知ってる姉と知らない弟   作:しょうゆらーめん

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ロンシャンに注意!/プールの悲劇

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「一樹、買い物行かない?」

 

「どうせ荷物持ちだろ?…いいけどさ」

 

うんうん、なんだかんだ言いながら従ってくれるんだよなあ、一樹は。

我が弟ながら良い子である。

 

「買いだめするつもりだから、よろしくね」

 

あからさまに嫌そうな顔をしたのは見て見ぬ振りをしよう。

私は寛大なのだ。

 

早速行こう、と玄関先に出ると、ふいに一樹のケータイが鳴った。

一樹は不思議そうな顔をしながら電話に出る。

 

「あー、もしもし……ああ、おまえか。…ボウリング?誰と?……いや、ロンシャンって誰だよ…っていうか俺はこれから用事あるから。悪いな。……じゃ」

 

ピッ、と電話を切る弟。

これは、もしや原作にもあったあの地獄のようなボウリングの話だろうか。

いや、確実にそうだ。

“ロンシャン”と思い切り言っていた。

この話は内藤ロンシャンと化け物みたいな女3人(ひとりはリボーンの変装であるリボ子)とツナでボウリング(合コンもどき)をする話である。

気に入られたら最後、生きたままストラップにされる。

危なかった…私が買い物に誘っていなければ一樹がストラップにされるところだったのか…

 

「早く行こう、姉ちゃん」

 

目の前に立つ一樹は、自分がそんな危機にあったことはちっとも知らない。

 

 

 

/2

 

とうとう並盛中学でプール授業が始まった。

俺は別に泳げないわけではないが、得意というわけでもない。

ただ…ツナ先輩が泳げないらしい。

15メートル泳げないと女子に混ざって練習させられるのだとか。

それを回避しようと、ツナ先輩は山本先輩と特訓を始めるらしいのだが…

 

「これ、俺がいる必要あります?」

 

何故か俺まで巻き添えを食らっていた。

 

「まーまー、皆でやる方が楽しいだろ?」

 

山本先輩はいつもの爽やかな笑みで俺にそう言った。

 

「んじゃ、ツナ。とりあえず泳いでみろよ。ここなら浅いから」

 

「う、うん。よーし…」

 

まあでも、ツナ先輩も全くできないわけじゃないだろう。

…と、考えていたのは数分前のこと。

あ、この人ダメだ、と思うのは早かった。

溺れているのと大差ないような動きでなんとか5メートルを泳ぐツナ先輩。

正直苦笑いしかでてこない。

しかも泳いでから盛大にむせている。

 

「いいかツナ!ぐっともぐって…」

 

そんな先輩に、山本先輩が熱心に指導する…のだが、いかんせん説明が悪い。

かろうじてジェスチャーはついているが、説明が訳のわからない擬音語だらけである。

 

「そーすりゃすいーーっといくから!」

 

それでわかるのは感覚で生きてる人間だけだろう。

案の定ツナ先輩は、愕然としている。

 

「助けてー!おぼれてるーー!」

 

と、そんな時、女の子の助けを求める声がした。

見ると、黒髪でポニーテールの女の子が足がつくはずのプールで溺れている(ように見える)。

 

「ハル!?」

 

どうやらツナ先輩の知り合いらしい。

予想はついていた。

 

「足つくだろ?」

 

ツナ先輩にそう言われると、女の子はやはり溺れてなどいなかったようで、簡単に立っていた。

その後も女の子は謎理論を展開し、周りの子供からヘンタイよばわりされていた。

俺は知り合いだと思われたくなかったので少し遠くに立っている。

だがまあ、ツナ先輩があまりにもかわいそうになってきたので流石に近づいて話しかけることにした。

 

「えーと、ツナ先輩の知り合いですか?」

 

「はひ?ハルはツナさんの恋人で、三浦ハルといいます!」

 

「違うからーっ!」

 

ツナ先輩もやるじゃないか、可愛い女の子に慕われるなんて。

 

「俺はツナ先輩の後輩で、神谷一樹といいます。よろしくお願いします、ハル先輩」

 

「年下だったんですね!ハル、同い年かと思ってました…」

 

姉と二人暮らしのせいかしっかりしているとはよく言われる。

 

「ハル先輩は、ツナ先輩を指導しに来たんですよね?」

 

「そうです!やっぱりまごころ指導が一番ですよね!」

 

話がいまいち噛み合わないんだが。

そうと決まれば、とハル先輩は早速ツナ先輩の指導に入っていた。

具体的に言うと、ツナ先輩の手を引いて呼吸やバタ足の練習をしていた。

…あれは恥ずかしい。

練習としては一番いい方法だと思うのだが、子供に笑われている。

ハル先輩もまともじゃなかったか、と思っていれば聞き覚えのある声が外の方からした。

 

「10代目!」

 

ガシャガシャと音を立ててフェンスを登って来たのは、獄寺先輩。

 

「ご病気ですかっ!?」

 

といいながら終いには服のままプールに飛び込んで来た。

いいのか。ダメだろ。

 

「泳げない体になってしまったなんて!!」

 

獄寺先輩はツナ先輩の肩を掴んで必死の形相で叫ぶ。

 

誤解を解き、そうしてまた、新たな指導者が増えた。

3人いればひとりくらいまともな指導者がいてもよさそうなのに、まったくダメだった。

理論指導はちょっと難しいんじゃないだろうか。

 

「はあ、しょうがない」

 

俺はため息をついてツナ先輩に近づいた。

 

「いいですか、先輩。クロールにはコツがあります」

 

「え?」

 

「おい!俺の指導の邪魔をするな!」

 

獄寺先輩が何か言っているが無視だ無視。

 

「ハル先輩が指導したように手を引いてもらわなくても、呼吸やバタ足の練習くらいなら壁に掴まればできます。その方が先輩もいいでしょう」

 

ようやくまともな指導が、とツナ先輩が表情を輝かせた。

といっても、俺も大して泳ぎが得意というわけではないんだが。

 

「クロールは腕で進みますから、腕は前から後ろに大きく回してください。肩を開くようにすると、大きく回せますよ。あ、あと先輩手ぇ開いてますけど、指揃えてやった方が水を掻きやすいですよ」

 

軽く腕を動かしながら説明する。

 

「あと、息継ぎですが…先輩、水中で息止めてませんか?」

 

「えーっと、止めてる…かも」

 

「止めちゃダメです。水中では息を吐くようにしてください。そうすれば息継ぎで十分に息を吸えるようになりますから。…じゃあ、一度今言ったことを意識して泳いでみてくれませんか?」

 

よし、と気合をいれ、ツナ先輩は水中へ。

さっき言ったばかりだから身についていないのは無理もないが、最初よりはフォームがマシになっていた。

 

「ぷはっ!」

 

「お、10メートル!」

 

山本先輩が嬉しそうに声を上げる。

 

「え!?」

 

ツナ先輩は驚いたようにその記録を聞いた。

あと5メートル。これ以上俺から教えることはない。

 

「じゃあ俺帰っていいですか」

 

「え、あ、うん!ありがとう神谷くん!」

 

意外にもすんなりと帰してもらえた。

俺は大体予想がついていた。

あと一息、と3人が独自の指導を展開することを。

それに巻き込まれるのは嫌だったので、早々に帰宅する。

 

 

ちなみに後日聞いた話では、クロールではなく平泳ぎをさせられたらしい。

…つまり俺の指導も無意味だったってわけだ。

悲しくなんてない。

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