Fate/staynight [Midnight Walker]【本編完結】 作:秋塚翔
ですが……スマン、出会っちまった。どーしても書きたい奴に(刃牙感)
勧められて実況動画で観た、夜廻と深夜廻。どうしようもないくらいの救われなさに泣かされました。あれ何なの?ホラーゲームで最後の最後まで報われないって卑怯な気がします。夜明けが夜明けじゃない件について。プレイヤーまだ闇夜だよコンチクショウ(泣)
と言う訳で、悲しみ極まってこのfateとのクロス作品を書き上げました。救われないなら救ってやるよ!と。fateも大概救われてないのは見て見ぬフリ。
それでは夜を廻り離れた手を繋ぎ直す異色のクロス、どうぞご覧ください!
#1 日没
──ガァンッ、キンッ! ドカァ!
鉄と鉄。赤い槍と白黒の双剣がぶつかり合い、激しく火花を散らす。夜の時が近付いている校庭で繰り広げられるその戦いは、人間の常識から外れたものだった。二人の人間らしきものが刃を交えているだけなのに地面は割れ、抉れ、ひしゃげた朝礼台はまるで爆撃を受けたかのよう。その様を、双剣を握る赤い外套の男を従える少女が間近で見届ける。
それは、真実を知らない者から隠された大いなる儀式。
「やってくれるじゃねえか、
「お望みとあらば、その喉笛を食いちぎる事もやぶさかではないが? ランサー……クランの猛犬よ」
「ハッ! 抜かすなら、この槍を受け止めてからにしやがれッ!」
言った途端、青いタイツの男──ランサーが握る槍から尋常ではない力が溢れる。少女はそれに息を呑み、少女に従う
と、その時。誰もいないはずの校舎から、小石を擦り合わせた足音が立てられた。
「! 誰だ!」
その僅かな音を聞き取ったランサーが、獣のような獰猛さで吠える。
薄ら暗い校舎前で走り去るのは、小さな人影。見るからに高校であるこの学校の生徒、もちろんだが教師でもない。が、そこは別に問題ではなく……"この戦いの場"を、部外者が目撃してしまった事態が重大だった。
「な、何でこんな時間に……って、ちょっと、ランサーは!?」
今しがたまで対峙していたランサーが忽然と姿を消したのに、少女はアーチャーに問い掛ける。対するアーチャーは当然の如く、平然と答えた。
「目撃者だからな。消しに行ったんだろう」と──
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「……消えただと?」
アーチャーの答えた通り、あの場を見てしまった者を隠匿のため抹殺しようとしたランサー。だが彼は、肝心の目撃者を見失っていた。
(ただの人間が、この距離で逃げ切れる訳がねえ……ならば魔術師、いやまさかマスターかサーヴァントか?)
まさか、この
そう考え、ランサーは感覚鋭く捜索に入る……その背後、草の繁みから出てきた
「──あ?」
カツッ、と乾いた音を立てて石がランサーの視界に割り込む。
普通なら無視か、見てから飛んできた方を振り向いただろう魔術も仕掛けも無い単なる小石。だがしかし、ランサーはどちらも選ばず石に歩み寄る。まるで、そのものしか目に入らないように。
瞬間、ランサーの横を小さな足音が通り抜けた。
「っ、なにッ……!?」
気付くも一歩遅く。ランサーの視界から足音の主は、校舎の角を曲がって消える。
すぐさま追うランサーだが、さしもの敏捷性も遅れを取れば形無し。微弱にしか感じない魔力を頼りに再び姿を消した獲物を追跡した。
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「な、何だったんだ、あれは……!」
時を同じくして。"もう一人"の目撃者は、先程直視したものを信じられずにいた。
『人間ではない何か』が戦っている光景……かつて所属していた部活の後片付けを押し付けられ、こんな時間まで居残っていた彼にとってそれを見てしまったのは不運だっただろう。
「誰だ!」と叫んだ『何か』の片割れの声に思わず逃げ出し、息絶え絶えに校舎に入った。どうやら追いかけてくる様子はない、だが油断もできない。どうにか学校から出なければ……
そう考える少年の思考は、突如胸を襲った鉄の感触と衝撃に遮られた。
「かっ、は……」
「他にも居やがったか……まぁ、良い。運が悪かったと死んでくれや、坊主」
声を届け、虚空から染みるように姿を現したのは『何か』の片割れ──ランサー。本来追っていた目撃者を探す最中、少年を見付けて標的を変えたようだ。
ズ、と突き立てられた槍を引き抜かれると、少年の胸から鮮血が溢れる。致命傷を受けたのは、状況を理解できてない少年にも本能的に分かった。
途端に力を失い、床に崩れ落ちる少年。そんな不運な目撃者を尻目にランサーはまた舌打ちを鳴らす。
「チッ、もう一人には出し抜かれたか……? だとしたらアサシンかキャスターか……とにかくマスターのとこに戻って知らせるか」
ここにはまだアーチャーがいる。ましてや自分はマスターに小手調べで遣わされた身だ。一旦帰還すべきだとランサーは判断し、再度姿を見えなくする。
取り残された少年は、死を待つばかりだ。恐らくこのまま命を落としたとしても、儀式の監督役側から学校に忍び込んだ強盗に不幸にも刺されて死んだ辺りで処理されるだろう。今夜の事は露呈しない。
と、そんな命尽きようと言う少年に何かが歩み寄る。意識も白濁した中、少年がそちらに目を向けると、
「……あの、大丈夫……ですか?」
それはまだまだ幼い、女の子だった。
懐中電灯を手に、大きな青いリボンと可愛らしいナップサックを身に付けた隻腕の女の子は瀕死の少年に恐る恐る声を掛ける。
ここは危険だ、早く逃げろ──少年がそう言いたい口は、しかして上手く動いてくれなかった。
自らの助命より、目の前の女の子が自分と同じ目に遭うのを避けたい少年。まだ
「アーチャー、ランサーを追って。マスターの元に戻るはずよ」
と、そこへ凛々しい声が響く。それはアーチャーを従える少女。少年と同年代らしい、夜闇でも輝く美貌を持つ彼女の声に、見えない何かが駆け出した気配がして、一方の少女は少年と女の子の元に寄る。
「! ……貴女、もしかしてサーヴァント? 一体何のクラス?」
近付いて勘づく、明らかな人間とは違う感覚に少女は倒れる少年の傍らにいた女の子にまず問い掛ける。普通の人間、ましてや年端も行かない子供なら意味の分からない問い掛けだろう。しかし女の子は、それを理解して事も無げに答えた。
「私は──ウォーカーのサーヴァント、です。えっと、その、こんばんは……」
『徘徊者』の意味を持つ、知られざる位を冠する女の子と少年達の出会い。それを運命の機転として、物語は流れを変える。
その物語がどこに行き着くのか、それは暗く不気味な夜道のように誰も分からない──
小石は人面犬に効きます。もう一度言います、人面"犬"に効きます。
オリジナルクラス、ウォーカー登場。最初ゲームのビジュアル的にフォーリナーを予定してましたが、あれはやはりクトゥルフ神話関連でないと該当しないようで仕方無くオリジナルにしました。歩いて物事を成してきた英霊が当てはまるクラス……多分伊能忠敬とかメロスもこのクラスじゃないかななんて妄想。
少し短いですが、いかがだったでしょう?fateサイドは上手く描写できてたら救い。ここから救われなかったウォーカーを、聖杯と言う希望のもと救いに導く所存なのでご期待くださいませ。
宜しければコメント、評価をくださると夜明け(執筆速度)が速くなります。