侯が玉座の前まで進み出てくる所だった。

レエブン侯を見つめる鈴木さんが 恐ろしく怖く見えて、私は急いで駆け出した。

 

 

「ツアレ様。モモンガ様の元へお送りしますよ、しっかり掴まってください」

 

「は、はいーーーー!!??」

 

 

さっと抱き上げてくれたパンドラズ・アクターは瞬時に物凄いスピードで駆け抜けて行った。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

☆モモンガ視点

 

 

レエブン侯、加藤さんを配下に入れ諜報活動をしていた男が 俺にしてきた内容は嘆願だった。

 

 

「私は・・・私は、貴族としての責務を果たせませんでした。王のお好きな様にして下さって構いません。しかし、どうか 家族だけはお許し頂けないでしょうか」

 

「お前の家族も貴族ではないのか?私は女子供だからといって区別はしない」

 

「私の妻と息子は、確かに貴族としての恩恵を受けてきました。しかし、民を虐げたりはせず 領民とも友好な関係を築いております。息子は民を支えられるようになるのだと勉学に励んでおり 優秀でございます。きっと、王のお力になれることでしょう」

 

 

自分の命を投げだしてでも、家族を守るか・・・それが 父としての情なのか、貴族として血を残したいが為なのか。

 

 

「アインズ・ウール・ゴウンの配下に加わるのだ。貴族などという無駄な者はいらぬ。どれだけ必死に“血”を守ろうとしても 貴族ではなくな・・・」

 

「す、鈴木さん!!!」

 

突然 ここに居るはずのない加藤さんの声が響き、バードマン、懐かしいペロロンチーノさんの姿を纏ったパンドラズ・アクターに抱えられた加藤さんが、“空から”降りてきた。

 

彼女は すっかり回復したらしく、俺に向かって走り寄ってきた。その後で、パンドラズ・アクターが一礼していた。

心做しか、ドヤ顔しているように見える・・・そうだな、空からやってくるんだから カッコイイ登場の仕方だと思うよ。だからその顔やめろ。階層守護者達が呆れた視線を向けていて、創造主の俺としてはいたたまれないんだよ!

 

 

俺の前まで走ってきた加藤さんは、勢いをそのままに俺に飛びついてきた。俺は彼女を抱きとめると そのままぎゅっと 包み込んだ。一瞬、周囲が光ったような気がしたが、それもすぐに収まった。

 

 

「こんな所まで 来ちゃったんですか?」

 

「だって、あれは夢なのかと思って・・・私、ずっと会いたかった、ですから」

 

「それは俺もですよ・・・もう、絶対に どこにも行かないでください」

 

「あり、がとう」

 

 

加藤さんの頬に伝った涙を拭いながら その顔を見つめた。髪も目も顔の作りだって変わってしまっているが、ツアレニーニャとなった彼女からは俺との強い繋がりを感じることが出来た。

 

 

「ツアレ?」

 

 

レエブン侯のか細い声を聞いたのか、加藤さんが1度レエブン侯を見た後、俺に向き直った。

 

 

「レエブン侯・・・鈴木さん、彼は私の恩人なんです。助けて下さいませんか?」

 

「恩人?だけど、アイツのせいで加藤さんが危険な目に・・・」

 

「私、娼館に売られる所だったんです」

 

「娼館・・・」

 

「でも、その前にレエブン侯が買い取ってくれて、1人の人間として大切にしてくれました。それに 諜報活動をしているのも、王国を守る為に影ながら奔走するレエブン侯を助けたいと思ったからなんですよ」

 

 

もっともっと早くこの世界にやって来ていれば、早く加藤さんを見つけ出していれば・・・後悔がどんどん押し寄せてくる。だが、加藤さんはこうして生き残っていて それがレエブン侯の働きによるものならば。

 

 

「レエブン侯、お前は自分の命はいらぬから家族を助けてくれといったな」

 

「はっ」

 

「家族が助かればお前は満足かもしれない。だが、残された者達はどうなのだ?お前の妻も息子も悲しむのではないのか」

 

