【完結】鈴木さんに惚れました   作:あんころもっちもち
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番外編です☆彡.。
不定期更新になりますが、よろしくお願いします!

ほのぼの話になる予定です


番外編《バージンロード》
1.アラクネ


 

白い壁にハメられた煌びやかなステンドグラスが美しい教会は、50人ほどの人々で賑わっていた。

秋晴れの中、教会前のスペースには 数々の料理が並べられており、立食形式で自由に食べられるようになっていた。

 

一際 色とりどりの花やバルーンで飾り付けされた場所には、祝福されて幸せそうな新郎新婦がおり、その姿が眩しくて、思わず目を細めてしまう。

 

 

お兄ちゃん・・・おめでとう

 

 

私は心の中で祝辞を述べるに留めて、パーティー会場の隅に佇んでいた。

今回、お兄ちゃんの好意で “叔父さんの娘”として結婚式に招待してもらったのだが、やはり場違い感が歪めない。

 

新婦さんは勿論、お兄ちゃんの家族も歓迎してくれたので せっかくだからとやって来たものの、やっぱり貧困層出身であり 見目も悪い私に 嫌悪感を抱く人もポツポツと見受けられた。

 

だから、私は なるべく目立たないよう こんな端っこにいる訳だ。

 

 

こんな、豪華な結婚式にお呼ばれされただけでも幸せな事だよね・・・。

 

 

お兄ちゃんのお母さんに貸してもらった綺麗な刺繍の入った紺のドレスを握りしめて、もう一度 新郎新婦を見た。

 

叔父さんと談笑するシルバーのタキシード姿のお兄ちゃん。その隣で クスクスと可愛らしく笑う 真っ白なマーメイドドレスに 頭には小さなティアラを載せたお嫁さんはとても綺麗だった。

 

 

私も・・・いつか着てみたいな。

 

 

「ねぇ、貴方は新郎の何なのかしら?」

 

 

突然、声をかけられ ビックリしながら振り向くと 中年の女性がコチラを睨むように見てきてきた。

 

 

「あ、お、叔父の、娘です。小さ、い頃に、一緒に、その、遊んでて・・・」

 

「あぁ、あの貧困層に住んでるっていう。・・・今後、関わるのはやめて頂けるかしら?」

 

「え、」

 

 

冷たい口調で言われた言葉に 一瞬思考が止まってしまった。

 

 

「凛ちゃんにも春が来て、とても良い旦那さんを捕まえたと思ったのに こんなコブ付きなんて・・・。金の無心なんて以ての外ですからね!!本当に貧困層の奴らは穢らわしいたらありゃしない。その鬱陶しい話し方といい不快感しかないわ」

 

「ちょっと、姉さん。何してるの?!」

 

 

女性から投げつけられる言葉に呆然としていると、新婦の母が小走りで駆け寄ってきた。

 

 

「あぁ、ちょっと釘を刺していただけよ」

 

「貧困層だからって誰もが心まで貧しい訳じゃないのよ。もう、新郎新婦の所へは行ったの?早く行ってらっしゃい」

 

「ええ、そうするわ」

 

 

最後に私をもう一度睨みつけると、スタスタと歩き去ってしまった。その場に残った新婦の母は、申し訳なさそうに眉をしかめた。

 

 

「ごめんなさいね。姉さんは昔、その貧困層の人に酷い目に遭わされたから警戒心が強くて・・・」

 

「あ、い、いえ。大丈、夫、です、から」

 

「そう?本当にごめんなさいね」

 

 

ペコりとお辞儀をした新婦の母を見送ってから、私は少しずつ 先程の言葉を噛み締めていた。

 

 

“穢らわしい”

“鬱陶しい”・・・か。

 

 

私は、沈む気持ちを切り替えようと目を瞑って、再び目を開けると、真っ暗な空間が広がっていた。

 

 

「・・・え」

 

 

