学校からスーパーを経由して家に帰ると、いっぱい靴が並んでいた。
一樹のお友達かな?
リビングの方から少し話し声がする。
でもリビング通らないとキッチンに行けないんだよな。
早く冷蔵庫に入れないと、魚が腐るんだけど。
はぁ、とため息をつき、今度からはちゃんと連絡しろと一樹に言おうと考えながら、私はリビングのドアを開けた。
「あ、おかえり姉ちゃん」
「お邪魔してます…」
パタン、と扉を閉める。
幻覚でも見ているのだろうか。
今リボーンの主要キャラが我が家にいた気がしたんだけど。
「何で閉めんだよ」
弟に開けられた。
ああ、幻覚じゃなかった。
いるよ、いる。
そこに主要キャラがいるよ。
どうしてだ弟よ。
お前確かこの人たちと学年違うだろ。
「えー、はじめまして。一樹の姉の、真昼と言います」
仕方がないのでとりあえず自己紹介。
黒い悪魔、もといリボーンは…うわ、いた。
まさか弟よ、原作に巻き込まれてないだろうな。
「は、はじめまして!沢田綱吉です」
「俺は山本武!んで、こっちが獄寺隼人な」
山本くんは獄寺くんが挨拶しないことを見越してか、代わりに自己紹介してくる。
ごめんなさい知ってます。
「俺はリボーン。マフィ」
一樹が全力で口を塞ぐ。
超一流のヒットマンにそんなことして大丈夫か。
あー今の流れからすると、マフィアって言おうとしたのを阻止したっぽいから…もしや一樹はマフィアのことを既に知ってるのか。
しっかり巻き込まれちゃってるなー。
頭を抱えたい。
「あー、そうだ姉ちゃん!お茶、お茶出して!」
わざとらしい。
大方私を関わらせたく無いから、ひとまずこの場から私を追い出そうとしているんだろう。
良い弟すぎて涙が出る。
「はいはい」
一樹が出ていけと目で訴えてくるので、私は仕方なくキッチンに移動する。
冷蔵庫を開けて食材を放り込んでから、お湯を沸かしはじめた。
「お茶でいい?コーヒーも出せるけど」
キッチンから顔を出してそう聞くと、一樹がすごい目つきでこちらを睨んできた。
怖い怖い。
「お茶!で!いいから!」
いや、あんたじゃなくてお客さんに聞いてるんだけど。
お茶でいいのかな、ほんとに。
リボーンはエスプレッソが好きなんだっけ。
でも赤ん坊にエスプレッソなんて出したら怪しまれるかな。
普通にお茶にしておこう。
人数分のお茶をお盆に乗せ、キッチンから出る。
もう話は済んだのか、一樹は特に何も言うことはなかった。
「どーぞ」
一人一人の前にお茶を置いていくと、獄寺くん以外はお礼を言ってくれた。
「ごめんね、ジュースとかお菓子もあれば良かったんだけど、一樹も私もあまり食べないから」
主に私が財布を握っているせいである。
無駄に金があるとはいえ、優雅にアフタヌーンティーを楽しむような無駄遣いはできない。
おい、弟、聞こえてるぞ。
今お前、姉ちゃんがケチなだけだろ、って言ったな。
「おやついらないからって言ってお小遣い前借りしてゲーム買ったの誰だったかなー…」
「ごめんなさい」
よろしい。
沢田くんは苦笑いでその様子を見ていた。
ごめんね、こんな家庭で。
「じゃあ私は自分の部屋にいるから」
正直逃げたい。
主に黒服のちびっこヒットマンから。
さっきからすごくニヤニヤしながらこっち見てるんだけど。
「まて」
うわあ喋ったよこの赤ん坊。
聞こえてないふり…は、通じないだろうなあ。
とりあえず何か答えようとした時、私はいきなり扉の方を向かされた。
そのまま両手で背中を押され、私は部屋を出ていくように歩く。
弟だ。
「姉ちゃんは自分の部屋にいていいから!!」
一樹はすごい力で私をぐいぐいと押していく。
私はそれに逆らえず、気づけば廊下に閉め出されていた。
強引だったけど、関わりたくない私にとっては正直ありがたい。
弟は犠牲になるけど。
にしても、どうしてあの面子が弟に関わってるんだ…なんて思いながら自室の扉を開くと。
「ちゃおっス」
閉めていいかな。
ボルサリーノを被った赤ん坊が目の前に見える。
幻覚…じゃないよなあ。喋ったし。
「えーと、リボーンくん…だよね?どうしてここにいるのかな?」
超一流のヒットマンは瞬間移動もできるのか。
「おまえにちょっと聞きたいことがあってな」
嫌な予感しかしない。
だが今更リビングの方に戻ることもできないため、逃げ道は無い。
落ち着いて対処するんだ、私。
相手は子供だと思って接しなければ…
「どうしてオレのことを知ってんだ?」
…ん?
…………あああああ!!!!
そういやリボーンって読心術が使えるんだ!!
ってことは、私の思ってたこと全部筒抜け!?
え、どうしたらいいの!?
「どうして私が、リボーンくんを知ってると思ったの?」
頭の中では大混乱が起こっているが、それを悟られぬように…(意味ないかもしれないけど)
「お前の弟が、『黒い悪魔のような赤ちゃんとは関わんなよ』って姉が言ってたって聞いたんだもん」
「……それ、一樹が言ってたの?」
「いや、思ってた、が正しいな」
過去の私を全力でぶん殴りたい。
私が注意したことは3分で忘れる弟が、どうしてそんなことは覚えてたんだ!
「オレは読心術が使えるんだゾ。…まあ、おまえの心は読みにくいがな」
リボーンが思わぬことを口にする。
つまり、あれか?
私が今まで慌てていた意味は無かったわけか?
「どうして読みにくいの?」
「簡単に言えば相性最悪ってことだな。こんなこと、滅多にねーゾ」
嬉しいような嬉しくないような。
読まれないのは嬉しいけど、この家庭教師ヒットマンと相性が最悪ってもはや死亡フラグでは?
「で、どうしてなんだ?」
「…占い、みたいな」
おいおい、みたいな、って何だよ私。
そこはいっそ言い切れよ。
「ま、そーいうことにしといてやる」
リボーンはそう言ってボルサリーノのつばをくいっと下げ、笑った。
それはそれで怖い。
「おい、リボーンっ!」
私の後ろから、そんな叫び声が聞こえた。
声は一人だったが、足音は二人分。
一樹と……沢田くんかな?
「うるせぇ」
「ぶっ」
予想通り、その二人だった。
沢田くんはリボーンの華麗なドロップキックを受けて廊下に倒れる。
今叫んでたのって一樹だったよね…?
「姉ちゃん!リボーンに何か変なこと言われなかったか!?」
「変なこと?」
十中八九マフィアのことだろうが、私は全力でとぼけた。
「いや、何もないならいいんだ…」
一樹は安心したように微笑んだ。
リボーンはその一樹ごしに、にやりと笑う。
ちょっと嫌な予感がしたが、それ以上私に何も言うことなく、リボーンは去っていった。
騒ぐ沢田くんと一緒に。
「なんか隠してそーだな」
リボーンがそんなことを言っていたなんて、私は全く知らない。