「それは・・・」

 

「私は 昔、愛する者を失った。今はこうして再び巡り会うことが出来たが、あの時の絶望は計り知れないものだった」

 

 

全てが終わったと思った。絶望し、何に対しても希望を見い出せず 苦しんだ。あの苦しみは・・・もう二度とごめんだ。

 

 

「生きて帰れ。愛する者が待っているだろう」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 

震え声を出しながら、地に額を擦りつけんばかりに頭を下げたレエブン侯に 俺は言葉を続けた。

 

 

「だが、尻拭いはしてもらうぞ。“残った”王族と 残しておくべき者達を選別しろ。害があるものを残すな・・・次は無いぞ」

 

「はっ、かしこまりました」

 

 

下がっていくレエブン侯を見送りながら加藤さんが俺にしか聞こえないぐらい小さな声で呟いた。

 

 

「ありがとう」

 

「好きな人の頼み事ですからね、当たり前ですよ」

 

「す、す、す、スキナヒト」

 

 

本心を打ち明ければ、顔を真っ赤にさせて俯く加藤さんが可愛くて、俺は 加藤さんが、離れてしまわないように 彼女の腰を抱き寄せると声を張り上げ、世界に宣言した。

 

 

「ここに、リ・エスティーゼ王国は 我がアインズ・ウール・ゴウンの支配下へ下ったことを宣言する!!我らの民は全てが平等に支配される。民を害するものは 如何なるものであろうと断じて許さん。アインズ・ウール・ゴウンに栄光あれ!!!」

 

 

言い終わった瞬間、激しい光が周囲を照らし 収まった時には 俺達は“大群衆”の歓声を浴びていた。

 

 

「王よ、王よ、我らが王よ!!!」

 

「王様〜王妃様〜!万歳!!」

 

 

半透明になった 様々な種族の者達が 王都を埋め尽くさんばかりに溢れ 誰もが歓声をあげ続けており、何処からともなく美しい花びらが舞い落ちてきた。

突然の事に呆然としながら加藤さんの方を見れば、彼女も呆然とした様子で俺を見つめてきた。その加藤さんは、美しいドレスを身に纏い、頭にはティアラを乗せ、まさに王妃そのものの姿だった。

 

 

「加藤さん、綺麗ですね」

 

「ふふっ鈴木さんもカッコイイです。まるで王様みたい」

 

 

照れながら言った加藤さんのその姿が堪らず、加藤さんを引き寄せて 彼女に そっと触れるだけのキスをした。

 

 

「あ、き、き、キス??!!こ、こんな所で!!」

 

「勝手に居なくなった罰ですよ。素直に受け入れて下さい、俺の事が好きなんでしょう?」

 

 

俺は更に沸き立つ歓声を聞きながら、全身を赤く染めながら恥ずかしがる可愛らしい加藤さんを見つめるのだった。

 




 
【穢れた蜘蛛妃の痛み】【血塗られた蜘蛛王の嘆き】
・それぞれが 720時間(約1ヶ月)以上 指輪を装備し続けている事
・上記を満たした上でお互いの身体に10分以上触れている事

以上の条件を満たすと、王と王妃の姿を纏い、空から花びらが舞い散る中 国民達に祝福されるモーションが出現する ネタアイテム。(同性でも可)

指輪の消滅を条件に 人間種に限り、異形種“アラクネ”へ変更する事が出来る。

ユグドラシルで発現していた場合、街を埋め尽くさんばかりの邪魔くさい民衆が現れる為 話題になる事間違いナシだったが、指輪の性能がクソ過ぎて、長時間装備し続ける者などおらず、誰も気が付くことが無かった。


ちなみに、転生時に指輪がツアレニーニャの体内に取り込まれていることにより モモンガの指輪が外れなくなるなど 指輪の効果に関しては歪みが発生しており、この指輪の効果がどこまで歪んでいるのかは 不明である。



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リア充END!次回最終回!!







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