Fate/staynight [Midnight Walker]【本編完結】   作:秋塚翔

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魔神セイバー、改め沖田総司オルタ実装ですって。
ノッブが融合してないようだから、幸いfateを終わらせにかからないでしょうが……どうも今期のニチアサ9時のヒーローものの影響で、私の中で片割れしかいない沖田オルタが某地球外生命体と被る。もしくは息子を取り込めば完全な力を手に入れられた闇の巨人。まぁ、流石に「魔人アーチャー!お前と一つになれば私は完全体になる!」みたいな展開、ぐだイベでは無いと思いますが……多分。

今回はにわかが滲み出てる感の否めない出来。おかしな点がありましたらご指摘いただけると、ものによっては修正に頭を抱える作者が出来上がります。


#9 丙夜

「くッ……」

 

 

 受けた手傷を塞ぎながら、セイバーは一段上の踊り場で悠然と構えた侍装束の男を見上げる。

 相対的にその男は、長大な太刀を差し向けてセイバーを見下ろす。

 

 

「どうした、セイバー。よもや先の我が秘剣で立っているのもやっととは言うまいな?」

 

 

 アサシン・佐々木小次郎──自らそう名乗り、立ちはだかってきたそのサーヴァントに、セイバーは足止めされていた。

 たかが門番、小兵風情と侮っていたのも近い過去の事。技量ではこちらの方が上回っていると踏んでいたが、全く攻め切れない。剣に長けるセイバーのクラスでありながら、暗殺を生業とするクラスのアサシンに互角の戦いを演じられている。

 加えて先刻凌いだ宝具の一撃……いや、()()はただの人間では辿り着けぬ剣の域。それを何の魔術も使わずして、純粋な剣の腕だけで到ったと言うのだから驚くべき事だ。この時点でセイバーは目の前のサーヴァントを単なる門番ではなく、油断すればこちらが両断される恐ろしい相手だと認識を改めていた。

 

 

(シロウ、無事で……!)

 

 

 早く士郎の元に向かわなければ、と急ぎたいセイバー。しかしそのためには、この門番(アサシン)を押し通らなければならない。それは容易な事ではないと騎士である彼女は感覚で確信していた。

 別動のハル(ウォーカー)は先に着いているだろうか。それもまた、寺に潜むもう一騎のサーヴァントと出会している可能性が大いにある。その場合、いかに逃げ隠れの特化した彼女も士郎を連れて逃げるのは容易ではないだろう。そうすれば、ジリ貧だ。

 と、事態の困窮に思考を巡らせていたセイバーに、幼い声が上から投げ掛けられる。

 

 

「──セイバーさん!」

 

 

「! ウォーカー、シロウ!」

 

 

 その方向、山門の方へとセイバーは目を向ける。そこには寄り添って寺から出てくる二つの人影があった。ハルと士郎だ。

 ハルが士郎を庇いながら歩いてくる様子に、セイバーは一目散階段を駆け上がる。途中、当然アサシンが障害となるはずだが、当のアサシンはそうしたセイバーの通過を何故か許した。

 

 

「シロウ! 大丈夫ですか!」

 

 

「あ、ああ……ハルのお陰で助かった」

 

 

 膝を着く士郎に、ハルに代わりセイバーが肩を貸す。見れば士郎の背は一線裂け、血がシャツに滲んでいる。刀剣による切り傷だろう。幸い傷は見た目ほど深くなく、治療は要するが大事無いようだ。

 とにかく士郎(マスター)は保護できた。もうこれ以上ここに用は無い。目的を果たしたセイバーがふと来た道を見やると、眼下には刀を鞘に仕舞うアサシンの姿があった。

 

 

「アサシン、何故刀を納めるのです」

 

 

「今宵はこれまでだ。主が傷を負っていては満足に戦えまい? 良き好敵手とは得難きもの。万全でなければ惜しくて仕留められん」

 

 

 答えて、アサシンは半歩下がり逃げ道を明け渡す。

 セイバーと佐々木小次郎(アサシン)、共に剣を振るい、剣に命を預ける者同士。アサシンが何を思い、何故見逃すかはセイバーにも語らずして理解できる。故に多くを語らず、セイバーはそれに甘んじる。

 

 

「分かりました。非礼を詫びよう、佐々木小次郎。確かに貴方は死力を尽くすべき相手だった。この借りはいつか、再び剣を交える時に」

 

 

 再戦の約束で応えるセイバー。対し、アサシンは耽美な顔立ちを微笑に染めた──刹那、アサシンは逸早く"それ"を見た。見て、一瞬遅く察知したセイバーの前に神速で飛び出し、上方からの()()()の剣を、刀で阻む。

 

 

 ──ギィンッ!

