Fate/staynight [Midnight Walker]【本編完結】   作:秋塚翔

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深夜廻のノベライズを買いました。1300円と決して安くない額でしたが悔いはない。ネタバレは避けてざっくり言うと、

・1300円出した価値ある

・ユイハル尊い

・原作以上に辛い

・アンチキショウへの殺意マシマシ

・最高

と言った感じ。総評としては百点満点中百点の内容(個人調べ)でした。これで当作のクオリティが上がれば万々歳。

今回は書きたい事を考えずに書いたので、出来はそこそこ不安。


#11 輝夜

 通報から程なくして救急車とパトカーが到着し、介抱された教員や生徒達が病院に搬送されていく頃にはすっかり日が傾き、空は茜色に染まっていた。

 幸い、結界に巻き込まれた人達は衰弱こそしているが全員命に別状は無い。大河や桜も無事だった。校内には戦いの跡が残るものの、後の事は教会に任せれば問題なく隠匿してくれるだろう。

 

 

「──なるほど、私が遅れていた間にそんな事があったのか」

 

 

「えぇ、その通りよ。分かったら自分の不甲斐無さを反省でもしてなさいっての!」

 

 

 ここは校舎から少し離れた森の中。学校で忙しなく動き回る救急隊員や警察官に、鎧姿のセイバーを見られる訳にはいかないと脱出した士郎達は、途中遅れてやって来た凛のサーヴァント……アーチャーに顛末を説明する。主である凛は、全てが終わって今更現れたアーチャーにご立腹だ。

 一通り話を聞いたアーチャーは、先日遭遇した事のあるライダーを指して呆れ気味に呟く。

 

 

「腑抜けめ、やはり口だけの女だったか。せめてもの抵抗にキャスターのマスターを道連れとしていれば良かったものを、それで英雄を名乗ろうとは片腹痛いな」

 

 

 その言葉に反応したのは、戦いを重んじるセイバーだった。

 

 

「アーチャー、ライダーは主を守りながら倒れたのだ。それを侮辱すると言うなら、貴様こそ英雄を名乗る資格は無い」

 

 

「英雄であろうとなかろうと、この戦いに勝ち残れないようなら過去の偉業など無意味だ。役に立たない者など早々に消えるといい」

 

 

「良く言った……ならば私と戦うか、アーチャー」

 

 

 琴線に触れるアーチャーの物言いに、セイバーは不可視の剣を実体化させ構える。対して、アーチャーはなおも嘲笑を浮かべて応える。

 

 

「私はお前達に手出しせぬよう令呪を下されている。今挑まれれば無抵抗のまま倒される訳だが……それが君の騎士道なのかね?」

 

 

「っ……!」

 

 

 一触即発。険悪な雰囲気。士郎もハルも、この状況に何も言えず、何もできず見ているしかできない。下手に触れれば開戦してしまいそうな気がする。

 が、それを臆さず諌めたのは凛だった。

 

 

「そこまでよ、アーチャー! もしかしてまた私に令呪を使わせたいのかしら?」

 

 

 両者の前に立ち毅然と睨む凛。それにアーチャーは、観念した風に肩を軽く竦めた。

 

 

「そうだな。セイバー殿が余りに王道ゆえ、ついからかいに興が乗ってしまった。すまんな、セイバー」

 

 

「……いえ、私も大人げなかった。凛に免じて先の発言は聞き流します」

 

 

 言いながらセイバーも剣を霧散させる。

 そうして穏便に済んだところで、凛は本題に移った。話題は、セイバーが学校でサーヴァントの相手を請け負った際に出会したキャスターについて。どうやらキャスターのマスターは毎日学校に通っている、下手につついて警戒されるより正体を確かめて襲った方が良い、とは凛の見解だ。

 士郎は疑問を抱く。今回のような騒ぎがあったら、もう学校には来ないんじゃないか? ──それにアーチャーが答える。キャスターの性格上、召喚と共にマスターなど操り人形にしていて、マスターに自由意思などないのだろうと。