左右、上も下も何処を見ても真っ暗闇・・・。

突然の変化に戸惑いながらも、必死に目を凝らすと 少し進んだ所に、2つの指輪が見えた。

 

黒い蜘蛛の指輪と、紫の蜘蛛の指輪。

私が近付くと それぞれが背に載せたダイヤが薄らと光を灯し、空に映像を映し出した。

 

それは、“指輪の記憶”だった。

 

 

 

この世界に来てからの鈴木さんの記憶も、私の過去も振り返って、私は申し訳ない気持ちで一杯になった。

 

 

何故、あの時死んでしまったのか。

 

そして、今、どうして“鈴木さんの好意を受け入れてしまったのか”。

 

 

もはや 私の身体は純潔ではない。

その事実を隠して結婚するなど、この世界においてそれがどれ程 罪深いものか知っていた筈だ。

 

そして・・・見てしまった守護者達、特にアルベドが示した深い愛情。

色仕掛けしようとして空回りしながらも、鈴木さんを受け入れ 幸せを願う美しい姿は、彼女こそが 鈴木さん、モモンガさんに相応しいのだと見せつけられたようだった。

 

 

穢らわしく、鬱陶しい女・・・それが私だ。

 

 

「諦めますか?」

 

「え」

 

 

急に呼びかけられた声に、ハッと顔を上げれば そこには懐かしいスーツ姿の鈴木さんがいた。

 

 

「僕は、諦められませんでしたよ。加藤さんの事をずっと」

 

「で、でも、私には相応しくないです・・・鈴木さんは、アインズ・ウール・ゴウンの王なのですから」

 

「また、居なくなるのですか」

 

「え、」

 

「勝手に居なくなって、やっと見つけて 一緒にいられると思ったのに。また、また僕を捨てるんですか?!!」

 

「そんな事しません!!!だって私は」

 

 

ーーー鈴木さんの事が好きだから

 

 

 

「なら、受け入れてください。僕らが手伝えるのはここまでです」

 

 

ニコッと笑った鈴木さんの姿が、ぐにゃっと歪んだ。

 

 

「待って、それってどういう・・・!?待って!!」

 

 

私は怖くて必死に手を伸ばしたが、その手が 鈴木さんの姿をした者を掴むことは無かった。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

 

「ーーッ!?はぁ、はぁ、はぁ」

 

 

ガバッと身を起こして、冷や汗を拭った。辺りを見渡せば、豪華なベッドや落ち着いた部屋の内装が目に入って、ここがナザリック地下大墳墓だったと思い出し 一息ついた。

 

 

「・・・夢か。嫌な夢だったな」

 

 

王都での再会以降、ここ最近はナザリックに招待してもらい モモンガさんと散策したり 守護者達とお茶したりと、ほのぼのとした日々を過ごしていた。

 

カルマ値が悪に傾いている者ほど、人間への不快感は強いが、「モモンガ様の最愛の人」というカードが私を守ってくれているようだった。

 

私は、詳しく知っていた彼らと話せる事が楽しくて。これから少しずつ皆との交流を深めて行ければと・・・そう思っていた。

 

 

でも、あの夢を見たあとでは その考えも甘かったのだと思い知らされる。

 

 

「あー。・・・とりあえず、起きよう」

 

 

モヤモヤする思考を振り払うように体を動かして、ベッドから出ようとした所で 気が付いてしまった。

 

 

・・・あれ?服着てなかったっけ?

 

 

ちらりと視界に入った剥き出しの自身の胸を抑え、首を傾げた。後ろを振り返ってみれば、ボロボロになって落ちているネグリジェと “見たことのない虫のような太い腕”が視界に入った。細かな毛が生えた青黒いそれが怖くて 堪らなかった。

 

 

「ーーッ!!?」

 

 

ガタガタンと音を立てながら、ベッドから飛び出してみて、自身の足に違和感を感じ、ゆっくりと視線を向ければ、そこには模様の入った大きな下半身に6本の虫の足。正に“蜘蛛の下半身”が視界いっぱいに存在していた。