 

 

「……邪魔をするつもりか、侍」

 

 

「それはこちらの台詞。見逃した私の邪魔をするつもりか」

 

 

 金属の得物同士がぶつかり合い、火花を散らす。そうして向かい合うアサシンと襲撃者──こと、アーチャー。不愉快を顔に示すアーチャーは、短剣の片割れに突き刺さる藁で出来た人形を引き抜き、無造作に放り投げた。捨てられた人形は粒子となって消え去る。

 『身代わり藁人形』──攻撃の対象を強制的に移す、ハルのアイテムの一つ。それによりアーチャーは士郎に一度寺の中で襲い掛かるも、結果は見ての通り浅傷で終わらせていた。

 そんな二度の襲撃を阻まれたアーチャーに、状況を解したセイバーが問う。

 

 

「アーチャー、何故シロウを……!」

 

 

「なに、そこの若造が甘い理想を語っていたのでね。人生の先輩として、それを抱いたまま溺死でもしてもらおうと思ったのだが……キャスターの手駒ごときが敵に塩を送るとはな」

 

 

「あの女狐とは馬が合わん故な。然るに貴様のやり口は気に食わん。少々雅さに欠けるが、その首で此度は良しとしよう」

 

 

「できるかな? ルールに反して呼び出された傀儡風情が」

 

 

 それ以上、両者に言葉は要らなかった。あとは雌雄を決するのみ。激しい金属音と火花を再び発し、月夜に照らされる山門下で目にも留まらぬ剣戟が繰り広げられる。

 その衝突に乗じ、セイバーとハルは負傷した士郎を連れて退却するのであった──

 

 

 

 

 

 一方、ここはアインツベルンの城。

 森の奥地に鎮座するこの城は、バーサーカーのマスターであるイリヤスフィール・フォン・アインツベルンの居城にして、バーサーカー陣営の拠点だ。しかし今の時分、ここは一般の人間と変わらず夜の静寂に包まれていた。

 その中で起きているのは、二人の従者。

 

 

「リーゼリット!」

 

 

「? セラ」

 

 

 イリヤスフィールの侍女であるリーゼリットとセラは、休眠前に日課の見回りを行っていた。今は聖杯戦争の真っ只中、アサシンやアーチャーと言った隠密に長けるサーヴァント、あるいはマスターそのものが忍び込んでこないとも限らない。故に広大な城で唯一残ったこの従者二人はイリヤのため警戒をしていたのだが、セラは合流したリーゼリットに眉を潜めて詰め寄った。

 

 

「貴女、さっきは何処を彷徨いてたのですか?私は庭を見回るよう言い付けたはずです!」

 

 

「……? 私は、ちゃんと、庭を見て、きたよ」

 

 

 カクン、と人形みたく首を傾げて不思議そうに答えるリーゼリット。その様子に嘘偽りないと姉妹個体として察したセラ、次いで人間らしい動きで首を傾げた。

 

 

「は? ……なら、さっき見た私達と同じ服装の女性は一体……?」

 

 

「セラ、疲れ、てる?」

 

 

「そんな事! ……まぁ、あるにはあるかもしれませんね。まさかあのバーサーカーが敗走を強いられるとは……」

 

 

「イリヤ、落ち込んでた」

 

 

 セラとリーゼリットは揃って主の事を案じる。あの日以降、気を取り直して普段と変わらぬ様子だが、その心中は従者として分かっていた。

 

 

「……それをサポートするのが私達の役目。一緒になって落胆していては何にもなりません。これからもお嬢様のために尽力しますよ」

 

 

「う、ん。イリヤ、私が守る」

 

 

 決意を改めた二人の侍女。全てはアインツベルンの勝利のため、更に言えばイリヤのため。セラとリーゼリットは深夜に染まる城内の闇に消えていくのだった──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