 凛が纏める。とりあえず私達は引き続き学校の調査、キャスターのマスターを見付け次第襲撃。どうやって見付けるかは今後の宿題として、今日はここで解散しようと。

 すると士郎がそれに意見しようとした時、凛は素早く士郎の袖を引き顔を近寄らせる。内緒話のようだ。

 と、内緒話をあえて聞く気はなく佇むアーチャーはふと視線を感じる。見るとハルがこちらを訝しげに見上げていた。

 

 

「何か用かね、ウォーカー?」

 

 

「……アーチャーさんは、英雄じゃないから士郎さんを殺そうとしたの?」

 

 

 昨日から疑問に思っていた事を、ハルは口にする。対し、アーチャーはニヒルに笑い応えた。

 

 

「さて、私が英雄かそうでないか、自分では判断に悩む話だが……そうだな、私は自分を英雄とは思わない。むしろ悪として死後は淘汰されたままの方が良かったのかもしれん」

 

 

 自虐の言葉を事もなげに、しかし寂しくアーチャーは語る。

 

 

「故に昔の自分のように甘い理想を語る君達のマスターについ思い知らせようとしてしまった。つまりは八つ当たりだよ。単なる腹いせさ。すまなかったな、ウォーカー」

 

 

「…………」

 

 

 そう締めて、これ以上は黙ってマスター同士の会話を待つアーチャー。何の事はない言葉。しかし不思議とハルには、それが完全な真実とは思えなかった。まるでハルがユイを救えなかった自分を罪に感じるように、アーチャーは自分自身を断罪しようとしているような……

 

 

「じゃ、また明日ね衛宮君──行くわよ、アーチャー。帰ったら本気でさっきの不始末を追及するからね!」

 

 

 凛と士郎の話が丁度終わる。

 アーチャーが「やはりそう来たか。凛にしては口汚さが足りないと思っていた」と言い残して霊体化し、凛はいつか彼に白黒つけようと決心しながら帰路に就く。ハルも痼を残しつつ、士郎やセイバーと一緒に家へ帰るのだった──

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

 あれから二日──

 いかに聖杯戦争の真っ最中とは言え、そう毎日毎夜仕掛けられる訳ではなく平穏無事に時が過ぎた。士郎と凛がそうであるように、それぞれの陣営が手の内を探ったり、来るべき戦いに備えたりしているのだろう。

 しかしその二日目の夕方、ハルとセイバーは士郎から今夜キャスターのマスターを叩くと言う話を聞かされた。調査の結果、キャスターのマスターが学校の教師、葛木宗一郎だと判明したらしい。

 もちろん夜なのもあって着いていくつもりのハルだったが、

 

 

『いや、遠坂が言うにハルはキャスターに存在を知られてる。それを逆手に取って、ハルがいないのを相手に警戒させて戦いの材料にするそうだ。キャスターはハルを恐れて下手な行動は取れないし、こっちはそれに甘んじて遠慮なく叩ける』

 

 

 と言う士郎の説明があった。作戦の内なら仕方ないと、ハルは居残りの案に頷く。そもそも怖がり屋の彼女は、望んで戦いに向かいたくなかった。

 かくしてハルは、今夜も街の探索をしている。

 

 

「あ、10円」

 

 

 家で待機していても良かったのだが、昨夜は「ウラギリ……マジョメ……」と呟く全身が炎に包まれた男のお化けからしつこく追いかけられ、アイテムをかなり消費してしまった。命綱となるアイテムはあるだけ安心だ。その補充のため、ハルは比較的安全な場所を選んで探索していた。

 しかし、と拾った10円玉を財布にしまいながらハルは思いを馳せる。

 思えば夜の街巡りを日課にしている自分がいた。最初の頃は怖くて怖くてしょうがなくて、でもユイを探すために歩いた昼間とは違う顔を持つ夜中の街。それがいつしか習慣じみてきて手慣れたものだ。

