Fate/staynight [Midnight Walker]【本編完結】   作:秋塚翔

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明けましておめでとうございます!
アニキからアタランテ・オルタにバトンタッチした2019年、無事こうして迎える事ができました。因みに亥年の私は今年が厄年です!厄払いしないと……

さて、何とかギリギリ書き上げた新年更新。ちょっと本筋から逸れた特別編です。時系列はサブタイをご覧の通り、6話から7話の間。まぁ、別に何処でも良かった内容ですが、いつもMWをお読みくださっている皆さんへのお年玉代わりになればなと思います。
それではどうぞ!


♯6.5 縁夜

「おかあさぁん、どこぉ……?」

 

 心細さに泣き出したいのを我慢しながら、少女は夜に染まった街を独りで歩いていた。

 街路灯くらいしか照らされていない夜道は暗く、そして冬なのもあって虫の鳴き声一つしないほど静かだ。けれど少女の幼い呼び声はその中であっても響かず、暗闇に溶け入ってしまう。

 

「うぅ、怖いよお」

 

 朝日のように明るい髪とは対照的に、不安と怯えで顔を曇らせる少女。両親に連れられ、親戚の家があるこの冬木に遊びに来たが、母親と夜の散歩に出掛けて、つい好奇心から脇道に逸れた事で母親の姿を見失い、はぐれてしまって今に至る。見ず知らずの、人気が無い夜の街に独りぼっち。

 そんな少女の前に、()()は容赦なく現れた。

 

 ──あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙

 

「ひっ!?」

 

 それは、言わば『影』。三つ開いた白い孔が顔を表す、人の形をした直立する影だった。

 湧いて出るように現れた影は、驚いて尻餅を着く少女を見下ろす。表情なんて無いはずなのに分かる、負の感情。嫉妬、羨望、嫉妬、そして……殺意。影は生きているものを羨み、妬み、許せなかった。

 

「いや、やだ、来ないでっ……!」

 

 対して向けられた事の無い感情を、視線を一身に浴びる少女はただ震え、拒む事しかできない。理不尽な憎悪。訳の分からない事にいよいよ我慢していた涙が溢れ返りそうになる。

 逃げなきゃ、死んじゃう。それでも動けない。そうした少女に影は懇願も聞き入れずジワジワと迫って……

 

 カツン、と。

 

 夜の静寂に響く乾いた音で影は振り向いた。

 見れば小さな石が路上に転がり、今は寂しく落ちている。それに影は釘付けな様子で、スーッと小石に近寄っていった。

 呆然とする少女。そこへ声が掛けられる。

 

「こっちだよ」

 

 え? と聞くか否か、少女の右手が同じくらいの右手に握られて引っ張られる。すると後ろからまたあの影が迫る気配を感じた。その手は、いや目の前の()()()()()()()()は影から自分を逃がそうとしてるんだ、と少女は気付いてそれに身を委ねる。

 やがて繁みを見付けると、青いリボンの少女は少女と共にそこへ飛び込んだ。

 「じっとしてて」──そう言われ、息を潜める。すぐに追ってきた影は繁みの前をキョロキョロしていたが、獲物を見失ったために来た道を戻っていく。

 それでも暫く隠れ続け、しっかり安全を確認したところで、青いリボンの少女は一息吐く。そして少女に向き直った。

 

「大丈夫? 夜はああいうのがいるから、気を付けて」

 

 言って顔を覗き込んできた青いリボンの少女を、そこで少女は改めて見た。

 自分と同い年か、一つ上だろうか。青いリボンとウサギのナップサックが特徴の、可愛い女の子。しかし一方でその左腕は無く、季節は冬でありながら半袖の片方は、力無く揺れている。

 誰も出歩かない夜に遭遇した、夏姿の片腕の少女。普通なら不審に思うはずだが、けれど不思議と少女は受け入れられた。

 

「私はハル。貴女の名前は?」

 

 むしろ、暗い夜に出会った柔らかい笑みを見せる彼女は、少女にとって夜を照らす光に見えたのだった──

 

 

 

 

 

 青いリボンの少女──ハルは、少女が母親とはぐれた事を聞くや、探すのを手伝ってあげると提案した。その申し出に、少女は断る理由も無く頷く。

 ハルに手を引かれ、少女は再び夜道を歩き出す。飲み込まれるような闇は相変わらず。だが着の身着のまま、懐中電灯すら持っていなかった少女にハルは救いだった。首に提げられているライトが夜道の一部分を明るく照らし出し、進む先を導く。何より一人より二人の方が心強い。

 途中、さっきの影みたいなものが見え隠れする。それを先導するハルが見付け、少女を連れて隠れたり、小石や紙飛行機で気を引いて逃げたりしてくれた。得体の知れないものがさまよう夜の街を、ハルのお陰で巡り歩ける。

 だが、それでも少女の母親は見付からない。夜の暗さは、ここまで全てを覆い隠すのか。恐らく同じように探してくれてる母親の痕跡すら見当たらない。

 ──その内、歩き疲れた様子の少女に気が付いて、ハルは安全そうな場所で休憩を取る。座り込んだ少女は、膝を抱えて俯いた。

 

「どこにいったの、おかあさん……」

 