 あれから夜が明けて。

 怪我を軽く治療した士郎は、いつも通り学校に登校した。休学していては大河や桜──士郎と近しい担任教師と後輩に不審がられてしまうからだ。

 当初はマスター一人が行動していては危険だと、学校に行くのを止めていたセイバーも、今や素直に(渋々)それを見送った。そして自分は無駄な魔力消費を抑えるため、今日も家で安静にしている。

 同様にハルもまた、昼間は普通に魔力を消費してしまうので()()()()()夜になるまで大人しくしているのだが……その日は、少し状況が違った。

 

 

「あれ、このお弁当……?」

 

 

 ふと玄関先に見付けた、中身の詰まった弁当箱。それは紛れもなく士郎のものだった。

 恐らくは今朝、大河に玄関前でからかわれていた事で置き忘れてしまったのだろう。そうでなくても夜の事があったすぐ朝だ。普段の行動が狂ってしまうのも無理は無い。

 

 

「……うん、届けに行こう!」

 

 

 と、思い至るハル。日中に動くのは危ないが、なるべく霊体化していれば消費は最小限で済む。セイバーに頼むと言う手もあるが、逆に霊体化できない容姿端麗な彼女が昼間の学校に一人行けば騒ぎになるだろう。ならば自分が適任だ。

 そう考えたハルは早速学校に向かった。

 

 

 

 

 

 

 昼休みを迎え、弁当を忘れたので購買でちょっと見繕ってきた士郎は、教室の前で張っていた凛に連れられ、屋上に来ていた。

 どうやら昨夜のアーチャーについて謝りたかったらしい。貴重な令呪まで使って諌め、同盟者として誠意を見せたようだ。もちろん士郎がそれを尚も咎める必要は無かった、そもそも今日凛と出会わなければ流していただろうし。

 それから凛は学校にいる別のマスターに関して話し始めた。士郎と凛は、共に一人のマスターは見当を付けている。今朝凛は、そのマスターに手を貸すよう求められてきたようだが、

 

 

「私には衛宮君がいるから、間桐君はいらないわ」

 

 

 と突っぱねたらしい。そのマスターと親交のある士郎は、手酷くフラれた友人に若干同情する。道理で朝は様子がおかしかった訳だ。

 ──と、不意に考えが過る。凛に突っぱねられ、様子のおかしかった友人(マスター)。その彼が一昨日自ら正体を明かし、士郎を勧誘した時の会話。そして友人として察する彼が次に行うだろう行動……

 

 

「待て、遠坂。それマズくないか? だって学校に仕掛けられた結界は慎二の仕業だぞ」

 

 

 嫌な予感に指摘する士郎。対して凛は、結界を設置したのが件の彼とは知らなかった模様。サッと顔を険しくさせる。

 

 

「しまった、まさか慎二の奴……!」

 

 

 その感知が合図であったかのように。小刻みな振動のような揺れが学校全体を襲う。立て続け、校舎の周りを覆いだす魔術反応……それが空中で集結し、真っ赤な球体となり目玉を開いて結界が成就する。

 

 

「! これ……なに……?」

 

 

 丁度その時、学校に到着したハルは弁当箱片手にそれを目撃、巻き込まれる。日中の学校は、その瞬間から現実より切り離された血の神殿として顕現した──




アーチャーに原作通りの台詞を言わせられなかったのが残念点。特に、理想を抱いて溺死しろ。しかし後悔は無い。

スキル『身代わり藁人形』はプロフィールの通り、本来はメリーさんや■■■■様に有効なアイテムですが、英霊化に際して攻撃の標的を一回だけ移す効果があります。どちらかと言えば宝具寄りの性能ですが、スキル扱いにしました。ストーリー上、必須のアイテムではないしね。

意味ありげなバーサーカー陣営サイド。もう#5の時点から不穏な予感しかしない。少しネタバレすると、このバーサーカー陣営がまたストーリーで絡んできた時が、fate×深夜廻の真骨頂です。

次回は展開通りライダー戦。ただし見所はあのワカメになるでしょう。ここらでコミカルも仕込んで緩衝材にしたいところ。
宜しければ評価やコメントをくださると、ぐだイベのすぐ後に更新できるかもしれません。水着イベ捨てる覚悟で沖田オルタ当ててやる!

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