 

 

 

 

「ヒッ!!ぎゃあああーーーー!!!!!!!」

 

 

 

 

こんなにも大声が出るのかと自分でもビックリするほど大きな声が 部屋中に響き渡った。部屋の外に控えていたのか、メイドとエイトエッジ・アサシンがすぐに飛び込んで来て 声を上げた。

 

 

「如何がなさいましーーッ!?ツアレニーニャ様、そのお姿は・・・?!」

 

「わ、わからない、ど、ど、ど、どうなって」

 

 

バタバタと走る音が聞こえ、次に飛び込んできたのは 階層守護者統括 アルベドだった。

 

 

「ツアレ、どうかして・・・・・・あら?ツアレニーニャは“アラクネ”だったかしら」

 

「え、人間だと思い、ます?」

 

「その姿はアラクネだと思うけれど。とりあえず、着替えましょう。素っ裸は恥ずかしいでしょう?」

 

「え、あ、」

 

「ツアレニーニャに服を着せるから、エイトエッジ・アサシンは引き続き警備をお願い」

 

「はっ」

 

 

戸惑う私を置き去りにして、アルベドはテキパキと指示を出すと 私に向き直った。

 

 

「ツアレ。身体に違和感は?」

 

「ない・・・と思います」

 

「そう、ひとまずは安心ね。後でしっかり検査しなければならないでしょうけど・・・ツアレの前世はアラクネだったのかしら」

 

「いや、人間でした」

 

「え、あ、・・・そう。モモンガ様と親密になられていたのだから人間種以外だと思っていたわ」

 

 

アルベドが目を見開いて驚いた後、まじまじとコチラを観察してきた。

 

あ、そうか。ユグドラシルがゲームだなんて知らないから、そう思っていたのかな。そうだとしたら、“前世が人間”ってかなり不味い発言だったのかもしれない・・・。

 

 

「ツアレニーニャ様。お着替えでございます」

 

「あ、ありがとうございます」

 

 

メイドが差し出してきた服を手に取ったところで、急にドアの前が煩くなってきた。

不思議に思い、ドアを見ていると、僅かに声が聞こえてきた。

 

 

「ツアレに何があった?!」

 

「ツアレニーニャ様の身体に変化がございまして。もう少ししたらご着替えも・・・」

 

「身体に!!?そこを退け」

 

「モモンガ様ッ」

 

 

あっと思う前に、バンッと勢いよくドアが開かれた。

 

急いで来たであろう 勢いよく入ってきたモモンガさんと、見つめ合う素っ裸の私・・・。

 

 

「あ、え!?蜘蛛??あ、おっぱいが」

 

「きゃーー!!!!」

 

 

モモンガさんに ガッツリと胸を見られて羞恥心から身体が一気に熱くなっていくのがわかった。

思わず手に持っていた着替えを思いっきりぶん投げて、モモンガさんにペチンとぶつかった。

 

 

「え、あ!!す、すみません!!」

 

「見ないでくださいー!!」

 

「は、はいーー!!!!」

 

 

バタバタと部屋の外に出ていったモモンガさんを見送ってから、私はヘナヘナとその場に座り込んでしまった。

 

 

「胸、こんなシチュエーションで見られるなんて・・・」

 

 

気落ちする私に、アルベドが鋭い指摘を投げつけた。

 

 

「貴方。王都で、胸どころか裸体見られてるじゃない。何を恥ずかしがっているの?」

 

「・・・あ」

 

 

モモンガさんとこの世界で初めて再会した時、八本指から救出された直後で、上着をかけられていたものの ほぼ全裸だった事を 今更ながら思い出し、私は あまりの羞恥心に身悶えするのだった。




※たっち・みーの奥さんを 勝手に、「凛ちゃん」と捏造しております。多分、もう出てこないけれど・・・。

※アラクネの姿
背中に2本、足に6本。
更に人間の手が2本の計10本もあるもじゃもじゃした蜘蛛。






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