 呟く声は涙混じりだった。事実、俯いて隠れた目からは涙が溢れる。

 夜の暗さは、ありもしない不安を煽る。お母さんは大丈夫だろうか? もしかしたらあの影みたいのと出会したのかもしれない。いや……そもそも、勝手にはぐれた私を探してくれてるのか?置いてかれたんじゃないのか? ──負の思考が少女の心を苛む。

 それを見たハル、ふと辺りをライトで照らすと何かキラリと光るものを路上に見出だす。そして駆け寄り、拾い上げて、少女の元に戻って差し出した。

 

「はい、これあげる」

「……?」

 

 涙に濡れる顔を上げる少女。そうして見たハルの手には、小さく光る指輪が……いや、玩具の指輪があった。

 

「……綺麗……」

 

 摘まみ取った少女は、その指輪に目を奪われる。もちろん宝石ではなくイミテーションのものであるが、夜でも輝くように主張するそれはちょうど少女の髪と同じ、朝日のようなオレンジ。暗く染まりつつあった少女の心を、それは明るく彩る。

 ハルは言う。

 

「絶対見付かるよ。夜は暗くて怖いけど、本当に全部隠しちゃう訳じゃない。貴女が諦めなければ、きっとお母さんに会えるよ」

 

 そう断言し、ニッコリと笑うハル。するとその脇から、小さなフワフワの塊が少女に飛び掛かる。

 

「わっ」

「アンッ!」

「ほら、チャコも大丈夫って」

 

 何処から現れたのか。先程までいなかった子犬にすり寄られ、しかし少女はそんな疑問もすぐ捨て置き、フワフワの子犬を抱擁する。いつしか涙は引いていた。更に気力も湧いて、少女はハルと手を繋ぎ、今度は並んで夜道をまた歩き行く。

 それからもう少し回っていた時、少女の耳に求めていた声が投げ掛けられた。

 

 

 

「立香!」

 

 

 

「! お母さん!」

 

 

 向こう側から駆けてきた母親の姿に、少女は思わず涙が再度溢れそうになる。今度のは嬉し涙だ。

同じく駆け出し、ようやく会えた母親に抱き付く少女。もう、心配させて! と安堵しながら叱る母親と、ごめんなさい! ごめんなさい……! と嬉しそうに謝る少女がそこにはいた。

 と、少女は後ろを振り向く。ここまで連れてきてくれたハルにお礼を言うためだ。言葉だけじゃ足りない、感謝の気持ち──が、振り向いた先には誰もいなかった。

 

「…………」

 

 どうしたの? と母親の声。どうやら母親には、少女がここまで一人で来たように見えていたようだ。

 しばし呆然としていた少女だったが、やがて「何でもない」と答え、母親と手を繋ぎ家路に着く。

そして最後にもう一度振り向くと、

 

「またね、お姉ちゃん」

 

 見えない、けど確かにいた誰かに向けて手を振る。「ばいばい」と言う別れの言葉ではなく、また会いたいと言う願いを込めて、今度こそ少女は母親と帰る。指輪をしっかりと手にして。

 その後ろ姿を見送ったハルは霊体化を解き、夜の探索に戻る。今夜出会った少女の前途を祈って。

 

 これが、縁の始まり。

 深夜を廻る少女と、後に人類最後のマスターとなる運命にある少女との最初の出会い。いずれ巻き起こる新たな聖杯戦争の、史上最大の探索の旅の、二人の少女の縁が繋がるきっかけであった──




ハルとぐだ子の邂逅。はい、コメントでちょいちょい言ってるFGO編の伏線です。
今までユイ、幼女先輩に導かれてたハルちゃんが今度は立香を導く。これは個人的に熱い。尊い。特にバトルも何も無い特別回でしたが、これを書けただけで満足です。
因みにグランドオーダー開始時にマシュが16歳なんで、その先輩であるぐだーずは多分17、8歳。その10年くらい前だからハルちゃんと同い年か年下なんじゃないかなと。違ってもうちのぐだ子設定だと思ってくだされば幸い。

一応ここで明言しておくと、FGO編は要所要所を取り上げるだけの単発になります。だってハルちゃんの性能はFGOじゃ特異点Fからキツいし……本編からの縁をネタにした特別回になるでしょう。まずは本編終わらせてからの話ですが。

終わると言えば、話によるとFGOは二部完結を以て終わりを迎えるとか。
……え?コミカライズまだフランスなのに?ラスアンの意味不明さの解明もなく、テラリンやFake鯖も実装しておらず、そもそもFGO本編にも明かされるべき謎が沢山あって、二年前の年末スペシャルでは全鯖のモーション変更するって言ってまだまだ残ってるのに?残り最低一年で終わらせるの?
と言う訳で、ここに私はFGO終わらない説を掲げたい。他の方の希望的観測を引用すれば主人公やヒロイン、ゲームシステムを一新したfateゲームになるか、ストーリーは終わるけどサービス自体の終わりはまだ先の話か。稼ぎ頭をあっさり無くす事もないでしょう。そもそも拙作の東方fgo的に困る!←書いてない自業自得

そんなこんなで戦々恐々な新年を迎えた今年も、秋塚翔をどうか宜しくお願いします!お年玉代わりに評価やコメントをくださると、FGOのお正月ガチャや福袋ガチャで良い引きになるかも!?(結果は自己責任で頼みます、調子に乗りました)
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