 相変わらず夜の闇は、お化けは怖い。だけどそれが身近なものになっている。それもそれで怖い事だが、これが自分が英霊に召し上げられた要因の一つなのだろうか。だとすれば、なんかちょっと複雑──

 

 

 

 

「お前か、(オレ)を差し置いて八騎目を名乗るイレギュラーは?」

 

 

 

 

「!」

 

 

 尊大な声が突如投げ掛けられる。

 ハルが視線を正面、声の方に向けるとそこには金髪の男が立っていた。

 男はハルに好奇そうな笑みを浮かべて口を開く。

 

 

「英雄とは、かくに分からぬものだ。我のようになるべくしてなった者もいれば、ふとした事で成り上がる者もいる。お前のような幼童と我が同じ位置にいようとは、我の生きた世でも信じられん」

 

 

「……貴方は……」

 

 

 誰か、と問おうとしたハルは次ぐ言葉が出なかった。誰かまでは分からなくても、肌で感じたからだ。

 ただの人間ではないのは確か。だが、ましてや同じサーヴァントとも思えない。それはまるで、()()()。中身が黒いドロドロに浸かりきった、『なにか』だとハルの早鐘を打つ心臓は本能的に伝えていた。

 一方でその色んな意味で尋常ならざる男は、ハルを一目改めて眉を潜める。

 

 

「む? お前は……ほう、そうか。お前はもしや──我と同じく、神に友を奪われた口か?」

 

 

「えっ……」

 

 

 何故。どうして分かったのか。まるで見通したかのように男は言った。そして、それは正しかった。でも同じとは……?

 男は困惑するハルを気にかけず、自らの調子(ペース)のまま続ける。

 

 

「なるほど、これは面白い。此度の聖杯戦争(茶番劇)、こうでなくては、退屈の余り若返ろうとしてしまうところだった。よもや我と同類の悲哀を共感できるものが、こんな雑種の娘とはな!」

 

 

 男は笑う。不測の事態に笑う。思わぬ巡り合わせに笑う。

 笑って笑って……その背後に、無数の輝く波紋を一挙に生み出した。

 

 

「──!」

 

 

「余興には丁度良い、付き合え。お前の友を想う気持ちが、我のものにどれほど近しいものか、試してやろう!」

 

 

 波紋から数多の武具が顔を出す。夜闇でも自ら発光しているように煌めく武具の数々は、一つ一つが普通ではないとハルでも分かる。あらゆる武器の原典。全てが本物の、凄まじい力の集約だ。

 瞬間、ハルは否応考える暇もなく動いた。

 

 

「『怪異蔓延る深夜の街(しんよまわり)』!」

 

 

 真名を明かし、魔力を展開し世界がすぐさま塗り変わる。

 視界に広がるは夜の顔を持ったとある街。怨念執念宿す怪異、お化けが跋扈する異界。それを展開したハルは、即座に男の前から逃げ出した。

 

 

「……ほう、自らの領域に逃げ込むか。良い。逃げるがいい。獲物を捕らえるもまた余興の一貫よ!」

 

 

 楽しそうに笑った男が手を無造作に振るう。それを合図に、開戦の狼煙のように輝く武具がハルめがけて空を切り裂き躍り出た──!




まさかのギルガメッシュ戦開幕。
英雄王vs幼女とか、なにその絶望的なカード。しかも単騎。どうやらハルちゃんには『日本一ソフトウェアの呪い(A+++)』のデメリットスキルがあるようです。嘘です。

神の理不尽で友を殺された者同士の戦い。要するに「我と我の友は仲良いけど、お前とお前の友とが我達に敵うかどうか試してやる」と言う事です。なんと身勝手な。果たしてハルちゃんは生きて帰れるのか、泥にまみれた黄金の王との夜の鬼ごっこが今始まる!

ぶっちゃけ勝てる気/Zero
宜しければ評価やコメントをくださると、私に執筆速度上昇のコードキャストがかかります。宜しくお願いします!

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