束「気付けば、私の周りにはヤバイヤツしか居ない……」   作:モノアイ二等兵

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今回の話は、ギャグの皮を被ったシリアス的な何かだったり……


おとなのおねーさん

IS学園生徒会室。その場所は、選ばれた者のみが入室を許された場所。

生徒会長である更識楯無は、書記である布仏虚に急かされながら、生徒会長としての仕事を全うしていた。その視界に、ある人物を映さないようにしながら。

 

「ちょ!?そこでメガガルーラとか出す!?」

「えへへ〜♪私は、どんなことにも全力なのだ〜♪」

「むき〜っ!無駄にいい笑顔をしちゃって〜!」

 

その人物は聴覚に直接、攻撃を仕掛けてくる。だが、楯無は聞き流している。正直、自分のすぐ近くで楽しそうに遊ばれるのには腹が立つが、まだ我慢の効く範囲だ。

 

「負けた〜……あ、楯無ちゃん、お茶貰うわね?」

「むが〜っ!」

 

ついに楯無がキレ、書類やら持っていたペンやらを投げ出し、その人物に掴み掛かる。

 

「マウリッツ先輩!貴女が生徒会室に居て、遊んでいるのはもうツッコミませんが、勝手に生徒会室の備品を使用しないでくれませんかね!?」

「えー……?」

 

その人物は、楯無に言われると、不満げに頬を膨らませる。

彼女こそが、前述された篠ノ之研究所の愉快な仲間達の一人、『アベリア・マウリッツ』である。このIS学園で三年留年を繰り返す、謎の生徒Aで通っている。顔は、案の定、美人の部類であり、目を引く緑の髪も含めて、一度見れば忘れない恐れのある人物だ。

 

「大体、貴女は今年で卒業のはずじゃ!?」

「ほら、それは楯無ちゃんが私に負けたから、留年させることを約束したじゃんか……」

「うぐっ!?」

 

アベリアの言葉に、楯無が詰まる。それは、IS学園における『生徒会長』という役職の意味にあった。

このIS学園では、生徒会長は『最強』でなくてはならない。それは、武道、勉学、『ISバトル』においても。そして、この更識楯無、及びに彼女の前任であった生徒会長は、確かに「最強」の名に恥じない、実力者であった。だが、アベリアは、その生徒会長達の悉くに勝ってきた。全戦、全勝だ。武道、勉学、ISバトル……どれにおいても、彼女は圧倒的だったのだ。

 

「まあ、正直、知力勝負は怖かったかな……所詮、『物理』って嘗めてかかって、「お互いに一教科だけ、指定した問題を加えることが出来る」ってルールを忘れなければ、アレは楯無ちゃんの勝ちだった」

「それで負けた結果、マウリッツ先輩が見事に留年……頭が痛くなってきたわ……」

 

余裕の笑みを浮かべるアベリア、そんな彼女を見て、楯無は顔を覆った。

とてもじゃないが、非公式にして彼女の生徒会長の座を守るとしても、あまりに非現実的すぎる頼みだ。

 

「まったく……留年して、何がやりたいんですか?貴女ほどの成績なら、卒業は今すぐにでも出来るはずです」

「……内緒?」

「内緒って……『更識』の情報網を使っても、一切過去の経歴が分からない貴女が、正直言うと怖いですよ……」

「そんなに殺気立たなくてもいいじゃない……別に、何か迷惑になることはしてないでしょ?」

 

不気味過ぎる彼女に殺気立つ楯無とは反対に、余裕の笑みを崩さないアベリア。そんな二人が激突するかと思われた、その時だった。

少し前に流行った特撮の主題歌が流れる。生徒会室には音楽プレイヤーの類いはないので、着信音と直感で理解する。そして、その着信音に反応して携帯電話を制服のポケットから取り出したのは、アベリアだった。

 

「……ここでは携帯の使用は禁止ですけど?」

「まあまあ、いいじゃない」

 

携帯電話の使用について咎めてくる楯無を宥め、アベリアは電話に出る。

 

「もしもし?アベリアさんだよ?」

「……今回はちゃんと一回目で出たな」

「いつもはほら、モノアイのタイミングが悪いだけじゃん?」

 

彼女の電話の相手は、モノアイであった。当然、電話からは音が漏れるはずがないので、他の三人は、アベリアの会話する相手が誰かなど、見当もつかない。

 

「そのことに関しては、今度研究所に来た時に言い聞かせるとして……四月に入学する、男子生徒の周辺を警戒してくれ」

「ああ、ニュースにもなっていたね。初めての男性IS操縦者……確か名前は、「織斑一夏」だっけ?」

 

アベリアの口から飛び出した名前に、露骨な反応を示す楯無一同。「やはり、この人は普通じゃない」と、警戒を強める。

 

「つまりは、その少年の護衛をするの?依頼人は?報酬は?」

「束のお願いだ」

「なら、仕方ないかな。あの子、気に入った子には甘いし」

「まあな。とりあえず、任務は伝えたぞ?どうせ、今年も生徒会長脅して留年しているんだろう?」

「「脅す」だなんて、人聞きが悪いな……」

 

一瞬、黙った後、アベリアは続ける。

 

「ちょっと、「お願い」しただけだよ?」

「……君の「お願い」は、相変わらず物騒だよ……。それじゃあ、私は委員会との交渉用にコアを作る。じゃあな」

「はいはーい」

 

それを最後に、アベリアは通話を終了した。そして、軽く伸びをして、椅子から立ち上がる。

 

「モノアイも張り切っているみたいだし、久しぶりに私も本気かな……?」

 

独り言を呟きながら、生徒会室を後にしようとしたアベリアだが、彼女の前に人影が割り込む。それは、敵意を露にした楯無であった。待機状態のISに手を掛け、彼女は問いかける。

 

「余計に、貴女について、知らないといけなくなりました。悪いですけど、同行願えますか?」

「えー?お姉さん、ちょっと急いでいるんだけどな……なんて」

「……一般人なら知り得ない、男性操縦者の名前が出たんです。怪しさ全開じゃないですか」

「はあ……」

 

あまりにしつこい楯無に、アベリアは溜息を一つ零す。

 

「だから……急いでいるって言っているでしょ?」

「「「!?」」」

 

アベリアから漏れる殺気に、本音、虚はおろか、楯無までもが、その場にへたり込んでしまった。その姿を見て、満足そうに頷くと、アベリアは今度こそ本当に生徒会室を後にした。

彼女が出て行き、足音も聞こえなくなった辺りで、楯無は呟いた。

 

「アベリア・マウリッツ……恐ろしい、人じゃない……」




[補足]
実はアベリア姉貴の留年の理由は、最初は事故が原因でIS実技が出来ないこと、だったんだけど、あまりに話が考えにくいからやめた
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